<■972行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 女川原発2号機が14年ぶり営業運転再開 東日本大震災被災地の原発として初の本格稼働 2024/12/26 18:45 https://www.sankei.com/article/20241226-WQJLU42XIFIDPEJFGVDTL6MUB4/ 東北電力は2024年12月26日、2024年10月末に再稼働した女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の営業運転を再開した。 2011年3月の東日本大震災後、被災地に立地する原発として初の本格稼働となり、一連の再稼働工程が完了した。 2号機の営業運転は定期検査に入った震災前の2010年11月以来、約14年ぶりとなる。 東北電は、定格熱出力に到達した段階で発電所が正常に機能しているかを確認する 「総合負荷性能検査」 を2024年12月25日から実施。 2024年12月26日午後4時、原発構内で阿部正信所長が、原子力規制庁の検査官から合格証の交付を受けた。 これにより調整運転の位置付けから営業運転に移行した。 阿部所長は記者団に 「非常に長い年月をかけてここまでやり遂げた」 「地域に貢献できる発電所を目指していく」 と述べた。 東北電の樋口康二郎社長は 「『安全対策に終わりはない』という信念の下、更なる安全性向上に取り組む」 とのコメントを出した。再稼働した「福島同型炉」女川原発 事故教訓に積み重ねた安全対策 論説委員・高橋俊一 日曜経済講座 2024/12/8 11:00 https://www.sankei.com/article/20241208-IEH6TGNUZJOQPEP5WKTSDLCW74/ 東北電力の女川原発2号機(宮城県)が再稼働した。 平成24年5月に北海道電力の泊原発3号機(北海道)が運転を停止して以来、東日本では稼働原発がない状況が続いていたが、これを解消。 本格的な冬の到来を前に、電力需給の改善に寄与することが期待されている。 女川原発2号機の再稼働が全国的に注目されたのには、もう1つ大きな理由がある。 東日本大震災で事故を起こした福島第1原発(福島県)と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)というタイプの原発だからだ。 日本の原発はBWRと加圧水型軽水炉(PWR)の2種類がある。 震災後に再稼働した原発12基は全て西日本にあるPWRだった。 女川原発はBWRとして初の再稼働原発となった。 ともにウラン燃料が核分裂することで発生した熱によって水から蒸気を発生させ、蒸気の力でタービンを回して発電する点では同じだが、構造が大きく異なる。 PWRは原子炉で圧力をかけて高温・高圧にした水を熱交換器に送り、別の水を蒸気にしてタービンを回す。 これに対して、BWRは原子炉内の水を沸騰させて発生した蒸気を直接タービンに送る。 PWRに比べて構造は簡素だが、放射性物質を含んだ蒸気にタービンなども直接触れるため、広範囲の安全管理が必要になる。 PWRに比べ、原子炉などの重要機器を覆い放射性物質の拡散を抑える原子炉格納容器が小さく、事故の深刻化が早いとも指摘されている。 ■安全対策に5700億円 東北電は再稼働にあたり、福島第1原発事故を教訓に5700億円を投じ、安全対策の強化を進めてきた。 外観から対策前との違いが分かるのは、津波からの被害を防ぐ防潮堤だ。 東日本大震災で女川原発は最大約13メートルの津波に襲われたが、新規制基準や東日本大震災に関する最新の知見を踏まえ、想定される津波の高さを最大23・1メートルに設定。 海抜29メートルの防潮堤を800メートルに渡り整備した。 福島第1原発は津波によって非常用を含む全ての電源を喪失。 原子炉を冷却できなくなり、炉心溶融という過酷事故に至った。 この教訓から女川原発では通常電源が喪失した際の電源確保策として、海抜約60メートルの高台に配備したガスタービン発電機をはじめ、異なる種類の電源を用意した。 燃料となる軽油は、地下タンクを新設し、7日分を確保している。 原子炉や使用済み燃料を安定的に冷やすため、消防車の約10倍の送水能力がある大容量送水ポンプ車や、電気を使用せずに原子炉の蒸気で駆動する注水ポンプなど多様な注水設備も配備。 高台に淡水貯水槽を設置し、7日間の原子炉冷却を可能にした。 万一、過酷事故に至った際の影響を軽減する対策も取られている。 炉心損傷などで原子炉格納容器から原子炉建屋内に漏れ出した水素を酸素と再結合させ、水素爆発を防ぐ装置を導入。福島第1原発事故を受けて、BWRに義務付けられたフィルター付きベント装置ももちろん設置している。 原子炉格納容器内の圧力を下げるために気体を放出する際、放射性物質の放出量を1000分の1以下に抑えられる。 ■「BWRの再稼働に大きな意義」 「津波対策をはじめ、考えられる安全対策を徹底的にやっている」。 京都大複合原子力科学研究所の黒崎健所長は東北電が女川原発で積み上げてきた安全対策を評価。 その上で、女川原発の再稼働について 「BWRの再稼働、東日本での再稼働という意味で極めて大きな意義がある」 「東日本大震災の被災地ということもあり、原子力が立ち直ってきたという雰囲気も出るのではないか」 と指摘する。 女川原発に続き、BWRでは中国電力の島根原発2号機(島根県)も2024年12月7日に再稼働。 東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)も地元同意を得られれば、再稼働できるように準備を進めている。 いずれも女川原発に劣らない安全対策を講じてきた。 福島第1原発と同型炉ということで、不安に思う人がいるのは仕方がないだろう。 だが、各社とも再稼働までに巨額の資金を投じ、原発の信頼性を高めてきたことも事実だ。いたずらに不安を抱くのではなく、事故を教訓にどのような安全対策がとられているのかを知っておくことは重要だ。 大量の電力を二酸化炭素を排出することなく安定的に供給できる原発の重要性は世界的に増している。 そうした中で、過酷な原発事故を起こした日本は原発をどう活用していくべきなのか。 国の中長期的なエネルギー政策の指針となる 「エネルギー基本計画」 の見直し作業が大詰めを迎えている。 PWRに加えBWRの再稼働が実現した現在、原発が果たす役割を冷静に評価したい。 再稼働の女川原発2号機が点検を終え再起動 規制委の最終確認経て月内に営業運転へ 2024/12/5 10:43 https://www.sankei.com/article/20241205-PUM3RWKFGZKJBMK6DYOOQNXSSQ/ 東北電力は2024年12月5日、再稼働した女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の設備や機器の点検を終え、原子炉を起動したと発表した。 点検で異常や問題は見つからず、原子力規制委員会による最終確認を経て、2024年12月26日頃営業運転を始める予定だ。 東北電は平成23年3月の東日本大震災以降、原発が13年以上止まっていたことを踏まえ、原子炉を一旦止めて安全確認する 「中間停止」 を2024年11月24日から実施していた。 設備の点検や清掃などを終え、2024年12月5日午前6時、核分裂反応を抑える制御棒を引き抜く作業を始め、原子炉を起動。 同9時19分に核分裂が安定的に続く臨界に達した。 2号機は出力82万5千キロワットで、東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)。 今年2024年10月に被災地の原発として初めて再稼働し、2024年11月に発電と送電を再開した。 BWRでは中国電力島根原発2号機(松江市)が今月2024年12月7日の再稼働を予定している。 女川原発差し止め、2審も棄却 仙台高裁が住民側請求退けた1審判決支持 2024/11/27 17:10 https://www.sankei.com/article/20241127-5TLSJADCK5KVBMXNT66334KB5A/ 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の重大事故時の避難計画に不備があるとして、石巻市の住民が東北電に2号機の運転差し止めを求めた訴訟の控訴審判決で仙台高裁(倉沢守春裁判長)は2024年11月27日、請求を退けた1審・仙台地裁判決を支持し、控訴を棄却した。 判決理由で倉沢裁判長は 「運転再開で生じる人格権侵害の危険が、運転差し止めを命じることができる具体的な危険に当たると立証されていない」 と述べた。 