<■2406行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> <主張>自民総裁選告示 日本を守る政策競い合え 「夫婦別姓」には賛成できない 社説 2024/9/13 5:00 https://www.sankei.com/article/20240913-3EWZIUNIWVKNJGCH5AYNPRJ2LM/ 自民党総裁選が告示され、過去最多の9人が立候補した。 多くの派閥が解散を決め、名乗りを上げやすい環境になったことなどが背景にある。 投開票は27日で、岸田文雄首相の後継選びだ。 有権者である自民党の国会議員と党員・党友には、1億2千万人が暮らす日本の舵取り役には誰が最も相応しいかを考え、投票してもらいたい。 目先の人気投票は禁物である。 世界は激動の時代を迎えている。 日本は、反日的で核武装している専制国家の中国とロシア、北朝鮮に囲まれている。 ■転換期を担う自覚持て ロシアが侵略するウクライナ、紛争の絶えない中東を除き日本は世界で最も厳しい安全保障環境にある。 冷戦期の東西対立の最前線は欧州だったが、現代のそれは日本を含む北東アジアである。 先進7カ国(G7)の一員である日本には、自国の防衛に加えて、地域と世界の平和と秩序を守る責務がある。 経済では、成長力強化が急務だ。 「失われた30年」 とされる長期停滞から真に脱却できるかが問われている。 人口減少への対応や持続可能な社会保障制度の改革も待ったなしだ。 候補者は重大な転換期に政権を担う自覚を持ち、志と具体的な政策を語らねばならない。 早期の衆院解散・総選挙が想定されるが、聞こえのよい政策を羅列するだけでは無責任の誹りを免れない。 選挙後の政権運営の構想と実行力こそが重要だ。 今や、誰が首相になっても同じという時代ではない。 安倍晋三元首相は 「自由で開かれたインド太平洋」 構想を世界に提示し、限定的ながら集団的自衛権の行使容認を実現した。 菅義偉前首相は米国と共に 「台湾海峡の平和と安定の重要性」 を打ち出した。 岸田文雄首相は5年間の防衛費43兆円、反撃能力の保有を決め、防衛力の抜本的強化を開始した。 彼らの決断と行動がなければ日本は中国や北朝鮮の脅威、ロシアのウクライナ侵略を前に立ち往生していただろう。 候補者は岸田氏が語った 「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」 という危機感を共有し、安倍氏以来の外交安保政策の確実な継承と発展を約束すべきである。 高市早苗経済安全保障担当相が提案した内閣情報局、内閣情報会議創設は日本と国民の安全を高めるだろう。 台湾有事は令和9(2027)年までにあるかもしれないと懸念されている。 抑止力と対処力向上へ残された時間は短く、理念的な法改正に走っている余裕はない。 米国との同盟や有志国との協力を強めつつ、地に足の着いた防衛、国民保護策を推進すべきである。 一方で、千年、二千年の視野で日本を守るため、安定的な皇位の継承策を整えたい。 岸田内閣は、男系男子による継承を堅持する内容の報告書を国会へ提示した。 自民は報告書に賛同している。 男系(父系)継承を一度の例外もなく貫いてきた皇統を守らねばならない。 ■男系継承の皇統を守れ 憲法改正は自民の党是だ。 自衛隊明記や緊急事態条項創設などをいつまでに実現したいかを語ってほしい。 首相になっても憲法改正を論ずるのは何の問題もない。 公明など他党を説得していく決意も披露すべきだ。 北朝鮮による拉致被害者全員救出の強い決意を示すことが求められよう。 争点の1つに選択的夫婦別姓導入の是非がある。 家族や社会の有り様に関わる問題だ。 国民的合意を欠いたまま結論を急げば、社会に分断を招く。 選択的夫婦別姓が導入されれば、姓は砂粒のような個人の呼称へと変貌しかねない。 世代を重ねていく家族の呼称としての姓でなければ、姓を名乗る必要があるのだろうか。 夫婦別姓は片方の親と子の別姓でもある。 祖父母らも絡み、家族の歴史や絆が断ち切られ、戸籍制度も揺らぐ。 「選択的」 と言っても個人の自由の問題ではない。 小泉進次郎元環境相は1年以内に実現したいと語ったが、賛成できない。 旧姓使用の充実で対応できる話だ。 「政治とカネ」 を巡る問題は重要だ。 信頼を回復しなければ自民は強い政策推進力を保てまい。 再発防止や政治資金の透明性確保はもちろん、派閥解散に伴う党内統治の在り方も含め政治改革論議を深めてほしい。 国内外で政治家を狙うテロが相次いでいる。 遊説警備に万全を尽くしてもらいたい。自民党総裁選で急浮上の夫婦別姓、経団連の間違い 阿比留瑠比の極言御免 2024/9/12 1:00 https://www.sankei.com/article/20240912-6AWPKWND65P33HQYWVB3XSBWSI/ 国会議員と一般国民との意識の乖離を感じることは少なくない。 2023年のLGBT理解増進法騒動の時もそうだったが、議員たちは時に、国民の関心がさほど高くもない問題について、まるで最優先課題であるかのように熱心になる。 今回の自民党総裁選での選択的夫婦別姓問題の急浮上も、その1つだろう。 「旧姓使用のままだと、多くの金融機関では銀行口座やクレジットカードを作ることはできない」 「そして、旧姓では不動産登記ができない」 小泉進次郎元環境相は2024年9月6日の出馬表明記者会見でこう述べ、首相に就いたら夫婦別姓を認める法案を国会に提出すると明言した。 そしてこの小泉氏の意気込みに押され、選択的夫婦別姓問題が総裁選の大きなテーマになった感があるが、国民の関心はどうか。 NHKが2024年9月9日に発表した世論調査で、自民党総裁選で最も深めてほしい政治課題として6つの選択肢を挙げた結果が興味深い。 それによると 「年金など社会保障制度」が35% でトップで 「経済・財政政策」(26%) が続き、 「選択的夫婦別姓」は僅か1% で最下位だった。 1%だから無視していいというわけではないが、優先的に取り組むべき喫緊の課題だとは言えない。 また、小泉氏の言葉に対しては高市早苗経済安全保障担当相がこう事実誤認を指摘し、話題となった。 「選択的夫婦別氏制度を実現するという候補予定者に『(旧姓では)不動産登記ができない』と答えた人がいたが、2024年4月から不動産登記は旧姓でできる」 更に、高市氏の指摘に関して自民の長尾敬前衆院議員がX(旧ツイッター)で、こんな補足をしていた。 「小泉氏は法改正されていることを知らなかった」 「因みに銀行口座も金融庁からの通知で順次作れるように移行されているのに作れないと説明していました」 「間違って作られた経団連の資料をそのまま説明したからです」 そこで、経団連が2024年6月に公表した選択的夫婦別姓の実現を求める提言 「選択肢のある社会の実現を目指して」 を見ると、 「ビジネスの現場における通称利用の弊害が生じる場面(例)」 という図表に、確かに 「口座やクレジットカードの作成時」 「不動産登記を行う時」 と書かれていた。 小泉氏が本当に経団連の資料を基に発言したかどうかは分からない。 ただいずれにしろ、経団連の提言自体が誤った認識に基づいていたことになる。 この2024年9月10日には、立憲民主党の4人の代表選候補者と党所属女性議員との討論会が開かれた。 4人全員が選択的夫婦別姓に賛成している点が立民らしいが、その中で野田佳彦元首相がこう述べているのが気になった。 「経団連も早期実現を主張するようになった」 「チャンスを逃してはいけない」 この経団連の提言に関しては、2024年7月14日の共産党の機関紙『しんぶん赤旗』も1面トップで 「経団連本部訪ねて聞いてみた 選択的夫婦別姓」 と大きく取り上げていた。 国会は、与野党共に経団連の事実誤認が含まれた提言に影響されているように見える。 このまま国民の42・2%(令和3年の内閣府調査)が求める 「旧姓の通称使用についての法制度」 を無視した形で、 「選択的夫婦別姓」 実現へと突き進むのであれば、国民との意識のズレはさらに増すばかりだろう。 岸田内閣 支持は20%で発足後最低 不支持は60% 政党支持率は https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240909/k10014577111000.html#:~:text= 選択肢のある社会の実現を目指して 〜女性活躍に対する制度の壁を乗り越える〜 2024年6月18日 一般社団法人 日本経済団体連合会 https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html 高市早苗氏、通称使用に根拠与える法案を 「選択的夫婦別姓賛成の人は議員立法なかった」 2024/9/10 12:15 https://www.sankei.com/article/20240910-JZ4633HTQJD2FAIGT4GLEI5Y5I/ 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)に出馬する高市早苗経済安全保障担当相(63)は9日夜、BSフジ番組で、首相就任時に旧姓を通称使用できる措置を国や地方公共団体、公私の団体、事業者に義務付ける 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」 を政府提出法案として国会に提出する考えを示した。 「この法案が通れば、ほぼほぼ結婚で姓が変わることによる不便はなくなる」 と指摘した。 高市氏は平成14年、令和2年の過去2回、同法案を議員立法として党法務部会に提出したが、党議決定には至らなかった。 その上で、高市氏は 「これまで選択的夫婦別姓に賛成だと仰っていた方々が、自ら議員立法の形で法案を書いて、党政調会に提出していたなら、ともかく、これまで提出されていなかった」 と述べ、選択的夫婦別姓の制度化を主張する党所属議員の手法を疑問視した。 総裁選では、出馬表明した小泉進次郎元環境相(43)が首相就任時の選択的夫婦別姓制度の導入法案の国会提出を明言し、党議拘束をかけない考えを示している。 高市氏は 「そういう方向もあるのだろう」 と述べた上で、婚姻前の氏の通称使用に関する法律案についても 「(党議拘束)かけなくてもいい」 と語った。 高市氏は小泉氏念頭に皮肉も 選択的夫婦別姓導入巡り自民総裁選の立候補予定者が対立 2024/9/9 20:30 https://www.sankei.com/article/20240909-2YNDBMGC35ILBDLNK4HLK6TJDQ/ 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)で、夫婦同姓か夫婦別姓を選べる 「選択的夫婦別姓制度」 の導入について、立候補予定者の意見が割れている。 9日に出馬を表明した高市早苗経済安全保障担当相(63)は反対の立場で、早期実現方針を表明した小泉進次郎元環境相(43)の事実誤認を指摘した。 党内には慎重論も根強く、賛成派が押し切ろうとすれば分断を生む可能性がある。 「少し正しく皆さまに知識を持ってもらいたい」 高市氏は9日の記者会見で、こう語った。 念頭にあるのは6日の会見で 「旧姓では不動産登記ができない」 と発言した小泉氏だ。 高市氏は 「選択的夫婦別氏制度を実現するという候補予定者に『(旧姓で)不動産登記ができない』と答えた人がいたが、4月から不動産登記は旧姓でできる」 と指摘した。 高市氏は住民票などへの旧姓併記が広がっていることや、旧姓の通称使用の拡大に向けた法案作りに取り組んできたことを挙げ、 「私が提出したような法案が通れば、ほとんどの不便は解消される」 と述べた。 小林鷹之前経済安保担当相(49)も8月19日の会見で、 「旧姓の併記が認められる制度がある」 「ただ、周知されていないと思うので、もっと周知を徹底する形でニーズに応えたい」 と述べている。 小泉氏は9日、経団連の十倉雅和会長と東京都内で面会した。 経団連は選択的夫婦別姓の実現を政府・与党に働きかけている。 小泉氏は面会後、記者団に 「家族の中で名字が違うことが、家族の絆の崩壊に繋がるというのは必ずしも違うと思う」 と語った。 石破茂元幹事長(67)は6日、東京都内で記者団に 「実現は早ければ早いに越したことはない」 と小泉氏に同調した。 河野太郎デジタル相(61)も8月26日の会見で 「認めた方がいい」 と述べている。 一方、過去に前向きな発言をしたことがある茂木敏充幹事長(68)は今月4日の会見では 「国民の間でも様々な意見がある」 「更なる検討を進めていきたい」 と述べるにとどめた。 林芳正官房長官(63)も 「個人的にはあってもいいが、色々な意見がある」 としている。 高市早苗氏、選択的夫婦別姓で小泉進次郎氏に反論「不動産登記できる」解雇規制緩和も反対 2024/9/9 17:23 https://www.sankei.com/article/20240909-TZREDMPC75CKZNZKXM66THI7RU/ 自民党の高市早苗経済安全保障担当相(63)=衆院奈良2区=は9日、党総裁選(12日告示、27日投開票)への立候補を表明した記者会見で、選択的夫婦別姓の制度化に慎重な考えを示した上で、 「少し正しく皆さまに知識を持ってもらいたい」 と述べ、 「選択的夫婦別氏制度を実現すると言う候補予定者に『(旧姓で)不動産登記ができない』と答えた人がいたが、4月から不動産登記は旧姓でできる」 と指摘した。 ■「正しい知識を」 選択的夫婦別姓を巡っては、小泉進次郎元環境相が総裁選に出馬表明した6日の記者会見で、制度の導入法案を提出する考えを明言し、 「旧姓では不動産登記ができない」 などと語っていた。 その上で、高市氏は 「婚姻で姓が変わることによる不自由を解消したい」 「私が提出したような法案が通れば、ほとんどの不便は解消される」 と述べ、旧姓の通称使用に法的根拠を与える法整備の必要性に重ねて言及した。 高市氏は平成14年と令和2年、それぞれ党法務部会に、旧姓の通称使用に法的根拠を与える 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」 を提出した。 しかし、党議決定には至っていない。 旧姓の通称使用の法制度化を重視する理由には世論調査の結果を上げた。 そのうち、内閣府の令和3年12月の調査は 「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」 との回答は42・2%で、 「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」 の28・9%を上回っている。 高市氏は、旧姓の通称使用に関する総務相時代の自身の取り組みもアピールし、「総務省関係でやることができる全ての手続き1142件について、婚姻前の姓で対応できるように変えた」などと語った。 ■解雇規制「日本は緩い方」 また高市氏は、小泉氏が掲げる大企業の解雇規制の緩和に関しても「反対だ」と明言した。 「G7(先進7か国)と比較しても、日本の規制はきつくない] 「(規制は)労働者を守る意味だが、様々な指標を見ると、(日本は)緩い方だ」 と語った。 <産経抄>多様性、多様性というけれど 2024/9/7 5:00 https://www.sankei.com/article/20240907-KZZFCTKANRNW7JW2QWLUV7TBFI/ 世は多様性の時代と言われる。 「首相になったら選択的夫婦別姓を認める法案を国会に提出し、国民的議論を進める」。 小泉進次郎元環境相は6日、自民党総裁選への出馬表明記者会見でこう述べ、 「多様な人生」 「多様な選択肢」 の拡大を訴えた。 ▼いつしか日本社会に、多様性を主張されると異議は唱えにくい 「空気」 が醸成されてしまった。 国会質疑からテレビコマーシャルまで、多様性という言葉を聞かない日はない。 とはいえ抄子は天邪鬼(あまのじゃく)なので、 「猫もしゃくしも多様性を礼賛する社会のどこが多様なのか」 と言いたくなる。 ▼レオナルド・ダビンチの名画「最後の晩餐」を揶揄した性的少数者の宴らしきものや、切り落とされた自らの生首を手に持つマリー・アントワネットが登場して物議を醸したパリ五輪開会式も、多様性を表現したものだった。 評価は分かれようが、少なくとも抄子の目にはグロテスクに映った。 ▼選択的夫婦別姓については、自民党総裁選への出馬を表明している者の中で小泉氏の他に石破茂元幹事長や河野太郎デジタル相も前向きである。 経団連も選択的夫婦別姓の早期実現を求め、まるでそれが時代の趨勢であるかのような提言も発表したが、本当にそうなのか。 ▼NHK放送文化研究所が中高校生を対象に令和4年に実施した調査(1183人回答)では、結婚後に夫婦別姓を望む回答はわずか7・0%しかいない。 調査自体が見当たらないので確たることは言えないが、子供たちが夫婦別姓に伴う 「片親との別姓」 や 「兄弟別姓」 を歓迎するだろうか。 ▼世界の潮流に乗り遅れるとの意見も承知しているが、こう愚考している。 日本は日本のやり方でいいと認めるのもまた多様性ではないかと。 夫婦別姓、LGBT問題でも共産党と似てきた経団連 自民党も加われば「多様性の統一」 阿比留瑠比の極言御免 2024/7/4 1:00 https://www.sankei.com/article/20240704-ORCW5C7MEFIC7EJPSH6XFP45ZI/ 前回、2024年6月27日付の当欄『夫婦別姓で失う自民の価値』で筆者は、選択的夫婦別姓制度を巡る議論には当事者である子供の視点が欠けていると指摘した。 