<■649行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 憲法改正、自衛隊明記と緊急事態条項 自民総裁候補の各氏が推進で横並び 問われる実現力 自民党総裁選 政策比較(1) 2024/9/15 18:08 https://www.sankei.com/article/20240915-4CMMDZ7DIFJMXEAOV45XMKDYVA/ 自民党が党是に掲げる憲法改正は、今回の総裁選(27日投開票)で重要な論点になる。 9人の候補者は全員、9条への自衛隊明記など、9月2日に党がまとめた 「論点整理」 を踏まえた改憲を公約に掲げている。 問われるのは実現力だ。 現総裁である岸田文雄首相は、公言してきた任期中の改憲を実現できなかったが、 「論点整理」 の取りまとめを主導し、置き土産とした。 平成30年に党がまとめた 「改憲4項目」 の見解を引き継ぎ、現行9条を維持した上で 「9条の2」 を新設して自衛隊を明記。 更に大災害など緊急事態での国会議員の任期延長と、政府の権限を一時的に強める 「緊急政令」 の導入を可能にする案を軸とした。 論点整理には、積み上げた議論を 「ピン留め」 し、後戻りを防ぐ狙いがある。 改憲論議はこれまで、総裁交代などで議論が振り出しに戻ることがあった。 首相は取りまとめに当たり 「現在までの取り組みは、新総裁にもしっかり引き継いでもらえるよう申し送る」 と念を押した。 候補者の中で、石破茂氏は9条2項を削除し『国防軍』を創設」という、論点整理とは異なる考え方を持論としてきた。 ただ今回の出馬に当たっては 「私が総裁になっても路線は不変だ」 「優先項目は党で決定した通りだ」 と述べ、論点整理を尊重する考えを表明。 これにより9人の改憲に関する路線は、表面的には横並びになった。 違いがあるとすれば改憲実現の時期だ。 政策集や政策発表会見で、 石破氏は「首相在任中」、 林芳正氏は「(3年の)総裁任期中」 の発議を掲げた。 茂木敏充氏は「3年以内に憲法改正を実現」とした。 小泉進次郎氏は「否決される可能性があっても」国民投票に踏み切ると表明している。 とはいえ、改憲実現には野党を含む国会での合意形成が欠かせない。 新総裁にはスローガンだけでなく、発議と国民投票の実現に向けた具体的な進展が求められる。 ◇ 自民党総裁選で焦点となる政策などについて、候補者9人の主張を比較していく。自民党総裁選 候補者が改憲アピール 首相が道筋付けるもなお高いハードル 実現への突破口開けるか 2024/9/11 6:00 https://www.sankei.com/article/20240911-KAT27QWRFJOQFKMOTX3KSCJT5M/ 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)で憲法改正が主要テーマの1一つになっている。 自民は2日、自衛隊明記など改憲の指針となる論点整理を公表した。 岸田文雄首相(党総裁)は論点整理を新総裁に引き継ぐ考えを強調し、次の総裁候補たちも改憲に向けた発信を強めている。 改憲は来年結党70年を迎える自民の党是であるにもかかわらず、足踏みを続けてきた。 総裁選を通じて機運を高め、実現への突破口を開くことができるのか。 ■「全身全霊で臨む」と小泉氏 「憲法論議の推進に全身全霊で臨み、憲法改正発議の環境が整えば、直ちに発議の後、国民投票に移る」 6日に総裁選への立候補を表明した記者会見で、小泉進次郎元環境相は改憲についてこう断言した。 「現在の憲法は日本が米国に占領されていた昭和21年に連合国軍総司令部(GHQ)が原案を起草し、日本政府に受け入れを迫ったものだ」 とも訴えた。 突然の改憲への傾斜は、自民から剝がれた保守層を取り戻す狙いがあるのは明らかだ。 同時に、歴史的背景にも触れ、 「広く国民に発信する」(小泉陣営関係者) 戦略も透ける。 改憲に前向きな候補者たちも盛んに発信している。 党憲法改正実現本部の事務総長を務め、論点整理に奔走した加藤勝信元官房長官は10日の記者会見で改憲実現を訴えた。 保守的な政治信条を持つ小林鷹之前経済安全保障担当相は6日、改憲が宿願だった安倍晋三元首相の墓参りをし、 「何としても成し遂げる」 と誓った。 10日の記者会見でも 「先頭に立って実現していく」 と強調した。 「少しでも早く国民投票していただける環境を作るために頑張る」。 保守層に支持される高市早苗経済安保担当相は9日の記者会見で力強くこう訴え、茂木敏充幹事長や河野太郎デジタル相も前向きだ。 戦力不保持を謳った9条2項を削除した上で、自衛隊を 「国防軍」 に改め憲法に明記すべきとの持論を持つ石破茂元幹事長は10日の記者会見で 「党で決めた路線を維持していく」 との姿勢を示した。 ■「保守の失望」で議論加速 改憲は岸田首相にとっても思い入れのあるテーマだ。 首相が会長を務めた旧岸田派(旧宏池会)は伝統的にリベラルなイメージがあり名誉会長を務めた古賀誠元幹事長も9条改正に否定的だった。 当初は改憲に慎重な姿勢を示してきたが、首相の座を目指すに当たり支持拡大のため改憲にシフト。 首相が初めて意欲を表明したのは政調会長時代の令和元年9月のことだった。 3年の前回総裁選の出馬表明後、産経新聞の単独インタビューで 「国会での議論を進め、国民投票に持ち込む」 と明言。 以降、総裁任期中の改憲に前向きな姿勢を示してきた。 しかし、衆参両院の憲法審査会では立憲民主党が消極姿勢を崩さず議論は停滞。 自民党派閥パーティー収入不記載事件も議論にブレーキをかけた。 事態が動き出したのは任期中の改憲が絶望的となった2024年6月30日、東京都内で営まれた安倍元首相の三回忌。 