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※紙面抜粋
※2024年12月4日 日刊ゲンダイ2面
辻元清美議員は「まるで別人」と…孤独の石破首相、口を開けば失望ばかり
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/364430
2024/12/04 日刊ゲンダイ ※後段文字お越し
ヤジが飛べばムッとした顔(C)日刊ゲンダイ
臨時国会での代表質問が始まったが、石破答弁は裏切りの連続だ。総裁選からの変節、「政治とカネ」の後退でハッキリした自民党首相の限界。外交舞台でもパッとせず、動静も会食なしで仲間内と打ち合わせ。石破色は褪せ、これで加速化する一方の日本の衰退。
◇ ◇ ◇
「まるで別人のようになってしまった」
臨時国会は石破首相の所信表明演説への代表質問が4日で終わる。先の衆院選で自公与党が大敗し、過半数割れしてから初の国会論戦。きのうの参院代表質問で、立憲民主党の辻元清美代表代行は今の石破を「ブレまくっている」と指摘し、冒頭のセリフを切り出した。
辻元の言う通り、この3日間の石破答弁は裏切りの連続。もはや国会は石破の「変節」を確認する場と成り果てている。
まず今国会の一大テーマ「政治改革」だ。与野党間の最大の争点は企業・団体献金の廃止だが、石破は所信表明でひと言も言及しなかった。2日の衆院代表質問で立憲の野田佳彦代表が「なぜ議論の俎上に載せないのか」とただすと、石破はこう開き直ってみせた。
「政党として避けなければならないのは、献金によって政策が歪められることだ。これには個人献金も企業・団体献金も違いはない」
衆院本会議場の野党席から一斉に「えー」とヤジが上がると、石破はしばらく答弁を中断。おもむろに議場をにらみつけ、ふてくされた表情で「わが党(=自民)としては不適切だとは考えていない」と廃止に否定的な立場を重ねて強調した。
何をムッとしているのか。そもそも今国会で政治改革が焦点になっているのは、石破の鶴の一声がきっかけだ。政治改革は今年の通常国会でも議論したばかり。ところが、裏金事件の当事者である自民が主導した6月の政治資金規正法の改正は典型的なザル法だった。無反省ぶりがアダとなり、「政治とカネ」が争点になった衆院選で自民は惨敗。投開票の翌日には、石破が政策活動費の廃止、調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開と残金返納などを「速やかに実現を図る」と明言し、年内の法整備に言及したのである。
挙げていけばキリがない変節のオンパレード
改革の言い出しっぺだからこそ、野党が「本丸」に掲げる企業・団体献金の廃止に後ろ向きな石破にヤジが飛ぶのは必然だ。ましてや企業・団体献金の廃止は、国会に突きつけられた「30年来の宿題」である。
リクルート事件や東京佐川急便事件を受けた1994年の「平成の政治改革」で、いったんは廃止を決めながら頬かむり。自民党は30年間も放置してきた。最新のJNN(TBS系)の世論調査でも実に64%が廃止を求めている。国民の声を無視して開き直りとは虫が良すぎる。それこそ流行語大賞に輝くほど、はやったとは思えないが「不適切にも程がある」だ。
その上、石破はきのうの衆院代表質問で、自民党派閥の裏金事件の再調査を断固拒否。真相は解明されていないとして、再調査を求めた立憲の小川淳也幹事長に「可能な限りの調査を行い、結果を説明してきた」とし、前任者の岸田前首相の答弁をそっくり踏襲した。
9月の自民党総裁選の際、石破は再調査についてどう語っていたか。「自民党全体として、国民の方々に『納得したよ』と言っていただける努力はしていかねばならない」と前向きに語っていたではないか。
総裁選からの石破の変節は「政治とカネ」の問題に限らない。「実現は早いに越したことはない」と言っていた選択的夫婦別姓も「国民各層の意見や、国会における議論の動向を注視していく必要がある」と慎重姿勢に終始。保険証の新規発行停止の時期についても、総裁選では「先送りの検討も必要」と言及していたが、2日にあっさり実行に移し、「適切な医療の提供に大きく寄与する」などと利点ばかり強調する始末である。
立ち位置で言説を変える典型的な日和見主義者