その際、次のように記し、過去の調査では両親が別姓となることに否定的な意見を持つ中高生が3分の2に及んだことに言及していた。 「平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を紹介する」 「子供対象の世論調査自体が珍しく、古い調査だが寡聞にして他に知らないのでご容赦願いたい」 すると、親切な読者がNHK放送文化研究所が令和4年に実施した調査(1183人回答)があると教えてくれた。 その 「中学生・高校生の生活と意識調査」 を見ると、別姓に関する設問は1問だけだったが、こんな問いがあった。 「結婚後、名字をどのようにしたいか」 これに対する回答で一番多かったのは 「相手が自分の名字になっても、自分が相手の名字になっても、どちらでも構わない」 で58.7%に上り、姓への拘りの薄さを示している。 「自分の名字を相手の名字に変えたい」 という積極的な改正派も14.8%いた。 その一方で、夫婦別姓を求める 「自分も相手も、名字を変えずにそのままでいたい」 は僅か7.0%に留まっていたのである。 やはり、こうした子供たちの意見を無視すべきではないのではないか。 国会や司法、経済界やマスコミでの議論は、この点が欠落していて余りに功利的に見える。 夫婦別姓は必然的に片方の親と子供の姓が異なる親子別姓となるし、制度の構築の仕方によっては兄弟別姓にもなり得る。 ■高市法案の提出を そもそも今回、またぞろ夫婦別姓問題が浮上したのは2024年6月、経団連が選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める提言を発表したからだが、そこには案の定、子供の視点や立場は全く取り入れてられていなかった。 その 「はじめに」 の部分には一読、呆れた。 「ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂性)、(DEI)は、イノベーションの源泉であり、社会・経済のサスティナブルな成長に欠かせない要素であるとともに、先き不透明な時代の中で、企業のレジリエンスを高めるうえでも必要不可欠である」 短い一文の中に、6つも片仮名言葉が出てくる。 こんな不自然な言葉遣いをする者は普通、社会では敬遠されて相手にされない。 「我が国経済の自立的な発展と国民生活の向上に寄与すること」 を使命とするはずの経団連は、LGBT問題でも夫婦別姓問題でも、段々と日本共産党と似てきたのではないか。 その輪の中にもし自民党も加わるとしたら、それは多様性ではなく共産党が主張する 「多様性の統一」 だろう。 実際、共産党の田村智子委員長は2024年6月19日の党首討論で、経団連が政府に選択的夫婦別姓制度の早期実現を要請したことに言及し、 「長年に渡る女性たちの訴えが遂に経済界も動かした」 と胸を張った。 自民党はまず、高市早苗経済安全保障担当相が平成14年と令和2年の2度に渡り、党法務部会に提出した 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」 を審議し、国会に提出すべきである。 これにより、 「国、地方公共団体、事業者」 などは通称使用のために 「必要な措置を講ずる責務を有する」 と定めて通称使用に法的根拠を与えれば、経団連が懸念する 「職業生活上の不便・不利益」 の多くは解消するのではないか。 調査概要・グラフについて 「中学生・高校生の生活と意識調査」とは? https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-isiki/tyuko/about.html 回答者数 中高生の結果:中高別の全調査結果はこちら(PDF)から https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-isiki/tyuko/assets/pdf/cyukousei.pdf ―結婚後、名字をどのようにしたいか― 第51問〔全員に〕あなたは、将来、結婚したとしたら、名字をどのようにしたいと思いますか。次の中から、あてはまるものに、1つだけ〇を つけてください。 @1982年A1987年B1992年C2002年D2012年E2022年 1.相手の名字を、自分の名字に変えてほしい 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E19.6 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E16.0 2.自分の名字を、相手の名字に変えたい 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E13.1 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E16.2 3.相手が自分の名字になっても、自分が相手の名字になっても、どちらでも構わない 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E59.2 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E59.9 4.自分も相手も、名字を変えずにそのままでいたい 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E7.0 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E6.1 5.無回答 中学生@ ――A ――B ――C ――D ――E1.0 高校生@ ――A ――B ――C ――D ――E1.8 別姓で自己否定する自民 阿比留瑠比の極言御免 2024/6/27 1:00 https://www.sankei.com/article/20240627-TWC52YKBYNKC7DKHOP5EBO4BQU/ 自民党が性懲りもなく選択的夫婦別姓に関する党内議論を再開させるという。 経団連や経済同友会のビジネス的見地からの要請に後押しされた形だが、不必要だったLGBT理解増進法に続いて夫婦別姓にまで突き進むとしたら、自民の存在価値をまた1つ自己否定することになろう。 「多様性」 というはやりの聞こえのいい掛け声に目が眩み、安易に取り込もうとするのでは、立憲民主党や共産党、社民党と最早選ぶ所がない。 もっとも、岸田文雄首相は2024年6月21日の記者会見で、選択的夫婦別姓については次のように慎重だった。 「様々な立場の方に大きな影響を与える問題だ」 「だからこそ世論調査でも意見が分かれている」 「前向きな意見の方の一方、家族の一体感や子供の姓をどうするかなどに関心を持つ消極的な意見もある」 LGBT法を巡っては、元首相秘書官の性的少数者差別とも受け取られかねない発言や米民主党政権の圧力に屈して成立に前のめりになった首相だが、今度はぶれないでもらいたい。 安倍晋三元首相もかつてこの問題に関し、首相にこう信頼を示していた。 「岸田さんはそうリベラルではないんだ」 「以前、夫婦別姓の議論が高まった時に 「子供の視点が全然ない」 と話していた。 ■アンケートでは やはりこの点が重要だと考えるので、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を紹介する。 子供対象の世論調査自体が珍しく、古い調査だが寡聞にして他に知らないのでご容赦願いたい。 それによると、両親が別姓となったら 「嫌だと思う」(41.6%) 「変な感じがする」(24.8%) の否定的な意見が、合わせて3分の2に達した。 一方で 「嬉しい」 は僅か2.2%しかいなかった。 また、成人を対象とした令和3年実施の内閣府の 「家族の法制に関する世論調査」 結果を見ても、選択的夫婦別姓制度導入を求める回答は28.6%に留まった。 「夫婦同姓制度を維持した方が良い」が27.0%、 「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方が良い」が42.2%で、 夫婦同姓維持派が7割近くに達している。 夫婦の姓が異なることでの子供への影響に関しては 「好ましくない影響があると思う」と答えた者の割合が69.0%で 「影響はないと思う」は30.3% に留まっている。 留意すべきは 「兄弟の姓が異なっても構わない」が僅か13.8%で、 「姓は同じにするべきだ」が63.5% に上ることだろう。 夫婦どちらの姓を名乗らせるかを巡り、親族間のトラブルも予想される。 ■フェミニストの議論 選択的夫婦別姓については、 「選択的」 だから別に同性を選びたい人はそうすればいいだけだという意見もあるが、事はそう単純ではないだろう。 既に平成17年刊行の 「ザ・フェミニズム」(上野千鶴子、小倉千加子著) で、フェミニスト【フェミニストとは、全ての性が平等な権利を持つべきだという理由から女性の権利を主張する行為(フェミニズム)を支持する人のことだと、英オックスフォード辞書で定義されている】である小倉氏がこんな議論をしている。 「(選択的)夫婦別姓になったら、まるで夫婦別姓をしている人の方が進んでいて、夫婦同姓の人の方が遅れているみたいになりかねない」 「そこでまた1つの差別化が行われるわけじゃないですか」 女優でタレントの橋本マナミさんが2024年6月 「私は一緒の名字がいいです」 「好きで結婚したから」 とテレビで発言しただけでニュースとして取り上げられる現状を見ると別姓導入で同性夫婦が肩身の狭い思いをする日が来るかもしれない。 (論説委員兼政治部編集委員) 阿比留瑠比の極言御免 日経、朝日のコラムに異議あり 夫婦別姓論議に欠ける子供の視点 2015/11/9 5:00 https://www.sankei.com/article/20151109-Q7P53O3IFNNVLFLL3DOXYENVFM/ 2015年11月4日は最高裁大法廷で夫婦別姓(氏)を巡る訴訟の弁論が開かれるとあって、日経新聞と朝日新聞の朝刊1面コラムが、それぞれこの問題を取り上げていた。 夫婦別姓に賛成・推進する立場で書かれたこの2つのコラムを読んで感じたのは、立論の前提、出発点が異なり、議論が噛み合わないもどかしさだった。 「誰かに迷惑もかけない」 「コストも知れている」 「歩みの遅さを合理的に説明するのは難しい」 日経はこう書いていたが、夫婦別姓論議でいつも気になるのが、当事者である子供の視点の欠落だ。 子供の意見を反映した調査がなかなか見当たらないので少し古くなって恐縮だが、平成13年に民間団体が中高生を対象に実施したアンケート結果を引用したい。 それによると、両親が別姓となったら 「嫌だと思う」(41.6%) と 「変な感じがする」(24.8%) との否定的な意見が、合わせてほぼ3分の2に達している。 一方、 「嬉しい」は僅か2.2% しかいなかった。 また、20歳以上の成人を対象とする内閣府の世論調査(平成24年12月実施)でも、夫婦の名字が違うと 「子供にとって好ましくない影響があると思う」と答えた人が67.1% に上り、 「影響はないと思う」(28.4%) を大きく上回った。 夫婦別姓と言うと、両性が納得すればいいと思いがちだが、夫婦が別姓を選択した場合、子供は必ず片方の親と別姓になる。 事は夫婦の在り方だけの問題ではなく、簡単に 「誰かに迷惑もかけない」 と言い切れるような話ではない。 日経コラムは更に、こうも書いている。 「反発する人の声から『自分と違う価値観を持つ人間が、とにかく許せない』との響きを感じることがある」 どう感じようと自由ではあるが、この見解はかなり一方的だろう。 10年以上前のことだが、夫婦別姓を議論していた自民党の会議を取材した同僚記者は、夫婦別姓推進派で、現在は党総裁候補の1人と言われる議員から、こう面罵された。 「(夫婦別姓に慎重論を唱える)産経新聞は、新聞じゃない」 当たり前のことだが、自分と違う価値観が許せないのは、何も夫婦別姓に 「反発する人」 に限らないということである。 多様な価値観を説く人が、異なる価値観を否定するという矛盾を犯すのは珍しくない。 ちなみに、朝日のコラムにはこうあった。 「結婚や家族の多様化、個の尊重という冒頭に引いた変化(※国民意識の多様化、個人の尊重)は、別姓の議論にもそのまま当てはまる」 「社会は旧姓使用を広げる方向に動く」 確かに一般論としては、社会の多様化は歓迎すべきことなのだろう。 多様性を失えば硬直化し、やがては行き詰まっていく。 とはいえ、何でもかんでも 「多様化」 という言葉で正当化しても、そこで思考停止することになる。 また、夫婦別姓を法的に位置付ける事と、旧姓使用は全く別物である。 現在、夫婦同姓制度の下で通称使用が大きく緩和され、旧姓使用が広がっていることがその証左だと言える。 いずれにしてもこの問題を考える時は、直接影響を受けることになる子供の意見をもっと聞いた方がいい。 政府にも、今度調査する時は是非その視点を盛り込むようお願いしたい。 (論説委員兼政治部編集委員) 安倍元総理の三回忌を前に 「夫婦別氏」よりも「婚姻前の氏の使用」の利便化で WiLL2024年8月号 経済安全保障担当大臣 高市早苗 ■安倍元総理が夢に 2024年7月8日には、2022年の参議院選挙応援中に凶弾に倒れ、逝去された安倍晋三元総理の三回忌を迎えますね。 度々つまらない口喧嘩をしたり、仲直りをしたりの繰り返しでしたが、それも叶わなくなった今は、しみじみ淋しくなります。 先般、疲労が極限に達した時に、亡き両親と安倍元総理が一緒に夢に出てきたので、 「迎えに来たのかな」 と感じましたが、その夢には昭恵夫人も登場していたことを思い出して一安心! 安倍元総理も懸命に応援して下さった2021年9月の自民党総裁選以降、土日は党務か政務で地方講演、平日は仕事、深夜には大量の資料読みや原稿書き・・・と休みなく働き続けていて、人間ドックなど健康診断も3年以上は受けていないので、注意喚起のために夢に出て来て下さったのかなとも思いました。 2024年夏は、各方面との調整がつけば、安倍元総理の御命日に出国して、G7科学技術大臣会合に出席しますが、イタリアから帰国したら、1日だけは休みを確保して健康診断に行ってみようと考えています。 ■経済界が夫婦別氏制度導入を要望 安倍元総理が何度も仰っていたことがありました。 「選択的夫婦別氏だけどさ、あれは駄目だよ」 「高市さんが法務部会に提出している法案を早く成立させればいいんだよ」 私が自民党政調会長の法務部会に提出した法律案というのは、 『婚姻前の氏の通称使用に関する法律案』 のことです。 この法律案では、戸籍上の夫婦親子の氏が同一であること(ファミリー・ネーム)は維持しつつ、 「婚姻前の氏を通称として称する旨の届出をした者」 について、 「国、地方公共団体、事業者、公私の団体」 は 「婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有する」 としたものです。 この法律案を、2002年と2020年の2回に渡って法務部会に提出しましたが、1回目は 「戸籍の氏も住所も別々にするべきだ」 といった強烈な反対意見が出て党議決定には至らず、2回目は、審査もされないまま放置されています。 私は、足掛け約4年の総務大臣任期期間の後半(2019年9月からの約1年間)で、『住民基本台帳法』『地方自治法』『公職選挙法』『消防法』『放送法』『電気通信事業法』をはじめ総務省が所管する全法令をチェックし、資格や各種申請など事務手続きに戸籍氏しか使えなかったものを、全て婚姻前の氏の単記か併記で対応できるように変更しました。 総務省単独の判断で変更できたものだけでも、合計1142件でした。 仮に全府省庁が阻害と同じ取り組みを実施し、地方公共団体や公私の団体や企業も同じ取り組みを実施すれば、婚姻による戸籍氏の変更によって社会生活で不便を感じることはなくなると考えます。 例えば、金融庁や厚生労働省。 私自身の経験では、銀行の預金通帳でしたが、婚姻前の氏のままで使える銀行と戸籍氏に作り直すよう求める銀行が混在していました。 数年前に年金受給者の方から伺った話ですが、通称使用届けを出して戸籍氏と婚姻前の氏が併記された住民票を提示したのに、厚生労働省の方針として 「戸籍氏の通帳でなければ年金を振り込めない」 とされ、通帳を作り直したということです。 こういった所管府省庁によってバラバラの対応が残っている現状を改善するためにも、私が起草した法律案によって、 「国、地方公共団体、事業者、公私の団体」 が 「婚姻前の氏を通称として称するために必要な措置を講ずる責務を有する」 ことを明確にするべきだと思っていました。 2024年6月、経団連会長が 「選択的夫婦別氏制度の導入」 を要望する 「提言」 を公表されました。 報道で知る限りの理由は、働く女性の不便解消や国際社会での活躍のためにということらしいのですが、先ずは前記したような法整備を行うということでは不十分でしょうか。 既に、マイナンバーカード、パスポート、運転免許証、住民票、印鑑登録証明書は、戸籍氏と婚姻前の氏の併記が可能になっています。 仕業・師業と呼ばれる国家資格の殆どで、免許証などへの婚姻前の単記や併記が可能になっています。 国際社会での活躍についても、同氏や別氏だけではなく、複合氏を使う国もあれば、氏が無い国もあり、様々です。 ■「子の氏の安定性」 最近は、 「夫婦別氏制度」 の導入に賛成する政治家は 「改革派=善」、 反対する政治家は 「守旧派=悪」 といったレッテル貼りがされているように感じますので、私のような考え方は変だと思われる方も多いのかもしれません。 私が選択的であったとしても 「夫婦別氏制度」 の導入に慎重な姿勢を続けてきた最大の理由は、 「子の氏の安定性」 が損なわれる可能性があると思うからです。 現行制度では、婚姻届けを提出した夫婦の戸籍は全て同氏ですから、子も出生と同時に両親と同氏になることが確定しています。 法改正によって戸籍上も別氏の夫婦が出現した場合、子の氏の決め方について、 「全ての別氏夫婦が納得できるルール」 が必要になります。 仮に 「別氏夫婦が子の氏を取り合って、協議が調わない場合」 には子の氏が定まらないので、『戸籍法』が規定する 「出生の届出は、14日以内」 というルールも見直す必要があるのではないでしょうか。 これまでに衆議院に提出された 「夫婦別氏制度」 の導入を可能にする 「民法の一部を改正する法律案」(立憲民主党案) を拝見すると、 「別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称する」 「協議が調わない時は、家庭裁判所は、協議に代わる審判をすることができる」 とされています。 同法律案でも、別氏夫婦が子の氏を取り合って決められないケースを想定しているわけですが、果たして、この争いを持ち込まれる家庭裁判所は、一体どのような判断基準で審判を行うのでしょうか。 離婚の際に子の親権を争う裁判でしたら、法律に判断基準は明記されていないものの、過去の裁判例では 「子を養う経済力」 「子と過ごす時間を確保できるのか」 「子との関わりや愛情」 「子の年齢によっては子の意思」 「健康状態」 「教育・居住環境」 などの要素を総合的に考慮して判断されているようです。 しかし、出生直後の子の氏を争っている場合、家庭裁判所が如何なる審判をしたとしても、夫婦双方が納得できる理由を示すことができるとは考えられません。 裁判官、検事、法務省大臣官房審議官としても活躍された小池信行弁護士は、 「夫婦の協議で決まらない時の補充的な決定方法を定めておく必要がある」 として、スウェーデンでは 「出生から3カ月以内に決まらない時は母の氏を称するとしている」 ことを例示しておられました。 私は、幸せであるはずの出産直後に、子の氏を巡る争いの種を作ることを、特に懸念していました。 「夫婦別氏制度」 の導入を求める方々からは 「余計なお世話だ」 と批判されるのでしょうが・・・。 ■世界に誇れる日本の戸籍制度 「そもそも、戸籍制度を廃止するべきだ」 と主張される方々もおられますが、私は、日本の 「戸籍制度」 は、世界に誇れる見事なシステムだと思っています。 戸籍は、重要な身分関係を明確にするために、血族・姻族・配偶関係を記載した公簿です。 新戸籍と旧戸籍の双方に相手方戸籍を特定表示することから、相手方戸籍を相互に索出でき、両戸籍を連結する記載が可能で、無限の親族関係の広がりを証明することができます。 よって、戸籍の 「公証力」 は、非常に強いものです。 例えば、遺産相続の分割協議手続きでは、 「隠れた法定相続人」 の存否を確認するため、死亡者の戸籍謄本を全て遡ることによって親族関係を確定できます。 重要な契約事も、戸籍で証明するものが多くあります。 この他、戸籍は、近親婚の防止、婚姻要件の調査、出生、死亡、離婚、任意認知、母子家庭の児童扶養手当、障害児童の特別児童扶養手当、母子父子寡婦福祉資金貸付、戦没者遺族に対する特別弔慰金、成年後見の申立手続き、家事調停事件手続きなど、様々な場面で行政・司法の基礎となっています。 20年以上婚姻関係を継続している夫婦間で居住用不動産を贈与した時の配偶者控除の制度でも、戸籍によって、20年以上に及ぶ婚姻関係を把握し立証します。 「他国に例を見ない戸籍制度だから、廃止するべき」 なのではなくて、 「他国に誇れる極めて優れた制度だから、守り抜くべき」 だと考えています。 愚か者! 経団連「夫婦別姓」提言 WiLL2024年8月号 副県立大学名誉教授 島田洋一 2024年6月10日、経団連がいわゆる 「選択的夫婦別姓」 の 「早期実現」 を政府に求める提言を出した(具体的には民法750条の改正)。 経団連は、夫婦が妻の姓を選ぶことも可能ではあるものの、 「実際には95%の夫婦が夫の姓を選び、妻が姓を改めている」 「そのため、アイデンティティの喪失や自己の存在を証することが出来ないことによる日常生活・職業生活上の不便・不利益といった、改姓による負担が、女性に偏っている」 と言う。 経団連によれば、 「女性のエンパワーメント(強化)において、我が国は世界に大きく立ち遅れており」、 その背後に、 「各社の取り組みだけでは解決できない、女性活躍を阻害する社会制度」 がある。 その代表的なものが夫婦同氏制度だというのである。 まず最初の疑問だが、女性の活躍に関して日本が 「世界に大きく立ち遅れて」 いるというのは本当か。 経団連・十倉雅和会長の頭にある 「世界」 がどの範囲なのか知らないが、少なくとも相当怪しい 「世界観」 だろう。 実際日本において、実力ある女性の活躍が、男の場合以上に阻害されているとすれば、 「女を下に見る」 不見識な経営者や重役が各所に残るでいではないか。 だとすれば、経済界の頂点に位置する経団連会長の責任が相当大きいと言わざるを得ない。 まずは自らの指導力不足を反省すべきだろう。 経団連提言で最も問題なのは、従来 「夫婦別姓」 法制化論で常に論点となってきた、 @親子や兄弟姉妹の間で姓が異なって良いのか A明治以来の戸籍制度を崩すことにならないか といった懸念に全く答えていないことである。 そもそも言及自体ない。 これは無責任だろう。 近年、パスポート、マイナンバーカードを始め、旧姓の通称使用が拡大されてきた。 経団連提言も、 「官民の職場では、女性の社会進出の進展を踏まえ、改姓によるキャリアの分断等を避けるため、職場における旧姓の通称としての使用を推進してきた」 「公的証明書や各種国家資格等でも婚姻前の姓(旧姓)の併記が可能になるなど、政府の施策としても通称使用が拡大され、経済界においても、通称使用は定着している」 と述べている。 「経団連調査では91%の企業が通称使用を認めている」 とも言う。 まだ不十分と言うなら、100%になるよう、経団連が強い姿勢で 「立ち遅れている」 経営者を叱咤すべきだろう。 そのための経済団体ではないか。 この問題で慎重論の先頭に立ってきた高市早苗議員は次のように言う。 「結婚すると、夫婦やその間に生まれる子供は同じ戸籍に登載され、姓は『家族の名称』という意味を持つ」 「だが、別姓になれば姓は単なる『個人の名称』になる」 「たとえ『選択制』にしても、家族の呼称を持たない存在を認める以上、結局は制度としての家族の呼称は廃止せざるを得なくなるだろう」 「事は家族の根幹に関わる」 (産経新聞・2021年3月18日) 「国際的トレンド」 云々についても高市氏は、 「日本は日本」 と一蹴する。 経団連は、旧姓の通称使用では問題解決にならない例として次のような 「トラブル」 を挙げる。 カッコ内は私のコメントである。 ・クレジットカードの名義が戸籍上の場合、ホテルの予約等もカードの名義である戸籍姓に合わせざるを得ない。 (合わせたら良いではないか。合わせると女性活躍が阻害されるのか)。 ・国際機関で働く場合、公的な氏名での登録が求められるため、姓が変わると別人格として見做され、キャリアの分断や不利益が生じる。 (結婚したから姓が変わったと言えば済む話、国際機関を馬鹿にし過ぎてはいないか) ・社内ではビジネスネーム(通称)が浸透しているため、現地スタッフが通称でホテルを予約した。 その結果、チェックイン時にパスポートの姓名と異なるという理由から、宿泊を断られた。 (現地スタッフとの意思疎通をより密にすれば良いだけ。あるいはパスポートに旧姓を併記すればよい。令和3年4月1日以降、申請が非常に簡略化された) これが、女性にとって 「アイデンティティの喪失」 や 「自己の存在を証することができない」 ほどの不条理であり、家族別姓しか解決策がない次元の 「トラブル」 だろうか。 この程度の事象にも効果的に対処のマニュアルを示せない経団連では、日本経済停滞も無理はない。 民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。 選択肢のある社会の実現を目指して 〜女性活躍に対する制度の壁を乗り越える〜 2024年6月18日 一般社団法人 日本経済団体連合会 https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044_honbun.html 選択的夫婦別姓 経団連・十倉雅和会長「スピーディーに議論を」自民に要求 2024/6/25 23:24 https://www.sankei.com/article/20240625-GN2CKAAVRFIKFERTR7RAD7JTXQ/ 経団連の十倉雅和会長は2024年6月25日の定例記者会見で、自民党が 「選択的夫婦別姓制度」 に関する党内議論を本格化する意向を示したことについて、 「女性の社会進出、社会での活躍を進めたいという思いは一緒だと思う」 「オープンでスピーディーに議論してほしい」 と述べた。 経団連は結婚後も希望すれば夫婦それぞれが生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる同制度の早期実現を求める提言を2024年6月10日に発表し、2024年6月21日に自民党に提言を提出していた。 経済同友会の新浪剛史代表幹事も2024年6月18日の定例会見で、 「1つの姓を選ばなくてはいけないという非常に不都合なことがずっと放置されたままだ」 と指摘。 「政治が解決しないのであれば経済界がモノを言っていかなければならない」 との認識を示していた。 選択的夫婦別姓議論、自民が3年ぶり再開 慎重派は懸念「保守離れ加速する」 2024/6/25 22:34 https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/ 選択的夫婦別姓を巡る議論の経緯 https://www.sankei.com/article/20240625-SMJK6OPPEZNVLKMZIZFF2O5VYQ/photo/TNK63PLFCRO4BDS2LNDI5YSMIU/ 自民党は近く選択的夫婦別姓を巡る党内議論を3年ぶりに再開させる。 経団連が早期実現を求める提言を発表するなど、家族の多様性を尊重する風潮が背景にある。 とはいえ、保守層を中心に家族の一体感が失われるとして慎重論も少なくない。 保守層が求める早期の憲法改正が一向に進まない中で推進論に傾けば、 「自民離れ」 が加速するのは必至だ。 自民の茂木敏充幹事長は2024年6月25日の記者会見で、 「多様な人材の活躍は社会活力の源だ」 「選択的夫婦別姓は社会全体にも関わる問題であり、国民の幅広い意見も踏まえて、しっかり議論を進めていきたい」 と述べた。 自民の渡海紀三朗政調会長は2024年6月21日、選択的夫婦別姓を含む 「氏制度のあり方に関するワーキングチーム(WT)」 で議論に着手すると表明した。 新たな座長には逢沢一郎党紀委員長を起用する方針だ。 党幹部は 「政権与党として、いつまでも夫婦別姓の議論を棚ざらしというわけにはいかない」 と議論再開の必要性を強調する。 自民は菅義偉政権下の令和3年4月にWTの初会合を開催。 令和3年6月に論点整理をまとめたが、議論が紛糾したため制度導入の是非には踏み込まず、結論を先送りしていた。 しかし、経団連が2024年6月10日、早期実現を訴える政府への提言を発表したことを受け、党内では再び推進派と慎重派が動きを活発化させている。 自民の有志議員で作る 「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長・浜田靖一国対委員長) は2024年6月21日、国会内で会合を開き、経団連から提言を受け取った。 浜田氏は 「大変心強い」 「時代の要請として受け止めていく」 と語った。 一方、慎重派で作る 「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」(会長・中曽根弘文元外相) は2024年6月19日に党本部で会合を開き、結婚前の氏を通称として幅広く使用できる環境整備を進めることを確認。 慎重派の議員は 「拙速に議論を進めれば『岩盤保守層』の更なる離反を招きかねない」 と不安を口にする。 岸田文雄首相(自民総裁)も2024年6月21日の会見で、慎重な姿勢を示した。 対立の激化は自民分断の芽となりかねず、党重鎮は 「経団連の手前、議論はしなければならないが、明確な方向性を示すことは難しいのではないか」 と述べた。 <主張>経団連「夫婦別姓」 家族の呼称をなくすのか 社説 2024/6/19 5:00 https://www.sankei.com/article/20240619-I4Q7IU7X5FJQTNZ3V4LDQESQHQ/ 結婚後に夫婦が同じ姓を名乗るか、旧姓を維持するか選べる 「選択的夫婦別姓」 について経団連が早期実現を提言した。 十倉雅和会長は、女性の社会進出が進む中で 「国会でスピーディーに議論してほしい」 と述べたが、国民の合意を欠いたまま、急ぐ問題ではない。 経団連は従来、夫婦同姓の下で職場での通称使用で対応できるとの立場だった。 別姓推進に転じたのは 「ビジネス上のリスク」 などが理由だ。 経団連が行ったアンケートなどでは職場で旧姓の通称使用が増えている一方、通称では銀行口座などが作れないことや海外渡航、契約で戸籍上の姓と異なることでトラブルが生じていることを指摘した。 だが夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定を変えることは、家族や社会の有り様に関わる。 岸田文雄首相が2024年6月17日の衆院決算行政監視委員会で、選択的夫婦別姓の早期導入の提言に慎重な考えを示し、 「家族の一体感や子供の利益に関わる問題であり、国民の理解が重要だ」 と述べたのは、もっともだ。 夫婦別姓を認めない民法の規定を 「違憲」 だとする訴えに対し、最高裁は平成27年と令和3年に合憲の判断を示し、夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。 別姓制が導入されれば、こうした姓の意義が、砂粒のような個人の呼称へと大きく変わる。 専門家によると姓は血縁血統を表すもので、家族の歴史や絆が断ち切られかねない。 同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要がある。 「選択」 と言っても別姓を希望しない人も含め社会に関わる問題だ。 別姓推進論は子供からの視点にも欠ける。 夫婦別姓では、どちらかの親と子が別姓になる。 子供の姓をどうするのか。 祖父母らも絡み、いさかいや分断が起きるのは見たくない。 最高裁の判決では、姓の在り方について国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきだ、としている。 深く理解すべきだ。 住民票や運転免許証、パスポートなどで旧姓を併記できる制度も広がっている。 経団連は、トラブルを嘆くより、我が国の夫婦同姓の意義を国際的に発信し、問題を解消してほしい。 <産経抄>経団連の「夫婦別姓提言」に異議あり 2024/6/17 5:00 https://www.sankei.com/article/20240617-BKNKSTIQ3FJ2DDKD2AI3HWGCEQ/ 夫婦別姓が叶わなくとも、パートナーを守る方法はある 経団連は 「選択的夫婦別姓」 の早期実現を求める提言を発表したが、法制化には国民の合意が必要だ 2024年6月の第3日曜は 「父の日」 だったが、 「母の日」 に比べ影が薄い。 父親の地位低下が指摘され久しい。 ▼ゲームに押されて、子供のおままごと遊びはあまり見かけなくなったが、やってみてもパパ役はママに叱られ、オタオタする様子を真似するのだとか。 「正論」 を重んじる同僚も、家では言いたいことを言えず、妻や娘たちに阿る日々だという。 それも平和を守る知恵か。 ▼だがこちらは黙って見過ごせない問題だ。 経団連が 「選択的夫婦別姓」 の早期実現を求める提言を先日、発表した。 十倉雅和会長は 「国会でスピーディーに議論してほしい」 と述べたが、拙速に進めては禍根を残す。 ▼選択的夫婦別姓は夫婦で同じ姓(氏)にするか、旧姓を名乗るかを選べる制度だ。 民法の改正などが必要となる。 女性の社会進出に伴い、平成8年に法制審議会が導入を求める答申をした。 30年近く経っても法制化に至らないのは、国民の合意が得られないからだ。 財界が 「急げ」 と号令をかける話なのか。 ▼最高裁は平成27年と令和3年に、夫婦別姓を認めない民法の規定について 「合憲」 とする判断を示した。 夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めている。 選べるならいいじゃないか、別姓を希望しない人には関係ない、と考えるのは早計だ。 専門家からは、姓について家族の呼称から個人の呼称へと大きく変質することが指摘されている。 ▼同じ戸籍に同じ姓の人を記載する戸籍の編製方法も見直す必要があり、社会全体に関わる。 夫婦同姓は子供も両親と姓を同じくすることで利益を享受しやすい意義もある。 