首相は、会場で保守派のジャーナリストから改憲を先送りするならば 「首相の座から身を引くべきだ」 と迫られた。 保守層の失望を突き付けられ、保守言論人に人脈を持つ旧岸田派の側近が動き始めた。 2024年7月19日、加藤氏を官邸の裏動線から密かに呼ぶ算段を付けた。 自民内には緊急事態下での国会機能維持のための改憲を巡り、衆院側と参院側との間に意見の隔たりがあり、党内の意見さえまとめられない状況だった。 首相は加藤氏に意見の集約を指示。 衆院側の加藤氏と参院側の岡田直樹事務総長代行が休日返上で協議し、スピード合意に至った。 さらに首相は2024年8月7日、同本部の全体会合に出席。緊急事態条項の創設に加え、ハードルが高いと思われていた9条への自衛隊明記に取り組む考えを示し、2024年8月末までに論点整理を取りまとめるよう指示した。 総裁選に向けた保守層へのアピールとの見方もあったが、首相は2024年9月14日、再選不出馬を表明した。 総裁選への立候補を目指していた加藤氏をはじめ党内は浮足立ち、 「2024年8月末の論点整理の取りまとめが先送りされそうになった」(首相側近)。 首相は党改憲実現本部の副本部長を務める中谷元・元防衛相に2024年8月中の取りまとめを改めて指示。 30日の当初のスケジュール通りに滑り込んだ。 ■改憲へ熱量高まる議論を 「(改憲の)議論を振り出しに戻すようなことはあってはならない」 首相は2024年9月2日、論点整理が了承された同本部の全体会合でこう述べ、議論を後退させないよう求めた。 首相が初めて改憲への意欲を示してから5年。 「なぜもっと早く取り組まなかったのか」 との批判もあるが、退陣を目前に党内の改憲議論に道筋を付け、新総裁に引き継ぐ体制は整えた形だ。 改憲実現に向けては衆参両院の3分の2以上の賛成を得た改憲原案の国会発議、国民投票での過半数の賛成など高いハードルが待ち受ける。 総裁選では改憲に向け国民の機運が高まるような熱量のある議論を期待したい。 <主張>自民党と憲法改正 総裁候補は実現の約束を 社説 2024/9/3 5:00 https://www.sankei.com/article/20240903-SMBD3HZRGVKEZFZHNPTDRBULFI/ 自民党は憲法改正実現本部の会合を開き、憲法に 「第9条の2」 の条文を新設して自衛隊を明記することや、緊急政令の根拠規定創設を盛り込んだ論点整理を了承した。 会合には岸田文雄首相(党総裁)が出席し 「自衛隊の明記を含む複数のテーマを一括して国民投票にかけるべく議論を加速させる準備が整った」 「一気呵成に議論を進めなければならない」 と語った。 新総裁が論点整理を引き継ぐことも要請した。 自衛隊明記などを一括して国民投票にかけることは妥当だ。 そのために、改憲に前向きな政党に呼び掛け、改憲原案の条文化作業を担う与野党協議の場を急ぎ設ける必要がある。 憲法改正は自民の党是であり、党総裁選の重要な争点の1つだ。 全ての候補者は総裁になった場合、いつまでに憲法改正を実現するのかを国民の前で明確に語ってもらいたい。 論点整理では、 「9条の2」 への自衛隊明記について 「基本的に堅持すべきことが共通認識として確認された」 とした。 首相や内閣の職務を規定した第5章への自衛隊明記に関し 「選択肢の1つとして排除されるものではない」 との意見が出たことを記した。 条文の置き場所について議論の余地を残した格好だが、自衛隊を第5章に明記するだけでは不十分だ。 9条または 「9条の2」 に必ず書き込むべきである。 「戦力不保持」 を定めた第9条2項の削除と軍の規定が憲法改正の最終ゴールであるべきだが、途中段階として自衛隊を明記する意義は大きい。 緊急政令も憲法に必ず規定しなければならない。 改憲発議で国会議員の任期延長を優先するか、緊急政令とセットで進めるかは意見が分かれ、結論を出さなかった。 緊急政令に後ろ向きな公明党に阿っているとしたら残念だ。 国会が開けないような国難の際には、緊急政令などの権限を内閣に一時的に与えなければ事態を乗り切ることは難しい。 自民は国民を守り抜く改正を実現すべきであり、公明を説得しなければならない。 首相は自民党総裁選への不出馬を表明し、 「新たなリーダーを一兵卒として支える」 と語っている。 次期総裁は岸田氏を憲法改正実現本部長に起用してはどうか。 「新総裁で議論やり直し」はさせない 改憲へ見せた岸田首相の意地、「遅すぎ」との指摘も 2024/9/2 19:44 https://www.sankei.com/article/20240902-FZSTLCTR5ZLUZP4PITHDXKEVXY/ 2日開かれた自民党憲法改正実現本部(古屋圭司本部長)の全体会合で、岸田文雄首相(自民党総裁)は 「議論を加速させる準備が整った」 と力を込めた。 退陣まで約1カ月に迫る中で党の憲法改正の論点整理を急いだのは、党総裁選で選ばれる新総裁の下でも改憲議論を停滞させず、早期の国会発議を実現するためだ。 党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件が直撃し、自らの手による改憲こそかなわなかったが、最低限のレガシー(遺産)を残すことで意地を見せた。 「(改憲の)議論を振り出しに戻すようなことはあってはならない」 「議論だけの時代は終わった」 「具体的な前進を図っていきたい」 首相は憲法改正実現本部の全体会合でこう述べ、新総裁は了承された論点整理を土台に改憲に向けた取り組みを加速すべきだと訴えた。 論点整理は改憲の国会発議を見据えた他党との折衝の土台となる。 首相は8月7日の同本部の全体会合で同月内の取りまとめを指示していた。 