<■1003行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 「スパイ防止法なくても対処を」中国人監視問題でウイグル協会が会見 宮城県警の送検受け 2024/12/7 13:30 https://www.sankei.com/article/20241207-SMK3Y5J3JVF3PA4Q253BUXU54M/ 日本ウイグル協会は2024年12月5日、協会の講演に虚偽の名前で申し込んだ中国人男性が2024年11月に書類送検されたことを受け、東京都内で記者会見した。 レテプ・アフメット会長は 「街頭活動や証言集会、パネル展など日本全国どこで行っても、中国人らしい人が盗撮してくる」 「(送検した)宮城県警のように対処して、日本で好き勝手にウイグル人を監視し、言論弾圧することは許さないというメッセージを発することが大事だ」 と訴えた。 同県警は2024年11月20日、仙台市青葉区に住む中国籍の大学院生の男性を私電磁的記録不正作出・供用の疑いで書類送検した。 中国人男性は令和3年6月頃と令和4年1月頃に協会のサイトから、虚偽の日本人名で講演の出席を申し込むなどした疑いが持たれている。 2024年12月5日の会見では、令和3年6月〜今年令和6年7月まで協会のイベントで確認された不審者の情報が、写真と共に紹介された。 アフメット氏によれば、こうした不審者が送検されたのは同県警が初めてで、 「我々にとって画期的な出来事だ」 「スパイ防止法がなくても、既存の法律で対処できる証だ」 と述べた。 デリシャト・アブデラハマン理事は 「中国の警察に妻の父が昨年2023年1月に捕まったが、 『子供に言ってください』 『私たちに連絡して情報を提供すれば、あなたたちの安全を守ることができる』 と言われた」 と振り返った。 協会を支援する神奈川県逗子市の丸山治章市議も会見で、同県大和市で2024年12月7日に予定するウイグル証言集会の開催会場に、在日中国大使館からイベント内容を問い合わせる電話があったことを明かした。 丸山氏は 「中国の政府は自国民を管理するシステムを国境を越えて日本でも行おうとしている」 「主権を犯していると言わざるを得ない」 と批判した。偽名でウイグル講演侵入の中国人院生、宮城県警が送検 相次ぐ不審な撮影、当局関与指摘も 2024/11/21 17:10 https://www.sankei.com/article/20241121-3XJJYY55VRDCBHGYS6JVHXGARA/ 宮城県警は2024年11月20日、仙台市青葉区に住む中国籍の大学院生の男性を私電磁的記録不正作出・供用の疑いで書類送検した。 令和3年6月頃、令和4年1月頃に日本ウイグル協会のサイトから協会主催の講演会に虚偽の日本人名で申し込むなどした疑い。 協会の講演会を巡っては、中国語を話す人物が撮影して回るケースが相次いで確認されており、協会は 「現地の中国当局の指示」 と見て人権活動に関わる在日ウイグル人の情報が中国当局に渡ることに危機感を強めていた。 ■ウイグル決議が影響か 県警によれば、大学院生は当時市内の大学の学生で、講演に出席した理由は 「ゼミのため」、 日本人名をかたった理由は 「中国名は警戒されるから」 と供述しているという。 県警は大学院生の背後関係について慎重に捜査する構え。 協会によると大学院生は令和3年6月に茨城県日立市で開いた講演会に、令和4年1月には東京都港区の笹川記念館でジャーナリストの櫻井よしこ氏を招いた講演会にそれぞれ参加したといい、偽名での出席には気付かなかったという。 当時、国会では超党派議連などが中国当局による新疆ウイグル自治区での人権侵害状況を非難する国会決議の採択を目指しており、協会は 「人権決議をやめさせるための情報収集の一環ではないか」 と指摘する。 ■メールで「バイト」募る 協会に関するウイグル人会合は令和5年12月頃まで不審な人物による撮影が半ば常態化していた。 例えば、令和5年7月に神奈川県逗子市で開かれたウイグル人証言集会。 会合に先立って報酬付きで集会の撮影者を募集するメールが在日中国人に出回った。 @参加人数 A配布資料の部数 B講演者数 C自治区出身者数 などの情報を求める内容。 送り主の男性が中国から出席する予定だったが、悪天候のため飛行機が飛ばなかったため代理を募ったという。 実際、集会には日本人名を名乗る男女が会場内を撮影して回り、外に出ると中国語を話し出し、警察が警戒を強めたという。 その後、同県大和市で街頭活動を行った際、ウイグル人を撮影している不審な人物に協会関係者が尋ねると、 「メールを受け取ったアルバイトだ」 と認めたという。 ■「日本でやりたい放題だった」 なぜ、こうした情報を集めるのか─。 主催した丸山治章・逗子市議は 「中国当局に送られていることは想像に難くない」 「中国国内と同じく、在日ウイグル人の活動を監視しようとしているのだろう」 「放置するのは危険だ」 と指摘する。 自治区のウイグル人 「強制収容所」 などの実態を国際世論の後押しを通じて改善を目指す協会。 名前や顔を公表して活動するのは少数に過ぎず、多くは名前や顔を隠して活動をサポートする。 自治区で暮らす親族や自身が戻った際に当局による圧力を懸念するためだ。 こうした撮影行為は在日ウイグル人の 「萎縮」 に繋がっている。 顔や名前を隠していた協会関係者は、活動内容が自治区の当局者になぜか把握され、家族が脅され、協会から遠ざかったという。 協会のレテプ・アフメット会長は、 「中国当局はやりたい放題で活動の情報を取っていた」 「人権活動に対する『スパイ』を書類送検したことは非常に意味がある」 「在日中国人が軽い気持ちで加担することが抑止される」 と宮城県警の対応に謝意を示し、 「平穏な日本社会で外国のスパイ行為が暗躍している実態を知って、問題意識を持ってほしい」 と語っている。 ウイグル知識人にノーベル平和賞を 「法を守れ」の声すら封殺する中国 レテプ・アメフット レテプ・アメフット 日本ウイグル協会会長 2024/10/6 8:00 https://www.sankei.com/article/20241006-I4X74O3OPFKGJPA45E7X4YMWJE/ 2024年8月27日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、中国が新疆ウイグル自治区で問題のある多数の法律や政策を依然として導入しているとの見解を示し、中国当局に対し、人権侵害の実態調査を求めた。 2年前の2022年にも中国のウイグル人に対する侵害行為について 「人道に対する罪を含む、国際犯罪の遂行」 に当たる可能性があると報告書で指摘している。 中国当局がウイグル人社会に問題のある多数の法律を導入しているのは事実だが、それらの法律でさえ、警察は無視し、やりたい放題の無法地帯である。 象徴する事例が、獄中のノーベル平和賞候補イリハム・トフティ氏のケースである。 イリハム氏は、北京の中央民族大学の経済学者で、自治法を含む各法律で認められたウイグル人の権利擁護を求める言論活動に身を投じ、 「中国に屈しないウイグル知識人」 として国際的に知られる学者だった。 その訴えが、ウイグル人の権利を無視した統治を続ける当局にとって都合の悪い事実だったため、10年前の2014年9月23日、国家分裂罪で無期懲役判決を受けた。 国連の恣意的拘禁に関する作業部会や米政府、欧州議会などは非難し、即時釈放を求めたが無視されている。 2024年9月には、独房生活でイリハム氏の健康状態が弱っていると周囲に明かしたウイグル人看守が、国家機密を漏らした罪に問われ、懲役7年を受けたと報道された。 イリハム氏は以前、米紙ニューヨーク・タイムズの取材に対し、 「当局から発信をやめるよう強い圧力を受けている」 「『お前を蟻(あり)のように踏み潰す』と脅迫された」 と訴え、 「ウイグル人が受けている不公平な扱いや民族差別が、ウイグル人社会で不満を増大させている」 「このまま放置すると危険」 「だからこそ私が発信することが大事だ」 と語っていた。 彼はウイグル人と漢人の相互理解を唱え 「法を守れ」 と主張したに過ぎない。 彼の勇敢な言論活動は国際的に評価され、2019年に欧州議会の 「サハロフ賞」 を受賞した。 過去には、南アフリカの黒人解放運動指導者、ネルソン・マンデラ氏、ミャンマーの民主化運動指導者、アウンサンスーチー氏らがサハロフ賞を受賞した後、ノーベル平和賞を受けている。 イリハム氏も、2020年以降毎年ノーベル平和賞にノミネートされている。 今週にも発表されるノーベル平和賞を、彼が受賞してほしいと切に願う。 受賞すれば、 「法を守れ」 という言論活動すら無期懲役で封殺する中国にウイグル人の人権擁護を求める明確なメッセージとなり、恐怖政治が支配する隠された 「煙の無い戦場」 で苦しんでいるウイグル人たちに希望を与えるだろう。 