別姓では子の姓をどうするか。 双方の祖父母も絡み、決まらない混乱も予想される。 「国民の意見さまざま」 法相、選択的別姓に慎重 2024/6/11 11:24 https://www.sankei.com/article/20240611-JHRCRF76CFIA3LM3MAVGM7R5GY/ 小泉龍司法相は2024年6月11日の閣議後記者会見で、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求めた経団連の提言に対し 「国民の間にまださまざまな意見がある」 とした上で 「積極的に動きを見極め、対応を検討していくことが必要だ」 と述べ、慎重な姿勢を示した。 法相の諮問機関の法制審議会は1996年、結婚後もそれぞれ婚姻前の名字を使える選択的別姓制度の導入を含む民法改正案を答申。 だが、保守系議員の反対などで法案は提出されなかった。 小泉氏はこの点にも触れ 「国会議員の方々の間でもしっかりと議論をし、幅広い理解を得ていただくため、法務省として積極的な情報提供をしたい」 とした。 「夫婦別姓制度、早期実現を」経団連が初の提言 通称は海外で理解得られずトラブルも 2024/6/10 18:29 https://www.sankei.com/article/20240610-PLZOKGZSLVKTZKDUTL3OBW74UQ/ 経団連は2024年6月10日、選択的夫婦別姓制度の実現を求める提言を発表した。 希望すれば生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けられる制度の早期実現を要求。 政府に対し 「一刻も早く改正法案を提出し、国会で建設的な議論を期待する」 とした。 経団連による同制度に関する提言は初めて。 十倉雅和会長は2024年6月10日の定例記者会見で 「世の中は大きく変わっている」 「国会でスピーディーに議論してほしい」 と述べた。 現在は婚姻時に夫か妻のいずれかの姓を選べるが、妻が改姓することが圧倒的に多い。 提言では 「生活上の不便、不利益といった改姓による負担が女性に偏っているのが現実」 と訴えた。 経団連の調査では、国内の91%の企業は旧姓などを通称として使用することを認めているものの、通称は海外では理解されづらく、トラブルの原因になることがあると指摘。 「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る」 とした。 主張 夫婦同姓は合憲 家族制度の原則を守った 2021/6/24 5:00 https://www.sankei.com/article/20210624-BGWW7J52VRJMJFEQ5FVP7KQAZQ/ 最高裁大法廷は、 「夫婦別姓」 を認めない民法の規定を再び 「合憲」 と判断した。 夫婦同一の姓は社会に定着し、家族の呼称として意義があることを認めた平成27(2015)年の最高裁判決を踏襲した。 妥当な判断である。 事実婚の男女3組が、夫婦別姓を希望して婚姻届を提出したが、不受理となり、家事審判を申し立て、最高裁に特別抗告していた。 女性の社会進出や世論など最近の情勢変化を踏まえた判断が注目されたが、最高裁は決定理由で、社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、6年前の判断を変更すべきとは認められない―と判示した。 平成27(2015)年の最高裁の判断を通し、夫婦同一の姓について、男女差別を助長したり、人格を傷付けたりする制度ではないことも明確になっている。 最高裁はこの時と同様、 「制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべき事柄」 と指摘した。 平成8(1996)年に法制審議会が、夫婦で同じ姓にするか、旧姓をそれぞれ名乗るか選べる選択的夫婦別姓の導入を答申して25年経つ。 法制化に至らなかったのは、立法府が問題を放置しているというより、国民の十分な合意が得られないからである。 選択的夫婦別姓について、個人の自由で選択の幅が広がる―などと歓迎するのは考え違いである。 導入されれば夫婦同一姓を原則とした戸籍制度が崩れかねず、全国民に影響が及ぶ。 親子が別々の姓になる事態も起きる。 子供の姓を両親どちらの姓にするかなど、諍いや混乱も予想される。 平成29(2017)年に行われた内閣府の世論調査では、夫婦別姓が子供に与える影響について、6割以上が 「子供にとって好ましくない影響があると思う」 と答えていた。 社会情勢の変化と言うなら、旧姓が通称使用できる企業は増えている。 2年前の2019年には住民票やマイナンバーカードなどで旧姓を併記できるようにするため、政令改正が行われた。 パスポート(旅券)についても旧姓併記の申請が容易になるよう緩和された。 日本の伝統や文化に根差した家族制度の原則を崩す必要はなく、更に働きやすい職場作りなどに知恵を絞る方が現実的だ。 国や社会の基盤である家族の意義に理解を深くしたい。 夫婦別姓認めぬ規定、再び「合憲」 最高裁 2021/6/23 21:54 https://www.sankei.com/article/20210623-WTZ3HHNALJO5RNCEOMMHNPXNAI/ 夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、東京都内に住む事実婚の男女3組が起こした家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は2021年6月23日、規定は 「合憲」 とする判断を示した。 最高裁は平成27(2015)年にも夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲としており、今回は2度目の判断。 15人中4人は違憲とする意見や反対意見を出した。 決定理由で最高裁は、家族が同じ姓を名乗るのは日本社会に定着しており、規定に男女の不平等はないとした平成27(2015)年の判断について 「社会や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、変更すべきとは認められない」 と指摘。 一方で、夫婦の姓を巡りどのような制度が妥当なのかという問題と、憲法違反かどうかを審査する問題とは 「次元が異なる」 とした上で 「国会で論じられ、判断されるべき事柄だ」 と、前回判断に続き、改めて立法での議論を促した。 合憲とした深山卓也裁判官、岡村和美裁判官、長嶺安政裁判官の3人は 「今回の判断は、国会での選択的夫婦別姓制度を含む法制度の検討を妨げるものではなく、国民の様々な意見や社会の状況変化などを十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」 と、共同補足意見で述べた。 一方、違憲とした宮崎裕子裁判官と宇賀克也裁判官は 「結婚に対する当事者の意思決定は自由かつ平等であるべきで、規定は不当な国家介入に当たる」 などと述べた。 事実婚の3組は、婚姻届に 「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」 と付記して自治体に提出したが不受理となり平成30(2018)年3月、東京家裁などに家事審判を申し立てたが、却下された。 2審東京高裁でも棄却され、最高裁に特別抗告していた。 結婚後の姓を巡っては、平成8(1996)年に法相の諮問機関・法制審議会が、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが、法案提出には至らなかった。 2021年に入り自民党がワーキングチームを設置し本格的な議論が始まったが、実現への目処は立っていない。 ◇ ■夫婦同姓の規定 民法750条は、結婚した夫婦は 「夫または妻の氏」 を名乗るよう規定。 戸籍法でも、結婚時に 「夫婦が称する氏」 を提出書類に記載するよう定めている。 昭和22(1947)年に改正される前の明治民法では 「家の姓を名乗る」 とされていた。 厚生労働省の統計では、平成27(2015)年に結婚した夫婦のうち、96%が夫の姓を選択。 改姓による社会的な不便・不利益が指摘されてきたことなどを背景に、夫婦が希望する場合には結婚後に姓を変えない 「選択的夫婦別姓制度」 の導入を求める声が強まっている。 夫婦別姓認めぬ最高裁判断「家族に一体感」安堵の声も 2021/6/23 20:45 https://www.sankei.com/article/20210623-CEFJAVRIAZIRPHCEU6S7ZFUAEI/ 最高裁大法廷が2021年6月23日、6年前に続き、 「夫婦別姓」 を認めない民法の規定を 「合憲」 とする判断を示した。 この間の社会情勢や国民の意識の変化を踏まえつつ、国会に議論を委ねた形に。 「違憲」 となれば、新たな対応を迫られる現場からは安堵の声も聞かれた一方、申立人からは決定に不満が漏れた。 「結婚して姓が一緒になることで、家族としての一体感が生まれる」。 結婚生活40年以上になる東京都江東区の男性(71)は、合憲判断に納得の表情を浮かべた。 「子供のことを考えれば、両親が違う姓だと違和感を覚えるのではないか」 とも指摘した。 内閣府の平成29年の調査では、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正42.5%が賛成と答え、反対の29.3%を上回った。 ただ、賛成派に実際に別姓とするかを尋ねたところ、希望するが19.8%、希望しないが47.4%だった。 夫婦別姓が認められれば、子供への心理的影響も懸念される教育現場。 最高裁の決定に注目していた千代田区の幼稚園園長は 「途中で姓が変わった場合に、子供たちの間に動揺が広がらないようにケアするなど、新たな対応が必要になってくるだろうと思っていた」 と打ち明ける。 一方、先祖代々の墓を管理する寺院は、家族観の変化に危機感を抱いていた。 豊川稲荷(愛知県豊川市)によると、旧姓と結婚後の姓の両方を墓石に刻む女性が増えてきているといい、同寺の男性役員(53)は 「夫婦別姓になると、家という概念が失われる可能性がある」 「別姓が認められるのは難しいと思っていた」 と話した。 夫婦別姓には、財産をめぐる問題が持ち上がる可能性もある。 生命保険の受取人は原則戸籍上の配偶者や2親等以内の血縁者に限られており、ライフネット生命保険(東京)の担当者は 「姓が異なる場合、配偶者であることの確認が課題になる」。 同社では事実婚のパートナーらを保険金の受取人にできる仕組みを作っており、 「今後も社会の変化に合わせて検討していきたい」 と話した。 選択的夫婦別姓 社会混乱の引き金に 八木秀次×小島新一・大阪正論室長 ラジオ大阪ぶっちゃけ正論 2021/6/17 8:00 https://www.sankei.com/article/20210617-C2ELAEDPJ5MIHI5KLUORROEF4A/ ■家族名が消える 小島 選択的夫婦別姓制度を導入すべきだという議論が昨年から国会で盛んになりました。 八木 選択的夫婦別姓とは、夫婦同姓、親子同姓という民法の考え方をふまえ、同姓にしたい人はこれまで通り同姓だけど、別姓にしたい夫婦は別姓を選んでもいい。 選択ができるという仕組みです。 一見よさそうに思えるんですよ。 小島 自分たち夫婦、家族は同姓でいたいと考えている人たちも、自分たちの同姓が守られるのならと考えてしまいますよね。 八木 ところが選択的であったとしても、その影響は別姓夫婦にとどまりません。 別姓では、1つの戸籍の中に2つの姓が存在することになります。 戸籍から、家族に共通の姓、ファミリーネーム、家族名がなくなるわけです。 小島 家族名がある戸籍とない戸籍、ある人とない人が共存することはないので、全体として家族名はなくなると。 八木 「氏名」の性格が根本的に変わるんです。 氏名とは、家族名に個人の名前を合わせたものです。 家族名がなくなれば、氏名は純粋な個人の名前になる。 すべての家族から家族名が奪われ、戸籍上、姓が同じ夫婦や子供も、各人の名前の上の部分が重なっているにすぎなくなる。 小島 たまたま上の名が同じということですね。 八木 ええ。 たいした問題ではないと思う人がいるかもしれませんが、社会制度や慣行に影響が及びます。 家族単位、世帯単位で主になされてきたものが崩れて個人単位になる。 ■3つの姓から選択も 八木 別姓夫婦だと、子供の姓をいつ決めるのかという問題もあります。 兄弟姉妹で姓は統一なのか、バラバラなのか。 子供が1人だけだと、夫婦で子供の姓の取り合い、押し付け合いにならないか。 すでに結婚して同姓の夫婦も、1年あるいは3年の経過措置期間を設けて別姓を選ぶことができるとしています。 妻、あるいは夫が旧姓を名乗りたいとなった場合、夫婦の間に生まれた子供の姓の選び直しも行われることになる。 複数世代にわたる姓の変更を認めるのかという問題も想定されます。 子供のいる夫婦の妻側の母親、おばあちゃんが実家の姓に戻すという選択をした場合、連動して、妻の姓もおばあちゃんの旧姓に変えられるのか。 旧姓に戻す決断をしたおばあちゃんの娘である妻や孫は3つの姓から選ぶということになりかねない。 おばあちゃんの旧姓、夫の姓、妻の旧姓です。 小島 社会が大混乱しますね。 八木 自民党内では一時、選択的夫婦別姓の導入機運が高まりましたが、こうした現実的な問題点への理解が広まり、賛成意見はしぼみつつあります。 櫻井よしこ氏「保守政党らしからぬ提言に危機感」 2021/5/19 16:40 https://www.sankei.com/article/20210519-FRWVDCNTRVN7PLO57QDGPU2CK4/ 選択的夫婦別姓制度の導入に慎重な自民党有志議員を中心に作る 「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」 が2021年5月19日、ジャーナリストの櫻井よしこ、麗澤大学教授の八木秀次の両氏を講師に招いて国会内で会合を開いた。 櫻井氏は 「保守政党としての自民党の矜持」 と題して講演。 安倍晋三政権から菅義偉政権に代わったことで党内に変化が生じていると指摘し、 「保守政党らしからぬ政策提言、法案の提出、そしてそれを通そうとする非常に強い動きに大変な危機感を感じている」 と強調した。 「保守は、よりよい社会や国をつくるために変化はするが、その本質は変えず守っていくことだ」 とも語った。 八木氏は、選択的夫婦別姓を導入した場合の課題について 「多くの人は子供の氏が決まらないことや、氏の取り合いが起こることを懸念して結婚や出産を躊躇する」 「逆に少子化が進む可能性がある」 と指摘。 「現在の戸籍制度の下では、旧姓の通称使用を拡充することが最も現実的な解決策だ」 と訴えた。 一方、会合ではLGBTなど性的少数者をめぐる 「理解増進」 法案についても取り上げられた。 法案をめぐっては、稲田朋美元防衛相が委員長を務める 「性的指向・性自認に関する特命委員会」 が中心となり、立憲民主党などと協議して今国会での成立を目指している。 これについて、山谷えり子参院議員は 「もともとの自民党案は国柄に基づいた内容だったが、超党派の議員立法でガラッと哲学がかわってしまった」 「自民党として認めるには大きな議論が必要だ」 と語った。 異論暴論 正論6月号好評販売中 やるべきことは「夫婦別姓」か? 2021/5/3 10:00 https://www.sankei.com/article/20210503-QHTMRK3OE5KWVOEUGDN5FVJWZE/ 自民党内で選択的夫婦別姓をめぐる論議が起きている。 推進論者からは結婚に伴う改姓によって生じる生活上の不都合や不便が強調されるのだが、そもそも夫婦が別姓になれば親子は別姓を余儀なくされる。 これまでの家族観や結婚観は変わり、子供に与える影響も無視できないはずだ。 正論2021年6月号では 「やるべきことは『夫婦別姓』か?」 を特集した。 高市早苗衆院議員(自民党)は、自民党のこれまでの選挙公約の実現に向け、自身が起草した 「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」 の成立の必要性を強調する。 高橋史朗・麗澤大学大学院客員教授と池谷和子・長崎大学准教授の論文は、推進者たちの主張の見せ方がいかに一面的で、良い面ばかりが強調されたものかを考えさせられる。 ジャーナリスト、平野まつじ氏は夫婦別姓が現実になると、何がもたらされ、どんな弊害が起こるのか、具体的に考えた。 子供の最善の利益をどうするか、という視点がいかに蔑ろにされ、議論のあり方として極めて危ういかがわかる。 党内で提唱される 「婚前氏続称制度」 「ミドルネーム案(結合氏制度)」 など歯牙にかけるに値しない。 選択的であろうが、夫婦別姓の導入は必要ない。 正論 国民の大多数は夫婦別姓望まず 国士舘大学特任教授 日本大学名誉教授・百地章 2021/7/6 8:00 https://www.sankei.com/article/20210706-2KVYJSZJQNPT3OSBPGFYEMTHXA/ ■最高裁は合憲判断を維持 2021年6月23日、最高裁大法廷は予想通り夫婦同姓(氏)制は憲法に違反しないと判断した。 しかも合憲とした裁判官は11人と前回の平成27年判決より1人増えている。 