ところが、14日に総裁選への再選不出馬を表明し、党内が次の総裁選び一色になると、目標は有耶無耶になりかけた。 同本部内には論点整理を取りまとめるWT(ワーキングチーム)会合の開催を9月5日に先送りする動きもあった。 緩んだネジを締め直したのは首相本人だった。 「何としても8月中にやってくれ」。 首相は同本部の中谷元副部長にこう指示し、当初のタイムスケジュールに拘った。 その結果、30日のWT会合で論点整理を仕上げ、9月2日の全体会合で正式決定するという日程が整った。 首相は改憲議論を後戻りさせないことを重視した。 周囲には 「総裁が変わったら議論を一からやり直しなんて、そんな馬鹿なことはさせない」 と漏らす。 自らの退陣で早期の衆院解散・総選挙も囁かれる中、新総裁の下でも改憲を目指す姿勢を支持層に示す狙いも見え隠れする。 ただ、不記載事件の影響で目算が大幅に狂ったとはいえ、リーダーシップの発揮が遅すぎた感は否めない。 日本維新の会や国民民主党などは事件とは一線を画して改憲論議に前向きだった。 党内議論にもっと早く着手していれば、首相が目指した総裁任期中の憲法改正に光明を見いだせた可能性がある。 自民は来年、結党70年を迎える。 節目の年に改憲を実現果たしたいところだが、これまでは足踏みを続けてきた。 首相のレガシーが突破口を開く端緒となるのか。 答えはそう遠くない未来に明らかになる。 自民が改憲「論点整理」を了承 自衛隊明記、緊急政令も可能に 首相「一気呵成に進める」 2024/9/2 18:54 https://www.sankei.com/article/20240902-47KJ3HKGHNJPZMJDAV543A2A2Y/ 自民党は2日、憲法改正実現本部(古屋圭司本部長)の全体会合を開き、自衛隊明記など改憲の指針となる論点整理を了承した。 平成30年にまとめた改憲4項目の見解を引き継ぎ、現行の9条を維持した上で 「9条の2」 を新設して自衛隊を追記する案を軸とした。 岸田文雄首相(自民総裁)は 「(自衛隊明記など)複数のテーマを一括して国民投票にかけるべく議論を加速させる準備が整った」 「一気呵成に進めなければならない」 と述べた。 論点整理は 「自民党らしさ」 を重視。 連立を組む公明党が懸念する9条への自衛隊明記、緊急事態の際に政府の権限を一時的に強める 「緊急政令」 の導入を可能にする改憲を打ち出した。 また、緊急時に国会議員の任期延長を可能にする改憲と共に、 「条文化作業を加速化し、速やかな憲法改正原案の起草・国会提出に繋げていくべきだ」 とまとめた。 一方、古屋氏は次期総裁選(12日告示、27日投開票)の候補者に対し、論点整理の範囲内での議論を要求した。 議論が振り出しに戻ることを避ける狙いがある。 小泉進次郎元環境相は2日、記者団に 「自衛官が憲法に位置付けられ、誇りを持って任務を遂行できる環境を作ることは極めて重要だ」 と強調。 抜本的な9条改正を重視する石破茂元幹事長は記者団に自衛隊明記の意義を認めつつ、 「これで終わりではない」 と語った。 自民総裁選岸田首相不出馬 日米の黄金期惜しむ米紙、欧州「次期首相は国民信頼回復を」 世界の論点 2024/9/2 10:00 https://www.sankei.com/article/20240902-HRXERRFTGVPARML2D6KGE67JH4/ 今月行われる自民党総裁選で、岸田文雄首相は不出馬を表明している。 米欧メディアは岸田氏の実績をどう評価し、日本の次期首相選びとなる総裁選に、どのような視線を向けているのか。 米国では、日米同盟を強化した岸田氏が評価され、次期首相の課題が指摘される。 欧州では、欧州連合(EU)などとの関係強化が讃えられる一方で、経済政策への厳しい見方もみられる。 ◇ ■経済不振で退場はバイデン氏と共通 岸田文雄首相の不出馬表明はバイデン米大統領の選挙戦撤退の後でもあり、米主要紙は、両氏の親密な関係の成果でもあるインド太平洋地域の同盟網の強化を改めて評価した。 先行き不透明な米国政治や東アジア情勢を踏まえ、次期首相が背負う課題の大きさを案じる分析もあった。 8月14日付のワシントン・ポストは岸田氏不出馬を伝える記事で 「危うさを増すアジア太平洋地域において、日米を最強の同盟関係に導き、日本の防衛費を増強させた」 とまず成果を強調した。 ロシアのウクライナ侵略を受けて従来の対露姿勢を転換し西側諸国の制裁に参加したことは特筆すべき実績と指摘。 ウクライナ情勢は中国の台湾侵攻などアジアの危機に連鎖するとの認識から岸田氏が繰り返した 「今日のウクライナは明日の東アジア」 は、 「米国の同盟友好国によって同調された」と 評価した。 また、日米韓首脳会談で合意した3カ国の安全保障協力は 「日米韓関係に新たな時代を記した」 と回想。 対中国を念頭に同盟友好国との重層的な枠組みを推進した米国のアジア戦略において、岸田氏は 「中核的な役割を果たした」 とべた褒めだった。 同紙は 「ともに不出馬を決断したが、バイデン−岸田時代は日米同盟の黄金期として記憶される」 とのエマニュエル駐日米大使の談話も紹介。 米政権関係者には、岸田氏の引き際は先に選挙戦から撤退したバイデン氏の姿と重なって見えたようだ。 しかし、バイデン氏と同様に岸田氏を不出馬に追い込んだ1つの要因は物価上昇など経済不振による支持率の低迷だった。 14日付ウォールストリート・ジャーナルは 「日本は新型コロナ禍後の沈滞と経済的混乱が有権者を不幸にした主要民主主義国の1つ」 と指摘。 バイデン氏の撤退、英労働党の政権奪還、左派連合が最大勢力となった仏議会下院選に通じる先進国共通の政治現象と分析した。 