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見せかけ詐欺減税に騙されるな
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2024年12月11日 植草一秀の『知られざる真実』
基礎控除の額等を引き上げて課税が発生する水準を引き上げること。
いわゆる「103万円の壁引き上げ」が検討されている。
この水準を178万円にまで引き上げると7〜8兆円の税収減になり、その財源を確保する必要があると財務省が主張する。
財務省は歳出拡大を決定する際に常に財源確保を言っているわけではない。
2020年度から23年度の4年間に政府は補正予算で154兆円の財政支出を追加した。
その全額が国債発行で賄われた。
1年あたり39兆円だ。
4年で154兆円の財政支出追加を計上したときには「財源論」が一切論議もされず、減税案が提示されると突然「財源論」が強調される。
財務省は信頼できない。
大蔵省で勤務した経験からこれを断言できる。
税収については次に事実を把握しておくことが必要不可欠。
2020年度の一般会計税収は60.8兆円。
23年度の一般会計税収は72.1兆円。
税収は3年間に11.3兆円増えた。
11.3兆円の「税負担増加=増税」が実現したということ。
課税最低限103万円を178万円に引き上げて生じる税収減は7〜8兆円。
11.3兆円よりも小さい。
知らぬ間に税収が激増したときには何も言わず、制度変更で税収が減るときだけ騒ぐのはおかしい。
20年度から23年度に税収が激増した主因はインフレ。
2023年1月、消費者物価上昇率は前年同月比4.3%を記録。
日銀は消費者物価上昇率を2%に引き上げるとしてきたが黒田日銀の10年間で実現できなかった。
金融政策運営についての知見が不足していた。
最後の最後にいきなり4%インフレになってしまったのはコロナ融資の副作用だった。
2%インフレが目標なのに4%インフレが発生してしまった。
本来は早期にインフレ抑止に軸足を移さねばならなかったが黒田東彦氏は最後までインフレ推進の旗を振った。
背後にあるのは財務省がインフレを渇望しているという事実。
インフレは財務省にとっての福音。
インフレ分だけ借金の重みが減る。
インフレに連動して税収が増える。
これが背景で財務省は日銀にOBを送り込み、インフレ誘導をやらせてきた。
日銀のインフレ誘導政策に賛同するのは「ザイム真理教」に洗脳されている証し。
20年から23年のインフレ亢進で一般会計税収は11.3兆円も増大した。
これを「ステルス増税」と呼ぶ。
減税政策が検討されるべきことは当然。
ただし、何をするべきかを検討しなければならない。
いま進んでいるのは、基礎控除等をわずかに引き上げるとともに「106万円の壁」を取り払うというもの。
「106万円の壁」とは
「従業員51人以上の企業で、週20時間以上働き、年収106万円以上の賃金を受け取る学生以外の労働者に社会保険料負担が発生する境界のこと。
この水準に達すると社会保険料負担が発生して手取り収入が激減する。
そこで、この水準に到達しないように労働を控える行動が取られるとされる。
政府は従業員51人以上の企業で働く学生以外の労働者すべてに社会保険加入を義務付けようとしている。
手取りが減る分については、2年間は政府が負担を肩代わりし、2年経過後は企業に負担をさせるとの方針を示している。
こうなると企業の負担が激増する。
企業負担を含めた税及び社会保険料負担は大幅に軽減されない。
また、20時間の基準は残存するから労働者が20時間の壁を意識して労働するようになると考えられる。
人手不足は解消しない可能性が高い。
「大型減税」とは程遠い「いかさま・詐欺的減税」が検討されているということになる。
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