平成27年の最高裁判決は、氏には 「家族の呼称」 としての意義があり、その呼称を一つに定める夫婦同姓制には合理性があるとして現行制度を合憲とした。 その上で、夫婦の姓の在り方は国会で判断すべきだとして、国会の立法政策に委ねた。 今回の最高裁決定は、この平成27年判決の立場を維持し、夫婦同姓を定めた民法750条や戸籍法を合憲とした上で、その後の社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、合憲判断を変更する必要はないとした。 これも妥当と言えよう。 ところがマスメディアの中には各種世論調査を引き合いに、別姓支持が国民多数の声であり、夫婦別姓の実現へと誘導するような報道があふれている。 そのため同姓支持を主張することがはばかられるような雰囲気さえある。 確かに内閣府の調査でも別姓支持が平成24年には35.5%だったものが、平成29年には42.5%に増加しており、その傾向は否定できない。 しかし、平成29年の調査でも、 「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだ」が29.3%、 「夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが旧姓を通称として使用するのは構わない」が24.4% あった。 つまり、同姓支持は計53.7%もあり、別姓支持を上回っている。 ■別姓望む国民はわずか8% さらに、別姓支持者の中で自ら 「別姓を希望する」と答えた者は19.8% にとどまる。 つまり、別姓希望者は支持者(42.5%)の19.8%だから全体でいえば0.08、つまり国民のわずか8%が別姓を希望しているだけである。 平成24年の調査でも別姓希望者は全体の8%にすぎないから、別姓希望者は全く増えていないことが分かる。 そのようなごく少数の希望者のために、明治以来120年以上の伝統を有し、国民の中に広く定着している夫婦同姓制度を改正してしまうのは乱暴ではないか。 この問題は慎重な上にも慎重に対処すべきだ。 夫婦別姓希望者のために、現在では運転免許証、パスポート、さらにマイナンバーカードまで、旧姓を通称として併記することが認められている。 だから、日常生活における彼らの不便はほぼ解消しているはずだ。 にもかかわらず彼らが別姓にこだわるのはなぜか。 今回の決定において反対意見を述べた裁判官の中には、 「家族」 の定義は不明確であるとして否定的に解し、 「姓」 を 「個人の呼称」 の一部と考えて、夫婦同姓制度は 「個人の尊厳」 の侵害に当たると主張する者もいる。 ■「家族呼称」か「個人呼称」か 確かに、憲法24条2項は家族について 「個人の尊厳と両性の本質的平等」 に立脚して制定するよう定めているが、憲法は 「家族の保護」 を否定するものではない。 それどころか、憲法制定時の議会においては 「従来の良き意味の家族制度はどこまでも尊重していかなければならぬ」 (木村篤太郎司法大臣) との答弁がある。 わが国が批准している国際人権規約でも 「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し…与えられるべきである」 としている。 それ故、わが国の家族制度は、 「個人の尊厳」 と 「家族の保護」 によって支えられていると見なければならない。 だからこそ、平成27年の最高裁大法廷判決も、 「家族は社会の自然的かつ基礎的な集団単位であり、氏には家族の呼称としての意義があり、氏の在り方については国の伝統や国民感情を含め総合的な判断によって定められるべきである」 とした。 それでは、家族制度の基本にかかわる 「姓(名字)」 について、国民はどのように考えているだろうか。 先の内閣府の調査(平成29年)によれば、国民の56.9%は姓を 「先祖から受け継がれてきた名称」 ないし 「夫婦を中心とした家族の名称」 と答えている。 これに対して姓は 「他の人と区別して自分を表す名称の一部」 と考える者は、全体のわずか13.4%にすぎない。 つまり、姓を 「個人の呼称」 の一部と考え、 「個人の尊厳」 を強調する反対意見は、姓を先祖伝来の 「家」 や 「家族」 の呼称と考える多数国民の意識と相当ズレていることが分かる。 以前、本欄で述べたように夫婦の姓をどう決めるかは、個人個人の問題であると同時に、わが国の家族制度の基本にかかわる公的制度の問題である。 しかも選択的夫婦別姓制は 「ファミリー・ネームの廃止」 につながり 「戸籍解体」 の恐れさえある(「『戸籍の解体』を招く夫婦別姓制」2021年3月29日)。 したがって、自らは希望しないにもかかわらず、 「選択的だから」 「望む人が別姓を名乗るだけだから」 などといった安易な発想で賛成してしまうのは、推進派を利するだけであり、非常に疑問といわざるを得ないであろう。 次世代の党、夫婦同姓規定「合憲」判断を「歓迎」 2015/12/16 19:12 https://www.sankei.com/article/20151216-JTCPST5AN5IUNNFTBEMB2AHLCU/ 次世代の党は2015年12月16日、最高裁が夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断したことについて、中野正志幹事長名で 「判断を歓迎する」 との談話を出した。 談話では 「日本社会においては、夫婦、親子が同じ姓を名乗ることが家族の基本であり、家族の一体感を高めてきた」 「一方、夫婦別姓を求める運動では、家族が同じ姓を名乗ることを子供が望んでいることは省みられていない」 と指摘。 その上で 「日本は、既に職場などでの通称使用(旧姓使用)が否定されない社会になった」 「旧姓に拘りを持つ方は通称を用いることが可能であるし、結婚時に夫が妻の姓を選択することも可能である」 としている。 夫婦同姓規定は合憲 再婚禁止6カ月は違憲 最高裁が初判断 2015/12/16 15:24 https://www.sankei.com/article/20151216-EIZGWR6BTRIYTNB6YH7JAHKFYU/ 【産経新聞号外】夫婦同姓「合憲」[PDF] https://www.sankei.com/module/edit/pdf/2015/12/20151216iken.pdf 民法で定めた 「夫婦別姓を認めない」 とする規定の違憲性が争われた訴訟の上告審判決で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2015年12月16日、 「規定は合憲」 とする初めての判断を示した上で、原告側の請求を棄却した。 原告は 「時代の変化に従って選択的夫婦別姓を認めるべきだ」 などと主張したが、 「夫婦や親子など家族の在り方が損なわれる」 との慎重論は多く、世論調査も賛成・反対が拮抗してきた。 一方、 「女性は離婚後6カ月間、再婚できない」 とする規定を巡る訴訟で、大法廷は 「規定は違憲」 と初判断。 100日間を超える部分は違憲だとしたことで、国は法改正を迫られる。 最高裁が法律を違憲と判断したのは戦後10件目。 夫婦の姓について原告側は 「選択的夫婦別姓を認めないことは、婚姻の自由を不合理に制約していて、両性の本質的平等に立脚していない」 と主張。 「規定は違憲で、国会の高度な立法不作為に当たる」 と指摘していた。 国側は 「民法では、結婚後にどちらの姓を名乗るかについて、夫婦の協議による決定に委ねている」 「婚姻の自由や男女の平等を侵害していない」 と反論。 規定に違憲性はなく国会の立法不作為にも当たらないと主張していた。 両規定を巡っては、法相の諮問機関の法制審議会が平成8年、選択的夫婦別姓を導入し、再婚禁止期間も100日に短縮するよう答申した。 しかし、国会や世論の反対が多く、改正は見送られた。 民主党政権時代にも改正の動きがあったが、閣内の反対などで法案提出には至っていない。 自民党総裁選 候補者が改憲アピール 首相が道筋付けるもなお高いハードル 実現への突破口開けるか 2024/9/11 6:00 https://www.sankei.com/article/20240911-KAT27QWRFJOQFKMOTX3KSCJT5M/ 自民党総裁選(12日告示、27日投開票)で憲法改正が主要テーマの1一つになっている。 自民は2日、自衛隊明記など改憲の指針となる論点整理を公表した。 岸田文雄首相(党総裁)は論点整理を新総裁に引き継ぐ考えを強調し、次の総裁候補たちも改憲に向けた発信を強めている。 改憲は来年結党70年を迎える自民の党是であるにもかかわらず、足踏みを続けてきた。 総裁選を通じて機運を高め、実現への突破口を開くことができるのか。 ■「全身全霊で臨む」と小泉氏 「憲法論議の推進に全身全霊で臨み、憲法改正発議の環境が整えば、直ちに発議の後、国民投票に移る」 6日に総裁選への立候補を表明した記者会見で、小泉進次郎元環境相は改憲についてこう断言した。 「現在の憲法は日本が米国に占領されていた昭和21年に連合国軍総司令部(GHQ)が原案を起草し、日本政府に受け入れを迫ったものだ」 とも訴えた。 突然の改憲への傾斜は、自民から剝がれた保守層を取り戻す狙いがあるのは明らかだ。 同時に、歴史的背景にも触れ、 「広く国民に発信する」(小泉陣営関係者) 戦略も透ける。 改憲に前向きな候補者たちも盛んに発信している。 党憲法改正実現本部の事務総長を務め、論点整理に奔走した加藤勝信元官房長官は10日の記者会見で改憲実現を訴えた。 保守的な政治信条を持つ小林鷹之前経済安全保障担当相は6日、改憲が宿願だった安倍晋三元首相の墓参りをし、 「何としても成し遂げる」 と誓った。 10日の記者会見でも 「先頭に立って実現していく」 と強調した。 「少しでも早く国民投票していただける環境を作るために頑張る」。 保守層に支持される高市早苗経済安保担当相は9日の記者会見で力強くこう訴え、茂木敏充幹事長や河野太郎デジタル相も前向きだ。 戦力不保持を謳った9条2項を削除した上で、自衛隊を 「国防軍」 に改め憲法に明記すべきとの持論を持つ石破茂元幹事長は10日の記者会見で 「党で決めた路線を維持していく」 との姿勢を示した。 ■「保守の失望」で議論加速 改憲は岸田首相にとっても思い入れのあるテーマだ。 首相が会長を務めた旧岸田派(旧宏池会)は伝統的にリベラルなイメージがあり名誉会長を務めた古賀誠元幹事長も9条改正に否定的だった。 当初は改憲に慎重な姿勢を示してきたが、首相の座を目指すに当たり支持拡大のため改憲にシフト。 首相が初めて意欲を表明したのは政調会長時代の令和元年9月のことだった。 3年の前回総裁選の出馬表明後、産経新聞の単独インタビューで 「国会での議論を進め、国民投票に持ち込む」 と明言。 以降、総裁任期中の改憲に前向きな姿勢を示してきた。 しかし、衆参両院の憲法審査会では立憲民主党が消極姿勢を崩さず議論は停滞。 自民党派閥パーティー収入不記載事件も議論にブレーキをかけた。 事態が動き出したのは任期中の改憲が絶望的となった2024年6月30日、東京都内で営まれた安倍元首相の三回忌。 首相は、会場で保守派のジャーナリストから改憲を先送りするならば 「首相の座から身を引くべきだ」 と迫られた。 保守層の失望を突き付けられ、保守言論人に人脈を持つ旧岸田派の側近が動き始めた。 2024年7月19日、加藤氏を官邸の裏動線から密かに呼ぶ算段を付けた。 自民内には緊急事態下での国会機能維持のための改憲を巡り、衆院側と参院側との間に意見の隔たりがあり、党内の意見さえまとめられない状況だった。 首相は加藤氏に意見の集約を指示。 衆院側の加藤氏と参院側の岡田直樹事務総長代行が休日返上で協議し、スピード合意に至った。 さらに首相は2024年8月7日、同本部の全体会合に出席。緊急事態条項の創設に加え、ハードルが高いと思われていた9条への自衛隊明記に取り組む考えを示し、2024年8月末までに論点整理を取りまとめるよう指示した。 総裁選に向けた保守層へのアピールとの見方もあったが、首相は2024年9月14日、再選不出馬を表明した。 総裁選への立候補を目指していた加藤氏をはじめ党内は浮足立ち、 「2024年8月末の論点整理の取りまとめが先送りされそうになった」(首相側近)。 首相は党改憲実現本部の副本部長を務める中谷元・元防衛相に2024年8月中の取りまとめを改めて指示。 30日の当初のスケジュール通りに滑り込んだ。 ■改憲へ熱量高まる議論を 「(改憲の)議論を振り出しに戻すようなことはあってはならない」 首相は2024年9月2日、論点整理が了承された同本部の全体会合でこう述べ、議論を後退させないよう求めた。 首相が初めて改憲への意欲を示してから5年。 「なぜもっと早く取り組まなかったのか」 との批判もあるが、退陣を目前に党内の改憲議論に道筋を付け、新総裁に引き継ぐ体制は整えた形だ。 改憲実現に向けては衆参両院の3分の2以上の賛成を得た改憲原案の国会発議、国民投票での過半数の賛成など高いハードルが待ち受ける。 総裁選では改憲に向け国民の機運が高まるような熱量のある議論を期待したい。 <主張>自民党と憲法改正 総裁候補は実現の約束を 社説 2024/9/3 5:00 https://www.sankei.com/article/20240903-SMBD3HZRGVKEZFZHNPTDRBULFI/ 自民党は憲法改正実現本部の会合を開き、憲法に 「第9条の2」 の条文を新設して自衛隊を明記することや、緊急政令の根拠規定創設を盛り込んだ論点整理を了承した。 会合には岸田文雄首相(党総裁)が出席し 「自衛隊の明記を含む複数のテーマを一括して国民投票にかけるべく議論を加速させる準備が整った」 「一気呵成に議論を進めなければならない」 と語った。 新総裁が論点整理を引き継ぐことも要請した。 自衛隊明記などを一括して国民投票にかけることは妥当だ。 そのために、改憲に前向きな政党に呼び掛け、改憲原案の条文化作業を担う与野党協議の場を急ぎ設ける必要がある。 憲法改正は自民の党是であり、党総裁選の重要な争点の1つだ。 全ての候補者は総裁になった場合、いつまでに憲法改正を実現するのかを国民の前で明確に語ってもらいたい。 論点整理では、 「9条の2」 への自衛隊明記について 「基本的に堅持すべきことが共通認識として確認された」 とした。 首相や内閣の職務を規定した第5章への自衛隊明記に関し 「選択肢の1つとして排除されるものではない」 との意見が出たことを記した。 条文の置き場所について議論の余地を残した格好だが、自衛隊を第5章に明記するだけでは不十分だ。 9条または 「9条の2」 に必ず書き込むべきである。 「戦力不保持」 を定めた第9条2項の削除と軍の規定が憲法改正の最終ゴールであるべきだが、途中段階として自衛隊を明記する意義は大きい。 緊急政令も憲法に必ず規定しなければならない。 改憲発議で国会議員の任期延長を優先するか、緊急政令とセットで進めるかは意見が分かれ、結論を出さなかった。 緊急政令に後ろ向きな公明党に阿っているとしたら残念だ。 国会が開けないような国難の際には、緊急政令などの権限を内閣に一時的に与えなければ事態を乗り切ることは難しい。 自民は国民を守り抜く改正を実現すべきであり、公明を説得しなければならない。 首相は自民党総裁選への不出馬を表明し、 「新たなリーダーを一兵卒として支える」 と語っている。 次期総裁は岸田氏を憲法改正実現本部長に起用してはどうか。 「新総裁で議論やり直し」はさせない 改憲へ見せた岸田首相の意地、「遅すぎ」との指摘も 2024/9/2 19:44 https://www.sankei.com/article/20240902-FZSTLCTR5ZLUZP4PITHDXKEVXY/ 2日開かれた自民党憲法改正実現本部(古屋圭司本部長)の全体会合で、岸田文雄首相(自民党総裁)は 「議論を加速させる準備が整った」 と力を込めた。 退陣まで約1カ月に迫る中で党の憲法改正の論点整理を急いだのは、党総裁選で選ばれる新総裁の下でも改憲議論を停滞させず、早期の国会発議を実現するためだ。 党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件が直撃し、自らの手による改憲こそかなわなかったが、最低限のレガシー(遺産)を残すことで意地を見せた。 「(改憲の)議論を振り出しに戻すようなことはあってはならない」 「議論だけの時代は終わった」 「具体的な前進を図っていきたい」 首相は憲法改正実現本部の全体会合でこう述べ、新総裁は了承された論点整理を土台に改憲に向けた取り組みを加速すべきだと訴えた。 論点整理は改憲の国会発議を見据えた他党との折衝の土台となる。 首相は8月7日の同本部の全体会合で同月内の取りまとめを指示していた。 ところが、14日に総裁選への再選不出馬を表明し、党内が次の総裁選び一色になると、目標は有耶無耶になりかけた。 同本部内には論点整理を取りまとめるWT(ワーキングチーム)会合の開催を9月5日に先送りする動きもあった。 緩んだネジを締め直したのは首相本人だった。 「何としても8月中にやってくれ」。 首相は同本部の中谷元副部長にこう指示し、当初のタイムスケジュールに拘った。 その結果、30日のWT会合で論点整理を仕上げ、9月2日の全体会合で正式決定するという日程が整った。 首相は改憲議論を後戻りさせないことを重視した。 周囲には 「総裁が変わったら議論を一からやり直しなんて、そんな馬鹿なことはさせない」 と漏らす。 自らの退陣で早期の衆院解散・総選挙も囁かれる中、新総裁の下でも改憲を目指す姿勢を支持層に示す狙いも見え隠れする。 