13日付ニューヨーク・タイムズは、次期首相が 「海外、特に米国内の政治不安定への対処と日本国民の支持獲得に繋がる国内政策の促進」 に直面すると解説。 日本には引き続き強い指導力が必要だとし、後継者が長期的な政権を築けるかには疑問を呈した。 外交実績には同盟国から最大級の評価が寄せられた岸田氏だが、米外交誌フォーリン・ポリシーは15日付の解説で、 「経済政策運営に対する国民の怒りに加え、防衛費増額や少子化対策に充てる資金をどう調達するかという未回答の問題も残した」 と指摘。 国内的には負の遺産が目立つという厳しい評価だ。 ◇ ■欧州外交称賛も経済に辛口 欧州メディア(電子版)は岸田文雄首相の外交・防衛政策の功績を認めつつ、物価上昇や自民党派閥のパーティー収入不記載事件は 「与党への国民の不信感を煽った」 と厳しく評価した。 総裁選では不透明な国際情勢に対応できる外交手腕にとどまらず、国内経済の改善やクリーンな政治を推し進められる次期首相を選ぶ重要性を強調した。 英誌エコノミストは8月14日、反撃能力保有や防衛費増額など防衛力の抜本的強化を決断した岸田氏を 「安全保障政策の歴史的な改革を推進した」 と称賛。 「日米同盟の新時代の幕開けに貢献した」 とするエマニュエル駐日米大使の発言を引用し、米との防衛協力を進めたことに触れた。 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は15日の社説で、温厚そうな岸田氏が意外にも 「驚くほど大胆不敵だった」 とする人物評を紹介。 持ち前の大胆さを防衛や外交の分野で発揮したことで 「世界における日本の立場は歴史的な変化を遂げた」 とした。 欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)との関係強化を歴代の首相より積極的に進め、いわゆる徴用工訴訟問題で悪化した日韓関係の修復にも貢献したと評価した。 ただ、経済政策には厳しい指摘が目立つ。 仏紙ルモンドは14日、日本の家計を襲うインフレが岸田氏の支持率低下の一因であると指摘。 物価と賃金が共に上昇する好循環を目指した政権の経済政策が道半ばとなったことを受け、仏紙フィガロは14日、 「(政策は)実現しない呪文に過ぎなかった」 と批判した。 経済的苦境が広がる中、派閥のパーティー収入不記載事件を巡る 「政治とカネ」 問題が直撃。 英BBC放送は14日、 「野党が弱体化し分裂しているにもかかわらず、与党の自民党は国民に強い不信感を持たれた」 と分析。 エコノミスト誌は、自民党内の混乱を受け 「(岸田氏の)退陣は必然だった」 とする有権者の発言を紹介した。 「ポスト岸田」 が直面する課題は多い。 英紙ガーディアンは16日、次期首相は 「物価の上昇や中国や北朝鮮との緊張の高まりの他、トランプ前米大統領が大統領に返り咲く可能性にも対処しなければならない」 と指摘。 その上で、最優先課題は 「(パーティー収入不記載事件で失った)国民の信頼を取り戻すことだ」 とした。 FTは16日の社説で 「混乱する日本の政界に必要なのは、党の長老におもねる弱いリーダーではなく、それを超える存在だ」 と強調。 自民党の年功序列体制を根底から覆す若いリーダーの選出や初の女性総裁の誕生に期待を寄せた。 ◇ ポイント ・米紙「岸田氏は日米を最強の同盟関係に」 ・次期首相は海外の政治的不安定に直面と指摘 ・英紙「世界での日本の立場は歴史的な変化」 ・仏紙「経済政策は実現しない呪文に過ぎず」 <独自>自民の憲法改正「論点整理」の内容判明 9条改正と「緊急政令」導入打ち出す 2024/8/30 18:30 https://www.sankei.com/article/20240830-2ANHHSK5EJJFZPGZMX7WNZHM7Q/ 自民党の憲法改正の指針となる論点整理の内容が30日、判明した。 9条への自衛隊明記や、緊急事態の際に政府の権限を一時的に強める 「緊急政令」 の制度導入の必要性を打ち出した。 衆参両院の実務者でつくる党憲法改正実現本部のワーキングチーム(WT)が同日、取りまとめた。 9月2日に岸田文雄首相(自民総裁)が出席する全体会合で正式決定する。 自衛隊に関しては、安倍晋三政権下の平成30年にまとめた自衛隊の9条明記▽緊急事態への対応強化▽参院の合区解消▽教育環境の充実−の改憲4項目で 「既に議論が決着」 と指摘。 4項目の 「枠組みを前提とすべきだ」 と記した。 連立を組む公明党はシビリアンコントロール(文民統制)を明確化するためとして、首相や内閣の職務を規定した「第5章」の72条や73条への明記を主張している。 論点整理では9条明記に関して 「基本的に堅持すべきことが共通認識として確認された」 としつつ、文民統制に関しては第5章への規定も 「選択肢の一つとして排除されるものではない」 との意見を紹介し、議論の余地を残した。 妥協案として9条と第5章の双方を改憲する案が浮上している。 緊急時に内閣が法律に代わり発出する緊急政令に関しては、論点整理で 「根拠を憲法に規定することは必要」 と打ち出した。 対象とする緊急事態の類型は 「異常かつ大規模な災害」 に加え、武力攻撃、テロ・内乱、感染症の蔓延などを挙げた。 一方、公明などが緊急政令に慎重な構えを示していることから、緊急時に国会議員の任期延長を可能にする改憲を優先すべきか否かなどを引き続き議論する方針も確認した。
