<■1425行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 移民・女性・イスラム・・・ ステレオタイプの誤算 正論2025年1月号 フィフィ アメリカ大統領選でトランプ氏が再び大統領に返り咲きました。 事前の世論調査では大接戦と伝えられていたのに、蓋を開けてみたら、全ての激戦州を制しての圧勝。 メディアの予想は大外れでした。 トランプ氏は予想以上に強かった。 何故見誤ったのでしょうか。 まずは、 「トランプ支持者はマジョリティーの白人ばかりで、黒人やヒスパニック系は多様性を重視する民主党に投票するはずだ」 という思い込みでしょう。 確かに、前回はそうした傾向でした。 2020年の 「ジョージ・フロイド事件」 などを発端としたブラック・ライヴズ・マター(BLM)と呼ばれる人種差別抗議運動の盛り上がりも、民主党の後押しになったでしょう。 ただ、今回の選挙結果を見ると、必ずしも4年前と同じではなかった。 黒人やヒスパニック系であっても共和党を支持する人がいました。 トランプ氏は選挙期間中、 「移民が来ると仕事が奪われ、経済にマイナスの影響があり、治安が悪くなる!」 などと訴えてきました。 この主張をメディアは 「排他的だ」 と批判してきしたが、それが有権者にどこまで響いたのでしょうか。 移民政策だけで投票先を決めるわけではないでしょうが、厳格化を推し進めようとするトランプ氏の方が、より多くの票を集めたのです。 それは黒人やヒスパニック系こそ、流入する大量の 「不法移民」 に危機感を持っているからではないでしょうか。 「不法移民」 は、正規の手続きを踏んでアメリカ市民権を得た移民にとって、歓迎できない存在でしょう。 よりはっきり言えば、イメージを下げていると見ている。 移民問題に向き合ってほしいと、より切実に願っているのは、代々続くアメリカ国民ではなく、ニューカマーの有権者ではないでしょうか。 実際、トランプ氏は 「移民」 そのものではなく、あくまで不法移民への対策を訴えていたわけです。 “正規”移民としては、 「これは自分たちの問題ではない」 と、むしろ不法移民を排斥することに賛成しているのではないでしょうか。 メディアはそうした 「本音」 を見落としていたように思います。 人工妊娠中絶の問題でも同じ構図があるでしょう。 「中絶の権利擁護」 を掲げるハリス氏に女性票が流れるといった観測がありましたが、実際はどうだったでしょうか。 関心は大きくなかったようです。 むしろジェンダー問題に対して保守的なトランプ氏に賛同する女性も多くいたと聞きます。 また、女子スポーツにトランスジェンダーの選手を受け入れることを促進しようとする民主党の政策に抵抗感を抱く女性も多かったでしょう。 「女性ならハリス支持」 などという構図で単純化出来るものではなかったでしょう。 イスラム系有権者の動きも報じられていました。 イスラエルに親和的なトランプ氏を嫌って、イスラム系住民は民主党に票を入れるとされていました。 しかし、民主党とて、バイデン現政権がアラブ諸国を攻撃しているイスラエルを十分にグリップ出来ていないのです。 そんな政権の副大統領であるハリス氏が評価されているとは言い難い。 多くのイスラム系住民は民主党でもなく、もちろん共和党でもなく、第3の党、即ち 「アメリカ緑の党」 の候補者に投票したといいます。 「移民」 「女性」 「イスラム」 という大きな括りで有権者の動向を分析したけれど、いずれも大外れだったわけです。 「民主党支持に違いない」 というステレオタイプな決め付けがあったのではないでしょうか。 私自身、経験があります。 日本で芸能活動を始めた頃、朝日新聞や、日本共産党の機関紙、しんぶん赤旗から 「『外国人』として今の日本に対する意見を聞かせて下さい」 という取材依頼がよくありました。 しかし、今ではめっきり、 「あの界隈」 からの依頼は来なくなりました。 想像ですが、 「外国人だから移民推進に賛成なんだろう!」 といったステレオタイプ的な受け答えをしなかったからでしょう。 期待を裏切ったとお感じなら、おあいにく様です。 今回の大統領選も、まさにこうしたステレオタイプが大誤算を生んだのでしょうね。「直ちに人質を解放しろ!」トランプ氏がハマスに報復警告「米史上最も激しい打撃与える」 2024/12/3 7:46 https://www.sankei.com/article/20241203-BSQWNTWZ5NMUHFDWJFCAPZ7UAM/ トランプ次期米大統領は2日、米国人を拘束しているパレスチナのイスラム組織ハマスなどに対し、来年2025年1月20日の自身の大統領就任式までに人質を解放しなければ 「米史上最も激しい打撃を与える」 と警告した。 「直ちに人質を解放しろ!」 と自身の交流サイト(SNS)に投稿した。 ハマスは2024年11月30日、イスラエル系米国人の人質男性の映像を新たに公開。 男性はトランプ氏に向けて 「バイデン大統領と同じ失敗を犯さないでください」 と語り、人質解放に向けた取り組みを訴えていた。(共同) <産経抄>分断を生んだのはトランプ氏ではなくリベラル派 2024/11/30 5:00 https://www.sankei.com/article/20241130-HT6B3LWQIRIR3OQOMDRX4PQGHQ/?509463 昼時、テレビのニュース番組を見ると、米国社会の分断はトランプ次期大統領が作ったかのように論じていた。 確かに、対抗馬だったハリス副大統領も演説で 「トランプ氏は国民を分断し、互いを恐れ合うようにした」 と述べていたし、日本のマスコミにも分断を深めたのはトランプ氏と断じる論調は多い。 とはいえ、本当にそうだろうか。 「トランプ氏が分断を生んだのではなく、米社会の分断がトランプ大統領を生んだ」。 バイデン大統領が就任する前の令和3年1月、安倍晋三元首相は抄子に語った。 そして続けた。 「その分断を作ったのはリベラル派であり、オバマ政権の8年間だった」。 安倍氏は、オバマ政権下ではリベラル派がわれこそ正義とばかりにポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)を過剰に振りかざしてきたと説明した。 その結果、保守派は本音を隠して疎外感を味わい、偽善を排したトランプ氏の登場を歓迎したのだという。 その通りなのではないか。 バイデン政権も同様にポリコレを国民に押し付け、非合法移民を無軌道に受け入れ、LGBTなど性的少数者の権利を女性が身を守る権利の上位に置いた。 今回のトランプ氏の圧勝は、行き過ぎたリベラル政策への反動だと言える。 岸田文雄前首相はこのバイデン路線に従い、静かに放っておいてほしい当事者を含め、誰も本気で喜ばないLGBT法を成立させた。 保守票を減らしてまで強行したわけだが、トランプ氏は 「性別は2つだけ」 と主張しており、米共和党は過激なリベラル政策には断固反対との立場である。 米国をはじめ世界で揺り戻しが起きているのに、日本ばかりがこのまま行き過ぎたリベラル路線を突っ走るのは滑稽極まりない。 田村秀男「お金は知っている」 中国の逃げ道塞ぐトランプ氏の高関税砲♂I回ルートも封じる構え 中国の対外黒字、実は全面的に米国の対中貿易赤字が支えに 2024.11/22 06:30 https://www.zakzak.co.jp/article/20241122-YM46AJHTBVJCTG53N6DFSS7EMA/ 本欄前回では、トランプ米第2次政権がぶっ放すと宣言している対中高関税は、莫大な関税収入増をもたらし、無理なく大型減税の財源を確保できると指摘した。 では、中国の習近平政権に及ぼす衝撃はいかばかりか。 トランプ氏は中国からの輸入品に対して60%以上、日本など中国以外からの輸入品には一律10%以上の追加関税を宣言してきた。 トランプ氏は、中国が台湾封鎖を強行するなら150〜200%の関税をかけると宣言済みだ。 また、中国企業がメキシコからの迂回輸出で高関税適用を回避するなら、メキシコからの対米輸出に100%の追加関税をかけると息巻いている。 2017年に発足した第1次トランプ政権は中国製品に対し、概ね10〜25%の制裁関税を掛けたが、中国側はメキシコやベトナムなど東南アジア経由で対米輸出減を防いだ。 第2次政権はその迂回ルートも封じる構えだ。 米ゴールドマン・サックスの中国調査部は60%の対中追加関税は中国の国内総生産(GDP)を2ポイントも押し下げると試算した。 スイスUBSエコノミストも中国の成長率は半減すると見ている。 無理もない。 2022年に本格化した不動産バブル崩壊は底が見えない状況が続き、住宅相場下落は今年2024年になって、上海、北京など巨大都市でも加速している。 住宅など不動産開発投資を中心する固定資産投資は中国GDPの5割前後を占めるが、昨年2023年は前年比12%減で、今年2024年も低迷が続く。 中国金融モデルは、流入する外貨を中国人民銀行が全面的に買い上げ、人民元資金を供給するのだが、バブル崩壊不況を受けて資本逃避が急増し、経常収支の黒字分相当額が雲散霧消している。 外国からの直接投資や証券投資も激減し、金融緩和に必要な外貨が不足しているため人民銀行は国債買い上げを伴う金融の量的拡大に踏み切れず、中央政府は大規模な財政出動が困難だ。 習近平政権の窮余の一策が電気自動車(EV)、鉄鋼、太陽光発電装置などの大増産による安値輸出攻勢だが、EVなどの製品で米欧から制裁関税をかけられているし、その他の国々からもダンピング提訴を相次いで受けている。 その結果、中国の輸出は頭打ちになっている。 そこに、トランプ砲による追い打ちが襲いかかるとどうなるか。 グラフは中国の主力の外貨獲得源である貿易など経常収支黒字と米国の対中貿易赤字の推移である。 カンのよい読者ならすぐに分かるだろう。 中国の対外黒字は実は全面的に米国の対中貿易赤字で支えられている。 高関税のために迂回輸出を含めた対米貿易黒字が激減すれば、中国の経常収支黒字は大幅に縮小する。 外貨頼みの中国金融は破綻の危機に直面する。 やけっぱちになって台湾に侵攻しようものなら、米国から150%以上の追加関税を受け、中国経済は沈む。 習政権が生き延びるためには、強権体制を改めて自由化して外資を呼び戻し、台湾海峡の平和を約束するしかない。 (産経新聞特別記者 田村秀男) 田村秀男「お金は知っている」 破天荒に見えて実は周到なトランプ流対中高関税≠フからくり 増えた関税収入で「米国を再び偉大に」の目玉、減税策の税収減を賄う 2024.11/15 06:30 https://www.zakzak.co.jp/article/20241115-QQMUT6C3I5PRDAR5MLIC3NQ2J4/ 先の米大統領選で圧勝したトランプ前大統領の発言は粗野で破天荒のように感じる向きが少なくないが、実は用意周到に計算されている。 トランプ氏は大統領選挙期間中、中国からの輸入品に対して60%以上、日本など中国以外からの輸入品には一律10%以上の追加関税をかけると宣言してきた。 対中高関税は第1次トランプ政権(2017年1月から4年間)が仕掛けた米中貿易戦争の米側の主力武器で、バイデン現政権にも引き継がれた。しかし、その「戦果」は米側にとっては極めてはかばかしくない。 米国の貿易統計で23年と17年を比較してみると、米国の対中貿易赤字はそれぞれ2790億ドル、3750億ドルと1000億ドル近く減っているが、世界全体に対する米赤字は各1兆600億ドル、8050億ドルと2000億ドル以上も増えている。中国側は東南アジアやメキシコなどを経由する迂回(うかい)輸出を急増させたからだ。米中貿易戦争は19年12月に「休戦」となったが、中国側が2000億ドルと約束した米国からの輸入増は23年の17年比で約180億ドルにとどまっている。高関税を中心とする米国の対中強硬路線は、米国の貿易赤字縮小や対中輸出増には結びついていないことは明らかだ。 それでもなお、来年2025年1月に復権するトランプ氏は何故対中高関税に拘るのか。 その答えは減税財源確保にある。 2018年勃発の貿易戦争では、中国製品について概ね10〜25%の追加関税を掛けたが、今回は60%以上にするとトランプ氏は息巻いている。 中国以外への10%、中国への60%追加関税が、来年2025年1月発足の第2次トランプ政権で実施される場合、米国の関税収入はどれだけ増えるのか。 米国の2023年の輸入額を基に粗計算してみると(グラフ参照)、中国以外が約2680億ドル、対中国が約2560億ドルで合計5200億ドル余に達する。 