ただ、不記載事件の影響で目算が大幅に狂ったとはいえ、リーダーシップの発揮が遅すぎた感は否めない。 日本維新の会や国民民主党などは事件とは一線を画して改憲論議に前向きだった。 党内議論にもっと早く着手していれば、首相が目指した総裁任期中の憲法改正に光明を見いだせた可能性がある。 自民は来年、結党70年を迎える。 節目の年に改憲を実現果たしたいところだが、これまでは足踏みを続けてきた。 首相のレガシーが突破口を開く端緒となるのか。 答えはそう遠くない未来に明らかになる。 自民が改憲「論点整理」を了承 自衛隊明記、緊急政令も可能に 首相「一気呵成に進める」 2024/9/2 18:54 https://www.sankei.com/article/20240902-47KJ3HKGHNJPZMJDAV543A2A2Y/ 自民党は2日、憲法改正実現本部(古屋圭司本部長)の全体会合を開き、自衛隊明記など改憲の指針となる論点整理を了承した。 平成30年にまとめた改憲4項目の見解を引き継ぎ、現行の9条を維持した上で 「9条の2」 を新設して自衛隊を追記する案を軸とした。 岸田文雄首相(自民総裁)は 「(自衛隊明記など)複数のテーマを一括して国民投票にかけるべく議論を加速させる準備が整った」 「一気呵成に進めなければならない」 と述べた。 論点整理は 「自民党らしさ」 を重視。 連立を組む公明党が懸念する9条への自衛隊明記、緊急事態の際に政府の権限を一時的に強める 「緊急政令」 の導入を可能にする改憲を打ち出した。 また、緊急時に国会議員の任期延長を可能にする改憲と共に、 「条文化作業を加速化し、速やかな憲法改正原案の起草・国会提出に繋げていくべきだ」 とまとめた。 一方、古屋氏は次期総裁選(12日告示、27日投開票)の候補者に対し、論点整理の範囲内での議論を要求した。 議論が振り出しに戻ることを避ける狙いがある。 小泉進次郎元環境相は2日、記者団に 「自衛官が憲法に位置付けられ、誇りを持って任務を遂行できる環境を作ることは極めて重要だ」 と強調。 抜本的な9条改正を重視する石破茂元幹事長は記者団に自衛隊明記の意義を認めつつ、 「これで終わりではない」 と語った。 自民総裁選岸田首相不出馬 日米の黄金期惜しむ米紙、欧州「次期首相は国民信頼回復を」 世界の論点 2024/9/2 10:00 https://www.sankei.com/article/20240902-HRXERRFTGVPARML2D6KGE67JH4/ 今月行われる自民党総裁選で、岸田文雄首相は不出馬を表明している。 米欧メディアは岸田氏の実績をどう評価し、日本の次期首相選びとなる総裁選に、どのような視線を向けているのか。 米国では、日米同盟を強化した岸田氏が評価され、次期首相の課題が指摘される。 欧州では、欧州連合(EU)などとの関係強化が讃えられる一方で、経済政策への厳しい見方もみられる。 ◇ ■経済不振で退場はバイデン氏と共通 岸田文雄首相の不出馬表明はバイデン米大統領の選挙戦撤退の後でもあり、米主要紙は、両氏の親密な関係の成果でもあるインド太平洋地域の同盟網の強化を改めて評価した。 先行き不透明な米国政治や東アジア情勢を踏まえ、次期首相が背負う課題の大きさを案じる分析もあった。 8月14日付のワシントン・ポストは岸田氏不出馬を伝える記事で 「危うさを増すアジア太平洋地域において、日米を最強の同盟関係に導き、日本の防衛費を増強させた」 とまず成果を強調した。 ロシアのウクライナ侵略を受けて従来の対露姿勢を転換し西側諸国の制裁に参加したことは特筆すべき実績と指摘。 ウクライナ情勢は中国の台湾侵攻などアジアの危機に連鎖するとの認識から岸田氏が繰り返した 「今日のウクライナは明日の東アジア」 は、 「米国の同盟友好国によって同調された」と 評価した。 また、日米韓首脳会談で合意した3カ国の安全保障協力は 「日米韓関係に新たな時代を記した」 と回想。 対中国を念頭に同盟友好国との重層的な枠組みを推進した米国のアジア戦略において、岸田氏は 「中核的な役割を果たした」 とべた褒めだった。 同紙は 「ともに不出馬を決断したが、バイデン−岸田時代は日米同盟の黄金期として記憶される」 とのエマニュエル駐日米大使の談話も紹介。 米政権関係者には、岸田氏の引き際は先に選挙戦から撤退したバイデン氏の姿と重なって見えたようだ。 しかし、バイデン氏と同様に岸田氏を不出馬に追い込んだ1つの要因は物価上昇など経済不振による支持率の低迷だった。 14日付ウォールストリート・ジャーナルは 「日本は新型コロナ禍後の沈滞と経済的混乱が有権者を不幸にした主要民主主義国の1つ」 と指摘。 バイデン氏の撤退、英労働党の政権奪還、左派連合が最大勢力となった仏議会下院選に通じる先進国共通の政治現象と分析した。 13日付ニューヨーク・タイムズは、次期首相が 「海外、特に米国内の政治不安定への対処と日本国民の支持獲得に繋がる国内政策の促進」 に直面すると解説。 日本には引き続き強い指導力が必要だとし、後継者が長期的な政権を築けるかには疑問を呈した。 外交実績には同盟国から最大級の評価が寄せられた岸田氏だが、米外交誌フォーリン・ポリシーは15日付の解説で、 「経済政策運営に対する国民の怒りに加え、防衛費増額や少子化対策に充てる資金をどう調達するかという未回答の問題も残した」 と指摘。 国内的には負の遺産が目立つという厳しい評価だ。 ◇ ■欧州外交称賛も経済に辛口 欧州メディア(電子版)は岸田文雄首相の外交・防衛政策の功績を認めつつ、物価上昇や自民党派閥のパーティー収入不記載事件は 「与党への国民の不信感を煽った」 と厳しく評価した。 総裁選では不透明な国際情勢に対応できる外交手腕にとどまらず、国内経済の改善やクリーンな政治を推し進められる次期首相を選ぶ重要性を強調した。 英誌エコノミストは8月14日、反撃能力保有や防衛費増額など防衛力の抜本的強化を決断した岸田氏を 「安全保障政策の歴史的な改革を推進した」 と称賛。 「日米同盟の新時代の幕開けに貢献した」 とするエマニュエル駐日米大使の発言を引用し、米との防衛協力を進めたことに触れた。 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は15日の社説で、温厚そうな岸田氏が意外にも 「驚くほど大胆不敵だった」 とする人物評を紹介。 持ち前の大胆さを防衛や外交の分野で発揮したことで 「世界における日本の立場は歴史的な変化を遂げた」 とした。 欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)との関係強化を歴代の首相より積極的に進め、いわゆる徴用工訴訟問題で悪化した日韓関係の修復にも貢献したと評価した。 ただ、経済政策には厳しい指摘が目立つ。 仏紙ルモンドは14日、日本の家計を襲うインフレが岸田氏の支持率低下の一因であると指摘。 物価と賃金が共に上昇する好循環を目指した政権の経済政策が道半ばとなったことを受け、仏紙フィガロは14日、 「(政策は)実現しない呪文に過ぎなかった」 と批判した。 経済的苦境が広がる中、派閥のパーティー収入不記載事件を巡る 「政治とカネ」 問題が直撃。 英BBC放送は14日、 「野党が弱体化し分裂しているにもかかわらず、与党の自民党は国民に強い不信感を持たれた」 と分析。 エコノミスト誌は、自民党内の混乱を受け 「(岸田氏の)退陣は必然だった」 とする有権者の発言を紹介した。 「ポスト岸田」 が直面する課題は多い。 英紙ガーディアンは16日、次期首相は 「物価の上昇や中国や北朝鮮との緊張の高まりの他、トランプ前米大統領が大統領に返り咲く可能性にも対処しなければならない」 と指摘。 その上で、最優先課題は 「(パーティー収入不記載事件で失った)国民の信頼を取り戻すことだ」 とした。 FTは16日の社説で 「混乱する日本の政界に必要なのは、党の長老におもねる弱いリーダーではなく、それを超える存在だ」 と強調。 自民党の年功序列体制を根底から覆す若いリーダーの選出や初の女性総裁の誕生に期待を寄せた。 ◇ ポイント ・米紙「岸田氏は日米を最強の同盟関係に」 ・次期首相は海外の政治的不安定に直面と指摘 ・英紙「世界での日本の立場は歴史的な変化」 ・仏紙「経済政策は実現しない呪文に過ぎず」 <独自>自民の憲法改正「論点整理」の内容判明 9条改正と「緊急政令」導入打ち出す 2024/8/30 18:30 https://www.sankei.com/article/20240830-2ANHHSK5EJJFZPGZMX7WNZHM7Q/ 自民党の憲法改正の指針となる論点整理の内容が30日、判明した。 9条への自衛隊明記や、緊急事態の際に政府の権限を一時的に強める 「緊急政令」 の制度導入の必要性を打ち出した。 衆参両院の実務者でつくる党憲法改正実現本部のワーキングチーム(WT)が同日、取りまとめた。 9月2日に岸田文雄首相(自民総裁)が出席する全体会合で正式決定する。 自衛隊に関しては、安倍晋三政権下の平成30年にまとめた自衛隊の9条明記▽緊急事態への対応強化▽参院の合区解消▽教育環境の充実−の改憲4項目で 「既に議論が決着」 と指摘。 4項目の 「枠組みを前提とすべきだ」 と記した。 連立を組む公明党はシビリアンコントロール(文民統制)を明確化するためとして、首相や内閣の職務を規定した「第5章」の72条や73条への明記を主張している。 論点整理では9条明記に関して 「基本的に堅持すべきことが共通認識として確認された」 としつつ、文民統制に関しては第5章への規定も 「選択肢の一つとして排除されるものではない」 との意見を紹介し、議論の余地を残した。 妥協案として9条と第5章の双方を改憲する案が浮上している。 緊急時に内閣が法律に代わり発出する緊急政令に関しては、論点整理で 「根拠を憲法に規定することは必要」 と打ち出した。 対象とする緊急事態の類型は 「異常かつ大規模な災害」 に加え、武力攻撃、テロ・内乱、感染症の蔓延などを挙げた。 一方、公明などが緊急政令に慎重な構えを示していることから、緊急時に国会議員の任期延長を可能にする改憲を優先すべきか否かなどを引き続き議論する方針も確認した。 公明・石井氏、改憲論議で自民にくぎ刺し「自民単独で発議できぬ」 自衛隊明記で隔たり 2024/8/30 17:08 https://www.sankei.com/article/20240830-VR5RBZNXYNMPLEGL4GDDI4HMBY/ 公明党の石井啓一幹事長は30日の記者会見で、自民党で進む憲法改正の議論に釘を刺した。 改憲発議には衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成が必要であるとして 「自民だけでは発議は叶わない」 「他の政党にもどう働きかけて発議案をまとめていくのかが課題だ」 と述べた。 自民は憲法9条への自衛隊明記を含めた改憲発議を目指しているが、公明党は首相や内閣の職務を規定した72条や73条への明記を提唱し、立場に隔たりがある。 自衛隊を行政組織に位置付ける危うさ 正論2024年8月号 三重中京大学名誉教授 浜谷英博 憲法改正論議は衆議院と参議院の憲法審査会で進められているが、所属委員の一部に憲法改正自体に同意しない勢力が存在するため、いくつかの論点が煮詰まりつつあるものの、未だ具体的条文案の作成には至っていない。 憲法調査会の後継機関である憲法審査会は、2007年8月に衆参両院に設置され、2024年で17年が経過する。 この間、紆余曲折を経ながら一進一退を繰り返し、現在も具体的成果を生み出せない姿には、議論自体が目的化している印象さえ受ける。 ただ、その中でも緊急事態条項と並んで議論が収斂されつつあるのが、憲法に自衛隊を明記する改正案である。 改憲に前向きな政党が公表した自衛隊の憲法明記に関する各党案を見てみる。 まず自民党は2018年3月に憲法9条の2項を 「前条(現行9条)の規定は、わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置を取ることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」 と加筆するという 「叩き台」 となる素案を示している。 日本維新の会は2022年6月に憲法9条の2項を 「前条(現行9条)の範囲内で、法律の定めるところにより、行政各部の一として、自衛のための実力組織としての自衛隊を保持する」 と加筆する 「憲法改正原案」 を公表した。 一方、公明党からは2023年5月に 「72条(内閣総理大臣の権限)もしくは73条(内閣の職権)に自衛隊を明記」 する北側一雄副代表案が、 また、国民民主党からは2023年4月に憲法第5章の 「内閣」 の中に 「必要な自衛の措置を取るための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」 とする玉木雄一郎代表の案が示された。 大きく分けて 「戦力」 との関係で自衛隊との関連条項である憲法9条に加筆する案と内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督者であることから、憲法第5章の内閣、とりわけ72条もしくは73条に加筆する案などが提示されている。 しかしながら、憲法9条に加筆する改正案でも 「行政各部の1つとして」 との条件を付していること、そしてとりわけ内閣の章内に自衛隊を明記する主張には、その根底に行政組織としての自衛隊の法的位置付けを変更しない意図が垣間見えている。 ここで問題は、憲法への自衛隊の書きぶりはともあれ、現在の自衛隊が国家行政組織法上の行政組織の1つとの従来の政府解釈から、一歩も踏み出そうとしない改憲姿勢である。 平時に活動する 「一般行政組織」 と非常時に武力行使を伴う 「軍事組織」 との根本的相違を放置したまま自衛隊を憲法に明記したとしても、任務の遂行に多くの制約が課され、目的の完遂に困難を極めることは明らかだ。 自衛隊を正規の軍隊もしくはそれに準ずる独立した組織とし、それに伴って自衛官に軍人としての国際法上の法的地位があることを確認し、その活動について最高指揮監督者の存在を明記するのでなければ、自衛隊の本来の創設目的に沿った任務と行動を担保することにはならないのではないか。 諸外国における自国防衛のための軍事組織(一般に軍隊もしくは国軍)は、一般の行政組織とは一線を画した組織として機能している。 理由は、その運用に関して、一般行政組織とは異なる原理を適用しなければ、求められる本来の任務を遂行できない場合が多々想定されるからである。 通常、軍隊は、自国の独立と安全を確保し、国民の生命と財産を保護することを目的とし、国家の存亡を賭けた非常時に最後の手段として出動を命じられる組織である。 従って、そのための行動に国内法的制約はない。 あるのは国際法(武力紛争法や国際人道法と称され、捕虜の扱いや非交戦の個人の保護など戦時における人間の保護を目的としている)上の制約のみである。 一般の行政組織とは明らかに異なる軍隊の行動や任務の目的が明確である以上、必然的な措置であろう。 本稿では、自衛隊を行政組織の1つとする解釈から派生する危険性や矛盾、同盟国との共同行動やPKO参加時における支援など、関連する諸点について考えてみたい。 ■任務を完遂させない頸木( くびき:自由を束縛するもの) まず、既に提起されている憲法改正案のいくつかを検討してみたい。 その内、72条への明記案は、72条が 「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する」 と規定していることから、行政組織としての自衛隊を新たに書き込むことによって、その法的地位の変更までを含まない意図が読み取れる。 この明記の結果、確かに自衛隊が憲法違反との主張はなくなるかもしれないが、行政各部と横並びに規定することによって、自衛隊が行政組織の一部であるとの意味合いも同時に強めかねない。 強いて72条に書き込むのであれば、新たな1項を追加し、一般行政組織とは一線を画した組織であることを明確にした書き方にしなければ改正の意味がない。 また、憲法73条は、内閣という合議体が一般行政事務と共に行う7項目の各事務を規定している。 ここに自衛隊を書き込む改正案は、自衛隊法7条にある 「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」 との規定を、憲法条項に引き上げようとする意図であろう。 しかし国家の存亡の危機に際して、合議体に決断を求めること自体が迅速性の要請に反し、合理的とは言えない。 憲法73条に自衛隊を明記することで、72条に明記するよりも内閣総理大臣の独断の可能性が弱まる、との主張もあるくらいだ。 その理由は、72条の主語が 「内閣総理大臣」 であるのに対し、73条は 「内閣」 であり、合議体の決定事項に 「自衛隊の行動」 を入れることで、少しでも内閣総理大臣個人の決断の歯止めにしたい思惑が窺える。 しかし、軍事組織の出動の決断は、国家の存亡を賭けた最後の手段の選択であり、その際には当然、決断の的確性と迅速性が求められる。 つまり合議体による長引く議論自体が決断を遅延させ、取り返しのつかない結果を導く恐れがあるからだ。 ちなみに制度的には、内閣の決定に反対の大臣を罷免し、内閣総理大臣自らが罷免した大臣の職務を兼務して閣議決定することも可能である以上、非常時の決断は迅速性を重視することがことのほか重要である。 