レテプ・アメフット 1977年、中国・新疆ウイグル自治区生まれ。東大院修士修了。日本国籍。 不信を決定付けたウルムチ事件 正論2024年8月号 日本ウイグル協会会長 アフメット・レテプ 2009年7月5日に発生したウルムチ事件から2024年で15年となる。 世界中のウイグル人はこの事件を 「7・5ウルムチ虐殺」 として毎年追悼し、真相究明と責任追及を訴え、中国への抗議活動を続けている。 この事件を境に、ウイグル人と中国人や政府の相互不信が決定的なものとなり、ほとんどのウイグル人が中国人との共存など到底無理だと考えるようになった。 一方の中国政府もウイグル人を 「国家の敵」 と見做し、その独自のアイデンティティを恐怖政治によって徹底的に破壊する方向へ大きく舵を切った。 結果、欧州議会を含む世界11議会でジェノサイド(集団殺害、大量虐殺)と認定、国連も人道に対する罪で警告するまでに至った。 ■引き金となった韶関(しょうかん)事件 2009年5月21日、東トルキスタン南部の町、カシュガルのコナ・シェヘル県(中国語表記、疏附県 (そふ-けん))から819人のウイグルの若者が、中国政府が一大プロジェクトとして強行する所謂 「余剰な労働力の東部移送プロジェクト」 の一環で、5000km離れた広東省韶関市の工場に移送された。 1カ月後の2009年6月26日深夜、(「ウイグル族による漢族女性暴行事件が相次ぐ」とのデマをきっかけに)凶器を持った数千人の中国人がウイグル人らの寮に襲い掛かり、政府発表で死者2人、負傷者約120人を出す事件が起きた。 現場にいたウイグル人らは約20人が死亡し、負傷者も政府発表より数倍多いと証言している。 これが、ウルムチ事件の引き金となった韶関(しょうかん)事件だ。 必死で逃げまくるウイグル人と、四方八方から凶器で襲い掛かる中国人、そして周りで撮影しながらウイグル人の皆殺しを叫んでお祭り気分の大勢の中国人の姿を映した動画がネットにアップされ、ウイグル人社会に大きな衝撃が走った。 動画では、血まみれに倒れ、抵抗することも逃げることも出来ない状態の複数のウイグル人を大勢の中国人が楽し気に蹴る、斧で叩き斬る、放尿する姿さえあった。 当時、千葉県に住んでいた私は、その動画を見て全身が激しく震えた。 人間同士がどうやったらあのような残酷極まりない性格になるのだろうかと、頭が真っ白になり、経験したことのない憎しみと無力さに苛まれたことを今でも鮮明に覚えている。 ■充満する3つの不満 当時、ウイグル人社会には、死活問題として人々が極度の不満を抱いていた問題が3つ存在していた。 (1)ウイグル語での学校教育の廃止 2002年から、大学の授業を中国語に切り替える政策が始まり、2009年には保育園にまで広がった。 独自文化が継承されるためのルーツを断ち切る狙いがある政策として強い反発はあったが、それを不満として漏らす者には皆決まって 「3つの悪(テロリスト、分離主義、過激主義)に感染した危険分子」 とのレッテルが貼られ容赦なく処罰されていった。 ウイグル語も、ウイグルの文化も全く知らない大量の中国人が続々と学校の教壇に立ち、 「中国語で授業が出来ない」 との理由でウイグル人教員らが大量に職を失うことになった。 (2)カシュガル旧市街地の取り壊し 北京オリンピックが閉幕した2008年8月24日、中国当局はカシュガル旧市街地を取り壊すと通告した。 約6万世帯のうち、50世帯分の住居だけは壊さずに保存するが、それ以外は全て取り壊し、住民を郊外の集合住宅に移住させるという計画だった。 私も大学時代をカシュガルで過ごしたが、カシュガルは、ウイグル人にとって悠久の歴史を持つ古都であり、日本人にとっての京都と同じ存在だった。 旧市街地は、ウイグルの歴史・伝統・文化の全てが凝縮された博物館であり、ウイグルの誇りそのものだった。 中国に言わせれば、古臭い街並みを高層ビルやテーマパークに変えてやるのだから感謝しなさいという理屈だったが、ウイグル人からすれば、ウイグルの歴史や文化が跡形もなく消し去られる結果をもたらすことは火を見るよりも明らかだった。 反発する者は前述した危険分子のレッテル貼りで処罰され、重要文化財に指定された歴史的建造物も含めて取り壊しが強行された。 2009年6月、1300年の歴史を持ち、 「カシュガル皇族神学校」 として当時大学の役割を果たした建物が跡形もなく取り壊され、多くのウイグル人が落胆し悲しんだ。 取り壊された時、中国政府による 「1級文化財」 の看板が建物の玄関に掛けられたままだった。 (3)若者の強制連行と強制労働 2001年、中国は世界貿易機関(WTO)の加盟国として安い中国製品を世界市場で自由に売れるようになった。 4年後の2005年、 「余剰な労働力の東部移送プロジェクト」 がウイグル人社会に突き付けられた。 カシュガル、ホータン、アクスなどウイグル人密集地から、16歳から25歳の未婚のウイグル人女性を、中国沿岸部の複数の都市の工場へ移送するというもので、第11次5カ年計画(2006-2010年)の間、計40万人を目標にするという内容だった。 毎日のように中国各地から政府支援を受けた大量の中国人が入植し職を得ている一方で、地元のウイグル人らを意図的に就職の機会から排除し、 「余剰な労働力」 との名目で家族から引き離し、言葉も文化も異なる5000kmも離れた中国沿岸部へ集団で移送する、行きも帰りも本人の意思とは無関係に密室(政府と移送先企業間)で決まってしまう。 しかも、ウイグルの未来の母となる未婚の若い女性をターゲットにしていることから強い反発が起き、親たちは娘の移送を拒否した。 「職を与えて経済的に助ける」 という政府の説得は不発に終わり、これを受けて、僅かな割合で男性にも枠を広げ 「各戸から5年以内に最低1人を」 とのスローガンが掲げられ、実質的なノルマ制が取られた。 応じない場合は農地の没収等の罰則も設けられた。 参加を拒否した女性の兄弟や父親が逮捕された事例や、移送先の工場から逃げ出して帰って来た女性に地元政府が罰金刑を科した事例等が断続的に伝えられた。 受け入れ先の企業には30万・人民元(約650万円)の補助金制度まで登場した。 低賃金で長時間労働が強いられ、政治学習、厳重な監視、人種差別、性暴力被害、自殺等の事例が伝わるようになると、強制連行を回避するために、娘を慌てて結婚させる親が続出した。 反発が強くノルマの達成が厳しかったため、このプロジェクトに参加し最低でも2年間中国沿岸部の工場で労働に関わった経歴のないウイグル人女性に結婚証明書を発行しないと決める自治体も現れた。 2008年5月には、カシュガル市政府がウイグル人女性に対する結婚証明書の発行を一時停止すると発表した。 中国共産党カシュガル地区委員会の史大剛書記は政府会議で、 「ウイグル族の外部就労を妨げる者は、カシュガル民衆の罪人である」 と非難し、抵抗の排除を訴えた。 強制連行と強制労働以外の何物でもなかった。 政府発表では、このプロジェクトによって移送されたウイグル人は、2008年に16万2500人、2009年に12万3900人となっている。 ■7・5ウルムチ虐殺 これらの不満が充満する中で火に油を注ぐように、前述の韶関(しょうかん)事件【2009年6月26日深夜】が発生する。 溜まりに溜まったウイグル人社会の不満は更に高まっていった。 しかも、強制連行を強引に進めてきた政府が、2009年6月26日から2009年7月5日までの間、事件に対する公式な反応を何1つ示さずに放置した。 仮に加害者と被害者の民族が逆だったら即座に大規模拘束に乗り出し、官製メディアも一斉に非難キャンペーンを展開していたはずが、韶関(しょうかん)事件では無関心の様子だった。 日頃から人種差別に耐えながら我慢してきたウイグルの人々が絶望的感情と弾圧されるリスクを背負いながらも、2009年7月5日にウルムチで大学生らを中心とした抗議デモを行った。 最初の頃の現場を写した写真や動画は今でもネット上で確認できるが、当局に説明と公正な裁きを求めているだけだった。 しかし、デモが始まって間もなく、中国当局は説明どころか、武装警察を動員し無理に解散させようとしたため、平和的なデモが衝突へ発展。 武装警察が学生らに発砲したことを受け、街沿いの人々も加わり、参加者が最初の1000人規模から1万人規模にまで膨らみながら衝突し、大惨事となった。 政府発表では、死者192人、負傷者1721人となっているが、現地からの証言等によると、当日の発砲やその後の無差別拘束で3000人以上が死亡し、1万人以上が行方不明となったと見られている。 また、政府発表だけでも3000人以上が死刑判決を言い渡した。 中国当局は、事件の背景にあるウイグル人の不満をひた隠した。 