女川原発は平成23年の東日本大震災で全3機が停止し、津波の影響で2号機の原子炉建屋の地下が浸水。 今年2024年10月、被災地の原発として初めて2号機が再稼働していた。 最大の争点は、宮城県が関与して石巻市が作成した重大事故時の避難計画の実行性の有無だった。 1審判決は原告側が事故の危険性について立証しておらず、避難計画の実効性については 「判断するまでもない」 として請求を棄却。 原告側が控訴していた。 控訴審で原告側は事故は想定外に起きるため、具体的な危険性の立証は不可能と主張。 現行の避難計画で重大事故が起きれば、周辺の道路が渋滞し、原発の30キロ圏内に長時間止められることになり、放射線被曝のリスクがあると訴えていた。 原発の避難計画を巡っては日本原子力発電東海第2原発の差し止め請求訴訟で令和3年3月、水戸地裁が地元の避難計画の欠陥を指摘して差し止めを認める判決を言い渡し、双方が控訴。 東京高裁で審理が行われている。 女川原発2号機、中間停止 営業運転前に自主点検 2024/11/24 13:02 https://www.sankei.com/article/20241124-N5WUMJMXBFP77L2VFMXEBYOOAY/ 東北電力は2024年11月24日、再稼働した女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の設備や機器に問題がないか点検するため原子炉を一旦止める 「中間停止」 に入ったと発表した。 2011年の東日本大震災以降、原発が13年以上止まっていたことを踏まえた自主的な取り組み。 点検終了後に原子炉を起動し、原子力規制委員会による最終確認を経て、2024年12月にも営業運転を始める。 東北電は2024年11月24日午前1時に発電を停止し、原子炉に核分裂反応を抑える制御棒の挿入作業を行い、午前8時9分に原子炉を止めた。 停止は10日程度を予定している。 2号機は出力82万5千キロワットで、東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)。 2024年10月29日に被災地の原発として初めて再稼働し、今月2024年11月15日に発電と送電を再開した。 <主張>女川原発送電再開 過度の懸念は払拭したい 社説 2024/11/17 5:00 https://www.sankei.com/article/20241117-EY4FZRREXRL6DO5WAPJHLMYYRE/ 東北電力・女川原子力発電所2号機(宮城県)で生まれた電力が2024年11月15日夕刻から、送電線に乗って同電力管内の家庭や商店、工場などに届いている。 平成23年の大震災後、東日本における初の原子力発電再開だ。 電力安定供給力の増大効果は、東北地方をはじめ、首都圏にも及ぶ。 再稼働を達成した東北電力と協力企業の長年の努力を高く評価したい。 女川2号機の送電開始は、もう1つの見地からも注目に値する。 沸騰水型軽水炉(BWR)の再稼働は全国初なのだ。 大震災後、時の民主党政権下で国内の全原発が停止に追い込まれた。 その中で原子力規制委員会の安全審査に合格し、平成27年以降、再稼働に進んでいったのは、九州電力、関西電力、四国電力の加圧水型軽水炉(PWR)の原発だった。 これに対してBWRは、再稼働の前提となる安全審査の合格も遅れた。 最大の理由は大津波で炉心溶融事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所の原発がBWRであったためだ。 またBWRには、万々が一の事故発生時に周辺への放射性物質の拡散を防止するためのフィルター付きベント設備の導入が義務付けられた。 これも遅れの一因となった。 13年前の大震災で海抜14・8メートルの敷地に立地していた女川原発は、高さ13メートルの津波に耐えた。 今回の再稼働のために、東北電は更なる安全対策として海抜29メートル、総延長800メートルの巨大防潮堤を完成させている。 こうした安全対策の大幅強化にもかかわらず、女川原発が牡鹿半島に位置していることなどを理由に、住民避難の難しさを主張する声もある。 そうした懸念に固執する人々は、平成23年3月の大震災当時の出来事を思い出してはどうか。 大津波で被災し、寒さに震える地元住民が女川原発に助けを求めた件である。 発電所員は自分たちの食事を減らして被災者に毎日2食を提供して守り抜いた。 一時は364人を数えた地元の人々が約3カ月、原発の施設で暮らしたのだ。 女川2号機の送電再開を、原発への偏見や過度の恐れを改め、冷静な視点で日本のエネルギーを考える糸口としたい。 地政学的リスクも踏まえ、原発の役割を評価すべき時機にあることを忘れてはならない。 震災から10年を迎えて 歴史に学び、科学を信じるー将来を考えるにあたって忘れてはならない教訓 月刊誌『WiLL』2020年12月号 櫻井よしこ ジャーナリスト 奈良林直 東京工業大学特任教授 司会:山根真(本誌編集部) ■女川原発は安全の象徴 ★山根 女川原発を見学したこともあるそうですね。 ★櫻井 ええ、震災直後に女川を訪れました。 あまり知られていませんが、実は女川原発は、震災時に地域住民の避難所として活用された発電所なのです。 2011年3月11日、マグニチュード9.0の大地震と津波が東北を襲いました。 その日の夜、近隣住民の皆さんが安全な場所を求めて避難したのが女川原発でした。 ★奈良林 最大で364人、長い方は3カ月に渡って女川原発の体育館で過ごしました。 東北電力が備蓄していた食料や毛布が提供され、住民は集団生活を送っていたのです。 ★櫻井 原発はテロや他者が侵入する可能性を踏まえ、セキュリティが厳しく、普段は関係者以外なかなか立ち入ることができません。 しかし、女川原発の当時の所長は住民を発電所敷地内に避難させるという判断を下しました。 東北電力の方によれば、震災当日、住民の代表者が 「ここしか安全な場所がない」 と訴えたそうです。 日頃から事業者と住民の間に信頼関係が醸成されていない限り、そのような声は上がりません。 ★奈良林 福島第一原発の事故によって、原発=危険というイメージが広がってしまいました。 事故から学び反省することも重要ですが、同時に女川原発についても広く伝えなければなりません。 原発の安全性を象徴する存在ですから。 ■歴史と科学に学ぶ ★山根 2020年2月、女川原発は原子力規制委員会(以下、規制委)の安全審査に合格しました。 2020年6月には、政府が原子力防災会議を開催して、被曝対応と新型コロナウイルスなどの感染拡大防止策を盛り込んだ住民避難計画を了承。 地元の宮城県も再稼働に前向きな姿勢を示していて、2023年にも再稼働する見込みです。 ★奈良林 努力の賜物ですね。 女川原発は震災に際しても、設計通り 「止める」 「冷やす」 「閉じ込める」 が有効に機能し安全に停止しました。 将来にわたって原発の安全性を高める上で、モデルケースになり得ます。 三陸海岸には平安時代の 「貞観地震」 をはじめ、津波を記録する石碑があちこちに残っていて、 「ここより下に家を建てるな」 というような教訓が記されています。 女川原発の原子炉建屋は、海抜14.8メートルに位置していますが、設計に当たっては、東北大学の地震と津波の専門家の知見を聞きながら、東北電力が約半年に渡って侃々諤々の議論を重ねました。 その際、石碑や津波の地層中の痕跡の調査も踏まえた上で敷地の高さが決まった。 実際に”千年に一度”と言われる東日本大震災の津波を耐え抜いたわけですが、女川原発は、科学と歴史の両方を考慮しながら設計されたのです。 ★櫻井 日本は「自然災害大国」です。 世界に占める日本の国土面積は0.25%にもかかわらず、マグニチュード6.0以上の地震の発生回数は22.9%、活火山の数では7.1%を占めています。 だからこそ、自然に対する畏敬の念を抱いた先人たちの知恵から学ぶ必要があります。 その一方で、人類の英知の結晶とも言える科学も信じなければなりません。 ★奈良林 バランスが大切ですね。 ★櫻井 ええ。 ところが、日本の原発を巡る議論はどうか。 原発の恐怖を煽るような声が余りにも大きいのが現状です。 片方に偏るのではなく、全体像から判断することが重要です。 ■規制委の「後出しジャンケン」 ★奈良林 福島事故を踏まえた新規性基準に適合させるための工事認可から5年以内に特重施設を完成させることが、運転継続の条件になっています。 しかし、これは 「何年何月まで」 という期限を守れないからストップするという、安全の本質とは関係ない新規性基準の運用上の理由にすぎない。 たとえ期限内に特重施設が完成しなくても、原発自体の安全性は変わりません。 これは、規制委の更田豊志委員長もおっしゃっています。 ■ツケは国民が払う ★櫻井 先ほど奈良林先生が大事なことをおっしゃっていました。 