「MAGA(米国を再び偉大に)」 を標榜するトランプ氏が米有権者を引き付けた目玉は減税である。 トランプ氏は法人税率の引き下げや、チップ・社会保障給付金・超勤手当への非課税措置、自動車ローン金利と州・地方税分の税控除などを約束してきた。 米議会の超党派組織 「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によれば、こうした減税案は米財政赤字を10年間で約4兆ドル、年平均で4000億ドル増やすことになる」 「だが、高関税による税収増で、法人や個人向け減税に伴う税収減を十分賄える計算になる」 「しかも、追加関税は、輸入品価格に上乗せされるので、消費者のフトコロを直撃するが、その分、減税によって消費者に還元させることができる」 「こう見ると、トランプ流高関税と減税の組み合わせは上手く辻褄が合ってくる」 「MAGA」 の決め手が高関税なのである。 米メディアは高関税は物価を押し上げるし、減税はインフレを高進させると問題視しているが、輸入物価上昇は消費を実質的に抑えるので、家計向けの減税で需要を喚起するのは経済学的にも合理的な選択なのだ。 (産経新聞特別記者) 中国はトランプ氏の返り咲きに「落胆」 対中関税引き上げは、停滞経済への「とどめの一撃」か 教えて!石平先生 2024/11/20 7:00 https://www.sankei.com/article/20241120-BSMMWTOLNRNPJJT37JZEX7ILS4/ 2024年11月5日投開票の米大統領選で、共和党候補のトランプ前大統領が民主党候補のハリス副大統領を破り、再選を果たしました。 第1次政権で貿易、安全保障をはじめ、各分野で対中強硬姿勢を取ったトランプ氏の返り咲きについて、中国の習近平政権はどう受け止めているのでしょうか。 今後の米中関係や中国の対日外交の見通しと合わせて、石平さんの見解を聞きました。 中国の社会や政治、歴史などについてのご質問をoshiete@sankei.co.jpまでお寄せください。 ーー接戦が予想された米大統領選は、トランプ氏の圧勝に終わりました。中国はこの結果をどう思っているのでしょう 落胆を隠せないといったところでしょうか。 中国の最初の反応を見れば大体分かります。 トランプ氏の当選が確実になったのは東アジアの時間帯の2024年11月6日午後でしたが、中国外務省は2024年11月6日深夜に簡単なコメントを出しました。 「我々は米国国民の選択を尊重し、トランプ氏の大統領当選を祝賀する」。 これが全文です。 祝意を表すならもう少し長くてもよいのに、必要最小限のことしか言っておらず、どう考えても本心から祝っていませんね。 個人と個人の関係で 「あなたの選択を尊重するよ」 と言えば 「私は喜ばないけれど、あなたの選択だから仕方ない」 というニュアンスになるのではないでしょうか。 この一言が習政権の本音を表しています。 コメントが出たタイミングもポイントです。 中国外務省が公式ホームページに報道官のコメントを掲載したのは2024年11月6日午後11時半。 興味深いことに記者の質問に答える形式でした。 そんな時間にわざわざ記者会見を開いたわけではないでしょうからコメントを出すために架空の質問に答える形式を取ったみ見られます。 中国の2024年11月6日午後11時半は、米国では投開票翌日の2024年11月6日午前の時間帯です。 トランプ氏の当選に落胆しつつも、祝賀メッセージが遅れてトランプ氏の機嫌を損ねてもいけない、という判断があったと思われます。 ーー早速、気を使っているわけですね 中国の官製メディアの反応も総じて抑制的です。 中国国営新華社通信と人民日報系の環球時報は2024年11月7日から8日にかけて、それぞれ評論員文章と社説を出しましたが、いずれも主題はトランプ氏ではなく、習氏がトランプ氏に祝意を伝えたことを踏まえて、中米関係は大事だよ、仲良くしよう、という内容でした。 面白いことに2つの記事は、習氏が祝意を伝えたことを説明する件にしか、トランプ氏の名前が出てこないのです。 名前に触れないくらいですからトランプ氏を評価もしなければ、批判もしない。 何をしでかすか分からないものはできるだけ刺激したくない、という印象を受けました。 ーーそうした中国の反応は、やはり第1次政権の記憶ゆえでしょうか 振り返ると米中関係は、民主党のオバマ政権当時は蜜月の時代でした。 習氏は国家主席に就任後、間を置かず訪米し、オバマ氏とノーネクタイで2日間に渡って会談しました。 あの頃、中国は新型大国関係という概念を持ち出し、中国と米国で世界を仕切ろうとやる気満々でした。 安倍晋三政権にはほとんど見向きもしなかった。 米国の対中姿勢が完全に変わったのは2017年に誕生した第1次トランプ政権以降です。 制裁関税からはじまり、第1次政権の末期には中国が新疆ウイグル自治区で行っている弾圧を当時のポンペオ国務長官が 「ジェノサイド」(民族大量虐殺) と認定して批判しました。 民主党のバイデン政権もトランプ氏とアプローチこそ違えど、中国を封じ込める方向性は一緒でした。 オバマ政権の頃のような米中関係に戻ることはもはやないでしょう。 ただ、習氏とすれば、まだバイデン氏やハリス氏の方が取っ組みやすい相手だったかもしれません。 彼らとは対話をしながら対立を管理できる余地があったと思いますが、トランプ氏は、中国に対して何をやり出すか予測がつきません。 既にトランプ氏は、中国製品に新たに一律60%の関税を課す方針を示しています。 これは、米国市場から中国製品が締め出されることを意味します。 中国経済はただでさえどん底の大不況ですから、トランプ政権が対中関税措置を実行すれば、トドメの一撃になるかもしれません。 中国当局が一番危惧しているのは失業の拡大です。 中国の若年層(16〜24歳、学生を除く)の2024年9月の失業率は公表データで17・6%に達しました。 そうした状況で中国製品が米国市場から締め出されれば、中国の輸出企業の倒産が増え、外資は生産拠点を中国以外の第三国に移します。 結果として失業率の悪化に拍車がかかり、若者を中心とした失業者らの不満が爆発するかもしれません。 ーートランプ政権の顔ぶれはどうでしょう 副大統領になるJ・D・バンス上院議員は大の中国嫌いで知られ、 「最大の脅威は中国」 と公言している人物です。 トランプ氏がバンス氏を副大統領候補に選んだ時点で、第2次トランプ政権の対中政策は第1次政権の時より厳しくなることはあっても、優しくなることはないと中国も理解したはずです。 それに国務長官に起用される共和党のマルコ・ルビオ上院議員、大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に就任する予定のマイケル・ウォルツ下院議員、通商代表部(USTR)への再登板が伝えられるロバート・ライトハイザー氏は、対中強硬派中の強硬派です。 私は半ば冗談で、外交、軍事、貿易で習政権を追い詰める3剣士が揃ったと言っています。 トランプ第2次政権で中国に一番優しいのは、実はトランプ氏かもしれません。 ーー対米関係がより厳しくなると、中国は日本への接し方を変えてくるかもしれませんね 米国と仲良くなった時は日本を叩くのが中国の伝統的な外交戦略です。 逆に米国との関係が悪くなればなるほど、日米の間に楔を打ち込み、日本を取り込もうとしてくると思います。 米国第1主義のトランプ政権に中国が期待しているのは、米国と同盟国の関係悪化です。 日本だけでなく、特に北大西洋条約機構(NATO)との関係に亀裂が入るのを望んでいます。 米国とNATOに不協和音が出たら欧州連合(EU)を取り込もうとするでしょう。 日本は中国の手に乗って利用されないよう、警戒しなければいけません。 余りに中国に融和的になると、今後はトランプ政権との関係が悪くなりかねないからです。 米国こそ日本にとっての最重要の同盟相手だという当たり前の外交の基本を、改めて押さえておく必要があります。 欧州、第2次トランプ米政権に備える ウクライナとNATOの行方は 世界を知るキーワード 2024/11/16 10:00 https://www.sankei.com/article/20241116-GFVZ76ONIJMA5JVAZAJ7DNJ35M/ ‘President Trump’s leadership will be key to keeping our Alliance strong.’ : Mark Rutte 「彼の指導力は同盟が強固であり続ける鍵となる」 ルッテNATO事務総長 2024年11月5日の米大統領選で返り咲きを果たしたトランプ次期大統領は、国際情勢の最大懸案の1つであるウクライナ戦争をどう収拾し、北大西洋条約機構(NATO)とどのように連携していくのか。 ロシアや中国、北朝鮮といった専制主義勢力への対抗が世界規模の安全保障上の懸案と化す中、NATOは第2次トランプ政権を欧州の対露防衛に積極関与させていく方策を懸命に探っている。 ■国防費増額は必至 「トランプ氏に米大統領当選への祝意を伝えたところだ」 「今回も同氏の指導力は私たちの同盟が強固であり続ける鍵となる」 NATOのルッテ事務総長は2024年11月6日、トランプ氏が当選を確実にしたのを受け、X(旧ツイッター)への投稿でいち早く同氏の当選を祝福した。 ルッテ氏はまた 「トランプ氏と一緒にNATOを通じて力による平和を改めて前進させるのを楽しみにしている」 とし、同氏が欧州の対露防衛に向けてNATOの役割を重視する立場を取るよう期待を示した。 こうした 「歓迎」 の公式声明とは裏腹に、NATOを構成する欧州主要国の間ではトランプ氏の復権を警戒する声が少なくない。 英国では、トランプ氏の勝利は英国にとり「悪い」とする回答が55%に上り、「良い」18%を大きく上回った。 フランスでも同氏の勝利で米仏関係が「悪くなる」との答えが48%だった一方、「良くなる」は7%にとどまった。 ドイツでは同氏が世界に与える影響について81%が「憂慮する」と答えた。 欧州のNATO加盟国は来年2025年1月に発足する第2次トランプ政権に関し、ウクライナに対するロシアの侵略戦争をプーチン露政権の意に沿う形で強引に幕を引くこと、そしてNATO脱退などで欧州防衛への関与を大幅に低下させることをいずれも阻止するのを至上課題に位置付けている。 トランプ氏は1期目の在任中、 「欧州のNATO加盟国が相応の国防費を負担せず、安全保障を米国にただ乗りしている」 として不満を表明してきた。 トランプ氏の大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたジョン・ボルトン元国連大使が2020年に発表した回顧録によると、トランプ氏は2018年7月のNATO首脳会議で、他の加盟国が翌年2019年1月までに国防費を大幅に増額しないのなら脱退すると通告しようとしたため、ボルトン氏が押しとどめたという。 ボルトン氏は今年2024年11月4日のXへの投稿で、米国のNATO脱退は 「破滅的な過ちとなる」 と指摘しつつ 「第2次トランプ政権下で現実に起こり得る事態だ」 と警告した。 一方、ヒーリー英国防相は2024年11月11日、英スカイニュースの番組に出演し 「米国の脱退は想定していない」 「米国は同盟の重要性を認識している」 との楽観的な見通しを明らかにした。 ただ、ヒーリー氏は米国をNATOに繋ぎとめる前提として、欧州の加盟国が国防費の負担を一層増やす必要があるとも指摘。 NATO加盟32カ国のうち今年2024年年末までに国防費の支出を最低でも国内総生産(GDP)比2%とする目標に達するのは23カ国に上る見通しで、NATOはこうした実績を示してトランプ氏に理解を求める考えだ。 だが、専門家らはトランプ氏が一層の支出拡大を求めてくるのは必至と見ており、同氏が国防費を材料にNATOを揺さぶりにかかる公算は大きい。 加えて、トランプ氏は欧州主要国が貿易分野で米国から不当な利益を得ているとして中国と並んで欧州連合(EU)に高関税をかけて貿易赤字の解消を目指しているとされ、米欧関係は経済と安全保障の両方で冷却化が進みかねない。 ■ウクライナの行方 そして、トランプ氏の真価が実際に問われるのは、同氏が今後、欧州での戦火の拡大を阻止するために何をすべきなのかを正確に理解しているかどうかだ。それはトランプ氏がウクライナ戦争にどう取り組んでいくのかにかかっている。 ウクライナ戦争をめぐっては、中国がロシアの戦争経済を下支えしているほか、イランも無人機などの兵器をロシアに供給している。さらに北朝鮮が軍部隊をウクライナの前線に派兵し、欧州・大西洋地域とインド太平洋地域は互いに連関する安全保障上の懸案を共有している実態が改めて明白となった。 