ごく普通の平和的なデモを悲惨な衝突に変えてしまった自らの責任にも一切触れなかった。 国際機関やメディアによる独立した調査を行うことも許可せず、当時米国に住んでいた 「ウイグルの母」、 ラビア・カーディルさんの煽動による計画的な暴動だと主張した。 また、都合よく切り取りしたウイグル人の破壊映像や衝突に巻き込まれた中国人の被害映像だけ発信し、真相究明やウイグル人の被害状況から国際社会の目を逸らすことに成功した。 そのため、国際社会から激しい非難や制裁を受けることもなかった。 また、日本メディアを含む多くの国際メディアは 「ウルムチ暴動」 との中国側の一方的な主張をそのまま引用した。 他所からやって来た者に先祖から受け継いだ伝統や文化が否定され、母語で教育を受ける権利が否定され、誇りに思う街並みが破壊され、ひいては人生の全てを捧げて育てた子供が強制連行されたらあなたはどうするか。 必死で声を上げたところ、銃を向けられたら、あなたならどうするか。 それを 「暴動」 と言って片付けられていいのか。 中国当局は事件の背景にあるウイグル人の不満とは向き合おうとしなかった。 若者の強制連行を含む誤った政策を事件後も続けたのだ。 警察には超法規的な権限が与えられ、些細な事でウイグル人に暴力を振るい、発砲するようになった。 結果、ウルムチ事件(2009年7月5日)後の数年間は衝突が断続的に発生し、その度に当局は 「テロ事件」 と主張したが、中立的な国際機関やメディアが検証し、テロだと事実確認出来た事例は1つも無かった。 国際調査も自由な取材も許されないまま2016年以降の大規模な強制収容へと突き進んだ。 ■深刻さを認識してほしい 「余剰な労働力の東部移送プロジェクト」 のスタートから15年、ウルムチ事件から10年以上が経った2020年に、オーストラリアのシンクタンク 「豪戦略政策研究所(ASPI)」 が 「売りに出されるウイグル人」 と題する調査報告書を発表した。 世界が初めてウイグル人の強制労働問題と向き合うことになった。 しかし、その間に数十万人ものウイグルの若者が犠牲になり、世界中の企業がウイグルの強制労働問題に巻き込まれていった。 この問題を念頭に、欧米では強制労働防止法の法整備や企業の取引見直し等が進んでいる。 日本の行政や企業にも、事の深刻さを再認識し、具体的な対策を進めて頂きたい。 最近、中国の電気自動車メーカー、BYDのCMがよく目につくようになった。 市民の足である路線バスにまでBYDを採用する自治体も出ているようだが、一言申し上げておきたい。 ASPI、英シェフフィールド・ハラム大学、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ等がウイグルの強制労働問題で複数の調査報告書を発表しており、いずれにも必ず登場するのがBYDだ。 値段だけで判断して良いのか、自分の良心に再度聞いてほしい。 2009年ウイグル騒乱 https://ja.wikipedia.org/wiki/2009%E5%B9%B4%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%AB%E9%A8%92%E4%B9%B1 【取材秘録】2009年ウルムチ暴動 家族を奪われたウイグル女性たちの悲痛な叫び https://www.youtube.com/watch?v=SgIBbT4NF5I 売り物のウイグル人 −新疆地区を越えての「再教育」、強制労働と監視− https://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2020/08/884619c6c323ea22fe2f7bda7da0b11b.pdf ウルムチ虐殺14周年追悼デモ https://www.youtube.com/watch?v=5VD7T9j54UU 2013年「7・5ウルムチ虐殺四周年抗議活動」デモ https://www.youtube.com/watch?v=_fqSix3Bd_o 7・5ウルムチ事件について 2012/1/8お知らせ https://uyghur-j.org/japan/2012/01/7%E3%83%BB5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%83%81%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/ 2009年7月5日に東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)の首府ウルムチで騒乱が起きた。 中国当局の発表によると、武器を手にしたウイグル人が 「暴動」 を起こし、商店や車両に火をつけたという。 しかし実情は、ウルムチのウイグル人学生らによる、 「2009年6月26日の広東省」 の事件の責任を追及する平和的なデモが始まりであり、それに次第に人が合流して1万人の規模になった平和的なデモだったのである。 しかし現地政府は1000人を超える武装警官を投入してデモを鎮圧し、無差別な発砲で数百人を射殺し、更に数人を装甲車で轢き殺した。 また中国政府は 「暴動」 は世界ウイグル会議がインターネットを通じて扇動した、計画的かつ組織的な犯罪であると主張している。 しかし現地と外部との情報のやり取りが厳格に監視されている中で、このような 「暴動」 を計画、実行することなど不可能である。 世界ウイグル会議はこのような扇動など行っていないと完全否定している。 中国政府は平和的なデモを暴動と言い、根拠が無いままに世界ウイグル会議が扇動したと批難しているのである。 ウルムチの学生が抗議した 「2009年6月26日の広東省の事件」 は広東省韶関市の玩具工場で起きたもので、200人のウイグル人が6000人の漢人から襲撃され、多数の死者が出たと言われる。 中国政府は当初、この襲撃事件の起きた原因を有耶無耶にし、犯人を逮捕しようとしなかった。 この2009年7月5日のウルムチの事件をきっかけに、政府は2009年6月26日の広東省の襲撃事件の犯人を逮捕して厳罰で臨むと、方針転換することになった。 しかし、この事件を起こした犯人を逮捕するだけで、この問題は解決するものではない。 直接には扇動された漢人の工員達が起こしたものであるだろうが、その背後には漢人による 「少数民族」 への差別意識があり、更に根本的な原因としては、中国政府が行っているウイグル人への弾圧と、同化政策がある。 何故東トルキスタンから遠く離れた沿岸部の広東省にウイグル人の若者がいるのだろうか。 彼らは経済的な理由から出稼ぎに来ているかのように言われるが、実際には中国政府がウイグル人の若者数十万人を、中国の沿岸部の工場などへ強制的に連行しているのである。 地域ごとに 「出稼ぎ」 に出す若者の数がノルマとして割り振られ、また貧しい農村部の若者に仕事を斡旋するとの名目ではあるものの、実態は安価な労働力として奴隷のように酷使されている。 更に女性であれば売春を強要されることもあるという。 強制連行されたウイグル人達は、政府機関や企業、一般の漢人らによって差別され、政治的にも脅迫され、収容所の囚人のように厳重な監視下に置かれている。 そもそもウイグル人の貧困を、地元での雇用によらずに、沿岸地域に移送させることによって解消しようとするのは何故なのだろうか。 中国の支配下に入ってから、東トルキスタンには大量の漢人が入ってきている。 60年前の総人口に占める漢人の割合は6%に過ぎなかったのが、現在ではほぼ半数を占めるまでに至っている。 地元の要職は漢人によって占められ、ウイグル人は大学を卒業しても地元では仕事が出来ないのが現状である。 漢人の大量移入とウイグル人の若者の大量移出は、東トルキスタンの同化を目的として行われているのである。 また若いウイグルの独身女性を大量に中国内地に移送しており、2006年から2010年で40万人を送る計画であるとのことである。 女性のみを大量に中国内地に送り込むということは、ウイグル人と漢人の通婚を奨励し、ウイグル人同士の婚姻を妨げる意図があると思われる。 このような人の移動による政策以外にも、公教育からのウイグル語の追放、宗教活動や民族の習俗・文化への制限、など様々な方法によって漢人と同化されようとしており、ウイグル人というものが地球上から抹殺されようとしているのである。 2009年7月5日にウルムチで起きたデモが武装警察によって鎮圧された後、中国政府はウイグル人の暴動によって漢人が多数犠牲にあったと、殊更に漢人の被害を強調し、民族対立を煽った。 その結果2009年7月7日には漢人による報復が起こった。 報道された写真に写る漢人らは鉄パイプや手斧を持っているが、彼らは 「デモ参加者」 であるとされている。 