特重施設が完成していなくても、原発自体の安全性には何ら問題はないという点です。 2019年、シンクタンク「国家基本問題研究所」は、奈良林先生を座長として原発再稼働に向けた政策提言を行いました。 ★奈良林 ええ。 自衛隊元幹部の知見も取り入れながら、航空機テロ対策についても具体的に提案しています。 原発の敷地の外にポールを立てて直径2センチメートルほどの金属製ワイヤーフェンスを張れば、航空機が突っ込んできても原子炉に直撃しません。 ★櫻井 航空機がフェンスに引っかってしまうから、原発本体を狙ったテロを阻止することができますね。 低コストかつ効果的な手段と言えるでしょう。 ★奈良林 航空機テロだけでなく、ミサイル攻撃にも対応できます。 航空機もミサイルもロケット砲も、ワイヤーにぶつかって目標に到達する前に爆発してしまいますから。 特重施設の完成まで、ワイヤーフェンスを設置して稼動し続ければいいのです。 海外の原発に実例がありますし、広島空港ではアンテナに引っかかって損傷したアシアナ航空の実例もある。 規制委は柔軟に対応すべきです。 ★櫻井 柔軟に考えることを忘れて規制委のように非合理的な審査を続ければ、そのツケは電気料金の上昇という形で国民に跳ね返ってきます。 福島事故後、全ての原発が停止して不足した電力供給を補うために、液化天然ガスなど火力発電で穴埋めしました。 燃料費の増加金額は、ピーク時の2013年度には年間3.6兆円、1日当たり100億円。 その後、一部原発の再稼働や燃料価格の下落もあり、穴埋め用燃料費負担は少し下がっています。 それでも、2011年度から現在までの負担総額は20兆円以上に達しています。 ★奈良林 生活に欠かせない電気の値段を上げると、年金だけで暮らす高齢者や低賃金で働く若者など、社会的弱者の生活を直撃します。 ある程度の収入がある方は、電気料金が上昇しても、さほど負担に感じないかもしれない。 ところが、ギリギリの生活を送っている人たちにとって、電気料金の上昇は文字通り、生死に関わります。 ★櫻井 原子力を活用しなければ、日本の産業は衰退していきます。 また、国民生活にも重い負担となります。 こうした点を忘れてはならないと思います。 原発を止めていることによって、2030年までに、少なく見積もって27兆円も国民負担が増えるという試算もあります。 【主張】女川原発の同意 グリーン社会への弾みに 2020.11.12 05:00 https://www.sankei.com/life/news/201112/lif2011120005-n1.html 東北電力女川原子力発電所2号機(沸騰水型・出力82.5万キロワット)の再稼働が確実になった。 同機は今年2020年2月、原子力規制委員会によって新規制基準への適合性が認められている。 それに加えて立地自治体の女川町、石巻市と宮城県の各首長による3者会談で2020年11月11日、懸案の地元同意が表明されたためである。 女川原発では防潮堤建設などの安全対策工事が続いており、運転再開は2年以上先になりそうだが、東日本大震災の津波で被災した原発の再稼働が視野に入ったのは初めてのことである。 地元同意には、原発による地域経済の活性化を求める地元の声が後押しした部分が大きく、その点が特筆に値しよう。 菅義偉首相は2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を宣言しているが、原発の再稼働は9基止まりで足踏み状態だ。 脱炭素と電力の大量安定供給を両立させ得る原発の再稼働が続かなければ、50年の目標どころか 「パリ協定」 で世界に公約している30年度時点での26%削減の達成さえもおぼつかない。 それには全17基が停止したままの沸騰水型原発の再稼働促進が必要だ。 沸騰水型原発は、大事故を起こした福島第1原発と同タイプということもあって安全審査が遅れがちだった。 その意味でも女川2号機の再稼働に確かな展望を開いた地元同意の意義は大きい。 沸騰水型の安全審査では、日本原子力発電・東海第2原発(茨城県)と東京電力・柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の方が進捗していたのだが、地元同意の壁が再稼働の前に立ちはだかっている状態だ。 今回の女川2号機への地元の温かい反応が、これら3基の原発の膠着状態打開への触媒となることを期待したい。 日本の東半分に多い沸騰水型の再稼働は 「西高東低」 になっている原子力発電のアンバランスの是正にも働く。 世界の潮流はコロナ禍で冷え込んだ経済の回復と地球温暖化防止の両立を目指すグリーン社会への移行である。 原子力発電はその実現に欠かせない。 女川原発は9年前2011年3月の大震災で震源に最も近い原発だったが、激烈な揺れにも巨大津波にも負けなかった。 その事実を今1度、思い起こしたい。 「温室ガスゼロ」に原発運転最長60年の壁 女川再稼働同意 2020.11.11 20:41 https://www.sankei.com/politics/news/201111/plt2011110043-n1.html 菅義偉首相が表明した2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロ目標の達成には、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の再稼働が欠かせない。 一方で政府は原発の新増設やリプレース(建て替え)について 「現時点では想定していない」 としており、識者からは懸念の声も上がる。 「再生可能エネルギーのみならず、原子力を含めてあらゆる選択肢を追求していく」−。 菅首相は2020年10月28日の衆院本会議での代表質問で、温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする目標についてこう述べた。 政府が主力電源化を目指す再エネは原発と同じく発電時にCO2を出さないが、天候に左右され不安定で、電気を大量にためる蓄電池の技術開発も必要だ。 また、CO2を効率的に回収し燃料や原材料として再利用することで大気へのCO2排出抑制に繋げる取り組みも、技術の確立や商業的に成り立つ水準へのコスト低減が課題となる。 「2050年までに実質ゼロ」 の目標達成には、原発を一定程度使う必要がある。 ただ、東京電力福島第1原発事故を教訓とした新規制基準の下で再稼働したのは5原発9基にとどまり、平成30年度の発電電力量に占める原発の比率は約6%と低い。 梶山弘志経済産業相は 「この10年間は再稼働への努力期間」 と話す。 政府は、原発の新増設や建て替えは 「現時点では想定していない」 とする。 現行のルールでは原発の運転期間は原則40年で、延長が認められても最長60年だ。 国際大学大学院の橘川武郎教授は 「国内には、稼働実績があると共に廃炉が決まっていない原発が33基あるが、その全てが60年まで延長したとしても、新増設や建て替えがなければ2050年には18基、60年には5基しか残らない」 「今から手を打たないと、政府が原発を『脱炭素化』の選択肢と位置付けても意味がない」 と指摘する。 女川再稼働 同意差し止め認めず 仙台高裁 2020年10月24日 産経新聞 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に住む石巻市民17人が、重大事故時の住民避難計画の不備を理由に、県と市による2号機再稼働への同意の差し止めを求めた仮処分で、仙台高裁は2020年10月23日、申し立てを却下した2020年7月の仙台地裁決定を支持し、市民側の即時抗告を棄却する決定を出した。 決定理由で小林久起裁判長は、地元同意について 「国や東北電の再稼働の方針に自治体の意見を表明、反映できる重要な機会だが、東北電による再稼働とは同視できない」 と指摘。 「同意が事故発生により生命、身体の危険を直接生じさせる行為とは言えず、人格権侵害を予防するために差し止めが必要とは言えない」 と結論付けた。 市民側は 「避難計画の想定ルートでは交通渋滞のため圏外に出られない」 と訴えていた。 東北電が令和4年度以降を目指す女川2号機の再稼働について、県と地元2市町の議会は2020年10月22日までに同意した。 村井嘉浩知事も同意の意向を固めており、須田善明女川町長と亀山紘石巻市長とともに2020年11月にも表明する可能性がある。 ■女川原発を巡る経過 ・昭和59年6月 1号機が営業運転開始 ・平成7年7月 2号機が営業運転開始 ・平成14年1月 3号機が営業運転開始 ・平成23年3月 東日本大震災。 