トランプ氏は選挙期間中、「プーチン大統領とは非常に良好な関係にある」として、ウクライナ戦争は「迅速に解決できると思う」などと述べてきた。 米ユーラシア・グループによる今年9月の世論調査では「NATOはウクライナ戦争の対話終結を目指すべきだ」との意見への賛成回答が66%に上り、反対34%を上回った。 だが、複数の米紙報道によれば、トランプ氏はロシアがウクライナの占領地域を維持する形での停戦案を支持しているとされる。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、ウクライナが求めるNATO加盟を20年間棚上げにし、ロシアとウクライナの間に非武装地帯を設けるなどの案も取り沙汰されているという。 現時点で次期米政権の政策方針は確定していないが、本来の停戦とは露軍がウクライナから即時全面撤退し、ウクライナが領土を奪還することだろう。現在の前線を固定化し、将来的な領土の返還が望めそうにない停戦案をウクライナの最大支援国である米国が後押しすべきでない。 また、仮に米紙が伝えるような停戦が実現したとしても、一定の期間を経て露軍が部隊を再編成し、侵略行動を再開させる恐れは強い。停戦の有無にかかわらず、次期米政権および欧州諸国はこれまで通りウクライナの勝利を確実にするための軍事支援を遅滞なく続けなくてはならない。 ■ロシアを利する愚 プーチン露政権が如何なる形であれウクライナ侵略により利益を得ることは、ロシアと国境を接する他の欧州諸国、ひいては欧州全域に対する領土的野心を誘発しかねない。 だからこそトランプ氏は、NATOに対する懐疑的な態度を自制し、米国の欧州防衛は揺るぎないとする立場をプーチン氏に誤解の余地なく繰り返し伝える必要がある。 ウクライナが欧州・大西洋地域とインド太平洋地域の共通の懸案と化した以上、ロシアを利するような対応は、台湾侵攻を窺う中国や、武力による南北統一の夢を完全には諦めていないように見える北朝鮮を冒険主義的な行動に駆り立てる危険を孕んでいる。 NATOなど欧州の同盟国を軽視するような態度も、インド太平洋地域での米国を軸とする同盟の枠組みを揺るがしかねない。 1期目に続いて次期政権でも中国を最大の地政学的な懸案と位置付けるトランプ氏としては、ウクライナ戦争を巡る錯誤が今後の対中戦略にも深刻な影を落としかねないことを肝に銘じるべきだろう。 <主張>拉致の解決 トランプ氏復帰を好機に 社説 2024/11/15 5:00 https://www.sankei.com/article/20241115-JLHPR6D5ZVISHIQBKZ5CWZKFWU/ 当時13歳の横田めぐみさんは昭和52年11月15日、新潟市の中学校からバドミントン部の練習を終えての帰路、北朝鮮の工作員に拉致された。 前日の昭和52年11月14日は父、滋さんの誕生日だった。 めぐみさんはお祝いに茶色の櫛を贈り、翌日、姿を消した。 あれから47年の長く残酷な歳月があり、この間に、最愛の娘との再会を待ち望んでいた滋さんも亡くなった。 母の早紀江さんは 「言いようのない苛立ちがある」 「政府は本気で取り組んでほしい」 と話している。 石破茂首相は拉致問題を 「一時も揺るがせに出来ない人道問題」 と述べた。 その言葉を行動で示してほしい。 米国では、トランプ氏が激戦を制し、大統領に復帰する。 前回の政権時を思い出したい。 国連総会の一般討論演説でトランプ氏は 「日本の13歳の少女が拉致された」 「彼女はスパイの養成に利用された」 「北朝鮮は凄まじい人権侵害を行っている」 と非難した。 めぐみさんのことだ。 2度の来日では拉致被害者の家族会と面会し 「心が引き裂かれた」 と涙を見せた。 金正恩朝鮮労働党総書記とは2度の米朝首脳会談に臨み、拉致に言及して 「顕著な進展を見せていない」 と責めた。 金正恩氏が言い逃れを繰り返す緊迫した場面もあったとされる。 会談後の会見でトランプ氏は拉致を取り上げた理由について聞かれ、 「安倍晋三首相の最重要課題でもあるからだ」 と述べた。 これらはトランプ氏が一面、情の人であることを示すと共に、家族会の粘り強い働き掛けや、当時の安倍首相による緊密な外交の成果と言えた。 石破氏はアジア太平洋経済協力会議(APEC)などに出席するため、南米に向かった。 帰国の途中でトランプ氏との会談も調整中だという。 石破氏には直接会談で拉致問題への怒りを何としても共有し、トランプ氏を再び拉致問題解決への主要舞台に引き上げてほしい。 それが 「一時も揺るがせに出来ない」 最優先課題である。 平成14年9月、訪朝した当時の小泉純一郎首相に金正日国防委員長が初めて拉致を認めて謝罪した背景には、米ブッシュ政権が北朝鮮をテロ支援国家に指定し、 「悪の枢軸」 と名指しした強い圧力があった。 忘れてはならない歴史の教訓だ。 宴のあと「戦間期」が終わる トランプ氏完勝で時代は再び自国第一主義に 宮家邦彦 宮家邦彦のWorld Watch 2024/11/14 9:00 https://www.sankei.com/article/20241114-FBLIPRHC7BJN7NLUUVNE3IALOI/ 2024年11月5日の米大統領選挙はトランプ候補 「完勝」 だった。 娘夫婦の住むサンフランシスコや旧友の多いワシントンDCは 「お通夜の晩」 状態だったそうだ。 彼らの疑問や焦燥感はよく分かる。 ハリス候補は、 〇なぜ経済・移民問題で具体策を示さなかったのか 〇なぜ人工中絶問題に重点を置いたのか 〇なぜ男性、黒人、ヒスパニック系票を軽視したのか 〇なぜ民主主義の危機ばかりに警鐘を鳴らしたのか 〇なぜバイデン政策は「変えない」と口走ったのか… 等々、友人たちの失望と怨嗟の声が聞こえてくるようだ。 ■ハリス候補が負けた選挙 古今東西、選挙は必ずしも「勝つ」必要はない。 相手が「負け」ればよいのだから。 ではなぜハリス敗北なのか。 今年2024年夏、彼女は千載一遇の機会を得た。 バイデン撤退によりハリス候補は見事「化けた」。 政治家は 「時代が作る」 の典型だが、選挙では二の矢、三の矢を射ないと、 「化けた」 政治家の 「化けの皮」 はいずれ剝がれてしまう。 彼女は、 〇インフレと移民という有権者の不満に応えなかった 〇バイデン政権の政策との「差別化」に失敗した 〇それで男性、黒人、ヒスパニック系票を取りこぼした などと批判されたが、準備期間の短いハリス陣営に対し、トランプ陣営選挙参謀は見事だった…。 とは言っても、今の筆者の関心はハリス敗北の 「内政的理由」 ではなく、その 「世界史的意味」 である。 ■歴史は韻を踏む 以前、1930年代の日本と2020年代の中国の歴史は 「韻を踏む」 と書いた。 今回も同様の分析を試みる。 現時点で筆者が考える 「仮説」 は次の通りだ。 〇ハリス候補の敗北は、第二次世界大戦後、冷戦時代を経て、欧米諸国で優勢だった 「啓蒙主義・自由主義的なグローバリズム」 の衰退を象徴する歴史的転換点ではないのか 〇トランプ再選は、単なる米内政のエピソードではなく、今後国際政治の趨勢が従来の 「国際主義」 から 「民族第一主義」 や 「ポピュリズム」 に復帰する前兆ではないのか 〇されば、今や第二次大戦後80年間続いた 「戦間期」 は終わり、再び民族国家間の 「弱肉強食」 の時代に戻りつつあるのではないか より詳しく説明しよう。 ■「民族国家」への回帰 近代 「民族国家」 の誕生は1648年のウェストファリア条約がきっかけだ。 欧州で30年続いたカトリックとプロテスタントの宗教戦争が終わり、領土相互尊重と内政不干渉による 「民族国家」 間の新秩序が始まったからだ。 国家間の争いが地球規模に拡大したのが1914年から4年続いた第一次大戦である。 欧州は荒廃し、不戦条約が結ばれ、国際連盟もできたが、ドイツに巨額の賠償金が課され、設立を提唱した米国は国際連盟に加入せず、改革は中途半端に終わった。 1939年の第二次大戦が1945年に終わり、自国第一主義への反省から、国際社会で改革の機運が復活する。 マーシャルプランや国際連合設立で国際主義は定着していった。 ■トランプ時代の意味 ところがソ連崩壊後はIT化・グローバル化が急速に進み、格差と移民の拡大で庶民の不満と憤怒は極左と極右へ流れた。 1945年以来の啓蒙主義的国際化・自由化政策は否定され始めた。 時代は再び 「自国第一主義」 に回帰しつつあるのか。 これこそが 「ハリス敗北」 の世界史的意味である。 第一次、第二次大戦の 「戦間期」 は約20年。 今度の 「戦間期」 を80年で終わらせてはならない。 そのための戦略を考えることこそが政治指導者の役割ではないか。 【プロフィル】宮家邦彦 みやけ・くにひこ 昭和28(1953)年、神奈川県出身。 栄光学園高、東京大学法学部卒。 1953年外務省入省。 中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。 第1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。 現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問。 <正論>経済と国家戦略の本筋見失うな 麗澤大学客員教授・江崎道朗 2024/11/13 8:00 https://www.sankei.com/article/20241113-V46XRT33N5ICVEF4V437I5URKU/?165037 ■トランプ次期政権への備え 第2次トランプ共和党政権が誕生することになったが、相変わらず批判的な報道が多い。 8年前の2016年の時もそうだったが、トランプ政権になると米国経済も国際社会の秩序も大混乱に陥ると多くの有識者たちが警鐘を鳴らしたが、そうはならなかった。 「防衛努力」 を怠ってきた日本は愛想を尽かされ、場合によっては日米安保条約も破棄されるかもしれないと言われたが、実際は安倍晋三政権が掲げた 「自由で開かれたインド太平洋」 構想にトランプ政権も同調するなど日米同盟は強化されることになった。 日米関係はむしろオバマ民主党政権の時の方が悪かった。 2009年に誕生した鳩山由紀夫民主党政権が沖縄の在日米軍基地移設に関してそれまでの協議を反故にするかのような発言を繰り返し、米国の不信感を買ったことも大きかった。 加えてデフレ不況が悪化し、日経平均株価は9000円前後と低迷した。 一方、当時の中国経済は絶好調で 「昇りゆく中国と沈みゆく日本」 「今後のアジアのリーダーは中国だ」 として米国の外交専門家たちは米中二極支配体制を指す 「米中G2構想」 を喧伝した。 よって第2次安倍政権が発足した2012年12月の時点で、日米関係はかなり冷え込んでいた。 日米関係を改善させるためには大きな課題が2つあった。 1つは、デフレ不況に伴う日本の長期低落傾向を何とかすることだ。 沈みゆく日本のままでは米国に相手にされないからだ。 そこで安倍政権はまず経済の立て直しに動いた。 大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略(規制緩和)の3本の矢に代表される経済政策であるアベノミクスを提唱し、日本銀行による大幅な金融緩和に踏み切った。 その影響で日本の株価は急上昇し、再び経済成長を始めた。 民主党政権の2011年、東日本大震災の影響もあって約497兆円まで落ち込んだ名目GDPも増加に転じ、今年2024年は600兆円を超える勢いだ。 経済成長を背景に高い支持率を獲得した安倍政権に対してオバマ政権も徐々に対応を変えざるを得なかった。 ■安倍政権の成果忘れず 日米関係を冷え込ませていたもう1つの要因は、世界戦略の違いだった。 オバマ政権は米中連携重視派だったが、第2次安倍政権は中国の経済的軍事的台頭に対峙するつもりだった。 2013年12月、安倍政権は戦後初めて自前の国家安全保障戦略を策定した。 それまで日本は国防だけでなく対外戦略も米国に依存していた。 だが日本は日本のやり方でやっていくとして自前の国家戦略を定め、中国などに対峙する態勢構築を始める。 具体的には自国の防衛とインテリジェンス部門の強化に踏み切ると共に、自由主義陣営との関係強化に努めた。 同12月、特定秘密保護法を制定した。 これは防衛、外交、スパイ防止、テロ活動防止の4分野で、安全保障に支障を来す恐れのある情報を公開しないことができるようにし、かつ秘密を漏らした公務員などに対して最長10年の懲役刑を科すものだ。 