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※2024年11月25日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年11月25日 日刊ゲンダイ2面
その場しのぎのバラマキ誤魔化し、無能と悪辣の延命政治(C)日刊ゲンダイ
規模だけ膨らませた選挙用大風呂敷に役所が肉付けした補正の「中身のなさ」には息をのむ。庶民から金だけふんだくり、経済を破壊させ、その場しのぎのバラマキでごまかす無能と悪辣。そんな与党延命に力を貸し、細部も詰めないまま、賛成を約束した裏切り野党にも唖然だ。
◇ ◇ ◇
首相に就任した直後に解散総選挙に突っ込み、大惨敗後は政権運営を巡って右往左往。現実から逃げるように南米外遊に出発すれば、記念撮影に間に合わない失態。政権発足以来、いいとこナシ、ナーンも成果を上げられていない石破首相だが、先週22日に閣議決定した総合経済対策も酷いもんだ。
@「日本経済・地方経済の成長」に5.8兆円A「物価高の克服」に3.4兆円B「国民の安心・安全の確保」に4.8兆円──。言葉とカネは躍るが、具体的な政策は、住民税非課税世帯への3万円の給付金、ガソリン補助金、電気・ガス料金の補助と、岸田政権から続く焼き直しばかりである。
これに「新しい地方経済・生活環境創生交付金」「能登半島地震の復旧・復興」「AIや半導体産業への支援」「闇バイトによる強盗事件の対策強化」などが加わり、国の一般会計の歳出で13.9兆円になる見通しだ。特別会計を含めた財政支出は22兆円、民間資金を合わせた事業規模は計39兆円に上る。
自民、公明、国民民主の3党合意で「103万円の壁」の引き上げも明記された。これを今年度の補正予算案として、今月28日召集の臨時国会に提出し、年内成立をめざすという。自公与党は衆院で過半数割れしているが、国民民主の賛成で成立の方向だ。
物価高対策で始まったガソリン補助金は、もう3年目だ。既に7兆円以上が投じられたが、直接的な消費者支援につながっていないという批判もある。
3万円の給付金にしても、住民税非課税は65歳以上の世帯が大半。多額の金融資産を保有する高齢者まで対象になり、本当の低所得者に支援が届いていない。
効果が限定的な対症療法を検証なくダラダラ続けているのが、ここ数年の政府の経済対策であり、結果、財政支出だけがダラダラ流される。
石破カラー消失
なぜ愚策が繰り返されるのか。13.9兆円の規模ありきは、「昨年(13.2兆円)を上回る大きな補正予算を」と宣言した、先の衆院選公示日の石破の第一声が原因だ。裏金事件の大逆風をはね返すため、有権者の関心を他に向けさせる狙いもあったろう。
そうやって規模だけ膨らませた選挙用大風呂敷に役所が肉付けしたのが、今度の経済対策だ。よく見ると、創薬支援や公共サービスのデジタル化、コンテンツ産業の振興など、補正で組む必要があるのかという緊急性の乏しい予算も計上されている。半導体産業への支援は複数年で10兆円規模という巨額だ。必要性の是非は別としても、補正ではなく当初予算でやる事業だろう。規模ありきで、各省庁が金額を積み上げた跡がクッキリなのだ。
閣議決定後に石破は、「党派を超えて優れた方策を取り入れ政策を前に進めたい」とか言っていたが、この経済対策のどこが“優れた方策”なのか。石破カラーがまったく見えないうえ、あまりの中身のなさに息をのんでしまう。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「石破首相は何をしたいのか。今度の経済対策の狙いが全くわかりません。本来、補正予算は緊急の対策ですから、優先順位を付け、目的を明確化しなければいけないのに、規模を大きくして“やった感”を出そうとしているだけでしょう。当初、能登の被災地の復興を優先し、なるべく財政負担をかけないようにするなどと言っていたのに、結局は従来通りで、石破カラーは消えてしまった。これだけ規模を大きくして、財源はどうするのか。国債発行が当然という、安倍政権以来の経済対策をのんべんだらりと続けているのは残念です」
国民の不安を理解せずピンボケで欺瞞に満ちた政治
与党自民に諸手を揚げて賛成の徒花…(C)日刊ゲンダイ
経済対策に盛り込まれた「闇バイト対策」にも呆れてしまう。具体的な中身は、例えばこうだ。
「捜査機関が実行役などから押収したスマホを解析し、指示役の特定につなげるための資機材の高度化」「闇バイトを募集する書き込みや投稿に対するサイバーパトロールの強化」「防犯機能の高い住宅のドア・窓ガラス設置への補助拡充」「自治体や団体に、青色の回転灯をつけた『青パト』車両の整備費用補助」──。警察の予算拡充や防犯対策がズラリで、若者中心に闇バイトに手を出してしまう背景への対策はない。
非正規労働者を増やし、給料は上がらず、生活不安や将来不安。石破政権は社会の現状が見えているのか、と疑問を投げかけたくなる。
「闇バイト問題は貧困問題でもあります。リスクがあるのを分かっていても、生活苦で1日5万円や10万円という目先のカネに飛びつく。どんなに防犯対策を充実させたって、犯罪が形を変えて起こるだけで、根本的な問題は解決しません。防犯関連業界を利するだけということになりかねない。低所得の若者など困窮者をどうやって支援するかという問題なのに、石破政権は本質を理解せず、ピンボケです」(斎藤満氏=前出)
給料が上がらず、手取りが増えず、生活不安や将来不安が広がるのは、闇バイトに手を染めなくとも、多くの国民に共通した問題だ。
安倍政権から10年続いた異次元の金融緩和が今に至る超円安と物価高を招き、株価が上がれば万々歳の刹那の中、毎年のように法人税が減税され、大企業や富裕層は富を拡大した。一方で、所得が低いほど負担が重い消費税は税率が5%から10%に引き上げられ、社会保険も負担が増大。2025年度税制改正に向けた議論では、虎の子の退職金にかかる所得税の引き上げまで俎上に載せられている。取りやすい庶民からカネをふんだくるのが自民党政治なのである。
「大きな山が動いた」の愚
税金と社会保障を合わせた国民負担率は今年度45.1%を見込む。相変わらず江戸時代の「五公五民」並みだ。「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」とかいうトリクルダウンは起きず、むしろ日本経済を破綻させ、その場しのぎのバラマキでごまかす。そんな欺瞞に満ちた政治を続けてきたのだ。
非課税世帯に3万円の給付金も、わずかの施しをありがたがれ、ということなのか。ふざけるな、だ。こんな破廉恥な延命バラマキ補正予算は見たことがない。
そんな亡国補正に玉木代表の国民民主は賛成するのか。「年収103万円の壁は25年度税制改正の中で議論し引き上げる」との文言が経済対策に記載され、国民民主は「大きな山が動いた」と沸いている。しかし、同様に明記されたガソリン減税についてもそうだが、詳細はこれからだ。細部を詰めないで賛成を約束するなど、どうかしている。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「国民民主は103万円の壁がどこまで引き上げられるのか、金額がどうなるのか決める前に合意してしまった。玉木代表の不倫スキャンダルが影響しているのは間違いない。最初は自分たちの主張する引き上げ額の178万円は譲れない、と言っていたのに、完全に後退した。結局は、自公与党をアシストしているだけ。与党の補完勢力です。日本維新の会と同じで、国民民主も早晩、勢いをそがれるでしょう。徒花に終わるのではないか」
石破政権の無能と悪辣に唖然とし、過半数割れして下野が当然の与党の延命に力を貸す裏切り野党にも唖然。何から何まで「邪」の極みだ。
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