1〜3号機が自動停止し、津波の影響で2号機の原子炉建屋地下が浸水 ・平成25年12月 東北電力が2号機の再稼働に原子力規制委員会に審査を申請 ・平成30年10月 東北電力が1号機の廃炉を決定 ・令和2年2月 2号機が審査に合格 ・令和2年7月 再稼働の地元同意の差し止めを求めた仮処分申し立てで仙台地裁が却下の決定 ・令和2年9月 宮城県女川町と石巻市の議会が2号機再稼働に同意 ・令和2年10月22日 県議会が再稼働に同意 ・令和2年10月23日 地元同意差し止め仮処分の即時抗告審で仙台高裁が棄却の決定 女川原発再稼働 東日本「一番手」も 年300億円の燃費削減効果 2020.10.22 21:10 https://www.sankei.com/politics/news/201022/plt2010220041-n1.html 宮城県議会が2020年10月22日、東北電力女川原発2号機(同県女川町、石巻市)の再稼働を了承したことで、地元同意の手続きは前進した。 東京電力福島第1原発事故を教訓とした新規制基準の下での原発再稼働は福井県以西の西日本で先行し、東日本は稼働原発がゼロの状況が続く。 東北電は女川2号機の安全対策工事について令和4年度中の完了を目指しており再稼働はその後となるが、東日本の原発で 「一番手」 となる可能性がある。 福島第1原発事故を受けた法改正で、原発が運転できる期間は運転開始から40年とされた。 平成7年7月に運転を開始した女川2号機が40年を迎えるのは令和17年7月。 ただ、原子力規制委員会から運転期間延長の認可を受ければ、更に最長20年運転できる。 原発の再稼働は、火力発電の燃料費負担の減少を通じて電力会社に収益改善効果をもたらす。 東北電によると、女川2号機が再稼働すれば月30億円程度、年間で300億円程度の燃料費削減が見込めるという。 ただ、電気料金の引き下げについては、原発の稼働状況だけでなく、収支や財務の状況、電力自由化を受けた競争環境、経営効率化の進み具合などを総合判断して決めることになる。 新規制基準の下で再稼働した5原発9基は西日本にあり、原子炉の種類は全て 「加圧水型(PWR)」。 事故を起こした福島第1原発と同じ 「沸騰水型(BWR)」 の再稼働はまだない。 電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は2020年10月16日の記者会見で、女川2号機をめぐる地元同意の手続きに関して 「BWRの原子炉が動き出すというのは意義があることだ」 と話した。 東日本では、女川2号機のほか、東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)が再稼働の前提となる規制委の審査に合格済みだが、地元同意の見通しは立っていない。 女川原発再稼働の手続き、最終局面へ 宮城県知事ら来月にも3首長会談 2020.10.22 19:23 https://www.sankei.com/life/news/201022/lif2010220042-n1.html 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、同意表明へ賛成する請願が採択された2020年10月22日の県議会本会議。 東日本大震災で被災した原発では初となる地元同意の手続きは知事、2市町長の意向表明を残すだけとなった。 3首長は2020年11月中に3者会談を開いた上で再稼働への判断を示すものとみられ、再稼働への手続きは最終局面に突入した。 2020年10月22日の本会議閉会後、報道陣の取材に応じた村井嘉浩知事は、自身の判断を示す時期について 「(2020年11月9日に開催予定の)市町村長会議での議論次第」 「会議を複数回開く可能性もあるが、2020年11月の早い段階で(両市町長との)3者会談を設ける」 と述べた。 この日の本会議では、請願に対する賛否の意見を述べる討論が行われた。 再稼働賛成派の議員は安全対策を前提とした上で、エネルギーの安定供給の重要性などを強調。 一方、反対派の議員は事故の危険性や高レベル放射性廃棄物処理などの問題を挙げた上で、避難計画の実効性が確保されていない点を指摘した。 石川光次郎議長は 「県議会としても全員協議会などで議論を積み重ねてきた」 とした上で、避難道路の整備などの課題については 「各自治体と連携しながら国にも要請していく」 と語った。 一方、県議会が再稼働に同意したことについて、石巻市の亀山紘市長は 「市議会、県議会の結果を踏まえて(同意の判断について)あらゆる面から総合的に判断する」、 女川町の須田善明町長は 「原発の安全性、防災対策などの要素を確認することに変わりはない」 とそれぞれコメントした。 宮城県議会、女川原発再稼働に同意 賛成請願を採択、今後は首長判断へ 2020.10.22 15:45 https://www.sankei.com/life/news/201022/lif2010220025-n1.html 東北電力が令和4年度以降の再稼働を目指している女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)を巡り、宮城県議会は2020年10月22日の本会議で、女川町商工会が提出していた再稼働の同意表明を求める請願を賛成多数で採択した。 これで県、地元2市町の議会による再稼働への同意が出揃った。 再稼働には知事と地元2市町長の同意が必要で、同意すれば東日本大震災で被災した原発では初となる。 村井嘉浩知事は2020年11月9日にも開かれる市町村長会議で、県内の全市町村長から再稼働に関する意見聴取を行い、女川町の須田善明町長、石巻市の亀山紘市長との3者会談を経て11月中にも同意を表明するものとみられる。 女川原発2号機を巡っては、女川町議会が先月2020年9月7日、石巻市議会が同24日にそれぞれ再稼働に賛成する陳情を採択していた。 東北電は平成25年12月、女川原発2号機の新規制基準適合性審査を原子力規制委員会に申請。 今年2020年2月、審査に合格していた。 東北電では原発の安全対策工事が完了する令和4年度以降の再稼働を目指しており、来年2021年1〜3月には国の原子力総合防災訓練が女川原発での事故を想定して行われることが決定した。 原発の再稼働には政府の判断に加え、電力会社との間に重大事故発生時の通報義務などを定めた安全協定を結んでいる立地自治体の同意が必要。 地元同意権は、原発が所在する道県と市町村に限定することが通例となっている。 女川再稼働、県議会同意へ 環境福祉委員会が賛成の請願を採択 2020.10.13 18:01 https://www.sankei.com/life/news/201013/lif2010130023-n1.html 東北電力が令和4年度以降の再稼働を目指している女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)について、県議会環境福祉委員会は2020年10月13日、女川町商工会が提出していた再稼働への同意表明を求める請願を賛成多数で採択した。 2020年10月22日の本会議でも採択される見通しで、事実上の同意となる。 一方、市民団体が提出していた再稼働反対の請願も審議され、不採択とした。 女川2号機を巡っては、立地自治体の女川町、石巻市の両議会で再稼働に同意する判断を示している。 再稼働には県、両市町の首長による判断が必要で、3首長が今後、どのような判断を下すかが注目される。 この日の環境福祉委では資源エネルギー庁、内閣府の担当者が委員の質問に答える 「参考人意見聴取」 が行われた。 担当者は 「安全対策が前提」 とした上で 「再稼働によるエネルギーの安定供給、(電力のコストダウンなどの)経済安定、環境問題への配慮のバランスが重要」 と強調。 一方、反対派の委員からは 「新型コロナウイルスの感染拡大の中で、避難者を十分に収容できる施設はあるのか」 として、事故時の地域住民の避難の課題を指摘した。 村井嘉浩知事は 「今後、議会の意思が示されれば、県内の市町村長の意見を聞き、総合的に判断する」 とのコメントを発表した。 女川2号機は2020年2月、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査に合格。 東北電は安全対策工事が完了する令和4年度の以降の再稼働を目指している。 福島第1と同じ「沸騰水型」 2020年10月15日 産経新聞 東北電力女川原発2号機の原子炉の種類は、過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ 「沸騰水型(BWR)」 と呼ばれるものだ。 BWRは東日本に多いが、再稼働に至った事例はまだない。 地元同意の手続きが順調に進めば、女川2号機がBWRで初の再稼働となる可能性がある。 