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【兵庫県知事選】恐ろしいまでの熱狂は「政治離れ」の放置が生み出した 岐路に立つSNSと選挙制度
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/365619
2024/12/28 日刊ゲンダイ
ネットを情報源に「斎藤元彦さんは悪くない」/(C)日刊ゲンダイ
11月17日に執行された兵庫県知事選挙は、SNSが選挙結果に大きな影響を与えた選挙だった。
選挙前の9月、現職の斎藤元彦氏はパワハラ疑惑などの「告発文書問題」をめぐって窮地に立たされていた。県議86人から全会一致での不信任を突きつけられたからだ。
失職後の斎藤氏は、出直し選挙前に行われた世論調査でも圧倒的劣勢だった。ところがSNSを起点に応援団を爆発的に増やし、劇的な逆転勝利を収める結果となった。
選挙期間中、斎藤氏を応援する立場でのユーチューブ動画やSNSでの発信量は他候補を圧倒していた。候補者の一人である立花孝志氏(政治団体「NHKから国民を守る党」党首)が実質的に斎藤氏を応援する立場で脱法的な「2馬力選挙」を行ったことも斎藤氏の勢いに拍車をかけた。
その結果、投票率は前回の41.1%から55.65%へと大幅アップ。筆者は序盤、中盤、終盤の3回現地入りしたが、斎藤氏を囲む聴衆は最終的に1000人を超えた。ネット上の盛り上がりが街中にも飛び火し、実際の得票に結びついたのだ。
既存メディアは選挙が始まると、公平性を意識して情報発信が少なくなる。そこに物足りなさを感じた老若男女がSNSの海にこぎ出していた。
驚いたのは、今まで選挙に無関心だった人たちが予想以上に多かったことだ。つまり、「政治的初恋」の渦中にいる人たちによる「SNS大航海時代」が到来していた。
誰もが発信できるSNSには、真偽不明な噂話を含めて刺激的な情報があふれている。デマ情報も拡散される。既存メディアを疑い、ネットを情報源とする人たちが「斎藤さんは悪くないという真実」を見つけるまでに時間はかからなかった。
既存メディアの敗北
選挙は候補者が試されると同時に有権者も試される機会である。恐ろしいまでの熱狂は「パワハラ疑惑」「県民局長の自殺」「全会一致での不信任」という論点や事実をあっさりのみ込むうねりとなった。これは「政治離れ」を放置してきた既存マスコミや既存政治勢力の敗北でもある。
知事選が終わり、斎藤知事の2期目はスタートした。しかし、12月16日には斎藤氏とPR会社社長に対する公選法違反容疑での告発状が神戸地検と県警に受理された。
12月20日には、次点だった稲村和美氏(元尼崎市長)の後援会が容疑者不詳のまま偽計業務妨害と公選法違反(虚偽事項公表など)の疑いで県警に提出した告訴・告発状も受理された。選挙後も火種はくすぶっている。
「SNS大後悔時代」が来るかも知れない。 (おわり)
畠山理仁 フリーランスライター
1973年、愛知県生まれ。各地の選挙現場を訪れ、面白さを伝える「選挙漫遊」の提唱者。著書「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」で第15回開高健ノンフィクション賞。「コロナ時代の選挙漫遊記」など著書多数。
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