公明・石井氏、改憲論議で自民にくぎ刺し「自民単独で発議できぬ」 自衛隊明記で隔たり 2024/8/30 17:08 https://www.sankei.com/article/20240830-VR5RBZNXYNMPLEGL4GDDI4HMBY/ 公明党の石井啓一幹事長は30日の記者会見で、自民党で進む憲法改正の議論に釘を刺した。 改憲発議には衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成が必要であるとして 「自民だけでは発議は叶わない」 「他の政党にもどう働きかけて発議案をまとめていくのかが課題だ」 と述べた。 自民は憲法9条への自衛隊明記を含めた改憲発議を目指しているが、公明党は首相や内閣の職務を規定した72条や73条への明記を提唱し、立場に隔たりがある。 自衛隊を行政組織に位置付ける危うさ 正論2024年8月号 三重中京大学名誉教授 浜谷英博 憲法改正論議は衆議院と参議院の憲法審査会で進められているが、所属委員の一部に憲法改正自体に同意しない勢力が存在するため、いくつかの論点が煮詰まりつつあるものの、未だ具体的条文案の作成には至っていない。 憲法調査会の後継機関である憲法審査会は、2007年8月に衆参両院に設置され、2024年で17年が経過する。 この間、紆余曲折を経ながら一進一退を繰り返し、現在も具体的成果を生み出せない姿には、議論自体が目的化している印象さえ受ける。 ただ、その中でも緊急事態条項と並んで議論が収斂されつつあるのが、憲法に自衛隊を明記する改正案である。 改憲に前向きな政党が公表した自衛隊の憲法明記に関する各党案を見てみる。 まず自民党は2018年3月に憲法9条の2項を 「前条(現行9条)の規定は、わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置を取ることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」 と加筆するという 「叩き台」 となる素案を示している。 日本維新の会は2022年6月に憲法9条の2項を 「前条(現行9条)の範囲内で、法律の定めるところにより、行政各部の一として、自衛のための実力組織としての自衛隊を保持する」 と加筆する 「憲法改正原案」 を公表した。 一方、公明党からは2023年5月に 「72条(内閣総理大臣の権限)もしくは73条(内閣の職権)に自衛隊を明記」 する北側一雄副代表案が、 また、国民民主党からは2023年4月に憲法第5章の 「内閣」 の中に 「必要な自衛の措置を取るための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」 とする玉木雄一郎代表の案が示された。 大きく分けて 「戦力」 との関係で自衛隊との関連条項である憲法9条に加筆する案と内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督者であることから、憲法第5章の内閣、とりわけ72条もしくは73条に加筆する案などが提示されている。 しかしながら、憲法9条に加筆する改正案でも 「行政各部の1つとして」 との条件を付していること、そしてとりわけ内閣の章内に自衛隊を明記する主張には、その根底に行政組織としての自衛隊の法的位置付けを変更しない意図が垣間見えている。 ここで問題は、憲法への自衛隊の書きぶりはともあれ、現在の自衛隊が国家行政組織法上の行政組織の1つとの従来の政府解釈から、一歩も踏み出そうとしない改憲姿勢である。 平時に活動する 「一般行政組織」 と非常時に武力行使を伴う 「軍事組織」 との根本的相違を放置したまま自衛隊を憲法に明記したとしても、任務の遂行に多くの制約が課され、目的の完遂に困難を極めることは明らかだ。 自衛隊を正規の軍隊もしくはそれに準ずる独立した組織とし、それに伴って自衛官に軍人としての国際法上の法的地位があることを確認し、その活動について最高指揮監督者の存在を明記するのでなければ、自衛隊の本来の創設目的に沿った任務と行動を担保することにはならないのではないか。 諸外国における自国防衛のための軍事組織(一般に軍隊もしくは国軍)は、一般の行政組織とは一線を画した組織として機能している。 理由は、その運用に関して、一般行政組織とは異なる原理を適用しなければ、求められる本来の任務を遂行できない場合が多々想定されるからである。 通常、軍隊は、自国の独立と安全を確保し、国民の生命と財産を保護することを目的とし、国家の存亡を賭けた非常時に最後の手段として出動を命じられる組織である。 従って、そのための行動に国内法的制約はない。 あるのは国際法(武力紛争法や国際人道法と称され、捕虜の扱いや非交戦の個人の保護など戦時における人間の保護を目的としている)上の制約のみである。 一般の行政組織とは明らかに異なる軍隊の行動や任務の目的が明確である以上、必然的な措置であろう。 本稿では、自衛隊を行政組織の1つとする解釈から派生する危険性や矛盾、同盟国との共同行動やPKO参加時における支援など、関連する諸点について考えてみたい。 ■任務を完遂させない頸木( くびき:自由を束縛するもの) まず、既に提起されている憲法改正案のいくつかを検討してみたい。 その内、72条への明記案は、72条が 「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する」 と規定していることから、行政組織としての自衛隊を新たに書き込むことによって、その法的地位の変更までを含まない意図が読み取れる。 この明記の結果、確かに自衛隊が憲法違反との主張はなくなるかもしれないが、行政各部と横並びに規定することによって、自衛隊が行政組織の一部であるとの意味合いも同時に強めかねない。 強いて72条に書き込むのであれば、新たな1項を追加し、一般行政組織とは一線を画した組織であることを明確にした書き方にしなければ改正の意味がない。 