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論説委員の石井英夫、特別顧問の清原武彦。「産経新聞」がわが国に残したものは何か【適菜収】
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/3412709/
2025.01.09 適菜 収 だから何度も言ったのに 第79回 写真:PIXTA BEST TiMES
国家の崩壊は、メディアの責任である。メディアの腐敗がなければ、国家の衰退も食い止められたのではないか。先陣を切って、安倍自民党政権をヨイショし、ネトウヨ新聞化していったのが「産経新聞」だった。それを推し進めた親玉たちの相次ぐ死。彼らはあの世で何を思うか? 新刊『自民党の大罪』(祥伝社新書)で平成元年以降、30年以上かけて、自民党が腐っていった過程を描写した適菜収氏の「だから何度も言ったのに」第79回。
写真:PIXTA
■「産経抄」と「斜断機」
2024年12月18日、かつて産経新聞の1面コラム「産経抄」を担当していた論説委員の石井英夫が老衰のため死去した。91歳。1969年から2004年12月まで35年間担当し、2008年に産経新聞社を退職。石井が「産経抄」を書かなくなってからだいぶ経つので、とっくの昔に亡くなっていると思い込んでいたが、存命だったんですね。失礼しました。
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1998年頃、用事があって産経新聞に行き、石井と話をしたことがある。内容はまったく覚えていないが。当時は「斜断機」などのコラムもあり、他の新聞とは異なる面白い切り口の記事もたまにあったような気がする。それからだいぶ経ち、2013年頃から、私は産経新聞の1面で2年半にわたりコラムを書くようになった。産経新聞の劣化が加速していった時期である。特に、低俗なネトウヨ路線をとりはじめてからは害しかない。ネトウヨに迎合した記事を書いているうちに、ネトウヨが記者になり与太記事を書くようになってしまった。私はコラムで保守思想家の紹介にかこつけて産経新聞を批判。2年半もそれを放置した産経もすごいというかトロいというか。
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産経新聞の1面でコラムを書いているくらいだから、私のことをきっと偉い先生に違いないと勘違いした人が続出して、講演の依頼などもいろいろきた。私は講演は下手だし、嫌いだが、ギャラにつられて、のこのこ出かけてった。銀座の交詢社倶楽部のときか、丸の内の日本工業倶楽部のときか忘れたが、西室泰三とか日本の財界のトップみたいな連中と一緒に食事をしてから、その後、講演になった。私は「日本にとって害しかない」と延々と安倍晋三を批判したので、講演は不評だった。
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食事のときには同じテーブルに産経新聞社特別顧問で社長、会長を務めた清原武彦もいた。清原も2024年12月27日に肺炎で死去。彼らは、今の産経の惨状についてあの世でどう思っているんですかね?