一方、憲法9条に自衛隊を明記する案にも、自衛隊を 「行政各部の1つとして」 保持するなどの文言があり、行政組織の1つとの認識に変更のない改正案もある。 明記する場所、書き方はともかく、自衛隊を行政組織の1つと位置付ける発想から脱しない限り、危機に際しての自衛隊の任務の完遂は困難を極める。 ■行政は逐一法的根拠を求める 改めて確認するが、現在の政府解釈によれば、自衛隊は国内法上、国の行政組織(防衛省)に属する1組織であり、少なくとも諸外国で言う 「軍隊」 ではない。 法制上も、自衛隊は防衛省設置法5条に規定され、 「自衛隊の任務、自衛隊の部隊及び機関の組織及び編成、自衛隊に関する指揮監督、自衛隊の行動及び権限等は、自衛隊法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる」 とされている。 更に防衛省設置法第4条は防衛省の所掌事務に関し、 「防衛及び警備に関すること」(同条1号) 「自衛隊の行動に関すること」(同条2号) 「陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊の組織、定員、編成、装備及び配置に関すること」(同条3号) 「前三号の事務に必要な情報の収集整理に関すること」(同条4号) などの規定が置かれている。 そして自衛隊が行政組織の1つであれば、その行動はあくまで 「行政作用」 であって、行政法学で言う 「法律による行政」 の原理が適用される。 つまり自衛隊の 「行動」 及び 「権限」 の両方に法律の根拠が必要とされることになり、自衛隊関連法がポジティブリスト方式で規定(出来る事のみを条文化する、条文にないことは行動出来ない)されていることとも相まって、緊急事態等などを含め国内法上の大きな制約になっている。 自衛隊に対するこの姿勢は、国内法上の制約を課さない諸外国の軍隊と大きく異なり、自衛隊の異質性を象徴する実態を示している。 一般に諸外国では、軍事組織の創設目的が国の独立と安全及び国民の生命と財産の保護にある以上、その規定の範囲内の正当な行動に国内法的制約を課す理由はない、と考えられている。 もちろん 「法律による行政」 の原理が、民主的な法治国家において、とりわけ重要な法原理であることは論を待たない。 即ち行政作用が法律を根拠に行われるべき理由は、国民の自由・権利を公権力の恣意的な介入から守り、公権力を民主的にコントロールするため、国民の代表者で構成される国会が制定する法律によって統制を徹底することが重要だからである。 しかし自衛隊の行動は平時の一般行政組織のそれとは性格と実態を大きく異にする。 国家の存亡を賭けた武力行使によって、国の独立と安全及び国民の生命と財産を保護する任務の遂行には、一般行政組織の活動にはない多くの特殊性が認められる。 諸外国で独立した組織として、任務を完遂する活動が認められているのはこのためである。 例えば一般行政組織では、通常の活動に 「透明性」 が重視され、関係書類や各種資料は 「情報公開」 の対象となる。 また折に触れ、実施された行政活動について 「説明責任」 を課され、度重なる記者会見や国会における関係大臣及び官僚の答弁が求められる。 これに対し通常の軍隊は、防衛政策上の機密事項を取り扱い、同盟軍との防衛機密の共有やその保全義務などの遵守を求められる。 これらが担保されない限り、国家間の信頼は醸成され得ず、同盟関係の根幹を揺るがしかねないし、そもそも軍事組織同士の相互の連携や強固な団結も生まれない。 つまり一般の行政組織の作用には馴染まない部分が多くあるのが普通である。 それでは何故自衛隊が現在まで、諸外国にはない発想で、一般行政組織として位置付けられてきたのだろうか。 それには歴史経緯の中でいくつかの理由があると同時に、その解釈を変更する複数回の機会があったことも事実である。 上記理由の1つは、自衛隊の出自の問題である。 周知のように、自衛隊の前身は、1952年に創設された保安隊であり、更にその前身は、朝鮮戦争を背景にして1950年に創設された警察予備隊である。 これら2組織は、あくまで警察力を補完し国内治安を維持する目的で創設され、ポジティブリスト方式で規定された根拠法と共に、国の防衛を任務とする組織ではなかった。 しかし、1954年に創設された自衛隊は、その主たる任務も 「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛すること」(自衛隊法第3条) と明記されており、諸外国における軍隊の創設目的及び任務と同様になった。 本来は、この時点で行政組織の1つとの法的位置付けを脱し、民主的な独立国の軍事組織として、関係法の規定方式も抜本的な変更について十分検討した上で、ネガティブリスト方式(行ってはいけない事を条文化。禁止された事以外のあらゆる行動が可能)に変えなければならなかったはずである。 しかし国際情勢の推移や日本を取り巻く安全保障環境の激変を敏感に捉えず、戦後間もない国内政治状況などから、従来からの憲法解釈を自衛隊にもそのまま踏襲してきたのである。 この点はそのまま、自衛隊を一般行政組織と位置付けてきた今1つの理由にも重なっている。 つまり一般行政組織を脱して自衛隊を国際法上の軍事組織として解釈するには、憲法上の 「戦力」 規定との関係で、憲法9条の解釈変更もしくは改憲を伴うことが想定された。 従来から政府は、自衛隊が憲法で保持を禁ずる 「戦力」 には該当せず、 「自衛力」 を具現する行政組織として説明してきたからである。 従来の解釈の見直しは、当時の国内政治状況や国民意識等の社会情勢を幅広く考慮して回避され、その歪みを残したまま現在に至っている。 ■有事に矛盾が噴出 自衛隊の法的位置付けを見直す機会は、日本が国連平和維持活動(PKO)への参加を決断した1992年にもあったと見るべきである。 つまり自衛隊は軍隊ではなく、従って自衛官は軍人ではなく特別職の国家公務員であるとの政府解釈は、自衛隊が任務として海外に派遣されることのなかった時代には、あまり切実な問題とは考えずに済まされてきた。 しかし、日本の国際貢献策として自衛隊のPKO参加が積極的に実施されるようになったPKO協力法の制定(1992年)以降、自衛官が海外で捕虜や人質になる可能性も現実に想定されるようになっている。 危険な場所には派遣されないとの前提や政府説明はあるにせよ、海外のPKO派遣地域は紛争後の安定化に向けた過渡期であることが多く、状況の一変は日常茶飯の出来事である。 その際、不幸にも捕虜になった自衛官が軍人ではなく、1公務員に過ぎないとなれば、国際法上の捕虜の待遇を求めることが事実上出来なくなる恐れはないか。 もちろん人道上の配慮や対応は想定されるにせよ、国際法上の権利として相手国に要求することの根拠は希薄になるだろう。 まして悪意のある相手国又は民度の低い武装集団が自衛官を捕虜として身柄を確保し、日本政府に対し、軍人ではない自衛官の地位を確認してきたとすれば、政府はどのように返答するのだろうか。 その時になって、自衛官は軍人であるから国際法上の捕虜の待遇を要求するとして、初めて従来の政府解釈を変更するのだろうか。 ■既に軍隊と評価される自衛隊 ちなみに自衛隊及び自衛官の国際法上の地位は、一般にジュネーブ諸条約第1追加議定書第43条1項(1977年)の 「軍隊」 の定義に照らし理解され、評価される。 それによれば、軍隊とは 「部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装した全ての兵力、集団及び部隊」 を言うとされ、その構成員は 「戦闘員であり、即ち、敵対行為に直接参加する権利を有する」(同条2項) と規定されている。 つまり戦闘員は、戦時において敵国戦闘員を殺傷し、軍事目標を破壊する権利を有し、その法的責任を負わないことに国際的合意が形成されている。 つまり自衛隊及び自衛官は、その名称にかかわらず、ジュネーブ諸条約第1項追加議定書第43条の軍隊の定義にも合致し、人員、組織、編成並びに装備及び規模や訓練状況などから、軍隊としての要件を十分に満たしていると言える。 この基準に従えば、国際法上自衛隊は軍隊であり、自衛艦は軍艦であり、自衛隊機は軍用航空機である。 また自衛官は軍隊構成員(戦闘員)であり、活動中に敵国の権力内に陥った場合には、捕虜の待遇を受ける国際法上の権利を有していると解釈される。 これはPKOに参加した自衛官が捕虜になった場合も、自衛官が軍隊構成員としての法的地位を有していれば、捕虜待遇を受けると解釈されよう。 肝心な問題は、現在の政府解釈である。 つまり 「自衛隊は国内法上軍隊ではないが、国内法上軍隊扱いされる」 との法的論理矛盾と曖昧さを解決することが、政府にとっての喫緊の課題であろう。 国際法上の法的根拠を国内法で受容することに、特段の支障があるとは思えない。 そして将来的に日本が、PKOをはじめとする国際貢献を積極的に展開する上でも法的矛盾を放置することなく、自衛隊及び自衛官が心置きなく国際貢献活動に専念できるよう、自衛隊及び自衛官の地位に関し、国際標準に沿った解釈に変更することが急がれる。 また自衛隊及び自衛官については、国内法的にも長年積み重ねてきたガラス細工のような法解釈ではなく、民主国家に必要かつ重要な機関として憲法上位置付けられることが必要である。 ■安全確保に何が必要か 成熟した民主国家において、政治と軍事のバランスの取れた関係は、国家の積極果敢な活動を担保し、国民の安全を確保する上で極めて重要である。 そのためにはまず、軍事に対する正確な知識と見識を有し、的確かつ迅速な決断力を持った政治家が必要である。 その背景として、国はもちろん地域社会や個人の将来について関心を持つ民主的意識の高い国民の存在が不可欠で、かかる資質のある政治家を見極め、正当な選挙で選出しておくことが肝要である。 他方で、文民統制を正確に理解し、徹底した政治の優位の下で、知見や経験、多方面の情報やデータを駆使した軍事情勢の確かな分析を、政治的判断材料として提供するプロ集団としての軍事組織も欠かせない。 両者のいずれが欠けても、国際社会のあらゆる分野でリーダーシップを発揮できる強靭な国家とはなり得ない。 ロシアのウクライナ侵略、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの出口の見えない紛争、台湾有事と言われる日本近隣での中台武力衝突の可能性など、国際安全保障環境は混沌として先行き不透明だ。 国は非常時における的確かつ迅速な決断を誤らないよう法的整備や防衛手段を万全とし、国民としても日頃からの関心と心構えを忘れるべきではない。 2013.12.7 12:00 【中高生のための国民の憲法講座】 第23講 なぜ憲法に軍隊明記が必要か 百地章先生 http://www.sankei.com/life/news/131207/lif1312070030-n1.html なぜ自衛隊を 「軍隊」 としなければならないのか。 本質的な理由は次の点にあります。 つまり戦力の不保持を定めた憲法第9条の下では法制度上自衛隊は軍隊ではなく警察組織に過ぎないとされているからです。 ◆軍隊と警察の違い それでは軍隊と警察の違いは何でしょうか? 軍隊の権限は 「ネガティブ・リスト」 方式で規定されています。 つまり行ってはならない事柄、例えば、毒ガス等の非人道的兵器の使用禁止や捕虜の虐待禁止などを国際法に列挙し禁止されていない限り軍隊の権限行使は無制限とされます。 だからネガティブ・リスト方式と言います。 なぜなら国際社会ではもし武力紛争が発生した場合、国連安保理事会が対処することになっていますがそれが出来ない時は各国とも自分で主権と独立を守るしかないからです。 これに対し警察の権限行使は 「ポジティブ・リスト」 方式です。 つまり国家という統一秩序の中で国民に対して行使されるのが警察権ですから制限的なものでなければなりません。 だから行使して良い権限だけが法律に列挙されており、これをポジティブ・リスト方式といいます。 それ故、もし自衛隊が法制度上、軍隊であれば、領海を侵犯した軍艦や潜水艦に対しては、国際法に従って、まず 「領海からの退去」 を命じ、それに従わない時は 「警告射撃」 を行うことが出来ます。 更に、相手側船舶を 「撃沈」 することさえ可能です。 現に、冷戦時代、スウェーデン海軍は領海を侵犯したソ連の潜水艦を撃沈していますが、ソ連は何も言えませんでした。 ◆尖閣諸島を守るために ところが、自衛隊は 「軍隊」 ではありませんから、自衛隊法に定められた 「防衛出動」 の場合を除き、武力行使はできません。 また、自衛隊法には 「領域警備規定」 がありませんから、もし中国の武装漁民が尖閣諸島に強行上陸しても、防ぎようがないのです。 相手が発砲してくれば、 「正当防衛」 として 「武器使用」 が出来ますが、場合により 「過剰防衛」 で起訴されかねません。 従って速やかに憲法を改正して、自衛隊を 「軍隊」 とする必要があります。 そうしなければ尖閣諸島も守れませんし、中国の軍事的脅威を前に、我が国の主権と独立を保持することは難しくなります。 自民党の憲法改正に対する姿勢はヤルヤル詐欺だ。 <主張>自民党と憲法改正 他党と協議の場を設けよ 社説 2024/8/8 5:00 https://www.sankei.com/article/20240808-OK5ZWIDIZFKCJMM5G36ZE5QJPE/ 岸田文雄首相(自民党総裁)が党憲法改正実現本部の会合で、憲法への自衛隊明記と緊急政令の規定について今月中に論点整理を行うよう指示した。 首相は、最初の憲法改正国民投票で、自衛隊明記と緊急事態条項創設を問う考えを示した。 来年11月の自民結党70年に言及し 「大きな節目に向けて党是である憲法改正の議論を進めるよう願う」 と語った。 自衛隊明記や緊急事態条項創設を初回の憲法改正で実現しようという姿勢は妥当だ。 だが進め方が緩慢だ。 首相の節目発言は年内の改憲発議を目指さないようにも聞こえる。 首相と自民は肝心なことに及び腰だ。 それは、憲法改正に前向きな政党に呼びかけ、改憲原案の条文化作業を担う協議の場を設けることである。 同本部の会合では、傘下のワーキングチームの報告が示された。 報告は、自衛隊明記▽緊急事態対応▽合区解消・地方公共団体▽教育充実―の改憲4項目について早急に取り組むべき論点と指摘した。 古屋圭司本部長は 「公明党や他党とも水面下で交渉する」 と語った。 水面下だけでは足りない。 協議の場を設け話し合いを始めてほしい。 そもそも、自民の改憲4項目は安倍晋三政権時の平成30年に決まった。 安倍、菅義偉、岸田の歴代総裁と自民はこれまでの6年間、何をしていたのかという思いを禁じ得ない。 党是の実現へギアを上げるべきだ。 南海トラフ地震などの大規模災害、台湾有事に伴う日本有事の懸念が高まっている。 国民を守るため緊急事態条項創設は急務だ。 現憲法は国防の明示的な規定がない欠陥がある。 防衛に足かせをはめる憲法9条2項の削除と、軍の規定が改正のゴールだが、まず自衛隊を憲法に明記する意義は大きい。 同本部はこの夏、参院の緊急集会について論議した。 だが、備えるべきは、緊急集会では対応できなかったり、国会自体が開けなかったりするような国難だ。 緊急政令、緊急財政処分の権限を内閣に一時的に与える規定がなければ国民を救えなくなる。 自衛隊明記は、9条またはその直後の条文(9条の2)として書き込むべきである。 最大政党の自民はこれらについて、公明党や日本維新の会、国民民主党の同意を得るよう、積極的に働きかけるときだ。 能登の被災病院から憲法改正を訴える 正論2024年8月号 恵寿総合病院理事長 神野正博 2024年元日の地震で能登半島は大きな被害を受けましたが、私が理事長を務める石川県七尾市の恵寿総合病院では被害を最小限に抑えて、地域の医療機関として役割を果たしてきました。 その立場から、2024年5月3日の憲法記念日にはビデオメッセージで、また2024年5月30日に日本武道館で開かれた 「国民の命と生活を守る1万人大会」 では会場で、憲法改正の必要性について訴えさせて頂きました。 大地震に見舞われて実感したのは、事前の準備が如何に大切かということと、同時に事前には想定し切れなかった事に対処するための非常事態の態勢が必要だということでした。 以下、詳しく述べてみたいと思います。 能登半島は平成19(2007)年にも最大震度6強の地震がありました。 当時、この病院でも建物に亀裂が入ったり水道管が破裂したりと、被害も出ました。 それで今後の対策を考えねば、と思っていたところに平成23(2011)年、東日本大震災が発生したのです。 私たちの病院は海に面していますので、宮城や福島の海の近くの病院がどんな苦労をされたのか、随分お話を伺いました。 特に公立志津川病院(現在は南三陸病院)の先生に来て頂き、根掘り葉掘り被災の状況を聞きました。 志津川病院では建物の3階にまで津波が押し寄せ、患者を4階に避難させたけれど、屋上にヘリコプターが降りられなかった。 それで1週間、病院に立てこもることになり、その間に何人かの患者が亡くなられたという話でした。 ちょうどその頃、当病院では本館の建て替え計画中でしたが、東日本大震災の話を聞いて 「もう少し災害に強い病院にせねば」 と考え、色々設計を変更したのです。 結果としてこの本館は平成25(2013)年末に完成、平成26(2014)年にオープンしましたが、震災の教訓を盛り込んだものになりました。 ここ七尾湾は湾口が狭く奥が広いため、津波の高さはせいぜい2メートルと想定されていました。 そこで本館は床を2メートルかさ上げしてあります。 