また、憲法73条は、内閣という合議体が一般行政事務と共に行う7項目の各事務を規定している。 ここに自衛隊を書き込む改正案は、自衛隊法7条にある 「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」 との規定を、憲法条項に引き上げようとする意図であろう。 しかし国家の存亡の危機に際して、合議体に決断を求めること自体が迅速性の要請に反し、合理的とは言えない。 憲法73条に自衛隊を明記することで、72条に明記するよりも内閣総理大臣の独断の可能性が弱まる、との主張もあるくらいだ。 その理由は、72条の主語が 「内閣総理大臣」 であるのに対し、73条は 「内閣」 であり、合議体の決定事項に 「自衛隊の行動」 を入れることで、少しでも内閣総理大臣個人の決断の歯止めにしたい思惑が窺える。 しかし、軍事組織の出動の決断は、国家の存亡を賭けた最後の手段の選択であり、その際には当然、決断の的確性と迅速性が求められる。 つまり合議体による長引く議論自体が決断を遅延させ、取り返しのつかない結果を導く恐れがあるからだ。 ちなみに制度的には、内閣の決定に反対の大臣を罷免し、内閣総理大臣自らが罷免した大臣の職務を兼務して閣議決定することも可能である以上、非常時の決断は迅速性を重視することがことのほか重要である。 一方、憲法9条に自衛隊を明記する案にも、自衛隊を 「行政各部の1つとして」 保持するなどの文言があり、行政組織の1つとの認識に変更のない改正案もある。 明記する場所、書き方はともかく、自衛隊を行政組織の1つと位置付ける発想から脱しない限り、危機に際しての自衛隊の任務の完遂は困難を極める。 ■行政は逐一法的根拠を求める 改めて確認するが、現在の政府解釈によれば、自衛隊は国内法上、国の行政組織(防衛省)に属する1組織であり、少なくとも諸外国で言う 「軍隊」 ではない。 法制上も、自衛隊は防衛省設置法5条に規定され、 「自衛隊の任務、自衛隊の部隊及び機関の組織及び編成、自衛隊に関する指揮監督、自衛隊の行動及び権限等は、自衛隊法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる」 とされている。 更に防衛省設置法第4条は防衛省の所掌事務に関し、 「防衛及び警備に関すること」(同条1号) 「自衛隊の行動に関すること」(同条2号) 「陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊の組織、定員、編成、装備及び配置に関すること」(同条3号) 「前三号の事務に必要な情報の収集整理に関すること」(同条4号) などの規定が置かれている。 そして自衛隊が行政組織の1つであれば、その行動はあくまで 「行政作用」 であって、行政法学で言う 「法律による行政」 の原理が適用される。 つまり自衛隊の 「行動」 及び 「権限」 の両方に法律の根拠が必要とされることになり、自衛隊関連法がポジティブリスト方式で規定(出来る事のみを条文化する、条文にないことは行動出来ない)されていることとも相まって、緊急事態等などを含め国内法上の大きな制約になっている。 自衛隊に対するこの姿勢は、国内法上の制約を課さない諸外国の軍隊と大きく異なり、自衛隊の異質性を象徴する実態を示している。 一般に諸外国では、軍事組織の創設目的が国の独立と安全及び国民の生命と財産の保護にある以上、その規定の範囲内の正当な行動に国内法的制約を課す理由はない、と考えられている。 もちろん 「法律による行政」 の原理が、民主的な法治国家において、とりわけ重要な法原理であることは論を待たない。 即ち行政作用が法律を根拠に行われるべき理由は、国民の自由・権利を公権力の恣意的な介入から守り、公権力を民主的にコントロールするため、国民の代表者で構成される国会が制定する法律によって統制を徹底することが重要だからである。 しかし自衛隊の行動は平時の一般行政組織のそれとは性格と実態を大きく異にする。 国家の存亡を賭けた武力行使によって、国の独立と安全及び国民の生命と財産を保護する任務の遂行には、一般行政組織の活動にはない多くの特殊性が認められる。 諸外国で独立した組織として、任務を完遂する活動が認められているのはこのためである。 例えば一般行政組織では、通常の活動に 「透明性」 が重視され、関係書類や各種資料は 「情報公開」 の対象となる。 また折に触れ、実施された行政活動について 「説明責任」 を課され、度重なる記者会見や国会における関係大臣及び官僚の答弁が求められる。 これに対し通常の軍隊は、防衛政策上の機密事項を取り扱い、同盟軍との防衛機密の共有やその保全義務などの遵守を求められる。 これらが担保されない限り、国家間の信頼は醸成され得ず、同盟関係の根幹を揺るがしかねないし、そもそも軍事組織同士の相互の連携や強固な団結も生まれない。 つまり一般の行政組織の作用には馴染まない部分が多くあるのが普通である。 それでは何故自衛隊が現在まで、諸外国にはない発想で、一般行政組織として位置付けられてきたのだろうか。 それには歴史経緯の中でいくつかの理由があると同時に、その解釈を変更する複数回の機会があったことも事実である。 上記理由の1つは、自衛隊の出自の問題である。 周知のように、自衛隊の前身は、1952年に創設された保安隊であり、更にその前身は、朝鮮戦争を背景にして1950年に創設された警察予備隊である。 これら2組織は、あくまで警察力を補完し国内治安を維持する目的で創設され、ポジティブリスト方式で規定された根拠法と共に、国の防衛を任務とする組織ではなかった。 