期待するだけムダ(代表質問にたつ立憲民主の辻元清美代表代行)/(C)日刊ゲンダイ
大体、所信表明では他党の意見も丁寧に聞き、「可能な限り幅広い合意形成」を目指すと言ったソバから、木で鼻をくくったような答弁を連発。石破色は褪せ、口を開けば失望を招くばかりだ。
「安倍政権時代に『党内野党』と揶揄されながら、正論を吐き、持説を曲げなかった。ブレない政治家像が定着しているから皆、ガッカリするわけですが、今の姿が石破首相の本性だと思います」と言うのは、立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)だ。こう続ける。
「自民が野党だった頃を思い出してください。国防軍創設、緊急事態条項の新設、人権抑制など悪名高い『改憲草案』をまとめた責任者のひとりが、石破首相です。安倍元首相との政争に敗れ、党内でソッポを向かれ、次期首相候補のメンツを保つには国民の支持を受けるしかなかった。冷や飯食いの期間が長すぎたから、つい体制に抗う一言居士をイメージしがちですが、虚像に過ぎません。だからこそ世論の後押しを武器に、いざ総理に上り詰めた途端、国民の期待を平気で裏切る。『アジア版NATO構想』などウルトラ右翼の危険な顔をあらわにし、権力維持には党内配慮が得策とばかりに国会答弁は安全運転を心がける。石破首相は政治的な立ち位置によって態度を豹変させる。典型的なオポチュニスト(日和見主義者)です」
風向き次第で態度がコロリと変わる“風見鶏”が本質なら、石破が自壊する党内の方ばかりに顔を向けるのも、むべなるかなだ。今の石破は「別人」でも何でもない。時代遅れで賞味期限が切れた自民党政治の限界をハッキリさせるだけの存在でしかなく、たとえ皮肉でも石破「本人」に「自民党のウミを出し切ってくれる」(辻元)と期待するだけムダだ。
衰退途上国を象徴する哀れな首相
しかも人付き合いの悪さだけは折り紙つき。動静を見ても就任2カ月余りで、会食はたった9回。歴代首相と比べても異例の少なさで、官邸内の打ち合わせも数少ない友だちの赤沢亮正経済再生相との数が突出している。
「肌の合わない人を避けているように見え、取り巻きとしか会わないようでは一国のトップに必要な知見は広がりません」(金子勝氏=前出)
石破の孤独は国内にとどまらず、外交舞台でもパッとしない。先にペルーで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議でも、スマホ片手に書類をいじり、他国の首脳と交わろうとしない「引きこもり」の姿勢が際立っていた。
これじゃあ、ただでさえガタ減りの国際社会における日本の存在感は、ますます失われていく。所信表明では石破も「30年前、日本のGDP(国内総生産)は世界の18%を占めていましたが、直近の2023年では4%」「1位だった国際競争力は今、38位に落ちました」と衰退を嘆いたが、孤独の首相は百害あって一利なし。日本の衰退を加速化させる一方だ。
「国連における日本の地位も下落の一途です」と、高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は、こう指摘する。
「日本は過去最多12回選出と非常任理事国の常連でしたが、今や立候補すら困難です。すでに32年の立候補を表明し、その次は43年の立候補を各国に通達。約20年も前から準備を始める異常ぶりです。従来3〜6年おきに選ばれてきたのに、32年、43年に選出されても、いずれも10年近く安保理から外れてしまう。日本の安全保障上、ゆゆしき事態です。それだけ国連の『アジア・太平洋』枠で、日本のプレゼンスが落ちぶれた証拠。豊かな頃は経済支援の見返りに安保理入りへの支持を得られたものですが、今や『ODAはムダ』『他国より自国民にカネを回せ』という内向きな世論に外交も引きずられています。それも過去30年、自民党政権の経済無策で国民が貧しくなってしまったがゆえ。日本がアジアの盟主を気取れた時代はとうに去り、外交と経済はリンクしているのに、石破首相は双方とも経験不足。『年収の壁』を引き上げ、ちょっと手取りを増やしたところで衰退はどうにもなりません」
ある意味、石破は「衰退途上国」を象徴する哀れな首相かもしれない。
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