これら漢人の暴徒は道を歩くウイグル人を襲い、ウイグル人の商店を襲撃し、モスクに放火した。 しかし、当局はウイグル人に対してしたような激しい鎮圧は行っておらず、 「民族」 毎に違った対応をしている。 また、2008年3月のチベットで起きた騒乱の時に地域を封鎖し、外国人記者を現地から締め出したことで他国からの批判が集まったことからの教訓として、今回の2009年7月5日のウルムチ事件では一転して情報を公開する方針を採るようになった。 しかし情報を公開するとは言っても、 「ウイグル人の暴動」 の映像を提供するなど公式の情報発信の一方で、電話やインターネットなどを遮断して現地と直接連絡が取れないようにしていたのであるから、より効果的な報道統制を狙ったものと言えるだろう。 ウルムチの事件の翌日にはカシュガルやグルジャ(イリ)などにも飛び火し、軍、武装警察による厳戒態勢が敷かれている。 現在現地政府が認定する死者の数は少しずつ増えており、百数十人となっているが、その大部分を漢人の死者であると言っている。 しかし世界ウイグル会議が得た情報では、2009年7月5日以降現在まで、事件の時に武装警察によって殺された者、漢人暴徒の報復行為によって殺された者など、最大で3000人のウイグル人が虐殺されたとみられる。 また、今でも多くのデモ参加者らは逮捕されて監獄に閉じ込められ、拷問を受け、死に至っているはずである。 日本ウイグル協会「デモ参加者1万人が一晩で消えた」 ウルムチ暴動15年、中国を批判 2024/7/4 23:21 https://www.sankei.com/article/20240704-MTWECXJUJJKRBIZDN4HBE2FVT4/ 中国新疆ウイグル自治区ウルムチで2009年に起きた大規模暴動から2024年7月5日で15年となるのを前に、日本ウイグル協会は2024年7月4日、東京都内で記者会見を開いた。 「ウイグル族による暴動」 との表現は中国の一方的な発表に基づくものだとし、 「中国は都合よく切り取った情報だけを公表し、事件の背景や不都合な事実を隠している」 と批判した。 事件は2009年7月5日、ウルムチ市内で発生。 広東省の工場でウイグル族の工員が漢族に襲われて死亡した事件への抗議デモがきっかけとなり、一部が暴徒化して漢族や治安部隊と衝突。 当局発表で197人が死亡、1700人以上が負傷した。 協会のレテプ・アフメット会長は 「ウイグル人が中国人との共存は無理だと考えるようになった事件だ」 と指摘。 警察の無差別発砲や漢族の暴行があったとの証言や動画もあり、1万人規模に膨らんだデモの参加者が 「『一晩で消えた』との証言も多い」 と主張し、 「実際の死者数は3000人超、行方不明者は1万人超とみられる」 と訴えた。 中国政府は2000年以降、自治区の学校でのウイグル語教育を順次廃止。 アフメット氏は、当時、毎年10万人程度のウイグル族の若者が強制労働に従事させられ、不満が高まっていたことが事件の背景にあると紹介し、 「事件の背景や当局の暴力を全く伝えず、悲惨な衝突に変えてしまった中国政府の責任は重い」 と非難した。 事件後に逮捕され行方不明となった青年の事例も挙げた。 「母親はメディアに問題提起後、国家機密を漏らした罪で逮捕された」 「国際社会は天安門事件には注目するが、この事件には無関心だ」 と批判。 中国当局によるウイグル族への強制収容や強制労働など、西側諸国が現在批判している問題に繋がる事件だったとして、 「国際社会は中国の一方的な情報を鵜呑みにせず、私たちの小さな訴えに耳を傾けてほしい」 と訴えた。 「ウルムチ暴動」から15年 ウイグル協会が抗議集会「非人道的扱い、激しさ増した」 2024/7/5 18:11 https://www.sankei.com/article/20240705-OCFV5XF77RHY7PM5ERARJEUZ7I/ 2009年7月5日に発生した「ウルムチ虐殺」(通称・ウルムチ暴動)から2024年で15年。これを追悼し、在日中国大使館前で抗議集会が開催された=2024年7月5日午前、東京都港区 https://www.sankei.com/article/20240705-OCFV5XF77RHY7PM5ERARJEUZ7I/photo/N4YW4ZVDHNOQLCOVGPDQGMEE3Q/ 中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで、2009年にウイグル人デモが漢人や治安部隊に弾圧された 「ウルムチ暴動」 から2024年7月5日で15年となった。 日本ウイグル協会は東京都内の中国大使館前で抗議集会を行い、犠牲者を追悼した。 中国当局は暴動の死者を漢人ら197人としているが、1万人近いウイグル人が行方不明になったとの指摘がある。 同協会は 「ジェノサイド」(民族大量虐殺) と欧米諸国が非難するウイグル人弾圧の端緒となった出来事だと訴える。 ■銃殺、無差別に拘束 「武装警察や軍隊が(ウイグル人の)学生らに発砲し、数千人のデモ参加者が銃殺され、無差別に拘束された人々が行方不明になった」 「その後もウイグル人に対する非人道的な扱いが激しさを増す一方だ」 ウイグル協会の田中サウト氏は集会でこう訴え、ウイグル人弾圧の停止と国際的な調査団の受け入れを求める抗議声明を大使館に投函した。 「ウルムチ暴動」 を巡っては、2009年6月に広東省の工場で起きた漢人によるウイグル人襲撃・殺害事件に抗議するため、ウイグル人の若者らが2009年7月5日にウルムチでデモ行進を行った。 一部が暴徒化すると漢人や治安部隊と衝突し、1700人以上が負傷。 2009年7月7日には漢人が襲撃する 「ウイグル人狩り」 も起きた。 一方、中国当局は、亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」(本部・ドイツ)が扇動したとして、鎮圧を正当化している。 田中氏は 「デモの始まりはウイグル人の権利を求める若者による平和的なデモだった」 「過激な暴力を使ったのは中国側だ」 と強調した上で、 「ウイグル人が暴力で漢民族を刺激したかのようなイメージが作られ、日本のメディアも『ウイグル人の暴動』という言葉がよく使われている」 「一方的に中国から流された情報を鵜呑みにしているのではないか」 と語った。 ■平和的デモを衝突に変えた 田中氏は2023年10月に日本国籍を取得したが、暴動当時はウルムチ市内で働いていた。 「20代や30代のウイグル人の若者が町から消えて、高齢者や子供ばかりだった」 「約1万人が消えたのは現実に近いのではないか」 と語る。 田中氏は警察署で指紋や顔写真を撮られたが、その後釈放された。 当時について、同協会のレテプ・アフメット会長は2024年7月4日の記者会見で、 「一般の中国人が町の至る所で、ウイグル人を見つけたら殴り殺すということが散発的に起きた」 「木の上にまで逃げたウイグルの若者も追い掛けて殺そうとされた」 と説明した。 「平和的なデモを悲惨な衝突に変えた中国の責任は重い」 「その後ウイグル人に対して警察が当たり前のように発砲し、暴力を振るうようになった」 「これが色々な衝突を生み出し、その度に中国がテロだと主張するという流れになった」 とも語った。 中国、「テロ対策」名目に締め付け強化 ウルムチ暴動15年「息苦しい状態」とウイグル人 2024/7/5 21:12 https://www.sankei.com/article/20240705-5S3AL36HPJJEXF4YSMIYJODABQ/ 中国西部の新疆ウイグル自治区ウルムチで発生した少数民族ウイグル族の大規模暴動から2024年7月5日で15年となった。 中国当局は 「テロ対策」 を名目にウイグル族への締め付けを強め、信仰するイスラム教への管理も厳しさを増している。 暴動は2009年7月5日に発生した。 南部、広東省の工場でウイグル族が漢族に襲われて死亡した事件への抗議デモがきっかけとなり、一部が暴徒化して漢族や治安部隊と衝突。 当局発表で197人が死亡、1700人以上が負傷した。 暴動は、中国当局がウイグル族への抑圧を強化する契機となった。 各地の街頭やモスク(イスラム教礼拝所)などに多数の監視カメラを設置し、ウイグル族の動向を徹底的に監視。 オーストラリア戦略政策研究所は2020年、ウイグル族らを拘束しているとみられる施設が自治区内に380カ所以上あると報告している。 中国政府は2024年1月に発表したテロ対策に関する白書で、 「テロ活動を計画した犯罪者を法に従って処罰し、テロの大部分を計画段階や行動前に粉砕した」 と主張。 自治区を 「反テロの主戦場」 と表現した。 同時に、習近平国家主席が2015年に提起した 「宗教の中国化」 政策の下、中国当局は宗教活動への統制も強めている。 自治区などでモスクなど宗教施設を取り壊し、少数民族の脱宗教化を事実上進めていると指摘される。 