これに基づいて外国との情報共有を進め、米、NATO、仏、豪、英に続いて印、伊、韓、独などと情報保護協定を締結し、軍事技術だけではなく有事の際の共同作戦に必要な情報も共有できるようになった。 ■多国間軍事・情報協力強化 2015年9月には平和安全法制を制定した。 これは集団的自衛権の限定的行使を可能とすると共に自衛隊の活動範囲を拡大し、他国軍への後方支援活動を強化するものだ。 この法律に基づいて我が国は物品役務相互提供協定(ACSA)を米、豪、英、仏、独、加、印と結んだ。 これは軍同士が互いに物品やサービスを提供し合う協定だ。 更に円滑化協定(RAA)を豪、英、比と締結した。 これは一方の軍隊が他方の国を訪問して協力活動を行う際の手続きおよび同部隊の地位等を定めたものだ。 このように第2次安倍政権は自由主義陣営内での外交・軍事・情報協力体制を強化し、 「自由で開かれたインド太平洋」 構想を推進してきた。 こうした実績があったからこそトランプ氏も安倍氏を重視したのだ。 岸田文雄政権はこの国家戦略を全面的に改訂し、サイバー、宇宙、ミサイル、ドローン、認知戦など 「新しい戦い方」 に対応すべく日米同盟の 「現代化」 を始めた。 台湾有事を見据えて日米同盟は更に強化されていくことになろう。 ただし残された課題も多い。 インテリジェンス部門の拡大強化、台湾との軍事・情報部門の連携、何よりも憲法9条改正をはじめとする国防の基本法制の整備が必要だ。 我が国は今、右往左往している場合ではないのだ。 アベノミクスに基づく経済成長と安全保障の強化に専念する時期なのだ。 それが日米関係を安定させ、かつ自由で開かれたインド太平洋を維持・発展させていくことになる。 本筋を見失わないようにしたいものだ。 イスラエル首相、トランプ氏再登板でも板挟み 西岸併合なら闘争激化、ガザ北部駐留か 「トランプ2・0」と世界E 2024/11/16 10:00 https://www.sankei.com/article/20241116-M7GUORCCSZPKHDCDV4RMUQWOCM/?outputType=theme_uspe イスラエルのネタニヤフ首相はトランプ前米政権と蜜月関係を築いた。 トランプ次期大統領は1期目で、国際社会の懸念を顧みずにイスラエル偏重の政策を主導し、エルサレムをイスラエルの首都と認定して西部テルアビブから大使館を移転した。 また、イスラエルとアラブ4カ国の関係正常化を仲介し、パレスチナ問題の風化をもたらした。 これ以上ない支援者の再登板で、ネタニヤフ政権の米次期政権への期待は膨らむばかりだ。 トランプ氏も更にイスラエルに肩入れする可能性がある。 ■イスラエルへの肩入れが進む可能性 その兆しは、駐イスラエル大使にハッカビー元アーカンソー州知事を指名したことにも表れている。 ハッカビー氏は17歳の時から100回ものイスラエル訪問歴があるとされる熱烈な支持者だ。 イスラエルは第3次中東戦争(1967年)以来、国連安全保障理事会決議に反してヨルダン川西岸地区を占領しているが、ハッカビー氏は 「そんな事実はない」 と否定。 イスラエルによる西岸併合を容認する構えだ。 熱心なユダヤ教徒にとって、聖書にも記述がある西岸は 「神から与えられた土地」 という重要な意味がある。 とはいえ、併合すれば国際的な孤立が深まることは確実だ。 西岸住民の8割超はパレスチナ人で、併合はユダヤ人への敵対心を刺激するため、第3次インティファーダ(反イスラエル闘争)に発展しかねないとの懸念も聞かれる。 イスラエル英字紙エルサレム・ポスト(電子版)は2024年11月13日付社説で、こうしたリスクを挙げて併合への反対を表明した。 一方、ネタニヤフ政権に加わる対パレスチナ強硬派の極右政党は、トランプ政権復活を前に併合を声高に主張している。 ネタニヤフ氏が利害をどう勘定するかが焦点だ。 ■トランプ氏、2025年1月20日までのガザ停戦求める 米政権交代は、パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘にも影を落としている。 トランプ氏は自らの大統領復帰を見込んで、来年2025年1月20日までの戦闘終結をネタニヤフ氏に求めてきた。 ガザへの物資搬入増加など、バイデン現米政権の数々の要請を受け流したネタニヤフ氏も、トランプ氏の意向は無視できないと言われる。 半面、ハマスと停戦すれば、組織壊滅まで戦うべきだと訴える極右政党が連立を離脱しかねない。 板挟みの難問を解くカギになりそうなのが、イスラエル軍が2024年10月初めにガザ北部の一部を包囲して始めた新たな軍事作戦だ。 激しい爆撃と食料流入の遮断で、多数のパレスチナ人住民が避難しつつある。 トランプ氏の就任に合わせて 「大規模戦闘の終了」 を宣言する一方、治安上の懸念を名目に北部に軍を常駐させ、対ハマス攻撃を続けるといったシナリオも想定される。 ■イランとの軍事衝突に懸念も パレスチナ人の政治評論家アイマン・リクブ氏は2024年11月14日、交流サイト(SNS)を通じた産経新聞の取材で 「トランプ氏が(次期政権の要職に)指名した面々を見ると、中東で続く戦争を止める気がないことが分かる」 と指摘し、イスラエル軍は可能な限り長くガザに居座ると予測した。 またイランを巡っては、 「テロ国家だ」 などと厳しく批判してきたルビオ上院議員が次期国務長官に指名され、トランプ氏が引き続きイランに敵対的姿勢で臨む方針が鮮明になった。 前大統領時代、トランプ氏は欧米などとイランが2015年に結んだ 「核合意」 を一方的に離脱し、対イラン経済制裁を復活させて 「最大限の圧力」 をかけた。 今年2024年10月には、イスラエルについて 「イランの核施設を攻撃すべきだ」 と語っており、米・イスラエルとイランの軍事衝突を懸念する向きもある。 中東の混乱はこれからが本番かもしれない。 欧州、対ロシアと米欧貿易でトランプ氏との関係難題 右派ポピュリズム勢力の台頭に拍車も 「トランプ2.0」と世界D 2024/11/15 11:00 https://www.sankei.com/article/20241115-744IDCKD2NKLTLHVI4AB7LE2J4/?outputType=theme_uspe 「米国の同盟国とは、クリスマスの夜に父親からプレゼントをもらう子供のようなものだ」 米大統領選が4年ごとに実施される度に、主要国の外交官や国際問題の専門家などの間では、こんな警句が飛び交うという。 クリスマスで子供は父親から何をもらおうと 「これが欲しかったんだ」 と嬉しがらなくてはならない。 同じく米同盟国は、誰が米大統領に当選しようと 「歓迎します」 と述べ、新大統領と良好な関係を築くことを宿命づけられている。 英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のサイモン・フレイザー理事長は 「欧州各国は押しなべて民主党のハリス副大統領の勝利を望んでいた」 とした上で、英独仏など欧州主要国の首脳が先を争うようにトランプ次期大統領に祝意を伝えるなどして関係構築に走ったのは 「正解だ」 と指摘した。 ■欧州首脳らは先を争うように祝意伝えたが だが、現実の問題として、欧州とトランプ次期政権の連携には多大な困難が伴うのは避けられない。 まず、ロシアによるウクライナ侵略への対応を含めた欧州の対露防衛に関しては、トランプ氏はロシアを利するのも辞さない態度でウクライナ戦争の早期終結を唱えており、ウクライナの勝利が欧州全体の平和と安定に繋がるとする欧州諸国の立場との乖離は明白だ。 貿易分野では、トランプ氏は欧州からの輸入品に10〜20%の関税を課すと主張している。 仮に実施されれば欧州連合(EU)が報復関税の導入に踏み切り、米欧の緊張が高まるのは必至だ。 トランプ氏が目指す中国への関税引き上げにEUが同調しなければ、関係悪化に拍車をかけかねない。 加えて、トランプ氏の再登板は政策だけでなく、欧州の政治思潮にも大きな影響を与える恐れが強い。 ■英労働党政権はトランプ氏と冷たい関係か 英ロンドン大経済政治学院(LSE)のピーター・トルボウィッツ教授(国際関係論)は、トランプ氏の返り咲きが 「欧州の反グローバル主義のポピュリスト(大衆迎合主義者)たちを力付け、勢い付かせることになる」 と予想する。 英国では、トランプ氏と親密な関係にある右派の大衆迎合政治家、ナイジェル・ファラージ氏がスターマー労働党政権とトランプ氏との仲介役を買って出るとの観測も浮上している。 ラミー英外相が過去にトランプ氏を 「ネオナチ」 などと批判していたことなどが影響し、次期米政権との関係冷却化が早くも指摘されているためだ。 ファラージ氏率いる右派政党のリフォームUKは2024年7月の総選挙で5議席を獲得する躍進を果たした。 ドイツでは2024年9月、旧東独地域の州議会選挙で極右政党が議席を伸ばしている。 フランスでもマリーヌ・ルペン氏が事実上率いる「国民連合(RN)」は、2024年6〜7月の総選挙で最終的に伸び悩んだとはいえ、仏政界の主要な勢力であり続けている。 トルボウィッツ氏は、トランプ氏の勝利が欧州の右派政党にも勢力拡大の 「連鎖反応」 を引き起こし、欧州政治を変えていくとした上で、こう強調した。 「第二次世界大戦後に築かれた自由な世界秩序が今も堅固だと信じている人がいるとしたら、そろそろ目を覚ます時期に来た」 韓国、トランプ氏と金正恩氏の頭越し妥協を警戒 核武装論も高まる可能性 「トランプ2.0」と世界C 2024/11/14 10:00 https://www.sankei.com/article/20241114-S4RWOAIHSZKGZKRCUCTQLECO7I/?outputType=theme_uspe トランプ米次期大統領は、安全保障政策の柱として1期目から 「力による平和」 の実現を主張してきた。 同じく 「力による平和」 を掲げるのが韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領だ。 尹氏はトランプ氏との2024年11月7日の初の電話会談で、日米韓の連携強化にはトランプ氏の1期目の寄与があったと評価。 同日2024年11月7日の記者会見では、訪韓した米上・下院の議員らから尹氏とトランプ氏は 「相性が合う」 と言われたことを紹介し、米次期政権と 「うまくやっていける」 と自信を見せた。 ゴルフ好きのトランプ氏との交流に備え、8年ぶりにゴルフの練習も始めたという。 ■米韓の「力による平和」には隔たり だが、両氏が掲げる 「力による平和」 の中身には乖離がある。 尹氏が 「自由民主主義の価値の共有」 という理念を重視するのに対し、トランプ氏は、自国の経済的利益を最優先してきた。 トランプ氏は2018年6月のシンガポールでの初の米朝首脳会談で、 「莫大な費用がかかる」 という理由から米韓合同軍事演習の中断を韓国側に一言の相談もなく即興で決めてしまった。 今回の大統領選の最中にも、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との親密さをアピールし、 「核兵器を持つ指導者と良好な関係を築くことは良い事だ」 と発言した。 韓国では、トランプ氏が北朝鮮を核保有国と認めた形で金氏と交渉を始め、米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発凍結と引き換えに制裁緩和に踏み切るのではないか−との懸念が持ち上がっている。 こうした国内の不安に対し、韓国外務省高官は2024年11月12日、米朝対話が再開されるとしても 「我々の立場が反映されるべきだ」 とクギを刺した。 韓国大統領府の申源G(シン・ウォンシク)国家安保室長がソウルでの国際会議で 「米次期政権と連携し、北朝鮮の非核化という目標を堅持していく」 と強調するなど、尹政権は国内の不安払拭に傾注している。 ■北の派兵問題でも難しい対応 それに加え、北朝鮮がウクライナを侵略するロシアに朝鮮人民軍部隊を派兵したことが、対北安保の状況をより複雑化させている。 尹氏は、北朝鮮の将兵が実戦経験を積み、ロシアが派兵の見返りに軍事技術を北朝鮮に移転させれば、 「韓国の安保の致命的な脅威となり得る」 との認識を示し、ウクライナへの攻撃用兵器の供与も排除しない考えを表明した。 しかし、トランプ氏はウクライナ侵略戦争の早期終結に向けた仲介に意欲を示している。 尹政権がウクライナへの兵器支援に舵を切った後で突如、ウクライナに不利な形で停戦となれば、支援はさして役に立たないままロシアとの決定的な関係悪化だけを招く。 韓国ははしごを外される形となりかねず、兵器支援の是非について判断を難しくさせている。 