しかし、1954年に創設された自衛隊は、その主たる任務も 「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛すること」(自衛隊法第3条) と明記されており、諸外国における軍隊の創設目的及び任務と同様になった。 本来は、この時点で行政組織の1つとの法的位置付けを脱し、民主的な独立国の軍事組織として、関係法の規定方式も抜本的な変更について十分検討した上で、ネガティブリスト方式(行ってはいけない事を条文化。禁止された事以外のあらゆる行動が可能)に変えなければならなかったはずである。 しかし国際情勢の推移や日本を取り巻く安全保障環境の激変を敏感に捉えず、戦後間もない国内政治状況などから、従来からの憲法解釈を自衛隊にもそのまま踏襲してきたのである。 この点はそのまま、自衛隊を一般行政組織と位置付けてきた今1つの理由にも重なっている。 つまり一般行政組織を脱して自衛隊を国際法上の軍事組織として解釈するには、憲法上の 「戦力」 規定との関係で、憲法9条の解釈変更もしくは改憲を伴うことが想定された。 従来から政府は、自衛隊が憲法で保持を禁ずる 「戦力」 には該当せず、 「自衛力」 を具現する行政組織として説明してきたからである。 従来の解釈の見直しは、当時の国内政治状況や国民意識等の社会情勢を幅広く考慮して回避され、その歪みを残したまま現在に至っている。 ■有事に矛盾が噴出 自衛隊の法的位置付けを見直す機会は、日本が国連平和維持活動(PKO)への参加を決断した1992年にもあったと見るべきである。 つまり自衛隊は軍隊ではなく、従って自衛官は軍人ではなく特別職の国家公務員であるとの政府解釈は、自衛隊が任務として海外に派遣されることのなかった時代には、あまり切実な問題とは考えずに済まされてきた。 しかし、日本の国際貢献策として自衛隊のPKO参加が積極的に実施されるようになったPKO協力法の制定(1992年)以降、自衛官が海外で捕虜や人質になる可能性も現実に想定されるようになっている。 危険な場所には派遣されないとの前提や政府説明はあるにせよ、海外のPKO派遣地域は紛争後の安定化に向けた過渡期であることが多く、状況の一変は日常茶飯の出来事である。 その際、不幸にも捕虜になった自衛官が軍人ではなく、1公務員に過ぎないとなれば、国際法上の捕虜の待遇を求めることが事実上出来なくなる恐れはないか。 もちろん人道上の配慮や対応は想定されるにせよ、国際法上の権利として相手国に要求することの根拠は希薄になるだろう。 まして悪意のある相手国又は民度の低い武装集団が自衛官を捕虜として身柄を確保し、日本政府に対し、軍人ではない自衛官の地位を確認してきたとすれば、政府はどのように返答するのだろうか。 その時になって、自衛官は軍人であるから国際法上の捕虜の待遇を要求するとして、初めて従来の政府解釈を変更するのだろうか。 ■既に軍隊と評価される自衛隊 ちなみに自衛隊及び自衛官の国際法上の地位は、一般にジュネーブ諸条約第1追加議定書第43条1項(1977年)の 「軍隊」 の定義に照らし理解され、評価される。 それによれば、軍隊とは 「部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装した全ての兵力、集団及び部隊」 を言うとされ、その構成員は 「戦闘員であり、即ち、敵対行為に直接参加する権利を有する」(同条2項) と規定されている。 つまり戦闘員は、戦時において敵国戦闘員を殺傷し、軍事目標を破壊する権利を有し、その法的責任を負わないことに国際的合意が形成されている。 つまり自衛隊及び自衛官は、その名称にかかわらず、ジュネーブ諸条約第1項追加議定書第43条の軍隊の定義にも合致し、人員、組織、編成並びに装備及び規模や訓練状況などから、軍隊としての要件を十分に満たしていると言える。 この基準に従えば、国際法上自衛隊は軍隊であり、自衛艦は軍艦であり、自衛隊機は軍用航空機である。 また自衛官は軍隊構成員(戦闘員)であり、活動中に敵国の権力内に陥った場合には、捕虜の待遇を受ける国際法上の権利を有していると解釈される。 これはPKOに参加した自衛官が捕虜になった場合も、自衛官が軍隊構成員としての法的地位を有していれば、捕虜待遇を受けると解釈されよう。 肝心な問題は、現在の政府解釈である。 つまり 「自衛隊は国内法上軍隊ではないが、国内法上軍隊扱いされる」 との法的論理矛盾と曖昧さを解決することが、政府にとっての喫緊の課題であろう。 国際法上の法的根拠を国内法で受容することに、特段の支障があるとは思えない。 そして将来的に日本が、PKOをはじめとする国際貢献を積極的に展開する上でも法的矛盾を放置することなく、自衛隊及び自衛官が心置きなく国際貢献活動に専念できるよう、自衛隊及び自衛官の地位に関し、国際標準に沿った解釈に変更することが急がれる。 また自衛隊及び自衛官については、国内法的にも長年積み重ねてきたガラス細工のような法解釈ではなく、民主国家に必要かつ重要な機関として憲法上位置付けられることが必要である。 ■安全確保に何が必要か 成熟した民主国家において、政治と軍事のバランスの取れた関係は、国家の積極果敢な活動を担保し、国民の安全を確保する上で極めて重要である。 そのためにはまず、軍事に対する正確な知識と見識を有し、的確かつ迅速な決断力を持った政治家が必要である。 その背景として、国はもちろん地域社会や個人の将来について関心を持つ民主的意識の高い国民の存在が不可欠で、かかる資質のある政治家を見極め、正当な選挙で選出しておくことが肝要である。 他方で、文民統制を正確に理解し、徹底した政治の優位の下で、知見や経験、多方面の情報やデータを駆使した軍事情勢の確かな分析を、政治的判断材料として提供するプロ集団としての軍事組織も欠かせない。 