その一方で、中国政府がアピールするのが自治区の経済振興だ。 2024年3月には、政府が管轄する国有企業が2024年から3年間で、自治区の新興産業などに総額7000億元(約15兆5000億円)近くを投資すると表明した。 「アメとムチ」 でウイグル族の不満を逸らし、漢族社会への同化を図る狙いがある。 ◇ 事件当時を知る在日ウイグル人は、中国政府が故郷を分断したとして悲痛な思いを語った。 当時、ウルムチの大学で学んでいた関東在住のサメットさん(30代、仮名)は 「事件を機に自治区内で相互不信が深まった」 「他人を信頼しきれない息苦しい状態だ」 と嘆く。 事件当日、警官が子供を手で掴みながら空に発砲するのを見た。 「当時は中国人として生きていたが、日本に来て中国の酷い仕打ちを知った」 「中国人との共生は無理だと気付かされた事件だ」 と振り返る。 自身も長年帰郷できていない。 「農家の父も土地を奪われ、『死んだ方がましだ』と言っていて胸が痛む」 「国際社会はウイグルを分断した中国に声を上げて」 と訴えた。 見逃されてきた女性の強制労働…ウルムチ事件の真相 日本ウイグル協会会長 レテプ・アフメット 2024/6/24 8:00 https://www.sankei.com/article/20240624-YJSSHGXJS5O65LSOFMFSYJDVS4/ 米国で 「ウイグル強制労働防止法」 が2022年6月に施行されてから2年が経過した。 欧米ではウイグル人強制労働問題への対応が着々と進んでいる。 2024年2月にも欧州化学最大手のドイツBASFが、強制労働への関与の可能性が指摘された事業から撤退を発表したし、2024年3月には欧州連合(EU)の欧州議会などが、強制労働で生産された製品の流通や輸入を禁止する規制案で暫定合意した。 2024年5月には米政府が中国企業26社を新たにウイグル強制労働防止法のリストに追加、2024年6月にも3社を追加し、輸入禁止の対象としたことを発表した。 ただ、このように厳しい措置が取られるようになったのは、近年になってからである。 2001年12月、世界貿易機関(WTO)に正式加盟した中国は、安い製品を世界市場で自由に売って急成長する陰で、ウイグル人の強制労働を続けてきたが、国際社会がそれを気にすることはほぼなかった。 中国当局が新疆ウイグル自治区カシュガルなどウイグル人集住地から、ウイグル人女性を 「余剰な労働力」 と称して中国沿岸部の複数都市の工場へ集団移送する政策を始めたのは、WTO盟から4年後の2005年だった。 対象となったのは16歳から25歳の未婚女性で、第11次5カ年計画(2006〜2010年)の間に計40万人の移送が目標とされていた。 毎日のように政府支援を受けた大勢の漢人が入植し職を得ている一方で、地元のウイグル人女性が家族から引き離され、言葉も文化も異なる5000kmも離れた地へ集団で移送されることには強い反発が起きた。 しかし、中国は 「各戸最低1人を」 とのスローガンの下、女性たちを本人の意思と関係なく強制的に連行。 厳重な監視下の長時間労働、人種差別、性暴力などの事例も伝わり、移送先でウイグル人が無差別襲撃され死亡する事件まで発生した。 2009年7月5日、ウイグル人の町ウルムチで起きた 「ウルムチ事件」 は、実はこのウイグル人襲撃に対する大学生らの抗議デモから始まったのだ。 日本では 「ウイグル暴動」 などと報じられたが、実際には平和的なデモを警察が武力で無理に解散させようとしたため、悲惨な衝突に発展したものだ。 そのウルムチ事件から間もなく15年になる。 当時、国際社会は事件の背景にある強制連行、強制労働と向き合うことなく、その結果、問題は10年以上、放置された。 その間、数十万人ものウイグルの若者が苦しみ、数えきれない人々が犠牲になった。 そして、日本を含む世界中の企業が、強制労働による商品を供給するという形で強制労働に手を貸し続けた。 これ以上、この問題を放置せず、厳しい態度を示す日本であってほしい。 群馬「正論」 レテプ・アフメット氏招き講演「進行中のウイグルジェノサイドの実態」 2024/6/6 17:53 https://www.sankei.com/article/20240606-UCM4L5ODJNK6DJK4BQNH7CUEOE/ 群馬「正論」懇話会(会長=田中善信・田中二階堂法律事務所長)は2024年6月28日、日本ウイグル協会会長、レテプ・アフメット氏(46)を招き、第66回講演会を開催します。 アフメット氏は中国・新疆ウイグル自治区出身。 平成14年に来日、東大大学院理学系研究科で修士号を取得し日本のIT企業に就職しました。 平成29年頃からウイグルの家族と連絡が取れなくなり、一般人まで強制収容所に送られているという情報が届き始め、父親や弟らも再教育施設即ち強制収容所に入ったことを知ります。 当局の脅迫めいた圧力を受けながらも同じ境遇の同胞と力を合わせ、圧政の告発を続けています。 演題は「進行中のウイグルジェノサイドの実態」。 欧州の人権団体は、中国がここ10年で海外在住のウイグル人やチベット人約1万2000人を強制帰国させたとの報告書を発表。 強制収容所に入れられ死亡した女性もいるとされます。 何のために迫害するのか。 ウイグル支配の歴史的経緯、中国政府による凄惨な実態を語っていただきます。 ◇ 【日時】2024年6月28日(金)午後1時半開演 【会場】前橋商工会議所会館2階「ローズ」(前橋市日吉町1の8の1) 【申し込み方法】往復はがきに郵便番号、住所、氏名、電話番号を明記、〒371−0858 前橋市総社町桜が丘1037の136 産経新聞前橋支局「正論」係へ。同伴者がいる場合はその名前も。整理券をお送りします。 【一般入場料】1000円 【締切】2024年6月26日必着 秘密裏に消される文化人…中国のウイグル弾圧はあまりに卑劣だ 日本ウイグル協会会長 レテプ・アフメット 2024/3/31 8:00 https://www.sankei.com/article/20240331-MUC3TII5FNJ6FM57MLP4YGRXFQ/ 2024年3月開かれた中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)の期間中、中国共産党側はウイグルジェノサイド(集団殺害)を否定する主張を繰り返していた。 新疆ウイグル自治区の王明山党副書記は記者団に対し 「ウイグルで文化の大虐殺が行われているという報道は全くの噓だ」 「言葉の使用は保障されているし、文化も尊重されている」 と主張したが、その主張こそ噓八百だ。 例えば、2001年にウイグル自治区内の大学を卒業した私は、小学校から全ての学校教育をウイグル語で受け、中国語の授業は週に数時間の1科目に過ぎなかったが、現在、ウイグル語での学校教育は全て廃止になっている。 不満を抱く者は過激思想のレッテルを貼られ、容赦なく弾圧される。 2017年以降はウイグル文化人に対する大粛清が行われており、中国側から流出した内部資料などによると、400人以上の著名な知識人が強制収容され、行方不明になっている。 欧米メディアが確認しただけでも、新疆医科大の元学長で、現代ウイグル民族医学の父と言われるハリムラット・グブル教授ら3人が死刑宣告。 ウイグルの最高学府、新疆大教授でウイグルの伝統・文化研究の第1人者として知られる女性のラヒレ・ダウット氏ら7人が無期懲役の判決。 作家でカシュガルウイグル出版社の元編集者、ミリザヒド・ケリミ氏ら著名な知識人7人が強制収容され、死亡している。 皆、若者がウイグル文化を誇りに思い堂々と生きるよう希望を与えてきた人物ばかりだ。 粛清対象には、中国共産党を否定しない人々も含まれる。 ウイグル独自文化が継承されるルーツを断ち切りたい習近平政権は、彼らを 「両面人」(表向きは共産党支持者だが、心の中では民族を愛している者) として粛清するのみならず、ばれると、誤魔化そうとする。 代表例が新疆大の学長を務めていたタシポラット・ティップ教授の失踪だ。 東京理科大で理学博士号を取得し、立正大や九州大の研究者と共同研究するなど日本と縁の深い人物だが、2017年に消息不明となり、その後、秘密裏に両面人として死刑宣告を受けていた。 これが国際社会で表面化し、2019年12月に国連人権高等弁務官事務所が学者への死刑宣告は国際法に反するとの声明を発表すると、中国はティップ氏については 「汚職の罪で調査中」 と発表し報道を否定した。 しかし2022年5月に流出した秘密文書 「新疆公安ファイル」 には、当局が彼を 「両面人」 として糾弾していたことが記載されていた。 国際社会は、中国の共犯者にならないためにも、習近平政権のこの大粛清に声を上げる時だ。 