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日銀の利上げ見送りは本当か
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2024年12月17日 植草一秀の『知られざる真実』
財政政策、金融政策に関する議論が混乱している。
百家争鳴の状況。
妥当性のない主張が展開されている。
経済政策について常に正鵠を射る提言を続けてきた立場から一石を投じる。
財政政策、金融政策の論点を以下に示す。
財政政策では以下の三つの論点を提示する。
1.財政赤字を拡大する景気刺激策を実行する財政余力があるのか。
2.財政運営の最大の課題がどこにあるか。
3.税制の改変について何を優先するべきだ。
金融政策では以下の三点を提示する。
1.日銀の金利引き上げ政策が正当化されるのか。
2.金融政策は為替変動に注意を払うべきか。
3.金融政策決定の制度面に改善すべき問題があるか。
以上の六点に関する考察の回答を先に示す。
財政政策の1
日本政府のバランスシートは巨額の資産超過であり、日本財政には十分な余力があるから財政赤字を拡大させる景気支持策を発動する余地はある。
財政政策の2
日本財政の最大の問題は支出の内容。
財政支出に無駄な利権支出が多すぎる。
財政支出の内容を全面的に組み替えることが必要。
財政政策の3
税制の改変では過去35年間の税収変動を踏まえて歪みを是正することが最重要。
敗戦後日本の課税の基本は「能力に応じた課税」である。
この「応能負担」原理が著しく歪められている。
最重要の施策は消費税減税・廃止である。
金融政策の1
2023年に日本で4%インフレが発生した。
日銀が目標に掲げたのは2%インフレであり、これをはるかに上回った。
したがって、日銀の政策は「インフレ抑止」を基軸にする必要がある。
この視点からの金利引き上げは正当化される。
「金利引き上げ阻止=インフレ推進」の主張は間違っている。
この主張も「ザイム真理教」の教義の一つである点を認識しなければならない。
金融政策の2
日本円暴落は円の価値喪失。
日銀の責務は「物価安定」だが、これを言い換えれば「通貨価値の維持」である。
日本円暴落を回避する、あるいは是正することは金融政策運営上の重要テーマである。
金融政策の3
金融政策運営上の最大の問題は政治の金融政策運営への介入が制度的に確保されてしまっていること。
日銀の政策決定にかかわる9名のメンバー全員が政治任用である。
このため、内閣が意図すれば金融政策運営を内閣が支配できてしまう。
中央銀行の政策運営は政治の圧力から切り離すべきで、現在の政治任用制度を変える必要がある。
目先の論点について記述する。
12月19日の政策決定会合で日銀が追加利上げを決定するかに市場の関心が集中している。
日銀が利上げを見送り、円安が加速する場合に、政策運営が混乱する。
次回会合は米国のトランプ大統領就任直後になるため、日銀の利上げ環境が整うか不透明である。
現時点では日本の株価水準が高い一方、ドル円が円安傾向を強めており、ドル円が円安方向に急激な変化を引き起こすことを回避するために、12月の決定会合で小幅利上げを決定することが、今後の政治スケジュール等を踏まえたときには得策であるとの見方を示すことができる。
金融市場は日銀の利上げ見送り見通しに傾いているが、日銀が19日に利上げを決定する可能性は十分にあり得ることを踏まえておくことが必要と思われる。
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