両者のいずれが欠けても、国際社会のあらゆる分野でリーダーシップを発揮できる強靭な国家とはなり得ない。 ロシアのウクライナ侵略、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの出口の見えない紛争、台湾有事と言われる日本近隣での中台武力衝突の可能性など、国際安全保障環境は混沌として先行き不透明だ。 国は非常時における的確かつ迅速な決断を誤らないよう法的整備や防衛手段を万全とし、国民としても日頃からの関心と心構えを忘れるべきではない。 2013.12.7 12:00 【中高生のための国民の憲法講座】 第23講 なぜ憲法に軍隊明記が必要か 百地章先生 http://www.sankei.com/life/news/131207/lif1312070030-n1.html なぜ自衛隊を 「軍隊」 としなければならないのか。 本質的な理由は次の点にあります。 つまり戦力の不保持を定めた憲法第9条の下では法制度上自衛隊は軍隊ではなく警察組織に過ぎないとされているからです。 ◆軍隊と警察の違い それでは軍隊と警察の違いは何でしょうか? 軍隊の権限は 「ネガティブ・リスト」 方式で規定されています。 つまり行ってはならない事柄、例えば、毒ガス等の非人道的兵器の使用禁止や捕虜の虐待禁止などを国際法に列挙し禁止されていない限り軍隊の権限行使は無制限とされます。 だからネガティブ・リスト方式と言います。 なぜなら国際社会ではもし武力紛争が発生した場合、国連安保理事会が対処することになっていますがそれが出来ない時は各国とも自分で主権と独立を守るしかないからです。 これに対し警察の権限行使は 「ポジティブ・リスト」 方式です。 つまり国家という統一秩序の中で国民に対して行使されるのが警察権ですから制限的なものでなければなりません。 だから行使して良い権限だけが法律に列挙されており、これをポジティブ・リスト方式といいます。 それ故、もし自衛隊が法制度上、軍隊であれば、領海を侵犯した軍艦や潜水艦に対しては、国際法に従って、まず 「領海からの退去」 を命じ、それに従わない時は 「警告射撃」 を行うことが出来ます。 更に、相手側船舶を 「撃沈」 することさえ可能です。 現に、冷戦時代、スウェーデン海軍は領海を侵犯したソ連の潜水艦を撃沈していますが、ソ連は何も言えませんでした。 ◆尖閣諸島を守るために ところが、自衛隊は 「軍隊」 ではありませんから、自衛隊法に定められた 「防衛出動」 の場合を除き、武力行使はできません。 また、自衛隊法には 「領域警備規定」 がありませんから、もし中国の武装漁民が尖閣諸島に強行上陸しても、防ぎようがないのです。 相手が発砲してくれば、 「正当防衛」 として 「武器使用」 が出来ますが、場合により 「過剰防衛」 で起訴されかねません。 従って速やかに憲法を改正して、自衛隊を 「軍隊」 とする必要があります。 そうしなければ尖閣諸島も守れませんし、中国の軍事的脅威を前に、我が国の主権と独立を保持することは難しくなります。 自民党の憲法改正に対する姿勢はヤルヤル詐欺だ。 <主張>自民党と憲法改正 他党と協議の場を設けよ 社説 2024/8/8 5:00 https://www.sankei.com/article/20240808-OK5ZWIDIZFKCJMM5G36ZE5QJPE/ 岸田文雄首相(自民党総裁)が党憲法改正実現本部の会合で、憲法への自衛隊明記と緊急政令の規定について今月中に論点整理を行うよう指示した。 首相は、最初の憲法改正国民投票で、自衛隊明記と緊急事態条項創設を問う考えを示した。 来年11月の自民結党70年に言及し 「大きな節目に向けて党是である憲法改正の議論を進めるよう願う」 と語った。 自衛隊明記や緊急事態条項創設を初回の憲法改正で実現しようという姿勢は妥当だ。 だが進め方が緩慢だ。 首相の節目発言は年内の改憲発議を目指さないようにも聞こえる。 首相と自民は肝心なことに及び腰だ。 それは、憲法改正に前向きな政党に呼びかけ、改憲原案の条文化作業を担う協議の場を設けることである。 同本部の会合では、傘下のワーキングチームの報告が示された。 報告は、自衛隊明記▽緊急事態対応▽合区解消・地方公共団体▽教育充実―の改憲4項目について早急に取り組むべき論点と指摘した。 古屋圭司本部長は 「公明党や他党とも水面下で交渉する」 と語った。 水面下だけでは足りない。 協議の場を設け話し合いを始めてほしい。 そもそも、自民の改憲4項目は安倍晋三政権時の平成30年に決まった。 安倍、菅義偉、岸田の歴代総裁と自民はこれまでの6年間、何をしていたのかという思いを禁じ得ない。 党是の実現へギアを上げるべきだ。 南海トラフ地震などの大規模災害、台湾有事に伴う日本有事の懸念が高まっている。 国民を守るため緊急事態条項創設は急務だ。 現憲法は国防の明示的な規定がない欠陥がある。 防衛に足かせをはめる憲法9条2項の削除と、軍の規定が改正のゴールだが、まず自衛隊を憲法に明記する意義は大きい。 同本部はこの夏、参院の緊急集会について論議した。 だが、備えるべきは、緊急集会では対応できなかったり、国会自体が開けなかったりするような国難だ。 緊急政令、緊急財政処分の権限を内閣に一時的に与える規定がなければ国民を救えなくなる。 自衛隊明記は、9条またはその直後の条文(9条の2)として書き込むべきである。 最大政党の自民はこれらについて、公明党や日本維新の会、国民民主党の同意を得るよう、積極的に働きかけるときだ。
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