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1月1日付の産経新聞1面トップには、《選択的夫婦別姓、小中学生の半数が反対、初の2000人調査「自分はしない」6割 ごまかしの選択的夫婦別姓議論》なる記事を掲載。記事によると、《政府や報道機関などの世論調査は主に成人が対象で、夫婦別姓の影響を受ける子供たちの考え方が統計的に明らかにされたのは初めて》《調査は全国の小学4年生以上を対象に実施。協力を得た小中学校に加え、民間の調査会社にも依頼し、中学生約1800人、小学生約150人から回答を得た》とのこと。
ツッコミどころが多すぎて、どこから指摘すればいいかわからないが、これがどうして「統計的に明らか」になるのか不明。統計の手続きを踏んでいないデータはゴミと同じである。
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元文部科学事務次官の前川喜平が、《この「反対」は、選択的夫婦別姓制度への反対ではないし、選択的夫婦別姓制度に反対する根拠にもならない。「両親が離婚することに反対ですか?」という質問に、反対と答える子どもが多くても、それは離婚制度に反対という意味ではないし、離婚制度を廃止すべき根拠にもならない。それと同じ》とツイートしていたが、その通り。
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質問項目も回答項目も小細工ばかり。
《いまは結婚してからも、結婚するまえの名字を会社で使ったり、手続きをすれば、免許証(めんきょしょう)やパスポートに結婚する前の名字をならべて書けるようになったり、これまでできなかったことができるようになっています。それでも、あなたは「それぞれ別の名字のままでも結婚できる」ように法律を変えたほうがよいと思いますか》
《もし、法律で「それぞれ別の名字のままでも結婚できる」ことが決まり、お父さんとお母さんが別の名字になったら、子供もお父さんかお母さんのどちらかとはちがう名字になったり、兄弟や姉妹でもちがったり、おなじ家族のなかでちがう名字になってしまうことがあります。こうしたことに賛成(さんせい)ですか、反対(はんたい)ですか》
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恣意的な質問を作り「それでも、あなたは」と誘導したり。《ごまかしの選択的夫婦別姓議論》って、まさに産経新聞がやっていることではないか。
■産経新聞は廃刊でいい
すでに述べたように、産経の劣化は今に始まった話ではない。
森友学園の決裁文書改竄問題を苦に自殺した財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さんを巡る記事(2020年掲載)で名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之議員、杉尾秀哉議員が産経新聞社とライターの門田隆将に計880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は計220万円の支払いを命じた(2024年3月に確定)。すごいのは、「両氏は近畿財務局や赤木さんに説明や面談を求めた事実はなかった」(共同通信)という部分。「事実はなかった」。つまり完全な妄想。でっちあげ。現実と妄想の区別がつかない陰謀論者の落書きと、それを掲載する産経新聞。完全に終わっている。
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2016年、保育所の待機児童問題などに関して、産経新聞のサイトでデマを垂れ流した杉田水脈。《子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳教育をする。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデルを21世紀の日本で実践しようとしているわけです》《旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本なのです》と述べていたが、2022年11月30日の国会で、「事実として確認できず、不用意な発言だった」と撤回。事実として確認できないことを社会に垂れ流す人間のことを一般にデマゴーグと呼ぶ。産経新聞はデマ拡散機でもある。
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2016年5月31日、産経新聞は、舛添要一の政治資金疑惑に関し、「民進調査チームも元検事起用 アドバイザーに郷原弁護士」と報じたが、郷原信郎本人が、「事実無根」と抗議。郷原によると、産経新聞から記事掲載前に連絡があり、「調査チームのアドバイザー就任の依頼は受けていない」と回答していたのに、コメントは無視されたという。取材してもこれなら、手の打ちようがない。
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2017年12月1日、沖縄自動車道を走行中の米海兵隊曹長が、事故で意識不明の重体となった。産経新聞は「曹長は日本人運転手を救出した後に事故に遭った」という内容の記事を掲載し、救出を報じない沖縄メディアを批判。しかし、琉球新報が取材したところ、米海兵隊は「(曹長は)救助行為はしていない」と否定し、県警も「救助の事実は確認されていない」とした。要するに完全なデマである。
なお、県警交通機動隊によると、産経新聞は事故後一度も同隊に取材をしていないという。
産経新聞那覇支局長の高木桂一は沖縄メディアに対し「これからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」などと書いていたが、産経新聞こそ報道機関を名乗る資格はない。
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2023年には「今村裕の一筆両断 こんなに劣化したのか? 日本人の道徳心――お天道さまが見ている」という記事が話題になった。これは百田尚樹の文章を盗作したもの。ネトウヨのコピペ作家からさらに盗作するというカオス。「こんなに劣化したのか? 日本人の道徳心――お天道さまが見ている」というタイトルも、産経には笑いの神がついているようにしか思えない。
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ちょっと思い出しただけでもコレ。メディアの腐敗が国家の衰退に拍車をかけた。産経新聞はそろそろ廃刊でいいのではないか?
文:適菜収
適菜 収 てきな おさむ
1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171
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