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失われた30年という現実
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2025年1月 5日 植草一秀の『知られざる真実』
世界は変わる。
変わる世界を認識し、自らを変えなければ変化に対応することはできない。
世界のなかで取り残される日本。
経済成長のない10年、20年、30年が経過した。
その原因はどこにあるか。
2012年12月に政権交代があった。
「アベノミクス」が叫ばれた。
2013年7月の参院選で「ねじれ」が解消。
安倍政治が長期間存続した。
私は2013年6月に「アベノリスク」(講談社)を上梓した。
「日本を融解させる7つの大罪」
として以下の問題を提示した。
第1の罪 インフレ 第2の罪 増税 第3の罪 TPP参加 第4の罪 原発再開 第5の罪 シロアリ公務員温存 第6の罪 改憲 第7の罪 戦争へ
安倍政治によって日本の悲劇が生じることを予言した。
安倍政治は「成長戦略」を掲げたが、日本は成長しなかった。
安倍政治が掲げた「成長」は「大企業利益の成長」であって、「国民利益の成長」ではなかった。
日銀が掲げた「インフレ誘導」
2年以内に消費者物価上昇率を2%以上に引き上げると「公約」したが実現しなかった。
拙著で私は2%公約が実現しない可能性が高いと記述した。
短期金融市場に資金を注入しても金融機関の与信が増えなければマネーストックは増大しない。
マネーストックが増大しなければインフレは実現しない。
このことから2%公約の達成が困難であると記述した。
2023年に4%インフレが発生したのは日銀の政策誘導によるものでない。
海外初のインフレが日本に波及したと同時に、日銀が日本円暴落誘導を実行したからだ。
4%インフレを容認することはできない。
日銀はインフレ抑止に舵を切るべきだったが、黒田日銀は最後までインフレ誘導の旗を振った。
その結果、4%インフレを招いてしまった。
「賃上げ」を誘導すると主張されたが、労働者にとって重要なのは名目賃金の上昇ではない。
名目賃金が上昇してもインフレがこれを上回れば実質賃金は減少する。
過去27年間に実質賃金が小幅増加したことが5回ある。
そのすべては物価下落の局面。
物価下落=デフレの局面でのみ実質賃金が小幅増加した。
元々、インフレ誘導は実質賃金を引き下げるために発案された。
1990年代以降、世界の大競争激化のなかで先進国産業の価格競争力が低下した。
新興国に対抗するために労働コスト引き下げが求められた。
「賃上げ」は可能だが「賃下げ」は困難である。
実質的に賃金コストを抑制するには、インフレが生じる際に賃上げをしなければよい。
そうすれば実質賃金の切り下げが可能になる。
このためにインフレ誘導が提案された。
インフレ誘導は労働者のための施策ではなく、実質賃金切り下げを狙う資本のために提案された政策だった。
ここに「アベノミクス」の欺瞞性があった。
「アベノミクス」の柱である「成長戦略」は以下の五つを柱にした。
1.農業自由化
2.医療自由化
3.解雇自由化=労働規制撤廃=実質賃金引き下げ
4.法人税減税
5.特区創設
このすべては、「大企業利益の成長」戦略であり、「労働者不利益の成長」戦略だった。
「法人税減税」の裏側は何か。
「消費税大増税」である。
「大企業利益の成長」だけを追求して日本経済の長期低迷を招いてきた。
この経済政策全体を根底から改変しなければ日本経済は浮上しない。
経済政策の抜本転換が2025年の課題である。
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