福島第1原発事故後に策定された新規制基準の下で再稼働したのは5原発9基にとどまるが、原子炉の種類は全て 「加圧水型軽水炉(PWR)」 で、立地も福井県以西の西日本だ。 東日本の原発ではすでに、女川2号機に加え、東電柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の計3原発4基が、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査に合格。 ただ、柏崎刈羽原発6、7号機も東海第2原発も、再稼働の見通しは立っていない。 柏崎刈羽原発6、7号機を巡っては、新潟県が再稼働の可否の判断の前提として県独自の検証を進めており、花角英世知事は検証結果が出るまで再稼働の議論に入らない考えを示している。 東海第2原発についても、再稼働に関する地元手続きは茨城県や立地する東海村のほか周辺5市も関与するなど複雑なもので、一筋縄ではいかない。 今月2020年10月13日には経済産業省の有識者会議で、国のエネルギー政策の中長期的な指針となるエネルギー基本計画の見直しに向けた議論がキックオフした。 来年2021年夏とみられる改定に向け、原発の再稼働を後押しする環境を作れるかも注目される。 櫻井よしこ 美しき勁き国へ なぜ規制委を訴えないか 2019.12.2 https://special.sankei.com/a/life/article/20191202/0001.html 2019年11月27日、原子力規制委員会(規制委)は、東北電力女川原発2号機(宮城県)の再稼働を事実上許可した。 女川原発は千年に1度といわれた3・11の大地震の震源に東京電力福島第1原発より近かったが、地震も津波も乗り切った。 原発施設の安全を確信した地元住民は被災当日から女川原発に避難した。 テロ対策の懸念を横におき、東北電力は非常事態として住民を受け入れ、約90日間で最多364人が原発構内で生活した。 それだけに同原発の安全審査に長い年月が費やされたことに私は疑問を抱いている。 行政手続法では申請に対しては遅滞なく審査を開始し、審査に標準的な期間を定めよとしている。 規制委初代委員長、田中俊一氏は原発審査期間を 「半年」 とした。 だが実際には女川原発の場合、6年もかかっている。 大問題だ。 不条理な審査期間、審査途中で条件が変更される不当性、結果としての経済的損失などを理由に、通常なら、規制委は間違いなく訴訟を起こされているだろう。 原告は東北電力、あるいは損失を電気料金に加算されてツケを回される消費者のいずれでもあり得るだろう。 しかし電力会社は規制委を訴えない。 理由は、強い権限と独立性を与えられた三条委員会である規制委はさじ加減ひとつで電力会社の命運を左右できるからだ。 規制委に逆らった場合の報復を全ての電力会社は恐れている。 審査の更なる遅延や新たな要求を出され、経営上致命的な損失を被る危険性もある。 規制委の審査は明確な法律違反だと思われるが、それでも電力各社は規制委に逆らえない。 規制する側はされる側と十分に話し合い、協力し合うのが本来の在り方だ。 電力会社との意思疎通も相互理解もなく、権力的姿勢のみが目立つ我が国の規制委は異常である。 それでも更田豊志規制委委員長はかつて開明的だった。 5年前の2014年12月17日、当時委員長代理の氏は原子力規制庁職員に憤りを込めて、次のように 「出直し」 を命じた。 「1年を目途にと、よく『目途に』と使われるが、守られたためしがない」 「だらだらと長い時間をかけることがないように」 右の発言は 「透明性と独立性を旗印にスタート」 した規制委が 「原発事故以前の状態」 に戻りつつあることへの苛立ちだった(「産経新聞」平成27年1月15日)。 当時委員長の田中俊一氏もこう語っている。 「先祖返りするリスクは常に我々自身も意識をして、口酸っぱく言っている」 両氏は原子力規制委の前身、原子力安全・保安院(保安院)の非科学的で不合理で、事故防止に役立たない安全審査を痛烈に批判したのだが、その両氏が今や、完全に先祖返りしているのである。 3・11の後に政府や国会の事故調査委員会が指摘した重要なことを思い出したい。 東京電力は大津波発生に備えて社内で対策を検討していたが、対策を先送りした。 同じ時期に保安院は、その技術支援組織である原子力安全基盤機構(JNES)から平成19年度に図入りで津波リスクを指摘されていたが、これを放置したのである。 保安院は品質管理システム(QMS)の考えを重視し、夥しい数の検査を要求するのが常だった。 書類は10万ページ単位に上り、積み上げると3階ないし4階建ての建物、10メートルの高さに達した。 そうした膨大な書類の審査を、悪しき官僚組織と成り果てていた保安院は誤字脱字探しから始め、誤字脱字を見つけては資料作成のやり直しを命じた。 これだけの量の資料を東電側に出させておきながら、また、JNESから明確に指摘されながら、保安院は津波によってタービン建屋地下の非常用ディーゼル発電機は全滅するというリスクをあぶり出せなかった。 防止する取り組みも取らせなかった。 米国が実施した電源車と注水ポンプによるテロ対策も放置した。 保安院は現実を見ることなく、膨大な検査書類の上にただあぐらをかいていたのである。 5年前2014年の更田氏の怒りはこのような保安院に向けられていた。 保安院の轍は踏まないとの思いだったはずだ。 それが蓋を開けてみれば、氏を筆頭に規制委全体が保安院の双子に成り果てている。 規制委の指示で今、全国の原発ごとに最大で2000個の火災感知器が追加設置されつつある。 火災感知器に繋がるケーブルは厚さ1〜2メートルの鉄筋コンクリートの耐震壁、遮蔽壁、水密壁にドリルで穴を開けて設置される。 私はそれを 「潜水艦の船体を、火災感知器のケーブルを通すために穴だらけにするようなもの」 と批判してきた。 その後の取材で現場に尋常ならざる状況が生じていることが判明した。 ケーブルを貫通させる工事は原発が運転停止する定期検査期間に行わざるを得ないため、その期間の全てを使っても4年越しの大工事になるというのだ。 加えて規制委は原子炉圧力容器の溶接部の全検査を主張している。 米国でも全数検査が基本だが、過去の点検データと中性子の照射によってリスクの高い部分を識別し、その部分を優先的に検査し、他を除外する制度を取っている。 安全と判断される所は検査無しだ。 欧州諸国も同様だ。 日本だけが異常な事態に陥っている。 問題は原発の壁を穴だらけにする夥しい火災検知器の設置、溶接線の全数検査が、原子力発電の安全性を高めるわけではないことだ。 むしろ注意を散漫にしてリスクを高め、作業員の被曝を増やす。 再稼働審査の遅れで電力不足による首都圏大停電のリスクも高まっている。 「半年」 の口約束は7年になろうとしている。 日本のためにも国民のためにもならない規制委の不条理に、今や訴訟が起きても仕方がないと考える所以だ。 【主張】女川原発「合格」 新たな再稼働の道筋開け 2019.11.29 05:00 https://www.sankei.com/column/news/191129/clm1911290003-n1.html 宮城県の牡鹿半島に立地する東北電力の女川原発2号機(沸騰水型、出力82.5万キロワット)が原子力規制委員会の安全審査で、事実上の合格証を獲得した。 残る審査などが順調に進めば、再来年2021年度中の再稼働も視野に入る。 これまでに再稼働している原発9基はいずれも西日本に多い加圧水型で、女川2号機は沸騰水型原発として初の再稼働が有力視されている。 東京電力などと同じ沸騰水型が復活する呼び水として、また原発再稼働の 「西高東低」 解消の第一歩となることを期待したい。 待望の合格だが、規制委の審査にほぼ6年もの歳月が費やされたのは残念だ。 審査を手際よく進めることはできなかったのか。 原発の運転期間が基本40年に限られていることを考えると6年の停止期間は、余りにも長い。 このことは再稼働していない他の原発についても当てはまる。 運転していないなら、設備の劣化はほとんど進行しないはずだ。 規制委は、原発の運転停止期間を40年間から除外すべきである。 そうした合理的な規制導入の検討を早急に開始してもらいたい。 更に注文するなら、基本的な安全対策を終えた段階で原発の運転を認め、安全審査を並行させる道筋を考えるべきである。 原子力発電は、国のエネルギー政策で 「重要なベースロード電源」 と位置付けられているが、これまでの再稼働ペースでは、期待されている役割は果たせない。 来年2020年から実運用に入る地球温暖化防止の 「パリ協定」 で、日本が世界に約束した二酸化炭素の26%削減も公約倒れを免れない。 