派兵した北朝鮮にとっても、トランプ氏再登板で不確実性が高まる。 ロシアに恩を売るために派兵したのに、早期停戦となればその効果は減じてしまうからだ。 北朝鮮が来年2025年1月のトランプ氏就任までに、ウクライナとの戦闘で戦果を上げようと切迫感にかられ、派兵規模を急拡大させる可能性も否定できない。 韓国世宗(セジョン)研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)朝鮮半島戦略センター長は、米国の国益を優先するトランプ氏の返り咲きで 「近い将来、米国が果たしてきた自由陣営を守る『警察』の役割を期待できない時代が来る可能性が高い」 と指摘。 韓国が独自に核武装すべきだという世論が国内で一層高まる事態は避けられないとの見方を示す。 ロシア「前回は裏切られた」とトランプ氏に疑念 ウクライナ停戦条件を見極めへ 「トランプ2.0」と世界B 2024/11/13 10:00 https://www.sankei.com/article/20241113-AOHPYDGRKNKDHM6YS6OPOFYSBY/?outputType=theme_uspe 米国のトランプ次期大統領について、ロシア外務省に近い専門家はこう話す。 「露政権内にはトランプが前回当選した2016年のような喜びのムードはない」 「トランプがロシアの立場をどこまで理解しているか、ロシアにとって望ましい振舞いをするのかどうかを疑っているためだ」 この専門家が言うように、2016年の米大統領選でプーチン露政権はトランプ氏の当選を大歓迎した。 ロシアは2014年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合し、当時のオバマ米政権と対立を深めていた。 ロシアに融和的と目されたトランプ政権の発足が、対露制裁の解除など関係改善に繋がると期待したのだ。 しかし実際には、トランプ氏は2017〜2021年の前回任期中、対露制裁を強化し、米国として初めてウクライナへの殺傷兵器の供与に踏みきった。 米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約や、偵察機による相互監視を定めたオープンスカイ条約も破棄した。 「トランプはロシアの安全保障に関心を持っていない」 「ロシアは期待を裏切られた」 と冒頭の露専門家は話す。 ロシアは2022年2月からのウクライナ侵略戦争で、ウクライナの降伏による 「戦勝」 を早期に達成したいと考えている。 今回の大統領選で、ウクライナ支援の継続を約束する民主党のハリス副大統領ではなく、早期の停戦を実現するとしてきたトランプ氏が勝利したことは、ロシアにとって 「悪くない結果」 に違いない。 それでも、ロシアは前回の 「失望」 からトランプ氏に過度の期待を抱いていない。 ロシアは自国の 「安全保障」 をウクライナ侵略の理由の1つに掲げている。 北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大やウクライナのNATO加盟希望を 「脅威」 としてきた。 米国はこうしたロシアの立場を尊重せねばならない、というのがプーチン露政権の言い分だ。 だが、ウクライナ侵略戦争の早期停戦を訴えるトランプ氏が、そうしたロシアの主張に理解を示すかどうか。 「トランプの最大の関心は中国抑止であり、ロシアとウクライナに停戦を求めるのも対中政策に注力するために過ぎない」。 露有力紙 「独立新聞」 はこんな懐疑的な見方を示している。 一部の米メディアによると、ウクライナ戦争終結に向けたトランプ氏の計画には、ウクライナのNATO加盟を20年間凍結するのと同時に、ロシアの再侵略を防ぐために米国が大量の兵器をウクライナに供与するとの内容が含まれている。 報道が事実だとすれば、この計画はウクライナの永続的な 「中立化」 や 「非軍事化」 を掲げて侵略戦争を始めたロシアに受け入れられるものではない。 プーチン氏は2024年10月24日、トランプ氏がウクライナ戦争終結に尽力するとしていることについて、 「そうした発言は誰からのものであろうと歓迎する」 と述べた。 2024年11月7日にも、停戦は実現できるとするトランプの発言を 「関心を払うに値する」 とし、ウクライナ情勢に関してトランプ氏と協議する意向を示した。 しかし、トランプ氏の見解を聞くことと、それを受け入れることは全く別問題だ。 ペスコフ露大統領報道官が2024年11月6日に述べた言葉は、トランプ氏に対するロシアの慎重な姿勢を端的に表している。 「紛争終結に関するトランプの発言は今、最終評価すべきものではない」 「米大統領はしばしば当選後に発言を変える」 「ロシアは具体的な発言や行動を注視した上で結論を下す」 中国、米大統領に関係なく「自立自強」へ強気 トランプ氏による同盟弱体化も期待 「トランプ2.0」と世界A 2024/11/12 10:00 https://www.sankei.com/article/20241112-JWBBDUE2NZP4FOIIBG4WRDRYHM/?outputType=theme_uspe 中国の交流サイト(SNS)ではトランプ米次期大統領を 「川建国同志」 と表記する人が多い。 「川」 はトランプ氏を中国語で 「川普」 と書くことにちなむ。 トランプ氏は、中国建国に匹敵する恩恵を与えてくれるのではないかとの期待が込められている。 対中強硬姿勢で知られるトランプ氏を 「建国同志」 と呼ぶ人が多いのはなぜか。 ■対中強硬派のトランプ氏が「同志」に? トランプ氏は中国製品に60%の関税を課す方針を示している。 米中の貿易関係者は今、 「第2次貿易戦争」 の勃発に身構えている。 政府系シンクタンク、中国社会科学院の張明・金融研究所副所長は2024年11月6日、 「関税の衝撃で2025年は中国の輸出に悪影響が生じる」 との分析を示した。 中国は不動産市況の悪化に伴う景気低迷に悩んでおり、貿易戦争の再発が 「泣きっ面に蜂」 となるのは確かだ。 ただ、対米輸出が中国の国内総生産(GDP)に占める割合は23年に2・8%である。 米国とのイデオロギー的な対立は誰が大統領になろうと不可避であり、それならば対中圧力を機に 「自立自強」 の態勢を整えようとの覚悟も中国には見てとれる。 2024年12月1日には、貿易相手国が合意に反して追加関税などの措置をとった場合、輸入品に報復関税を課せるとした関税法を施行する。 トランプ前政権期にはハイテク戦争も激化したことから、米欧の科学技術への依存脱却も進めている。 米大統領選の投開票が行われた今月2024年11月5日、習近平国家主席は湖北省を視察し、 「ハイレベルの科学技術の自立自強」 を急ぐよう檄を飛ばした。 実際、ハイテク戦争でトランプ前政権のやり玉に挙げられ、大打撃を受けた中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、基本ソフト(OS)などIT製品に不可欠な技術の国産化を進め、業績を回復させた。 中国紙、第一財経日報(電子版)は、米国による中国ハイテク企業への圧力について、逆に半導体などの 「国産化」 を加速させるとの見方を伝えた。 「一度国産代替をやり遂げれば、米国の制裁は無意味になる」 と強気だ。 ■「中国包囲網」は弱まるとの期待 米次期政権の外交・安全保障政策を巡っては、トランプ氏の 「米国第一」 主義や予測不可能性により、米国の同盟関係や対中包囲網が弱体化することへの期待が強い。 香港メディア「香港01」は、バイデン政権が進めた同盟国との連携強化をトランプ氏が覆せば 「中国に有益だろう」 と見込む。 香港紙、星島日報(電子版)もトランプ次期政権で 「国際的な中国包囲の『統一戦線』は縮小するだろう」 と予想した。 「東南アジアなどでは米国よりも中国を重視する人が増えている」 と日中外交筋は危惧している。 東南アジア諸国連合(ASEAN)の10加盟国の有識者らを対象にした年次調査では今年2024年、ASEANが米国と中国のいずれかと同盟を結ぶことを迫られた場合、中国を選ぶべきだとの回答が初めて米国を上回った。 ■台湾が「取引材料」なら悪くない 中国が「中米関係で最も重要で敏感な問題」とする台湾についてはどうか。 トランプ氏は中国が台湾に侵攻すれば 「150〜200%」 の関税を課すと発言している。 「香港01」は、トランプ氏が台湾を要衝ではなく取引材料と見做しているとし、 「関税を米国の台湾不介入に換えられるなら、これは中国にとって悪いことではない」 と指摘する。 中国が不安を拭い切れないのは、トランプ氏が中国に全圧力を集中させるため、ロシアのウクライナ侵略戦争を早期に終結させるとしていることだ。 上海外国語大の黄靖・特聘教授は論評で、米露関係が改善すれば 「中国の安保環境は極大的に悪化する」 とし、それを 「ニクソン・ショック2・0」 と呼んで警戒した。 1971年に当時のニクソン米大統領が、ソ連牽制などのために中国との電撃的な関係改善に動いた 「ニクソン・ショック」 になぞらえたのだ。 果たして、トランプ氏は 「建国同志」 となるのか否か。 それによって世界の形は大きく変わってくる。 トランプ氏が台湾軽視なら「疑米論」拡大 頼清徳政権に打撃、中国に好都合な展開も 「トランプ2.0」と世界@ 2024/11/11 10:00 https://www.sankei.com/article/20241111-FRS2NIKSPNKGXC2GOXGTHO3XWM/?outputType=theme_uspe 米国のトランプ次期政権が掲げる 「米国第一」 主義は、台湾海峡情勢を不安定化させるリスクも孕む。 「台湾は我々の半導体事業を盗んだ」 「そして彼らは(中国の脅威からの)保護を求めている」。 トランプ氏は2024年10月下旬、台湾への不満を露わにした。 2024年7月には 「台湾は9500マイル(約1万5000キロ)離れている」 「中国からは68マイル(約109キロ)だ」 と台湾防衛に懐疑的な姿勢まで示した。 もっとも第1次トランプ政権(2017〜21年)で米台関係は良好だった。 2018年には米台高官の相互往来を促す 「台湾旅行法」 が成立。 任期中の台湾への兵器売却は総額183億ドル(約2兆8千億円)に上り、バイデン政権の76億ドル(約1兆1600億円)を大きく上回る。 だが、第1次政権期に台湾の駐米代表を務めた高碩泰(せきたい)氏は、第2次政権を巡り 「人事や政策決定において大きな転換があるだろう」 と2024年11月7日のシンポジウムで発言し、楽観論を戒めた。 台湾の清華大栄誉講座教授、小笠原欣幸氏も 「1期目のトランプ政権では、大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたジョン・ボルトン氏ら台湾の戦略的価値を十分に理解している人たちが、うまく中国を押さえ込みつつ台湾との関係を実質的に拡大した」 「しかし、多くはトランプ氏の周辺から去った」 と指摘する。 台湾世論に 「無関心」 なトランプ氏が第2次政権で外交・安保政策を主導した場合、何が起きるのか。 トランプ氏は、台湾が防衛費を域内総生産(GDP)比10%まで増やすべきだと発言している。 政権要職への起用が取り沙汰されるエルブリッジ・コルビー元国防次官補代理が言及した 「5%」 でも2025年予算案の防衛費と比べて倍増となる。 民主進歩党が少数与党となった立法院(国会に相当)で、こうした予算案の審議が行き詰まるのは不可避だ。 台湾に 「保護費」 の支払いを求めるトランプ政権から大量の兵器購入を強いられ、 「虎の子」 である半導体企業の米国移転まで迫られた上に、いざ有事の際に米軍の関与は期待できない−。 台湾にこうした 「疑米論」 が広がれば、親米路線の頼清徳政権にとっては最悪のシナリオとなる。 2028年の次期総統選で中国に融和的な最大野党、中国国民党が政権を奪取することも現実味を帯び、台湾の併呑を狙う中国の習近平政権には理想的な展開となる。 「疑米論の拡大で台湾世論がじわりと動き始める可能性は捨てきれない」 「そうなれば米国のインド太平洋戦略の要がオセロのようにひっくり返る」 「台湾が中国に取り込まれた時点で米国が気づいても手遅れだ」。 小笠原氏は警鐘を鳴らす。 石破首相とトランプ氏会談わずか5分の衝撃 韓国・尹大統領の半分以下 党の両院議員懇談会でも集中砲火、まさに四面楚歌 2024.11/8 11:32 https://www.zakzak.co.jp/article/20241108-J5S64FY5UVPINAX3WEKJIVUNAM/ 「政権居座り」 に執着する石破茂首相(自民党総裁)が四面楚歌≠ノ陥りつつある。 