中国の人権侵害を無視する国連 日本ウイグル協会会長レテプ・アフメット 2024/2/4 8:00 https://www.sankei.com/article/20240204-OEDRAL43CVKF5LPWZMBOS6AFAY/ 今から27年前の1997年2月5日、中国の弾圧政策に抗議するウイグルの若者たちがグルジャ(中国名・伊寧)で平和的なデモ行進を行った。 中国の武装警察はデモ隊に発砲し、これを鎮圧。 その後も広範囲の無差別拘束が続き、グルジャからは若者の姿が消えた。 後には拘束された人々の凍死、拷問死、釈放後に精神を病んだ人など多くの悲惨なケースが報告されたグルジャ事件である。 当時は通信手段が限られた上、厳しい情報統制のため世界は実情を知らず、中国が国際社会から厳しい制裁を受けることもなかった。 日本は事件の翌月1997年3月、中国の核実験を理由に原則凍結していた無償資金協力を再開すらしている。 中国はその後、日本を含む先進国の経済支援や技術支援によって飛躍的な経済成長を果たし、中国共産党の独裁政治を盤石にした。 もしあの時、国際社会が事件に注目し経済支援などをやめていれば、中国は今のような国際秩序を脅かす巨大モンスター国家になっていなかったかもしれない。 あれから4半世紀経った今、国連ではウイグル問題を巡り、人権の価値観を共有する民主主義国家と中国マネーに支配される国々の対立が続いている。 2022年8月、国連人権高等弁務官事務所が、中国のウイグル人に対する行為は 「人道に対する罪に相当する可能性がある」 と認める報告書を公表したが、国連人権理事会は2022年10月、この報告書基づいてウイグルの人権問題を討論するよう求める動議を否決した。 中国が加盟国に影響力を及ぼし続ける国連では、同じ国連機関が中国の人権侵害を指摘しているにもかかわらず、その報告を無視するという呆れた行為が罷り通っている。 最近、私たちが注目したのは、中国の人権状況を定期的に審査する国連人権理事会の普遍的・定期的審査(UPR)作業部会である。 2024年1月23日の会合では、 米国が 「ジェノサイド(民族大量虐殺)」 スイスが 「人道に対する罪」 と非難するなど、30以上の国々がウイグル問題に言及した。 その結果、 「ジェノサイド」 の非難は盛り込まれなかったが、作業部会は400以上の勧告をまとめた。 前回の作業部会ではウイグル問題に触れなかった日本も今回は言及してくれた。 ただ、この勧告も法的拘束力はない。 2024年1月23日の会合当日、ウイグルではマグニチュード(M)7.1の地震が発生したが、通信が遮断されているため、私たちはウイグルに住む家族の安否確認すらできなかった。 家族の生死を知る権利までも奪われているのだ。 国際社会は懸念を伝えるだけの不毛な芝居をやめ、経済制裁を含む具体的な行動を起こす時だ。 月曜コラム 父さんを人質にする中国 日本ウイグル協会会長 レテプ・アフメット 2023/11/20 9:45 https://www.sankei.com/article/20231120-HDKCFCZXANLALLB7SYY6R75NSI/ 中国共産党政権によるウイグル迫害は近年に始まったことではない。 1949年の 「中華人民共和国」 建国後、70年に渡りウイグル人の 「中華民族」 への同化を図ってきたと言っていい。 ただ、2017年以降、迫害が異常なレベルで行われるようになったため国際問題として注目されるようになった。 習近平政権は、同化が思うように進まないことに焦りを募らせ、ウイグル人を力で滅ぼす方向へ大きく舵を切ったのだろう。 300万人超と指摘される大規模な強制収容、強制労働、不妊手術の強制、親子の強制的引き離し。 AI(人工知能)による監視システム、ウイグル人宅に100万人規模で政府職員を寝泊まりさせるなど想像を絶する監視も常態化した。 著名な知識人や経済人らが一斉に収容され、行方不明となる悪夢の事態も起こっている。 外国に暮らすウイグル人らは故郷に残る家族との通信が遮断され、生き別れを強いられている。 私自身も2017年夏に、父や弟を含む親族12人が強制収容されたことを知ったが、その後、消息が確認できていない。 翌年2018年3月、地元警察から、収容所で撮影された父のビデオが送られてきて、 「中国共産党への忠誠心を示し当局に協力すればお父さんを出してあげる」 と告げられたが、断った。 それ以降、一切の通信は断ち切られたままだ。 私は日本のパスポートを持っているので、世界中ほとんどの場所に安心して行けるが、唯一怖くて行けない場所が実家だ。 2019年には、強制収容された家族を捜すために留学先の日本から帰国した20代のウイグル人女性ミギライ・エリキンさんが直後に強制収容され、収容所で死亡した。 今、欧州連合(EU)や英仏など10カ国・地域の議会と米国政府が、ウイグル問題をジェノサイド(民族大量虐殺)か、その深刻なリスクがあるものと認定しているが、日本ではどうだろうか。 国会でも2022年、決議を採択したが、中国へ配慮し過ぎた内容だった。 日本企業は無意識にこの問題に関与している。 日本ウイグル協会の調査では、複数の企業の技術が 「ウイグルジェノサイド」 を支える監視システムに悪用されていることが確認されている。 日本は太陽光パネルのほとんどを中国からの輸入に頼っているが、その多くはウイグル人の強制労働と繋がっていると指摘されている。 強制労働でもたらされた製品の供給先になっている可能性が高いのだ。 欧米では、強制労働防止法や外国の人権侵害に対し資産凍結などの制裁を科すマグニツキー法などの整備も進み、制裁の流れも強まっているが、日本は後れを取る。 日本が制裁逃れの穴場として利用されるリスクが高まっている。 習氏指示に日本ウイグル協会長「非常に危機的」 2023/9/11 17:38 https://www.sankei.com/article/20230911-OMVE7ZOFUBLAJBILI7JA5EUGTU/ 中国の習近平国家主席が2023年8月26日に新疆ウイグル自治区を視察し、 「イスラム教の中国化」 の推進や 「中華民族の共同体意識の増強」 を指示した。 国際社会が中国の民族迫害政策を非難する中、ウイグル人への同化政策を緩めない姿勢を改めて示した形だ。 日本ウイグル協会のレテプ・アフメット会長は2023年9月11日までに産経新聞の取材に応じ、 「『ジェノサイド』(集団殺害)の加速を謳い、非常に危機的なメッセージだ」 と懸念を示した。 ◇ 《習氏のウイグル自治区入りは2014年以来8年ぶりだった2022年から2年連続となる》 《今回、習氏は区都ウルムチ市で開かれた会議に出席し、地元幹部に 「社会の安定維持」 と 「違法な宗教活動」 を押さえ込むよう指示した》 《標準中国語(漢語)教育の徹底、漢人の自治区移住の推奨なども表明した》 ーー習氏のウルムチでの発言をどう受け止めているか ★レテプ・アフメット会長 欧米諸国などからジェノサイドと批判されるウイグル政策の加速を明確に謳った形で、非常に危機的なメッセージだ。 言語も宗教も人口比もウイグルのアイデンティティーを薄めようとしている。 国際社会がどんなに声を上げても、ウイグル民族や文化を滅ぼす意志は固いと受け止めている。 《国際社会はウイグルの人権侵害状況への批判を強めている》 《国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2022年8月、テロ対策の名目でウイグル人に 「深刻な人権侵害が行われている」 とする報告書を発表》 《米国は2022年6月、ウイグル自治区からの物品輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法を施行し、制裁対象の中国企業を追加するなど、運用も厳格化した》 ーー習氏はウイグル人の収容政策に言及しなかった ★レテプ・アフメット会長 中国共産党は2019年までに(ウイグル人を強制収容したとされる)『職業技能教育訓練センター』を閉鎖したと主張する。 だが、消息不明の人や施設から解放されていない人がいる。 2023年9月も新たな収容者の存在が相次いで報じられた。 私の親戚も12人が収容されたと確認された。 妻の兄弟は勤務先で警察に呼ばれたまま、消息が分からず、裁判も開かれていない状況だ。 ーー中国当局は自治区へのツアーを催し、平穏な暮らしぶりをアピールする ★レテプ・アフメット会長 習氏も今回、ウイグル自治区の良さを伝えるとして、外国人旅行者向けのツアーの拡大を指示した。 ツアーは中国政府がコントロールし、幸せに暮らしているウイグル人を装うプロパガンダ(政治宣伝)に過ぎない。 尾行や行動制限もない旅行は許可されていない。 隠したいことがあるからだ。 日本人がツアーに参加して統制された情報をそのまま発信することは中国の犯罪に加担することだ。 