沸騰水型原発の安全審査では、東電の柏崎刈羽原発(新潟県)の6、7号機と日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)が女川2号機より進んだ段階にあるのだが、地元同意の壁の前で再稼働の時期が見通せない状況だ。 女川2号機への地元同意の壁は高くないとみられているが、国が前面に出て、しっかり説明すべきである。 東海第2と柏崎刈羽についても同様の対応が望まれる。 女川原発は東日本大震災の震源に最も近い原発だったが、巨大津波にも地震動にも負けなかった。 被災した300人以上の近隣住民の避難生活を約3カ月にわたって支えたのもこの原発だった。 その実績を忘れてはなるまい。 女川2号機、再稼働「合格」 「過程経る必要」「注視」周辺首長の反応さまざま 宮城 2019.11.28 07:06 https://www.sankei.com/region/news/191128/rgn1911280012-n1.html 東北電力が再稼働を目指す女川原発2号機(石巻市、女川町)が2019年11月27日、原子力規制委員会の審査に事実上合格したことを受け、村井嘉浩知事や周辺自治体の首長からは 「いろいろなプロセスを経る必要がある」 「引き続き安全性を見ていく」 などといったさまざまな意見が寄せられた。 村井知事はこの日、報道陣の取材に応じ 「(原子力規制委員会で)厳しい審査がなされたと思う」 「ただ、これで全て再稼働に向けて前に進むということではない」 「今後いろいろなプロセスを経る必要がある」 と述べた上で、女川原発2号機の再稼働については 「(現時点で)賛成とも反対とも言えない」 と語った。 再稼働に向けた今後の判断材料として、村井知事は東北電の事前協議の申し入れを受けて県や立地自治体が設置した有識者検討会、国の原子力防災会議による結論などを挙げ 「(経済産業相から)私の同意も求められる」 「県議会や立地自治体、市町村の声を聞きながら、私の権限で決めるべきことはしっかり決めたい」 と話した。 石巻市の亀山紘市長もこの日、同市内で取材に応じ 「一歩進んだ、という判断だと思う」 「引き続き安全性について見ていきたい」 と述べた。 女川原発2号機の再稼働方針については 「はっきり判断できていない」 と明言を避け、 「住民は実効性のある避難体制ができるか心配している」 「議会の意見も踏まえて進めなければならない」 と強調。 賛否を問う住民投票を行う考えは 「特にない」 とし、 「震災で津波を受けた施設」 「安全性は心配している」 と語った。 また、東松島市の渥美巌市長は 「UPZ自治体(女川原発から半径30キロ圏内の緊急時防護措置準備区域の自治体)として注視してまいります」 などとコメントした。 原発安全性、女川町長が国に説明求める 2019.11.27 21:42 https://www.sankei.com/life/news/191127/lif1911270042-n1.html 東北電力女川原発2号機が原子力規制委員会の審査に事実上合格したことを受け、女川町の須田善明町長は 「意見公募などの手続きがまだある」 「再稼働へ一歩進んだというより、始まりだ」 と話した。 原発の必要性は認めつつ、地元同意には 「安全性について国から地域住民にしっかり説明することが必要だ」 とした。 一方、東北電力の原田宏哉社長は 「再稼働には地域の理解が何よりも重要」 「施設見学会などを重ね、1人でも多くの方に理解してもらえるよう努める」 とのコメントを出した。 被災原発厳しい審査 女川2号機「合格」に6年 津波対策「丁寧に見た」 2019.11.27 23:10 https://www.sankei.com/life/news/191127/lif1911270047-n1.html 再稼働に向け、原子力規制委員会から2019年11月27日、事実上、合格とされた東北電力女川原発2号機(宮城県)。 東日本大震災の震源地から最も近い原発ながら、震度6弱の揺れと高さ13メートルの津波に耐えた一方、審査期間は申請以来、6年近くに及び、これまでに合格した原発では最長。 審査会合も最多の176回に上った。 専門家は 「被災原発だとしても審査が長過ぎる」 と懸念の声を上げる。 「震災の影響を受けたプラントだったため、議論を重ね(互いの)共通理解を得るのに時間がかかった」。 合格証に当たる審査書案を規制委が了承した後の定例記者会見で、更田豊志(ふけた・とよし)委員長は審査が長期化した理由に 「被災原発」 という他原発との違いを挙げた。 女川原発は過去の明確な津波データがない中で、869年の貞観地震などを参考に14.8メートルの高台に建設された。 そうした慎重な対策が功を奏し、震災では東京電力福島第1原発(福島県)のような浸水による全電源喪失を回避した。 だが、更田氏は 「『よく耐えた』という表現が相応しいと思えない」 と厳しい目を向け、津波や地震の対策は 「特に丁寧に見た」 「保守的(安全寄り)な設定をした」 と明かす。 被災原発固有の議論にも時間が割かれ、2号機原子炉建屋の被害調査を実施。 コンクリート壁に幅1ミリ未満のひび割れ1130カ所が確認され、ひびが地震によるものなのか、耐震設計上どう影響するのか、などが検討された。 そのほか、東北電が示した施設の耐震性や防潮堤の設計内容や、設計の前提となる地震の揺れの強さや津波高の想定値について、審査側が妥当性に疑念を示すケースも相次いだ。 規制委に提出した審査申請書は修正が繰り返され、当初の約1400ページから最終的に1万ページ近くまで増えた。 「事例の性格から(審査に要した時間は)概ね妥当だ」 と更田氏。 ただ、東京大大学院の岡本孝司教授(原子力工学)は 「世界ではリスクが許容範囲に抑えられているかどうかで安全性を判断するが、規制委はリスクよりも法令に合っているかどうかを見ている」 「それで事業者と意見の相違が生じ、審査に時間がかかるのではないか」 「行き過ぎであり、世界標準とは異なる」 と指摘している。 女川2号機「合格」 沸騰水型再稼働1例目の可能性 2019.11.27 23:26 https://www.sankei.com/life/news/191127/lif1911270048-n1.html 電力業界は2019年11月27日、東北電力女川原発2号機が再稼働審査に事実上合格したことを 「大きな一歩だ」(大手幹部) と歓迎した。 東日本大震災以降、再稼働したのは加圧水型軽水炉(PWR)の9基のみで、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)は再稼働に至っていない。 女川2号はBWRの再稼働1例目になる可能性が高く、原発再稼働の弾みに繋がるのか注目される。 政府は昨年2018年7月に閣議決定した 「第5次エネルギー基本計画」 で、令和12(2030)年度の電源構成に占める原発の比率を20〜22%にする目標を盛り込み、原発を 「重要なベースロード電源」 と位置付けた。 目標達成には約30基の原発稼働が必要とされるが、新規制基準の下で再稼働できたのはPWRの9基だけ。 BWRの再稼働が進まなければ、電源構成目標は 「絵に描いた餅」(大手電力幹部) となる。 既にBWRでは東電柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)が審査合格している。 だが、柏崎刈羽は新潟県が、原発事故に関する3つの検証の結果が示されない限り、再稼働の議論を始めることはできないとし、3年はかかるとされる。 東海第2は、人口の多い水戸市などの避難計画立案が厳しく、再稼働の目処は立っていない。 それに対し、女川2号では、再稼働の地元同意は比較的取り付けやすいとされ、令和2年度中の安全対策工事完了後、早ければ3年度中の再稼働も見込まれている。 大手電力の首脳は 「原発の信頼回復には、安全に、安定的に稼働することが一番」 「PWRに加え、BWRの信頼回復で全体の再稼働が加速する」 と話す。 ただ、電力業界への逆風は強まっている。 規制委はテロ対策施設が未完成の場合、運転中でも停止を求める方針。 九州電力は川内1、2号機(鹿児島県)が来年3月以降、停止となる。 関西電力役員の金品受領問題も影を落とす。 業界が期待するように原発再稼働を進めるには、極めて厳しい情勢だ。 女川2号機、月内にも規制委審査合格へ 再稼働は20年度以降 2019.11.14 05:00 https://www.sankeibiz.jp/business/news/191114/bsc1911140500008-n1.htm 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)が再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査で、早ければ2019年11月月内にも事実上、合格する見通しとなった。 