2024年11月7日の党両院議員懇談会では、衆院選で勝敗ラインとした 「自公与党で過半数」 を割り込む大惨敗を喫した責任について集中砲火を浴びた。 国会運営では、少数与党ゆえ、躍進した国民民主党の意向に配慮せざるを得ない上、国会の最重要ポストの1つである衆院予算委員長を立憲民主党に譲り渡した。 米大統領選で勝利したドナルド・トランプ前大統領との電話会談は、何と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の半分以下という5分間。 米メディアには、石破首相の 「日米同盟不平等論」 を問題視する向きもある。 過去に現実軽視の持論を並べ立て、他人を批判し続けた 「特大ブーメラン」 が次々と刺さっている悪循環は続きそうだ。 ◇ 「国民の期待に十分応えることができなかった」 「痛恨の極みだ」 「深く反省し、お詫びしなければならない」 「真摯に受け止め、改革に前向きに取り組んでいく」 石破首相は2024年11月7日、衆院選総括のために開催した両院議員懇談会で、こう陳謝した。 衆院選での自民党惨敗は 「国民の審判」 そのものであり、 「政権居座り」 こそが国民の期待に反するのではないか。 当然、参加者からは、執行部の責任を問う声が相次いだ。 投開票直後から辞任論を掲げていた青山繁晴参院議員は 「2024年年末に予算編成をするわけで、その前に自ら潔く決意し、辞意を表明されるべきだ」 と主張したという。 記者団にも 「『政権選択選挙』で負けたのに責任を取らないのでは、自民党が民主主義を掲げることはできない」 と言い切った。 西田昌司参院議員も 「党の体制を刷新しないと(来年2025年夏の)参院選を戦えない」 と訴えた。 石破執行部に対しては、 「非公認」 候補が代表を務める政党支部にも選挙前に2000万円を支給した判断を問題視する意見も続出した。 柴山昌彦元文科相は 「世論から如何にかけ離れているか、執行部はしっかり受け止め検証すべきだ」 と発言した。 小林鷹之元経済安保相も、執行部から事前に明確な説明がなかったと苦言を呈し、 「党が一丸となって政策を進めていく環境を作る必要がある」 と訴えた。 厳しい批判が噴出する中、馬の耳に念仏なのか、石破首相は具体的な責任論に言及しなかった。 森山裕幹事長も 「強く責任を感じる」 「厳しい批判は厳粛に受け止める」 「(2000万円は)非公認の人が選挙費用に使える仕組みにはなっていない」 と釈明したものの、そのまま続投する意向だ。 石破首相と距離を置く麻生太郎元首相は発言しなかった。 「ポスト石破」 を期待される高市早苗前経済安保相は欠席した。 衆院選で 「非公認」 となり無所属で勝利した萩生田光一元政調会長は、高市氏と連携する意向を示しているが無言を貫いた。 出席議員は執行部を除き約180人で、非公開で約50人が発言したが、大半は 「当面の続投」 を支持したという。 ある閣僚は 「ガス抜きになった」 と語っている。 石破政権は国会運営にも不安がある。 国会の委員会で最重要ポストの予算委員長を、立憲民主党に譲ることで合意したのだ。 予算委員長に野党議員が就くのは30年ぶりだという。 同委員長は採決日程の決定や議事進行などで大きな権限を持ち、局面によっては予算案審議が難航することも想定される。 ■米報道日米に「緊張が高まる可能性秘めている」 石破政権は、外交でも不安は尽きない。 石破首相は2024年11月7日午前、米大統領選で勝利したトランプ氏と初めて電話会談を行った。 石破首相は 「日米同盟をより高い次元、段階に引き上げていくことで一致した」 「フレンドリーな感じがした」 「本音で話ができる人という印象を持った」 を手応えを語ったが、時間は5分間だった。 トランプ氏は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とは約25分間、韓国の尹大統領とは約12分間も会談している。 前駐オーストラリア大使の山上信吾氏は2024年11月7日、自身のX(旧ツイッター)で、 「僅か5分しか相手にされず、英語も解さないのに、何を以て『非常にフレンドリー』と判断できるのか?」 「メディアの突っ込みが弱過ぎる」 と指摘した。 米メディアでは 「背後から銃で撃つ」 と党内外から批判された石破首相の政治スタイルを問題視する向きもある。 米紙ウォールストリート・ジャーナルは、自民党総裁選の投開票日(2024年9月27日)、石破首相が 「日米同盟を不平等だとして再構築を唱えてきた」 と指摘し、米政府との間に 「緊張が高まる可能性を秘めている」 と報じている。 同紙は、石破首相が 「概ね保守的で防衛にタカ派的」 としながらも、安倍晋三元首相や岸田文雄前首相とは異なり 「日米同盟の非対称的な側面に不満を抱いている」 と分析。 更に、2018年に石破首相に行ったインタビューから、 「トランプ大統領とゴルフしなくてもいい、トランプタワーに行かなくたっていい」 「日本は手強いぞと思わせることが大事だし、ディールのカードを持つこと(が大事)」 「安全保障でディールのカードを全く持っていない」 との、安倍氏とトランプ氏の盟友関係を批判的に語った発言を紹介している。 石破政権はどうなるのか。 政治評論家の有馬晴海氏は 「両院議員懇談会は『ガス抜き』で終わったようだが、『石破おろし』を巡る自民党内の見方は甘い」 「選挙を控える参院議員の中では退陣論も挙がる」 「『石破カラー』で支持率回復の目もあるが、石破首相は演出は上手くない」 「我慢強さを見せせ、耐えるしかない段階だが、全てにおいてヨタヨタで、ちょっとしたきっかけで政権が終わる可能性はある」 と語った。 外交はどうか。 評論家の八幡和郎氏は 「トランプ氏との5分だけの電話会談は象徴的だ」 「石破首相のキャラクターと、トランプ氏の相性も懸念されている」 「重要なのは『本音で話す』ことではなく、『メンツを潰さないよう迎合しているかに見せて誘導する』ことだ」 「石破政権には厳しい宿題が多く課されている」 と分析した。 「トランプ側近の本音」石破首相の評価は? パイプ持つ日本保守党・島田洋一議員が聞いた「世論に迎合する信用できない男」 2024.11/8 15:24 https://www.zakzak.co.jp/article/20241108-RH7XVVVQKJJWFGBDK6T74MESFE/ 石破茂首相は2024年11月7日、米大統領選で勝利した共和党のドナルド・トランプ前大統領と電話会談した。 首相はトランプ氏の印象を 「非常にフレンドリーな感じ」 と述べたが、トランプ氏周辺は実際のところ、石破首相や石破外交をどう見ているのか。 国際政治学者で共和党やトランプ陣営と太いパイプを持つ日本保守党の島田洋一衆院議員に 「トランプ側近の本音」 を聞いた。 石破首相は電話会談でトランプ氏に祝意を伝え、日米同盟をより高い次元に引き上げる考えで一致したと話した。 だが、大統領選直後にトランプ氏側近らとコンタクトを取ったという島田氏は 「衆院選にも敗北して政治力もないとして、トランプ氏周辺で石破首相の評価は高くない」 「マイナスからのスタートというより、スタートできるかも怪しい」 と指摘する。 島田氏によると、 「日米地位協定の見直し」 や 「アジア版NATO(北大西洋条約機構)構想」 といった石破首相の持論にも、トランプ陣営の反応は冷ややかだという。 「日米地位協定の改定は米軍の機密保護や米兵の身の安全に関わるため、米国は超党派で反発している」 「アジア版NATOについては、石破首相が発信を控えていることが、却って『世論に迎合するような信用できない男』と見られているようだ」 石破首相とトランプ氏は、早期に対面での会談を調整する方針を確認したというが、島田氏はこんな見方を示す。 「会談では米国と同じ路線で取り組む態勢が出来ていると、しっかりプランを示して行動できるかが重要だ」 「例えば岩屋毅外相は中国寄り≠ニ見られていて、防衛相時代の2018年には韓国海軍による自衛隊機へのレーダー照射問題に対応出来なかった」 「『人事は政策』であり、情報発信にもなるので、刷新すべきではないか」 トランプ氏が2016年の大統領選に勝利した際には、安倍晋三元首相がトランプタワーを訪問するなどして蜜月関係を築いた。 「トランプ政権発足直後の朝鮮半島危機や、中国に対する締め付けにも、安倍元首相は真っ先に協力するなど、間髪入れずにサポートする行動が信頼関係を固めた」 と島田氏は分析する。 これまで学者として北朝鮮による日本人拉致問題や日米関係の強化に取り組んできた島田氏だが、衆院選で日本保守党から出馬して当選し、今後は国会議員の立場で臨むことになる。 トランプ陣営の反応について島田氏は 「日本保守党から出馬し当選したことを 『米国で言えばトランプ現象に値するものだと理解している。日本保守党と連携していきたい』 と言われた」 「日本保守党の『日本第一』は、トランプ氏の『米国第一』と通じ、『脱炭素原理主義』に異を唱える基本線も一致する」 と明かした。 トランプ陣営は今、外交路線をどう考えているのか。 島田氏は 「中国を『主敵』と位置付け、軍事利用可能な技術を含む最先端ハイテク分野や知的財産で厳しく締め上げて供給網から外すことを検討している」 「トランプ氏は経済分野の交渉で習近平国家主席が誤魔化そうとしても許さないだろう」 との見方を示した。 ロシアと北朝鮮の協力「米も脅かす」 NATOのルッテ事務総長 2024/11/7 22:59 https://www.sankei.com/article/20241107-QTW7IZVC6ZKR7BY733ZVTF3J4Y/ 北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は2024年11月7日、ロシアが北朝鮮による軍事協力の見返りに、北朝鮮に技術提供しているとの見方を示し 「将来的に米本土や欧州を脅かすことになる」 と警告した。 NATOに批判的で、ウクライナ支援にも消極的なトランプ氏が米大統領選で勝利したことを受け、同氏に欧州との協力の重要性を訴えた。 欧州政治共同体(EPC)首脳会合が開催されたハンガリーの首都ブダペストで記者団に語った。 ルッテ氏は 「ロシアと北朝鮮、イラン、中国による対ウクライナ連携が明らかになってきている」 「これは非常に危険な展開だ」 と指摘。 「この脅威にどう立ち向かい、世界の安全をどう確保するかについてトランプ氏と共に考えていきたい」 と強調した。(共同) <主張>トランプ氏と経済 米国第一への備え万全に 社説 2024/11/8 5:00 https://www.sankei.com/article/20241108-TO2SHDQW3ZLOBPGJT33URQY6WE/ トランプ次期米大統領は、インフレなどで現政権を批判し、経済政策を抜本的に改める姿勢を示してきた。 米国を再び偉大にするには経済を強化するしかないとの思いが強いのだろう。 中国の台頭で世界経済における米国の影響力が相対的に低下する中、国内産業を再興し雇用を守ることは重要だ。 だが、現政権の政策をことごとく否定する言動は危うさも孕む。 自国第一主義の下、中国はおろか西側諸国にも関税などで経済的圧力をかけようとする姿勢も相変わらずである。 日本を含む各国は新政権がもたらしかねない世界経済の混乱や分断に備えねばならない。 石破茂首相は2024年11月7日、トランプ氏と電話会談し、日米同盟を高次元にする考えで一致した。 日米は中国などの専制主義国を念頭に経済安全保障上の連携も深化させなくてはならない。 そのためにも米国が内向きにならぬよう働きかけるべきは当然だが、トランプ氏は同盟の意義以上に経済実利を優先しがちだ。 日本の官民はそれを前提に対策を講じる必要がある。 トランプ氏は法人税や所得税の減税などを掲げている。 中国からの輸入品への高関税だけでなく、その他の国にも10〜20%の関税を課す考えも示した。 ただし、これらがトランプ氏の嫌うインフレや円安ドル高を助長しかねないことを懸念する。 自動車などに軒並み高関税が課されれば日本企業の北米戦略に重大な影響を及ぼそう。 日本は前回のトランプ政権時、安保上の懸念を理由に鉄鋼などに高い関税をかけられた。 トランプ氏は今次の大統領選で、台湾に関し 「米国の半導体ビジネスを盗んだ」 と批判したことが米メディアに報じられた。 こうした動きが強まれば米国と各国の結束を揺るがすことになりかねない。 当面の焦点は日本製鉄によるUSスチールの買収問題だろう。 