ーー自治区出身者に対する嫌がらせはあるか ★レテプ・アフメット会長 在日ウイグル人は中国当局から現地に残した家族を人質に取られ、ウイグル協会の活動情報などを求められている。 パスポート更新の申請も何カ月も放置され、現地で手続きを求められた人もいる。 ーー2023年10月に「国際ウイグルフォーラム」が開催される。日本で開く意義は ★レテプ・アフメット会長 中国がウイグル問題について欧米が作り上げたデマだと宣伝する中、アジアで唯一中国側の主張に反論している国が日本だ。 国際社会がこれまで以上に連携してウイグル問題に取り組まないと、民族迫害は改善しない。 中国の隣国の日本から 『国際社会は納得していない』 『責任を追及する声がここにある』 と発信してほしい。 嘘拡散の”共犯”になる官製新疆ツアー 正論2023年9月号 日本ウイグル協会会長 アフメット・レテプ 中国共産党中央直属の中国外交出版発行事業局が管理・運営するニュースサイト、中国網日本語版(チャイナネット)に2023年6月22日に掲載された 「新疆をきっかけに日本社会の対中感情を改善」 と題する記事に目が留まった。 記事の前後には日本の悪口や日本批判の記事が溢れていた。 「核汚染水海洋放出の強行、日本の道徳の赤字と知恵の苦境を露呈」 とあり 「南京大虐殺の生存者が逝去 存命中は残り39人のみに」 や 「海洋で中国けん制、苦杯を喫するのは日本」 と題している。 対日感情の憎悪を煽る記事が並ぶ中で 「新疆をきっかけに日本社会の対中感情を改善」 とは一体、どういうことなのだろう。 日本国民を馬鹿にしているのかと不思議に思って調べた。 すると、中国在大阪総領事館主催 「日本市民新疆ツアー第1陣」 について、中国網日本語版や中国共産党中央機関紙『人民日報』のWEB版、人民網日本語版が自画自賛の記事を必死で発信していることが分かった。 発信は主に 「薛剣(せつけん)駐大阪総領事」 と 「新疆ウイグル自治区政府文化顧問」 を名乗る日本人僧侶 「小島康誉」 氏による記事だった。 薛剣総領事と言えば、大阪総領事館の公式アカウントや個人アカウントで外交官とは思えぬ過激ツイートを暴走させることで知れらる人物だ。 最近の事例で言うと、2021年10月、国際人権団体、アムネスティ・インターナショナルが香港オフィスをやむなく閉鎖すると発表した際に、 ツイッターで 「害虫駆除!!!快適性が最高の出来事また1つ」 と投稿し、 「人間性が言葉に出る」 などと批判を浴びた。 また、その2カ月後の2021年12月には在大阪総領事館の公式ツイッターが、ウイグルの子供たちの動画を投稿して 「顔面偏差値が高すぎる新疆の小学生たち、・・・新疆ツアーにご意向のある方は、ぜひご登録を!」 投稿を見た人々から 「人を顔だけで格付けし評価するなんて気持ち悪い」 「子供たちは装飾品ではなく人間です」 「さすがに人権無視の差別主義国家の言うことは違う」 等の批判が殺到した。 小島氏は 「発展」 と 「幸せ」 に満ちたウイグルをアピールし、ウイグルの現状に関するメディア報道の多くが色眼鏡的と主張している。 薛剣総領事らが同行し、最初から最後まで全てのプロセスに中国当局による誘導が組み込まれた今回の 「プロパガンダツアー」 の意義の大きさを繰り返し強調し、レコードチャイナへの寄稿では 「ギネス級の価値がある」 とまで称賛している。 ツアーの参加者でもないのに、日本社会に与えた影響はほぼゼロと言っていい 「プロパガンダツアー」 をここまで称賛するとは、この方は正気なのかと疑ってしまう。 家族と生き別れを強いられる身として、あるいは留学先の日本から一時帰国したら強制収容され死亡した仲間がいる身として、人命や家族を奪う犯罪者を擁護する行為は仏教の教えにも反しているとの疑問を感じ、僧侶としての自覚すらないのかと憤りを感じる。 ■新疆ツアー第1陣 薛剣総領事が、駐大阪総領事として着任したのは2021年6月だ。 着任から半年後の2021年12月には 「新疆は良いところーコロナ後の中国新疆ツアー大募集」 と題する団体旅行の告知を大阪総領事館の公式サイトに掲載した。 大阪総領事館の発表によると、2021年12月31日に締め切った募集には1カ月間で日本国内から1028人が応募した。 あれから1年半が経ち、去る2023年6月19日から27日に、中国当局に選ばれた小学5年生から83歳までの日本人男女20人のウイグル訪問が実現したそうだ。 中国当局としては日本国民を現地に案内し、ウイグル人らに対する非人道的犯罪で地に堕ちた中国への信用を回復したい思惑があったはずだ。 薛剣総領事らが発信したこのツアーの始まりから終わりまでのプロセスを見れば、決してこれは通常の団体旅行ではなく政治的意図が仕込まれた 「プロパガンダツアー」 であることは明白だ。 まず、1028人の申込者から20人を選別し(98%を審査の段階で落としている計算になる)、出発前夜の2023年6月18日に大阪総領事館で 「新疆ツアー第1陣壮行会」 と書かれた赤い横断幕を掲げた式典を開催し、薛剣総領事から中国ビザの押されたパスポートが参加者1人1人に手渡された。 通常のツアーで外国を旅行する際にこんな大袈裟な経験をすることなどないだろう。 ツアーには大阪総領事館の領事らが同行し、関西空港を飛び立つ直前に撮影された写真には 「中国駐大阪総領事館主催 日本市民新疆ツアー第1陣」 と書かれた赤い横断幕を持った参加者たちの姿があった。 後に人民網が発信した今回のツアーを特集した英語字幕付きの動画の最初にもこの写真は使われている。 ウルムチ到着時も、空港で 「日本市民新疆ツアー第1陣の皆様を熱烈歓迎」 と書かれた赤い横断幕を持った当局者たちが出迎える写真が撮られ、盛んに発信された。 だが、こうした写真撮影自体、日本国民が世界の他の場所を旅行する際には決して遭遇することはない不自然な光景だ。 一行の出発に合わせて、共産党機関紙、人民日報系の環球時報で薛剣総領事はこう述べている。 「今回の新疆ツアーは内容が豊富で充実している」 「一部の日程は想像を遥かに上回る」 「例えばトルファンではウイグル族の家庭を訪問し、現地人と共に昼食を取る」 「新疆少数民族の日常生活を近距離で体験する」 「更に現地のウイグル族の小学校を訪問する機会があり、子供たちの天真爛漫な笑顔を通じ現地の人民生活が幸福で満ち足りていることを直感的に感じる」 「アクスでは広々とした綿花畑を見ることができる」 「綿花紡績工場を見学することで、西側のいわゆる強制労働という根も葉もない話を一蹴する」 注目してほしいのは、薛剣総領事の自画自賛は、ツアーに参加した日本人らがどこで何を見るかだけではなく、そこで何を感じるのか、考えが変わって帰国するのか、といった細かい所まで初めから決まっていることだ。 ツアーがプロパガンダだと明白に物語る所以である。 前述の人民網が発信した英語字幕付きの動画と比べると、ツアー参加者が全てを薛剣総領事の”予言”通りに実感し、考えが一変したかのような内容になっている。 これが、この先どんな宣伝に使われるのか、ツアー参加者たちは注意深く見ておくべきだろう。 「今回の新疆ツアーの情報発表も異例で、新疆訪問団のメンバーが個人メディアで今回のイベント全過程を自由にライブ発信する」 などとわざわざ強調するのも首を傾げる話だ。 一体、そのどこが異例で凄いのか。 世の中の常識が通じるまともな国では、旅行者は旅先で写真や動画を撮り、ネットに自由に流している。 ごく普通で当たり前の話だ。 「自由にライブ発信」 を 「異例」 と強調すること自体が、自由が奪われた中国ならではの話でしかなく、果たして日本人参加者は本当に自由を感じたのか。 仕組まれたパフォーマンスによって自分たちの言動を全て中国当局が誘導し操ろうとしていると感じた参加者はいなかったのか。 聞いてみたいところである。 ■自己弁護の末の新看板 大阪総領事館のツアーは突如告知されたものではない。 告知のタイミングと国際情勢を思い出して頂きたい。 継続的に明らかになる証拠を受け、国際社会は2021年以降、ウイグル問題で態度を大きく変化させた。 2021年1月には、アメリカ政府がジェノサイド(特定の民族などの集団を破壊する目的で行われる集団殺害、及びそれに準ずる行為)認定し、2021年12月までにカナダ議会、英国議会、リトアニア議会、チェコ議会、ベルギー議会等でジェノサイド認定が続いた。 2021年3月には、米国、英国、カナダ、そして欧州連合(EU)でウイグル人らへの重大な人権侵害が行われているとして、中国に対する制裁措置が一斉に発表された。 ツアーが告知された2021年12月には、更に大きな出来事があった。 アメリカでは 「ウイグル強制労働防止法案」 が下院と上院で相次いで可決、2021年12月23日にはバイデン大統領が、ウイグルからの輸入を全面的に禁止する 「ウイグル強制労働防止法」 に署名し成立した。 