規制委の事務方らが、これまでの審査で妥当と確認した女川2号機の安全対策全般をまとめた 「審査書案」 について、更田豊志委員長が2019年11月13日の記者会見で 「順調にいけば2〜3週間で示せる」 と述べた。 審査は2013年12月に申請され、約6年かけてほぼ終了となる。 審査書案が規制委の委員5人の定例会合で了承されれば事実上の合格となる。 その後、意見公募(パブリックコメント)などを経て、数カ月先とみられる定例会合で了承されれば正式合格する。 実際の再稼働は、安全対策工事を終える予定の2020年度より後になる見通し。 工事費は当初の想定を超える3400億円程度を見込む。 正式合格すれば、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型で4基目。 更田氏は会見で、事務方による審査書案の作成に関し 「月が変わる辺りを目指して作業している」 「最終的なチェックを含め、慎重に進めている」 とも述べた。 女川2号機は、東日本大震災で被災した原発としては初めて審査を申請。 審査では、原子炉建屋の壁にできたひびの対策など被災原発に特有の影響も焦点になった。 東北電は、女川1号機の廃炉を既に決定。 3号機は再稼働を目指しているが、審査の申請時期を明らかにしていない。 【用語解説】女川原発 宮城県女川町と石巻市に立つ東北電力の原発。 全3基が沸騰水型軽水炉。 出力は1号機が52万4000キロワット、2、3号機が各82万5000キロワットで、それぞれ1984年、1995年、2002年に営業運転を開始した。 東日本大震災では全3基が自動停止し、津波の影響で2号機原子炉建屋地下が浸水するなどの被害が出た。 追加の安全対策として防潮堤(海からの高さ約29メートル)などを工事中。 1号機は廃炉が決まり、費用は約419億円の見込みで、53年度の廃炉完了を目指す。 東北電力・女川原子力発電所 2014年9月 正論2014年11月号 東日本大震災から3年半の時が過ぎた。 あの国内観測史上最大の巨大地震(マグニチュード9.0)と1000年に1度の巨大津波の猛威に対し、東京電力福島第1原子力発電所と同程度、あるいはそれ以上に厳しい条件に置かれたにもかかわらず、危機を乗り越えた原発がある。 宮城県女川町の東北電力女川原子力発電所だ。 襲来した高さ13bの津波をものともせず、比較的軽微な損傷を受けただけだった。 しかも津波で被災した近隣の住民を受け入れて食事や生活の場を提供している。最多の時点で364人を数えた地元の人々が約3カ月、発電所の体育館で避難生活を送ったのだ。 未曾有の大震災にも負けなかった女川原子力発電所の存在は、国内にとどまらず広く世界に知られて然るべきだろう。 ■半島や敷地も沈降した 2011年3月11日の津波禍で約1万人の町民の1割近い人々が亡くなった女川町を経由して牡鹿半島の海岸沿いの道路を発電所に向かった。 車中から見かけた小さな漁港の防波堤の上端部分だけが不思議に白い色をしている。 「半島全体が地震で1b沈降した結果です」。 東北電力東京副支社長の佐藤信康さんが教えてくれた。 防波堤は沈んだ深さ分だけコンクリートを積み増して元の高さにしたので上端の色が幅1bだけ新しいのだ。 3年半前の2011年3月11日午後3時前、東北地方太平洋沖地震が発生した。 女川原発は、1、3号機が通常運転中で、2号機が定期検査の終了に向けて原子炉の起動を進めていたところだった。 宮城県内の最高震度は7に達したが、発電所では6弱。揺れを感じて3基とも自動停止した。 実は、この巨大地震の震源から最短の場所にあった原発が女川原子力発電所だったのだ。 地震発生から43分後に、高さ13bの津波がやってきた。 本来の発電所の敷地は海抜14.8bの高さだった。 半島全体の沈降で、13.8bになっていたのだが、津波より80センチ高かったので海水の侵入を許さなかったのだ。 東京電力福島第1原発の場合には、1〜4号機の主要建屋部分の敷地高さが10bだったので、非常用ディーゼル発電機が水没し、建屋の海側に設置されていた海水ポンプも破壊された。 女川原発の場合は、海水ポンプの設置に工夫があった。 海面からの高さが増すと水をくみ上げにくくなるのだが、ピットという窪みを形成して、そこにポンプを設置することで、くみ上げ能力と津波に対する防備を両立させていたのだった。 海水ポンプは、原子炉や非常用ディーゼル発電機などの除熱冷却用に使われる重要機器だ。 「家庭用クーラーに例えると室外機に相当するのが海水ポンプ」 「これが壊れると室内が冷やせなくなってしまいます」 と所長代理の渡邉義寛さんが説明してくれた。 ■敷地高さと海水ポンプ 敷地の高さなどにには、昔から津波を体験してきた三陸の知恵が生かされているようだ。 女川原発1号機の計画当時、推定されていた津波の高さは3bだったにもかかわらず、敷地高さは14.8bになったのだ。 発電所長の八重樫武良さんによると、この決定には、昭和43年(1968年)からの学識経験者を交えた社内委員会の意見が反映されているという。 東北電力は2013年12月、原子力規制委員会に女川原発2号機の安全審査を申請しているという。 女川原発は3基とも沸騰水型だ。 女川原発2号機は1号機より30万kw大きい82.5万kwで、3号機と同出力。 この2号機の海水ポンプピットを見せてもらった。 深さは12bで、縦横は33bと21bという大きさだ。 そこに常用の海水ポンプ3台と非常用の5台が置かれている。 常用と非常用は壁で仕切られ、その間の扉は水密化されている。 下方が透けて見えるグレーチングの階段を通ってピットの底へと降りた。 空中回廊を行く感覚だ。 高所恐怖症の人なら怖い思いをするだろう。 ピットの下には海水を貯える地下水槽が位置している。 津波の引き波で海面が下がり、取水口が空中に出た場合でも5100トンの海水を保てる構造だ。 5台の非常用ポンプがフル出力で機器の除熱冷却に海水をくみ上げても40分間は持ち堪える。 一般に次の津波の寄せ波は30分後にはやってくる。 2011年3月11日の巨大津波の引き波では海面が3分間程度、取水口の水位を下回ったが、もちろん問題は生じなかった。 ■進む巨大防潮堤の工事 女川原発では、2011年3月11日東日本大震災後の緊急対策で防潮堤を3b嵩上げする工事を済ませたが、現在はこれをさらに高くする大規模工事を進めている。 「敷地高さ13.8b」には既に3bの嵩上げがあるのだが、ここに直径2.5bの鋼管を垂直に並べ、上端が海抜29bとなる「鋼管式鉛直壁」を築く。鋼管は地下の岩盤まで到達する構造だ。 2016年3月までに長さ680bの鉛直壁と、セメント改良土で造る堤防を合せて計800bにおよぶ防潮堤が発電所の海側に出現する。 2014年9月から上部鋼管の配列に取りかかるということで、現場ではその準備に人と機械が動いていた。 ■耐震の強化にも先見性 女川原発が地震と津波に耐えた背景には、耐震工事の先行があったことも見逃せない。 東日本大震災前までに原発内の配管や機器の固定強化などの対策が実施されていた。3基で計6600カ所に上る。 発電所の事務本館も東日本大震災前年の2010年3月に、建物に筋交いを付ける補強工事を終えていたので被害を免れた。 東日本大震災時に建設中だった免震構造の事務新館も2011年8月に完成している。 発電所内を案内してもらうと海抜52bの高台に小工場を思わせる大容量電源装置があった。 外部電源が途絶しても3基の原発を冷温停止に導くのに十分な能力を備えているということだ。 同60bの場所では、電源車をはじめ、代替注水車や大容量送水車などを見かけた。 注水車は原子炉に直接注水でき、送水車は海水ポンプの代役を務める能力を持っている。 東北電力は女川原発の基準地震動を従来の580ガルから1000ガルに引き上げて安全対策を実施中だ。巨大津波の直撃に耐えた原発の安全性がさらに増す。 【参考】 東日本大震災時に女川原発で実際に計測された基準地震動の値は607ガルだった。 これは従来の想定580ガルより高い基準地震動だった。 それでも女川原発は耐えた。 