トランプ氏はこれに反対してきたが、理不尽な買収阻止は問題である。 米国主導で設立したインド太平洋経済枠組み(IPEF)の不支持も撤回してほしい。 トランプ氏はかつて環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から離脱したが、政権に就く度に離脱を繰り返すようでは地域内での米国の信頼は失墜しよう。それがどの国を喜ばせるかをトランプ氏は熟慮すべきだ。 米大統領選、トランプ氏圧勝で石破首相は戦々恐々%本に「憲法改正」要求する可能性、外圧も平和ボケ≠ノ喝を入れるチャンス 2024.11/7 15:30 https://www.zakzak.co.jp/article/20241107-HGZL2XVVOFN7NN5G5P2EP5UZGM/ 米大統領選(2024年11月5日投開票)で、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)は地滑り的勝利を収め、2024年11月6日未明、支持者を前に 「米国を再び偉大な国にする」 と宣言した。 民主党のカマラ・ハリス副大統領(60)は同日、トランプ氏に電話し、敗北を認めた。 トランプ氏は 「米国第一」 を推進し、日本にも様々な要求を突き付けてくる可能性がある。 第1次トランプ政権では、安倍晋三首相(当時)がトランプ氏と盟友関係を築き、 「日米同盟を深化」 させたが、安倍氏に後ろから鉄砲を撃ち続け、衆院選で 「国民の信」 を得られなかった石破茂首相で日米関係は大丈夫なのか。 ニューヨークに滞在中のジャーナリスト、長谷川幸洋氏が緊急寄稿した。 ◇ 世界が注目した米大統領選は、トランプ前大統領が圧勝した。 ハリス副大統領の勝利を期待していた日本の政府やメディア、識者たちには、衝撃だろう。 トランプ氏の復活で、石破政権が苦しい立場に立たされるのは必至だ。 トランプ氏は開票直後から優勢を保ち、開票が進むにつれて、ノースカロライナなど激戦州も制した。 接戦が報じられていたが、実際にはトランプ支持でありながら、世論調査にはそう答えない 「隠れトランプ」 層が相当数いた、とみられる。 トランプ氏の勝利は、日本にどんな影響を及ぼすのか。 それを読み解くには、彼が訴えてきた 「米国を再び偉大に(Make America Great Again)」 というキャッチフレーズを思い起こす必要がある。 裏を返せば、彼の政治活動は 「米国は弱体化した」 という認識が出発点だった。 2016年には、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、 「米国は弱体化した」 「そうであれば、日本は米国の意向に関係なく、いずれ核武装するだろう」 と語っている。 2019年には、大阪で開かれたG20(主要20カ国・地域)首脳会議の直前、 「米国は日本が攻撃されれば、血を流して全力で守るが、日本は米国が攻撃されても、ソニーのテレビで見ているだけだ」 と、日米同盟の片務性に不満を漏らしている。 欧州については、NATO(北大西洋条約機構)からの脱退や、ウクライナ支援から手を引く可能性を示唆してきた。 同じように 「アジアは日本に任せよう」 と言い出しても、おかしくない。 具体的には、岸田文雄前政権が、ジョー・バイデン米政権に約束したGDP(国内総生産)比2%の防衛力強化を1歩進めて、GDP比3%の防衛費を要求してくる可能性もある。 それだけではない。 私は 「憲法改正を言い出すのではないか」 と思っている。 日本が東アジアの平和と安定に一層貢献し、かつ 「日米同盟の片務性」 を解消するには、専守防衛を改めて、集団的自衛権の全面的容認が必要になるからだ。 経済政策では、中国からの輸入品に対して60%、その他の国の輸入品に10〜20%の関税をかける方針を表明している。 だが、日本については、 「防衛力の強化」 や 「在日米軍経費の負担増」 などと引き換えに、関税を減免する可能性もあるのではないか。 トランプ氏は 「もしも中国が台湾に侵攻すれば、中国の輸入品に150%から200%の関税をかける」 と語っている。 彼の頭の中では 「安全保障と関税が取引材料」 になっているからだ。 トランプ氏が交渉相手と認めてきたのは、いずれも 「強い指導者」 たちだった。 安倍元首相はもちろん、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領などの独裁者にも好意的なのは、彼らが強い指導者であるからだ。 それにひきかえ、政権発足直後の衆院選で大敗北を喫した石破政権は、それだけで、トランプ氏からまともに相手にしてもらえないだろう。 石破首相が米保守系シンクタンク「ハドソン研究所」への寄稿で 「アジア版NATOの創設」 や 「日米地位協定の改定」 を唱えたとなれば、尚更だ。 彼から見れば、そもそも 「米国に守ってもらっている自分の立場を分かっているのか」 「それなら、まず憲法を改正しろ」 という話になるのは、当然である。 お花畑で平和ボケした日本に喝を入れるのに、トランプ復活が絶好の外圧になるなら、日本は 「これもチャンス」 と受け止める以外にない。 <産経抄>返り咲くトランプ氏、わが国も主要プレーヤーとしての覚悟を 2024/11/7 5:00 https://www.sankei.com/article/20241107-LCLBWAHAPVKMNCEAR2DH24N7GA/ 言葉を生業とする人々にとって、 「民主主義」 は汲めども尽きぬ警句の泉らしい。 英国の劇作家、トム・ストッパード氏は巧みな言い回しでその本質を突いている。 「投票が民主主義なのではない」 「票の勘定が民主主義なのだ」 と。 ▼『すごい言葉』(晴山陽一著)から拝借した。 多くの前提が必要だろう。 選挙権と被選挙権に不当な制限がなく、投票の秘密や投開票の公正さが担保されていること。 ロシア、中国…。 民主主義を否定する国々を見るにつけ、米国には模範的な存在であってほしいと願う。 ▼大接戦と予想された米大統領選は、激戦州を制したトランプ前大統領が、思いのほか早く勝利宣言にこぎ着けた。 むろん、米国に一息つく暇はない。 我が国もここからは民主主義陣営を構成する国として、世界の課題に向き合わなければならない。 ▼ウクライナ支援の在り方は大きな懸案だ。 トランプ氏の判断次第で、侵略国のロシアだけでなく、台湾への威圧を強める中国をも喜ばせかねない。 混乱する中東情勢や、核・ミサイル戦力の増強を進める北朝鮮など、緊張を高める変数も実に多い。 ▼「投票は弾丸よりも強し」 と述べたリンカーンは、弾丸に命を奪われた。 今回の大統領選で、トランプ氏が銃や暴力の標的になったのも記憶に新しい。 深刻な亀裂が窺える米社会は、一体感を取り戻せるだろうか。 政治の空白を生まぬよう円滑な政権移行を望みたい。 ▼問われているのは米国の、そして民主主義の地力に他ならない。 トランプ氏の掲げる 「米国第一主義」 が、先の見通しづらい世界情勢にどう応じるのか、という懸念はある。 我が国もまた、国際社会の主要プレーヤーとして主体的に振る舞う覚悟を問われている。 <主張>トランプ氏勝利 同盟重視し国際秩序守れ 内向きに終始してはならない 社説 2024/11/7 5:00 https://www.sankei.com/article/20241107-EQUVXD4IZFOJDMKHLBFXNC47EE/ 米大統領選で、共和党候補のトランプ前大統領が勝利宣言し、 「繁栄した米国を作りたい」 と語った。 2024年12月の選挙人投票を経て来年2025年1月20日に就任する。 2021年1月以来の返り咲きとなる。 「米国を再び偉大に」 「米国第一主義」 などのスローガンを掲げた。 インフレ(物価上昇)や不法移民の問題で民主党候補のハリス副大統領を批判し、有権者の支持を集めた。 暗殺未遂を乗り越えた 「強さ」 も支持されたのだろう。 トランプ氏に注文したい。 公約に沿ってインフレや不法移民など内政の諸政策を推進するのは当然だが、 「内向き」 の政治に終始しないでもらいたい。 ■日本との協力を確実に 前回のトランプ政権は、専制国家中国の脅威をはっきりと指摘し、軍事的、経済的に抑止していくという歴史的決断を下した。 それは民主党のバイデン政権にも引き継がれた。 新たなトランプ政権でも国際秩序を守るために行動することを期待したい。 世界はトランプ前政権当時から大きく変わった。 中国は経済不振に陥りながらも、台湾周辺や南・東シナ海で軍事的威圧を強めている。 ロシアによるウクライナ侵略は3年近くも続いている。 中東での紛争は終息の気配がない。 自由と民主主義、「法の支配」に基づく世界の秩序が、専制国家によって脅かされている。 米国の行動力と民主主義諸国の結束が今ほど試されているときはない。 トランプ氏は、2024年7月の共和党全国大会で訴えたように 「米国の不和と分断」 を修復しなければならない。 トランプ政権が備えるべき相手は、自身を支持しなかった 「内なる敵」 ではなく、米国や民主主義国の存立と繁栄を脅かす専制国家だ。 世界の経済成長の中心地であるインド太平洋地域への関心を高めてほしい。 地域最大の同盟国である日本やオーストラリア、カナダ、韓国などとの協力が欠かせない。 大統領選の最中には、中国による日本や台湾、フィリピンなどへの軍事的挑発が相次いだ。 2024年10月に台湾を囲む形で行われた中国軍の演習ではロシア軍の艦船が宮古海峡を通過した。 台湾有事を想定した中露連携との見方もある。 北朝鮮は新型と称する大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。 トランプ氏の台湾を巡る認識には不安もある。 共和党の政策綱領から1980年以来初めて 「台湾の自衛を支援する」 という誓約が抜け落ちた。 トランプ氏が 「台湾は防衛費を払うべきだ」 「我々は保険会社と何ら変わらない」 と不満を語ったこともあった。 だが、日米などが共有する 「自由で開かれたインド太平洋」 のためにも台湾海峡の平和と安定は死活的に重要だ。 米軍の近代化を進め対中抑止に努めねばならない。 ■ウクライナ支援続けよ トランプ氏にはウクライナへの支援継続も望みたい。 派兵された北朝鮮軍の部隊がウクライナ軍と交戦したと伝えられる。 ウクライナへの侵略国に北朝鮮が加わった。 ここでもインド太平洋地域と欧州の安全保障問題は繋がった。 トランプ氏は自身が大統領選に勝てば 「すぐに停戦できる」 と述べてきたが、停戦とは露軍の即時全面撤退以外にない。 ロシアや北朝鮮に果実を与えれば、日本周辺での専制国家による侵略を誘発しかねない。 トランプ氏は同盟国に応分の防衛負担を求めるだろう。 米国1国で専制国家を抑止できないため理解できるが、日本や先進7カ国(G7)、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などとの協力も合わせて語るべきだ。民主主義国同士の重層的な同盟・協力関係が国際社会の安定に繋がり、米国の繁栄も支えているからだ。 民主主義諸国の結束の乱れは中露など専制国家を増長させかねない。 トランプ氏は、バイデン政権が打ち出したインド太平洋地域の 「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」 への不支持も表明した。 米国の不在は、中国の地域での影響力を強めることになる。 再考すべきだ。 中東情勢も喫緊の課題だ。 イスラエルとイランの全面衝突が懸念されている。 イスラエルへの影響力を発揮し、事態の安定に努めてほしい。 石破茂政権はトランプ氏側と早期に接触し、信頼関係を築かねばならない。 トランプ氏復帰、世界中が注視 ウクライナへの軍事支援に変化も 中国「不確実性増す」 2024/11/6 21:30 https://www.sankei.com/article/20241106-YY2Q7QAJBZPXVJTOEJXXEK6S5E/?outputType=theme_uspe 米共和党のトランプ前大統領と、民主党のハリス副大統領が対決した2024年11月5日の米大統領選を世界各国は強い関心を持って注視した。 ロシアのウクライナ侵略を巡り、ウクライナへの支援から撤退する可能性のあるトランプ氏が勝利したことを欧州は警戒。 ロシアは歓迎しているとみられる。 トランプ氏の勝利で中国は「不確実性」が増すと予測。 混沌とする中東情勢は同氏の復帰で新たな局面を迎えそうだ。 ■欧州、NATO結束で不安 米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利したことで、欧州では米国がウクライナ支援から撤退し、欧州安全保障に危機をもたらすとの警戒感が出ている。 フランスのマクロン大統領は2024年11月6日にX(旧ツイッター)でトランプ氏の勝利を祝福した上で、 「ドイツのショルツ首相とも話し合った」 「新たな環境の中で、我々は欧州をより強く、結束させるために働く」 と投稿。 独仏で欧州連合(EU)を牽引し、新政権の下で新たな米欧関係の構築を目指す構えを示した。 トランプ氏はこれまで、欧州加盟国が防衛費の負担を増やさなければ、ロシアが将来、欧州を攻撃しても防衛しないと述べている。 北大西洋条約機構(NATO)の結束に不安が広がる中、ルッテNATO事務総長は2024年11月6日、 「強さによる平和を推進するため、再び協力できることを楽しみにしている」 とXに投稿した。 先月2024年10月の欧州世論調査では、ドイツで64%、フランスでは61%が 「安全保障のためにはハリス副大統領の勝利が望ましい」 と回答していた。 トランプ氏は国内産業保護のため輸入品に高関税をかけると公言しており、米EU間の貿易摩擦は不可避となる見通しが強い。 EUの貿易大国ドイツで特に警戒が強まっている。 トランプ氏は2024年10月末、EUについて 「彼らは我々の車や農作物を買わずに、膨大な量の車を売っている」 「代償を払わせる」 と発言した。 ■露、ウクライナ降伏への圧力期待 ウクライナ侵略を巡って同国の 「降伏」 による早期の戦闘終結を実現させたいロシアは米大統領選で、ウクライナに停戦圧力を加えたり、軍事支援を停止したりする可能性がある米共和党のトランプ前大統領が勝利したことを歓迎しているとみられる。 ペスコフ露大統領報道官は2024年11月6日、 「プーチン大統領は一貫して対話に前向きだ」 とトランプ氏との電話会談を排除しなかった。 ウクライナでの停戦に向けて米国が動くかどうかをロシアは注視するとも述べた。 プーチン氏は2024年10月下旬、トランプ氏が停戦の実現に尽力する意向を示しているとし、 「(停戦に関する)そうした発言は誰からのものであろうと歓迎する」 と表明。 また、 「(戦争の)帰結はロシアに有利なものであるべきだ」 「(停戦の内容は)戦場の現実に立脚すべきだという点に関してロシアは譲歩しない」 と述べた一方、ロシアには 「合理的な妥協」 を行う用意があるとも主張した。 プーチン氏は従来、停戦に応じる条件として、ウクライナが南部クリミア半島と東・南部4州全域をロシアに割譲することや、NATO加盟を否定することを提示。 ただ、露軍も疲弊しており、4州全域を軍事的に掌握するのは困難だとの見方が露国内でも出ている。 トランプ氏が今後、ロシアとウクライナ双方に硬軟織り交ぜて停戦を促した場合、プーチン氏が4州全域の割譲要求を取り下げ、現在の前線を停戦ラインとすることを認めるなど一定の 「妥協」 に応じる可能性はゼロではない。 ■韓国、対北で安保体制の維持強調 北朝鮮がウクライナを侵略するロシアへ派兵するなど、安全保障情勢が厳しさを増す中、韓国では、米大統領選でトランプ前大統領が勝利したことを受け、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がバイデン米大統領、岸田文雄前首相と築いた日米韓の対北安保協力体制が揺らぎかねないとの不安感が高まっている。 トランプ氏は在任中、 「裕福な国」 である韓国が米国の軍事力に 「ただ乗りしている」 と主張し、在韓米軍の駐留経費を巡り、韓国に大幅な負担増を迫った経緯がある。 このため、韓国は2024年10月、トランプ氏の返り咲きに備え、2026年以降の駐留経費負担を決める協定に早々に合意。 選挙直前の今月2024年11月4日、駆け込むように署名を済ませた。 尹氏は2024年11月6日、Xでトランプ氏への祝意を示した上で、トランプ氏が 「これまで見せてきた強いリーダーシップ」 を評価。 米韓が今後、緊密に協力していくことに期待を表明した。 韓国大統領府高官は同日2024年11月6日、ロシア派兵で北朝鮮の脅威が増している点を指摘。 「韓国政府は安保が一寸も揺るがないよう米国の新政権と完璧な安保体制を築き上げていく」 と述べ、米新政権下でも安保協力を維持していく方針を強調した。 ■中国、関税引き上げ警戒 米大統領選で共和党のトランプ前大統領、民主党のハリス副大統領のどちらが勝利しても、中国では米国の対中圧力は緩和されないとの見方が支配的だった。 浙江外国語学院米国研究センター主任の王冲氏は 「誰が大統領になろうとも中米関係で小春日和が実現するのは難しく、劇的な好転を実現するのは更に難しい」 との見解を選挙前に中国メディアに寄せた。 王氏は、バイデン大統領の対中路線を継続すると見込まれたハリス氏に対し、トランプ氏の路線では 「不確実性と予見不可能性が増す」 と警戒する。 中国側は、トランプ氏が大統領1期目で見せた 「不確実性」 に神経を尖らせる。 トランプ氏は既に中国製品に60%の関税を課す方針を表明しており、実現すれば、景気低迷下にある中国経済には逆風だ。 中国が 「核心的利益」 と位置付ける台湾問題でも、トランプ氏は中国が台湾に侵攻すれば 「150〜200%」 の関税を課すと発言している。 一方で、中国は米政権の圧力継続を見越し、ここ1年ほどは米国を念頭に置いた外交を展開してきた。 まずは米国の同盟国などの切り崩しだ。 日米豪印の枠組み「クアッド」の一角をなすインド、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」とクアッド双方に入るオーストラリアとは、それぞれ悪化していた関係の改善に動いた。 次にグローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の取り込みにも力を入れ、中国やロシアなど主要新興国で作る「BRICs」の枠組み拡大などを進めた。 日中外交筋は 「中国はこの1年間の取り組みを通じ、誰が米大統領になっても対応可能だと自信を持っているのではないか」 と指摘する。 ■台湾、有事の防衛で懸念残る 台湾当局は、米大統領選の結果が台湾海峡の平和と安定に影響を与えるとみて注視している。 「米国の台湾支持は超党派の共通認識」(米当局者) とはいえ、バイデン米大統領が繰り返し台湾防衛を明言してきたのに対して共和党のトランプ候補の姿勢は曖昧さが増しており、台湾側には懸念も残る。 トランプ氏は 「台湾は(米国に)防衛費を支払うべきだ」 と主張し、域内総生産(GDP)比10%の防衛費支出を台湾に要求。 これは歳出の8割超に当たる非現実的な数字だ。 更に台湾が 「半導体ビジネスを米国から奪った」 とし、台湾製半導体への高関税も示唆した。 世界的な供給網の中核として、中国による台湾侵攻を抑止する役割への期待から 「シリコンの盾」 と呼ばれる台湾の半導体産業に、トランプ氏の存在は大きな影を落とす。 ただトランプ氏に対しては悲観論だけではない。 当局系シンクタンクの安全保障研究者は、大規模な兵器購入を台湾に求める同氏の勝利で 「(最新鋭ステルス戦闘機の)F35などの高度な兵器を買うチャンスでもある」 と指摘する。 また与党、民主進歩党系の政治研究者も 「民進党は前回の米大統領選で、台湾との関係が良好だったトランプ氏の再選を望んでおり、バイデン氏の当選に焦りもあった」 「今回はどちらでも構わない」 と話す。 一方、中国に融和的な最大野党の中国国民党は、米中間の緊張を高める可能性が大きいとみられるトランプ氏をより警戒する。 「米国が中国に対抗するためのコマとして台湾を利用する」(国民党系の政治学者) との懸念を持つためだ。 ■対イラン政策、一変の公算 パレスチナ自治区ガザやレバノンで戦闘を続けるイスラエルと、その宿敵イランに米国がどう対処するのか注目されるだけに、中東諸国は強い関心を持って米大統領選の行方を見つめた。 イスラエルで2024年10月末に公表された世論調査結果で、次期米大統領はトランプ氏が好ましいとの回答が全体の66%を占め、ハリス氏との回答は17%だった。 それも当然の結果と言える。 2017年から4年間の大統領任期中、トランプ氏はそれまでの米外交政策を変更してエルサレムをイスラエルの首都と認定するなど、同国寄りの政策を貫いた。 特に戦闘が続く現在では、激しい攻撃で高まる国際的批判をかわす上でも最大の後ろ盾になるとの期待が大きい。 イスラエルのネタニヤフ首相は2024年11月6日、トランプ氏が勝利したことを受け、 「歴史的に最も偉大な(大統領への)復帰だ」 「米国の新たな始まりとなる」 と祝意を示した。 一方、イランはトランプ氏復帰に警戒を強めている。 イランが2024年10月初めにミサイル約180発でイスラエルを攻撃した際、トランプ氏は 「(イスラエルは)イランの核施設を攻撃すべきだ」 と述べた。 今後、中国などとの原油のヤミ取引の監視を強化するなど、イランに対する 「最大限の圧力」 政策が復活する公算が大きい。 イラン政府のモハジェラニ報道官は2024年11月6日、 「米国の選挙はイラン人の暮らしに影響しない」 と述べた。 ロイター通信がイランの通信社の報道として伝えた。 米大統領選 有権者最大の関心は「民主主義」 出口調査 トランプ氏不正主張など影響か 2024/11/6 14:09 https://www.sankei.com/article/20241106-DNASW5AXFFJETCGA3CE2DJNMAQ/?outputType=theme_uspe 2024年11月5日投開票の米大統領選で米メディア各社が実施した出口調査では、最も関心のある争点として 「民主主義の在り方」 を挙げた人が 「経済」 を上回った。 有権者層の分析では、共和党のトランプ前大統領(78)が過去の選挙戦より黒人やヒスパニック(中南米系)からの支持を増やした半面、民主党のハリス副大統領(60)はトランプ氏から白人の支持を奪っているもようだ。 NBCテレビの出口調査によると、最も重視する争点は 「民主主義」だと答えた人は34% で、 「経済」の31% を上回ってトップとなった。 続いて 「人工妊娠中絶の是非」が14%、 「移民問題」が11%、 「外交問題」が4% だった。 CNNテレビの調査でも近似した結果となった。 選挙戦での世論調査では、ほぼ一貫して経済が最重要争点と見做されてきたが、ここにきて民主的制度が脅かされているとの懸念が有権者に広がっていることが示された格好だ。 米紙ワシントン・ポストによると、有権者の約7割が、米国の民主主義への脅威が 「とてもある」 あるいは 「ある程度ある」 と回答した。 背景には、トランプ氏が2020年の前回大統領選で十分な根拠を示さず主張したのと同様に、今回も投票日前から 「不正が行われている」 と繰り返していることなどが影響したとみられる。 前回選では、トランプ氏が敗北を認めずに不正主張を拡散させたことが、2021年1月のトランプ支持者による連邦議会襲撃事件に繋がったとされる。 一方、NBCによれば、有権者の45%がトランプ政権時の4年前より 「生活が苦しくなった」 と回答。 経済運営ではハリス氏よりもトランプ氏に期待する傾向があらわれている。 人種による支持傾向にも変化があった。 トランプ氏を 「好ましい」 と考える人の割合は白人で49%で、前回選の57%から8ポイント減少。 ヒスパニックは42%、黒人は14%で、前回選よりそれぞれ4ポイント増加した。 「男らしさ」 といった価値観を重視する黒人やヒスパニックの男性有権者には、女性初の大統領を目指すハリス氏への反感がある一方、白人女性の間では 「トランプ離れ」 が進んでいると指摘される。 重要課題は「民主主義」「経済」 移民、中絶も判断要因に 米大統領選 2024/11/6 13:02 https://www.sankei.com/article/20241106-RCP7KKV2OBJOBEWXAWVVU7TJM4/?outputType=theme_uspe 2024年11月5日投開票の米大統領選で、CNNテレビやABCテレビなどが共同実施した出口調査の結果によると、有権者が重要課題に挙げたのは民主主義の行方が35%で最も多く、経済が31%、人工妊娠中絶の権利が14%、不法移民問題が11%で続いた。 AP通信とFOXニュースの共同出口調査では、半数近くが民主主義を最も重要な争点だと答え、39%が経済だと回答。 移民問題は20%、中絶は11%だった。(共同)
[18初期非表示理由]:担当:スレと関係が薄い長文多数のため全部処理。自分でスレを建てて好きな事を投稿してください
|