2021年12月9日には英国に設置された国際法や人権問題の専門家も加わった民間法廷 「ウイグル特別法廷」 が18カ月に及ぶ調査の末、ジェノサイドと人道に対する罪がウイグル人や他のチュルク系民族に対して行われているとの結論を下していた。 それだけではない。 2021年12月1日には、英BBC等の主要メディアが、ウイグル人らに対する大規模強制収容や強制労働等に、習近平国家主席など上層部の関与を示す極秘文書 「新疆文書」 が流出したと大々的に報道され、ツアーの告知はその翌日2021年12月2日だった。 相次いで明らかになる中国の人権侵害の証拠と国際社会の非難。 それを前に中国当局はあの手この手で自己弁護せざるを得ない状況に追い込まれていた時期だった。 日本国内でもウイグル問題で中国への非難の声は高まっていた。 地方議会が次々とウイグル問題で国に対策を求める意見を採択し、その自治体数は80を超えていた。 ちなみに、2021年12月以降も採択は続き、私たちが把握しているだけで102の地方議会で採択されている。 ■日本国民がターゲットに 自己弁護に追い込まれた中国当局は、国連の調査チームや主要な外国メディアの自由な取材を徹底して断る一方で、都合の良い所だけを見せるパフォーマンスに納得してくれそうな外国人をピックアップしては 「やらせツアー」 を積極的に企画している。 この手のツアーは、2023年だけでも複数回確認されている。 例えば、2023年1月にシリアなど14のアラブ諸国から30名以上がツアーでウイグルを訪問した。 2023年4月にはベトナムやカンボジアなどの複数国の駐中国大使や領事らがツアーでウイグルを訪れている。 この時は 「新疆ウイグル自治区政府」 のトップ、馬興瑞が面会し、中国の友好国の大使・領事として、中国を擁護する発信を積極的に行うよう求めたと報道されている。 2023年6月になるとスーダンなどアラブ諸国から30名以上のツアーが実施され、ウイグル訪問が行われた。 2023年7月にはカザフスタンの市民らのツアー団が訪問した。 いずれも中国の影響力が強く、人権や価値観の面で中国とそう変わらない国々がターゲットとされている。 そう考えると、西側と同じ価値観を共有する日本の市民らをツアーのターゲットに選ぶのは異例と言っていいだろう。 ジェノサイドや人道に対する犯罪が今も進行中の東トルキスタンに比較的近い位置にありながら、国連などの国際舞台では中国の犯罪行為を非難する共同声明に毎年署名している唯一の国が日本であり、中国もそれを強く意識しているはずだからだ。 日本をターゲットに選んだものの、中国の意図や狙いが自分たちの思惑通りに日本人に果たして浸透するか否か。 アラブやアフリカ諸国の人々のツアーとは勝手が違って中国は決して自信満々ではなかったようである。 例えば、ツアーの対象者を日本人に限定すると初めから宣言したのもそのせいだろう。 これは日本に住むウイグル人が参加してしまうと中国人よりも遥かに現地に詳しい。 中国にとって都合の悪い所まで案内できる。 政府機関の主催ツアーだから、無事帰国を保証する義務もあるが、在日ウイグル人を除外したのは保証できる自信がないためでもあるだろう。 それだけではない。 日本のメディア関係者も除外されている。 薛剣総領事は、2023年6月13日のツイートで 「この度の新疆ツアーは基本的に参加者の皆様の自費で実施」 「日本メディアの同行取材について、問い合わせがあったが、新疆について余りにも酷い虚偽報道してきた為、敢えて断った」 「正直言って、現状では信頼置けない!」 と投稿している。 この投稿から分かることが2つある。 1つは、日本メディアを同行させる自信がないことだ。 これはメディア関係者を案内するとパフォーマンスに大人しく納得しない恐れがあるからだ。 もう1つは 「基本的に参加者の自費で実施」 という表現だ。 「基本的に自費」 とは穿った言い方をすれば一部に中国当局の負担があると言っているようなものだからだ。 ■ウイグル人とメディアお断り 2023年7月12日に大阪総領事館は 「新疆ツアー『第2陣』大募集」 の告知を出している。 そこには、 「募集対象:日本人のみ、訪中歴のない方大歓迎」 「日本メディアの同行取材はお断り致します」 「旅費は基本的に自己負担となります」 等と明記している。 第1陣と同じやり方で実施するらしい。 実は第1陣のツアーとほぼ同時期にJNNの記者がウイグルを取材し、連載記事(TBS NEWS DIGサイトに掲載)を発信している。 ツアー参加者を希望する人は是非読んでほしいものだ。 2023年7月5日、ウルムチを取材したJNN記者は、初日から帰りの空港まで尾行が続いて、現地のウイグル人らが恐怖に怯えて胸の内を語ることができなかったことを詳しく報じている。 大阪総領事館のツアーで見る光景とは180度異なる全くの別世界だ。 どちらが信用できるか、読者も考えてほしい。 ウイグルジェノサイドを隠し、私たちの家族を奪った恐怖政治を正当化するためのプロパガンダツアーに参加し、その中身を鵜呑みにして 「ウイグル人は幸せに生きている」 などと発信することは、ジェノサイドに加担することに他ならない。 「時間と大きな出費を伴う旅行なのだから、中国当局の思惑で振り回すのではなく、尾行・監視・行動制限を断って自由にさせて欲しい」 と突き付けるくらいであってほしいものだ。 ■薛剣総領事に申す 悪いことをしていないなら隠す必要などない。 メディア関係者を恐れる必要もない。 日本を見てほしい、国が日本を訪問する中国人を選別して、訪問先を全て国が設計し、国が手配した案内人が誘導する都合の良い場所だけ見せて大人しく帰国してもらったり 「中国メディア関係者は除外」 などと堂々と宣言したりするツアー等聞いたことがない。 いつ、誰と、どこへ行って何を見るか、見たこと感じたことをどう発信するかも本人が決める。 メディア関係者の友人と一緒に行くかどうかも本人が決める。 尾行や監視を気にすることなく好きな場所で好きな人に接触する・・・それが健全な社会における当たり前の旅行というものだ。 ウイグル人らに対して非人道的犯罪を犯していないと言える自信があるなら、家族と生き別れを強いられている在日ウイグル人の帰国を保証すると国際社会に約束し私たちを同行させてほしい。 「非人道的扱いを受けた」 と証言する強制収容所の生還者たちも同行させるべきで、国際法や人権の専門家、学者たち、そしてメディア関係者も欠かせない。 何よりも重要なことは、現地での行動制限や尾行、監視などがない自由な旅行であることだ。 悪いことをしておらず自信があれば、これらは全て簡単な話で、都合の良い所だけ見せて、それ以外は徹底的に隠すだけでは、中国と同じ価値観の国々の人たちは騙せても、国際社会の常識が通用する国々の人たちを騙せるはずがない。 全くもって説得力がなく、やればやるほど国際社会の疑念は深まるだけである。 私を同行させてくれれば、2017年以降、一切の通信ができずにいる家族をまず訪問したい。 それ以外にもどうしても会いたい人たちはたくさんいる。 例えば、ウイグル自治区教育出版社編集長のワヒットジャン・オスマン氏。 同じく教科書編集担当で著名な評論家、ヤリクン・ロズ氏や自治区教育庁の元庁長、サッタル・ダウット氏や自治区社会科学院副院長で新疆教育出版社長のアブドゥラザク・サイム氏らウイグルの教育を支えた人たちがそうだ。 新疆大学の学長、タシポラット・ティッブ教授や副学部長のアブドサラム・ジャリディン教授にも会いたいし、新疆医科大学の学長で現代ウイグル民族医学の父、ハリムラット・グブル教授や新疆師範大学教授で著名な作家、アブドゥカディリ・ジャラリディン教授、ウイグル文化研究の第一人者で新疆大学人類学研究所のラヒレ・ダウット教授、新疆人民出版社社長のアブドゥラヒマン・エベイ氏なども再会したい人たちだ。 新疆新聞社の社長、アリムジャン・メメットイミン氏、カシュガルウイグル出版社の編集者で著名な女流詩人、チメングリ・アウット氏、ウイグル人社会のIT化に最も貢献した人物として知られる著明なコンピュータープログラマー、アリム・エヘット氏等々・・・。 名前を挙げ始めると、際限がない。 この方々は、誰もがウイグル人に生きる希望を与え、ウイグルの文化が消滅しないよう先頭に立って尽力してきた人々だった。 2017年以降相次いで強制収容され行方不明となっている。 尾行・監視は当たり前、まさかの”手のひら返し”も…中国で最も“取材困難”新疆ウイグル自治区 超敏感エリアの中心都市「ウルムチ」の今 2023/7/7 https://uyghur-j.org/japan/2023/07/fnn-articles-552223/
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