【参考:2016年4月の熊本地震】 <東大大学院の岡本孝司教授は、 「家屋やビルというものは、岩盤に積もった堆積土の上に建てられる」 「が、川内原発はその堆積土を掘り返して、岩盤の上に直接建てられている」 「揺れが遥かに小さくなるからです」> ■女川1号機/発生した事象 2011年3月11日 14:46 地震の発生(震度6弱)、地震発生前は運転中、原子炉自動停止 14:47 全制御棒挿入確認、非常用ディーゼル発電機自動起動、循環水ポンプ、復水ポンプ、原子炉給水ポンプなど自動停止 14:55 起動用変圧器停止、タービン補機冷却海水ポンプなど自動停止 14:57 火報発報 14:59 原子炉隔離時冷却系(RCIC)手動起動 15:00〜01残留熱除去系(RHR)ポンプ手動起動→圧力抑制プール冷却運転開始 15:05 原子炉未臨界確認 15:29 津波の襲来、冷却用海水ポンプに異常なし 17:10頃 逃がし安全弁による原子炉減圧操作開始 18:29 原子炉隔離時冷却系(RCIC)ポンプ自動停止 19:30頃 燃料プール冷却浄化(FPC)ポンプA手動起動(燃料プール冷却) 20:20 制御棒駆動機構(CRD)ポンプA手動起動(原子炉への給水) 21:56 RHRポンプA手動停止(原子炉停止時冷却系(SHC)準備のため) 23:46 RHRポンプA手動起動(SHCモード) 2011年3月12日 00:58 原子炉が冷温停止状態に移行 ■女川2号機/発生した事象 2011年3月11日 14:00 制御棒引き抜き開始(定期検査中で地震発生直前に起動) 14:46 地震の発生(震度6弱)、原子炉自動停止 14:47 全制御棒挿入確認、非常用ディーゼル発電機3台自動起動、燃料プール冷却浄化系(FPC)ポンプ自動停止 14:49 原子炉モードスイッチ「起動」→停止(原子炉冷温停止状態) 15:29 津波の襲来 15:34 原子炉補機冷却系(RCW)ポンプ自動停止 15:35 非常用ディーゼル発電機1台自動停止(RCWポンプ停止による) 15:41 高圧炉心スプレイ補機冷却水系(HPCW)ポンプ自動停止(ポンプ浸水による) 16:35 別の非常用ディーゼル発電機1台自動停止(HPCWポンプ停止による) 20:29 FPCポンプ手動起動(燃料プール冷却) 2011年3月12日 12:12 残留熱除去系(RHR)ポンプ手動起動→冷温停止維持 ■女川3号機/発生した事象 2011年3月11日 14:46 地震の発生(震度6弱)、地震発生前は運転中、原子炉自動停止 14:47 全制御棒挿入 14:57 原子炉未臨界確認 15:22 タービン補機冷却海水ポンプ自動停止(ポンプ浸水による) 15:23 循環水ポンプ自動停止 15:26 原子炉隔離時冷却系(RCIC)手動起動(原子炉への給水) 15:28 原子炉補機冷却海水系(RSW)ポンプ手動起動→圧力抑制プール冷却運転 15:29 津波の襲来 15:30 原子炉補機冷却系(RCW)ポンプ手動起動→圧力抑制プール冷却運転 16:40頃 逃がし安全弁による原子炉減圧操作開始、RCIC自動停止 16:57 RCIC手動起動(原子炉への給水) 21:45 RCIC自動停止 21:54 復水補給水系(MUWC)による原子炉注水 23:51 残留熱除去系(RHR)ポンプ手動起動(原子炉停止時冷却系モード) 2011年3月12日 01:17 原子炉が冷温停止状態に移行 2011年各原発を襲った地震の規模 @震度(観測市町村)A観測記録最大加速度(基礎版上)B基準地震動(Ss)との対比 (A)福島第一:@6強(大熊町、双葉町)A550ガル(2号機東西方向)B一部の周期帯でSsを上回る (B)福島第二:@6強(楢葉町、富岡町)A305ガル(1号機上下方向)BSs以下 (C)女川原発:@6弱(女川町)A607ガル(2号機南北方向)B一部の周期帯でSsを上回る(3/11本震、4/7余震) (D)東海第二原発:@6弱(東海村)A225ガル(東西方向)B一部の周期帯でSsを上回る 太平洋側にある原子力発電所の中でも特に地震による影響の大きかった福島第一、福島第二、女川、東海第二の各原発を襲った揺れの大きさを見ると、震央からの距離を見ると、震源に最も近いのは事故が起こった福島第一原発ではなく女川原発であった事が分かります。 福島第一原発は2番目で、次いで福島第二原発、東海第二原発の順となっています。 震度で見ると、福島第一原発と福島第二原発は6強、女川原発と東海第二原発では6弱を記録しています(それぞれ市町村で観測)。 加速度は、人間や建物にかかる瞬間的な力の事で、1ガルは、1秒に1pの割合で速度が増す事を示しています。 加速度が大きければ大きいほど、建物などへの衝撃は大きくなります。 最大加速度が最も大きかったのは女川原発の607ガルでこちらも550ガルを記録した福島第一原発を上回っています。 続いて、各原発の基準値振動(Ss)と実際の揺れを比較してみましょう。 Ssとは原発の設計の前提となる地震の揺れの事で、言わばその場所で想定していた最大限の地震という事です。 原発はSsクラスの地震が起こっても安全を保つよう設計される事になっていますが、福島第一原発と女川原発、更に東海第二原発では一部の周期帯でこのSsを上回りました。 当初の設計で想定した以上の地震が起こったという事になります。 特に女川原発では、2011年3月11日の本震に加え、2011年4月7日の余震でも、Ssを上回る揺れを記録しました。 このように、地震の規模を見る限り、福島第一原発だけが大きな地震に見舞われたという訳ではなく、女川原発も非常に危ない状況に置かれていた事が分かります。 それなのに、なぜ女川原発は生き残り、福島第一原発だけが事故を起こしてしまったのでしょうか。 今回は、福島第一原発に限らず、外部電源が地震に極めて弱い事が浮き彫りになりました。 福島第二原発、女川原発の各1回線を残し、他の全ての外部電源系統を地震で喪失しています。 これは重大な課題の1つです。 外部交流電源を喪失した際に、バックアップの役割を果たすのが非常用ディーゼル発電機(交流)です。 ところが、福島第一原発では、6号機の1台を除き、全ての非常用発電機が津波によって同時に失われました。 たった1つ生き残った6号機の非常用発電機は、海抜13.2mに設置されていた空冷式の装置でした。 高い所に置かれていた事と、空冷式だった事が幸いし、津波の被害を免れたのです。 この非常用発電機が設計通りに自動起動して5号機にも電気を融通し、5号機と6号機は最終的に原子炉を冷温停止に移行する事に成功しました。 福島第二、女川、東海第二の各原発は、外部交流電源、非常用発電機のいずれか1台(1系統)が生き残って機能したため、冷温停止に移行する事ができました。 このように、外部交流電源、非常用発電機のうち、1つでも残ったかどうかが、過酷事故と冷温停止の 「分岐点」 となったと言えます。 交流電源(外部電源、非常用発電機)を喪失した場合に、次に 「命綱」 となるのが、直流電源(バッテリー)です。 福島第一原発1・2・4号機は、津波によって直流電源も全て喪失しましたが、3号機には全2機が残っていました。 しかし、この3号機の直流電源も、交流電源が復旧する前に枯渇してしまいした。 また、交流電源喪失の際、直流電源と同様に頼りになるはずの電源車は、地震翌日の2011年3月12日朝までに計24台が到着したものの、接続先の電源盤の大半が津波で水没していたため、接続は難航を極めました。 福島第1原発から北へ100km以上離れた宮城県の女川原発は、強い地震動によって、福島原発に並ぶ甚大な被害を受けました。 変電所及び開閉所(中継基地)の系統事故のため、5回線あった外部電源のうち4回線が停止し、さらに女川原発敷地内でも1号機に通じる起動変圧器が停止しました。 福島第1だけでなく、女川原発1号機でも外部電源を全て喪失する深刻な事態に陥っていたのです。 それでも、他の原子炉と同様に、緊急停止(スクラム)は無事に行われ、非常用ディーゼル発電機が自動起動しました。 その後に常用の電源盤で火災が発生する事態になりましたが、非常用電源は維持され、すぐに事故対応マニュアルに沿って原子炉隔離時冷却系(RCIC)を手動起動し、原子炉への給水が確保され、手動で「主蒸気隔離弁(MSIV)」を閉鎖しています。 2011年3月11日15時5分(津波襲来前)には原子炉が未臨界である事も確認されました。 15時29分には津波も襲来しましたが、海水による冷却用ポンプに異常はなく、冷却を続ける一方、「逃がし安全弁(SRV)」を開いて、原子炉内の蒸気を圧力抑制プールに逃がす減圧作業を続けました。 その結果、日付が変わった2011年3月12日0時58分に冷温停止状態への移行に成功しました。 女川原発2号機は、定期検査中で、地震発生直前の2011年3月11日14時に制御棒を引き抜いたばかりというタイミングでした。 起動直後で未臨界であり、水温も100℃以下だったため、原子炉のモードスイッチを停止させる事で津波襲来前の地震発生から3分後の2011年3月11日14時49分に冷温停止状態になりました。 津波により冷却用のポンプが一部停止しましたが、1系統が残り、冷温停止を維持できたのです。 女川原発3号機は、同1号機とほぼ同様の経過をたどって2011年3月12日1時17分に冷温停止に移行しました。 このように電源確保と冷却源確保が重要な事が分かります。
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