更に屋上にはヘリポートも設置。 ドクターヘリだけでなく、万が一の際にここから患者を避難させられよう、自衛隊の大型ヘリも着陸出来るようにしました。 更に本館の建物は免震構造で、大津波に備えて最上階に受変電設備や非常用発電機を設置しました。 また地盤は液状化対策を施してあります。 これらの対策が、2024年元日の地震で奏功したのです。 ■平時からの備え とはいえ、まさか再び能登でこんなに大きな地震が起きると予想していたわけではありません。 随分費用をかけて備えをしていましたが、この地震がなかったら 「神野先生、余計な事におカネを使って大変だったね」 と笑われて終わりだったでしょう。 地震が起きたのは不幸な事だった一方で、この大計画が日の目を見て、全国から注目を集めることにもなりました。 災害対策としては当病院では、水も水道と井戸水と二重化させていました。 そして井戸水も普段から水質検査をして、飲める水だと確認してありました。 この話を被災後、何回かしてきたので今、全国各地の病院で災害に備えての井戸掘りが始まっているそうです。 何故ここまで念入りに備えを進めていたのかと思われるかもしれません。 東日本大震災などの教訓を踏まえて対策を考えると、次から次へと新たな問題点が浮上してきたのです。 あれも足らない、これも足らないということが出て来て、準備せざるを得なかったというのが実際のところです。 例えば、井戸については以前からあったのですが、せっかく井戸があるのだからトイレ用の水とか冬場の融雪装置の水に使えるようにしておいたのです。 決してこの災害だけを想定して井戸の配管をしていたわけではなく、水道料金の節減の意味もあって井戸を使えるようにしておいたのが当たったわけです。 しかし今回、当病院の地区では地震発生から2カ月間、水道水が止まったままでした。 これは想定外でした。 東日本大震災でも、こんなに長い断水はなかったと思います。 ただ、病院という施設の性質上、想定外だからとばかりも言ってはいられません。 一般の工場やサービス業などの場合、災害が発生すれば業務量は当然、ガクンと落ちて、そこから徐々に復旧していくことになります。 しかし病院や消防や警察といった所は、災害が起きれば仕事量が急増します。 病院の場合、普段から入院患者さんがいます。 それに加えて災害医療をやらねばならず、更に被害からの復旧もしなければなりません。 つまり、災害となれば普段の3倍、頑張らねばならないのが病院の宿命で、平時から災害への備えをしておく必要があるわけです。 それだけに、災害が起きた時には約800人の職員については安否確認システムがあり、同時に出勤できる人は出勤してくれという招集システムがあります。 病院から徒歩圏内に独身寮や医師宿舎もあり、地震当日は80数人の職員がすぐに出勤してくれました。 免震構造の本館はほとんど無事でしたが、それ以外の病棟は耐震構造だったため、棚から物が落ちたり配管が破損したりと被害が出ました。 そこで、耐震の病棟に入院していた患者さんを、まずは免震の本館に移しました。 それでも水や電気が確保出来ていたため、震災当日も医療は継続出来たのです。 翌2024年1月2日未明には出産もあり、赤ちゃんが無事に生まれています。 ■想定外の事態への対処 私自身は地震発生時、七尾市内の自宅に居ました。 自宅周辺の道路はあちこち裂けており、到底車が走れる状況ではなかったので、津波警報が出る中、病院に歩いて向かいました。 川沿いの道だったのですが、20〜30センチほどの津波が遡って行くのが見えました。 ちなみに当病院には地震当日、地域住民約200人が非難して来られました。 ですので医療活動の一方、避難してきた方たちのお世話も並行して進めたのです。 病院では腎臓透析の患者さんを計120人抱えていて、1日70人の患者さんに透析をする日があります。 その場合、1日に15トンの水が必要ですが、他にも飲料水やトイレなどで水を使いますから、果たして井戸水で足りるかどうかが不明でした。 そこで、東京・永田町の知り合いに電話をして給水支援をしつこく要請したのです。 感染症や自然災害に強い社会を目指して憲法改正を訴えている団体 「ニューレジリエンスフォーラム」 企画委員長の松本尚先生(日本医科歯科大学特任教授)は以前、この病院に勤めておられて同じ釜の飯を食った仲間でもありましたから、松本先生を通じてもお願いした。 そうして 「自衛隊」 からの給水が得られ、配管の修理などをして2024年1月6日からは透析を再開することが出来ました。 尚、能登半島で2番目に透析を再開出来た病院は2024年2月中旬からの実施だったそうです。 それだけ普段からの準備が奏功して、当病院は迅速に対応出来たわけです。 震災からの復旧では、特に病院ではスピード勝負です。 私たちは2024年元日の地震発生当日から、職員で手分けして院内あちこちの修繕に取り掛かりました。 一旦は患者さんを退避させた耐震の病棟も、水道管の破損や天井が落ちた所も修復して、2024年1月11日には患者さんを再び受け入れています。 このスピード感というのは、申し訳ないけれど他の公立病院には見られませんでした。 私たちは民間病院の身軽さもあって、競合見積もりなどせず、病院に来てくれた業者にすぐに修復を依頼していったのです。 そして、使える物は最大限利用するという臨機応変さも大事でしょう。 例えば耐震の病棟では、ボイラーが2つとも倒れていました。 新品のボイラーを注文したら通常、半年かかってしまいます、 しかし協力業者の方が工夫してくれて、倒れた2つのボイラーのうち1つを 「部品取り」 のしてくれたのです。 これで片肺状態ではあるけれど、病棟のシャワーなどお湯が使えるようになりました。 こういう非常時には指揮命令系統を一元化しないと混乱しますから、私が陣頭指揮しました。 とはいえ不眠不休とかというわけではなく、自宅には帰っていました。 もっとも自宅に戻っても、断水でトイレが使えません。 なので、夜はなるべく用を済ませるまで病院に居て、朝も早く病院に来てトイレに行っていました。 職員も皆、そんな感じで結構、病院に入り浸っていました。 少し落ち着いてきた段階で、まずは職員向けに本館のシャワーを開放して、途中からは職員の家族や協力企業の家族も含めて、病院の大浴場を開放しました。 職員も多くは自宅のシャワーもトイレも使えず、小さな子供のいる職員は大変だったと思います。 そこで、2024年1月9日には病院内に急遽、保育所や学童保育を作って、病院で面倒を見るから子供を連れて出勤するよう呼び掛けました。 そうしたら27人の職員が働けるようになったのです。 能登半島の珠洲や輪島の病院では、子供の世話のために看護師の退職が相次いだことが報じられていましたが、ここの病院では震災に伴う看護師の退職はありませんでした。 震災で大変な状況ではありましたが、職員が疲弊してしまっては病院が回せません、 そうならないよう、手を尽くしました。 もちろん、保育所を作ることまでは事前に想定しておらず、地震があってから臨機応変に取り組んだことです。 ■緊急時には司令塔を1つに この病院での経験や教訓を広く伝えたいと思って情報発信していますが、全国各地の病院では一部に熱心な方もいるものの、多くの病院経営者は 「自分が生きている間は大丈夫」 という変な確信を持っておられます。 でも、大きな地震などないと思われていた能登半島がこれだけの被害に見舞われました。 ましてや首都直下地震や南海トラフ巨大地震は、向こう30年間の間に7割以上の確率で起きるとされているのです。 能登半島は人口が少ないこともあって今回、全国の皆さんから手厚い支援が受けられました。 しかし首都直下地震が起きた時には被災地の人口が多過ぎて、助ける方はとても手が回らない状況が想定されます。 だからこそ憲法に緊急事態条項が必要だと、ニューレジリエンスフォーラムでは訴えています。 今回の能登半島の震災でも縦割り行政で、各省庁も県庁も市役所も皆、一生懸命対処してきたけれど、その整合性が全然取れていませんでした。 2024年の4月初めに台湾で大きな地震がありましたが、すぐに立派な避難所が設置されている映像が日本でも流れました。 一方で天皇、皇后両陛下が2度に渡り能登半島に慰問に来られましたが、東日本大震災の時と同様に、地震発生から2カ月以上経っても体育館が避難所になっていて、両陛下が床に膝をついておられる映像が流れていました。 避難所の状況は、東日本大震災から改善されていなかったのです。 これは震災復旧に当たっての司令塔がないということが、一番の問題でしょう。 皆、一生懸命やっているのだけれど船頭が多過ぎるのです。 私たちの病院の場合もそうでしたが、緊急事態には司令塔機能を持つ所をきちんと作ってそこに権限を集中させないと、事が進みません。 能登半島の被災地では壊れた建物の公費解体も進んでいません。 私有財産のため権利関係が複雑だったりすると、なかなか解体に着手出来ないのです。 しかし非常事態には私権をある程度制限してでも、建物を撤去して道路を確保するべきでしょう。 それが出来ないというのは法治国家として悲しいことです。 どこかで緊急事態状況へとスイッチを切り替える必要があると思うのです。 大正時代の関東大震災の後、内務相兼復興院総裁となった後藤新平が大ナタを振るって、昭和通りなどの広い道路を作りました。 もちろん反対の声も大きかったそうですが、それを跳ね除けて今の東京の基礎を作ったわけです。 そのように非常時には1人のリーダーに権限を集中させる仕組みにしないと、スピード感を持った復旧・復興は出来ないと思います。 国会では緊急事態条項の導入に向けた議論が行われていますが、専ら国会議員の任期延長といった話になっていると聞きます。 それも大事なのか知れませんが、関東大震災の時のように議員がそもそも国会に集まれない可能性もあるわけです。 そうした背景もあって、ニューレジリエンスフォーラムでは非常時に内閣が法律に代わる 「緊急政令」 を制定出来るよう提言しています。 能登半島辺りには、北朝鮮のミサイルも飛んで来ることがあります。 北朝鮮による拉致事件もこの周辺で多発しましたし、平成11(1999)年には能登半島沖不審船事件もありました。 ですから個人的には緊急事態の対象として自然災害や感染症に加えて、外国からの武力攻撃も入れてもらいたい。 残念ながらそこまで要求すると、まとまる話もまとまらなくなってしまうとのことで、フォーラムの提言には含まれませんでした。 それから、憲法9条に関しても一言、申し上げたい。 政治信条はともかくとして、 「自衛隊」 が既に存在している現実があるわけですから、きちんと 「軍隊」 として位置付けるべきでしょう。 実態に憲法を合わせる必要があるわけです。 恐らく外国人に言わせれば、陸上自衛隊はアーミーでしょうし、海自はネイビー、空自はエアフォースでしょう。 誰もセルフ・ディフェンス・フォースなんて言いません。 その国際的な常識に合わせて、 「自衛隊」 をきちんと 「憲法」 に明記するのが筋ではないでしょうか。 この病院への給水支援も、航空自衛隊の給水車が雨が降ろうが雪が降ろうが寒い中、毎日15トンの水を運んでくれて、本当に有り難かった。 能登半島の奥の方では、孤立集落に向けて自衛官が徒歩で支援に向かいました。 被災地では自衛隊による仮設の共同浴場がいくつも開設されましたが、これも 「軍事組織」 としての 「兵站力」 があるからこそ可能な話で、警察や消防には無理なのです。 これだけ自衛隊にお世話になっておきながら、存在を認めないなんてあり得ない話でしょう。 国会議員の皆様にはそうした現実を踏まえた上で、憲法改正の実現に向けて動いて頂きたいと思います。 兵站 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B5%E7%AB%99 兵站(へいたん、英語: Military Logistics)は、軍事学上、戦闘地帯から見て後方の軍の諸活動・機関・諸施設を総称したもの。 戦争において作戦を行う部隊の移動と支援を計画し、また、実施する活動を指す用語でもあり、例えば兵站には物資の配給や整備、兵員の展開や衛生、施設の構築や維持などが含まれる。 狭義としては、戦闘支援(戦闘実施時に部隊の作戦行動を支援すること、英: Combat Support(英語版))と後方支援(作戦行動を行う部隊の軍事的な機能を保持させる、英: Combat Service Support)に分けられるが、これらに比べて兵站はより広い範囲を指示する概念である。 本来、軍事学における用語だが、転じて経営学においても用いられる。 この場合の用語はロジスティクスを参照のこと。 自衛隊の事故と隊員の死生観 正論2024年8月号 麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男 2024年5月30日、山梨県の陸上自衛隊北富士演習場で、手榴弾投擲(しゅりゅうだんとうてき)訓練において爆発した手榴弾の破片が男性隊員に当たり死亡した。 森下泰臣陸上幕僚長は 「このような事案は、武器を扱う組織としては、決してあってはならないものであり、陸上幕僚長として非常に重く受け止めております」 と述べ、安全が確認されるまで、陸上自衛隊の全ての実弾射撃訓練を中止するとした。 自衛隊の事故がある度に 「杜撰な訓練」 「たるんだ組織」 「これで有事、戦えるのか」 といった批判がメディアやSNSを賑わす。 トップが頭を下げ、訓練が中止されるのが、日本の 「定番」 の光景である。 そこには自衛隊員の 「死」 に対する尊崇の念は感じられない。 平時とはいえ、我が国防衛のための訓練中の事故である。 訓練で殉職者を出すことは、極めて残念なことである。 事故の絶無に向けて安全管理体制を見直し、訓練を実のあるものにする努力は欠かせない。 だが戦場で流す血の量は、訓練で流す汗の量に反比例すると言われる。 訓練は1日たりとも蔑ろにしてはならない。 1日訓練を中止すれば、1日精強化が遅れる。 安全対策を取れば直ちに訓練を再開させるべきである。 それが殉職者に報いることでもある。 筆者は防衛省、自衛隊に約40年間奉職した。 この間、何十件という隊員の殉職に遭遇した。 その度に 「定番」 の光景が繰り返され、違和感と憤りを覚えた。 現役時代、米アラスカで実施される多国籍の共同演習にオブザーバーとして参加したことがある。 演習の最中、英空軍戦闘機が山に激突して操縦者が殉職する事故に出くわした。 地元メディアは殉職者の栄誉を称え、英軍の同僚たちは、キャンプファイアーのような火を囲み、何やらセレモニーらしきものを夜通しやっていた。 翌日は何事もなかったかのように共同演習は続けられ、英空軍の将校たちもスケジュール通り訓練に参加していた。 これが軍隊かと感動したのを思い出す。 防衛省の事故対応やメディアの報道には、有事の視点が欠落し、自衛隊が戦う組織であることの認識が共有されていないように感ずる。 結果的に殉職隊員の 「死」 が蔑ろにされているように思えてならない。 ■木原防衛大臣の言葉 筆者は戦闘機操縦者だったこともあり、どうしても航空事故に目が行く。 近年の航空事故だけでも、これだけ殉職事故が起きている。 ▼平成31年4月、青森県沖で空自F-35戦闘機が墜落し、1人が死亡 ▼令和4年1月、空自F-15戦闘機が石川県沖の日本海に墜落し、2人が死亡 ▼令和5年4月、陸自ヘリが沖縄県の宮古島沖で墜落し、10人が死亡 ▼令和6年4月、伊豆諸島沖で海自ヘリ2機が墜落し、1人が死亡、7人が行方不明(後に死亡と判断) 2024年4月の海自ヘリの事故は、夜間の太平洋上で海自対潜ヘリ3機が潜水艦を探知する対潜戦の訓練中、各機4人が乗る2機が空中で衝突したものである。 真っ暗な洋上低高度の訓練が如何に厳しいものか。 これは経験した者しか分からないだろう。 木原稔防衛相は 「このような事故が起こったことは、痛恨の極みだ」 と述べた上で、今後の対応について 「事故原因は確認中だが、航空機の安全管理は徹底しなければならない」 「自衛隊の全ての航空機に対して、飛行前後の点検を入念に実施することや、操縦者に対して安全管理や緊急時の手順の教育を改めて実施すること、更に部隊の長には、隊員を適切に指導することなどを改めて大臣指示の形で速やかに発出したい」 と述べた。 ここまでは 「定番」 だが、大臣は次のように続けた。 「訓練の頻度を下げて運用能力を向上させないまま有事があった場合には、尚一層危険性が増すことに繋がる」 「訓練をして十分に練度を上げた上で、有事に備えることが必要だ」 自衛隊の本質を突いた発言であり、事故直後の大臣発言としては珍しい。 「有事」 を念頭にした訓練の厳しさ、重要性を訴え、所要の安全措置を採った後は、速やかな訓練再開の必要性を強調したものである。 諸外国の常識に一歩近付いたとの印象を持った。 他方、メディアは次のような点を批判していた。 夜間訓練のリスク、訓練の安全管理体制、部隊技量を評価する「査閲」の実施方法、位置情報共有システムの未使用、防衛省の対応要領、訓練スケジュールの過密さ、隊員の疲労蓄積などである。 リスクがあるから訓練するのであり、コメントする気が失せる批判も多い。 また安全管理体制や防衛省の対応への批判は、お決まりのパターンで論評に値しない。 ただ、 「部隊技量を評価する査閲」 や 「位置情報共有システムの未使用」 の批判については、コメントしておきたい。 対潜戦について、筆者は素人であり論評できる立場にない。 だが、 「位置情報共有システムの未使用」 への批判については、大事な視点が欠けているように思えてならない。 「位置情報共有システム」 は近くで行動する友軍機との衝突防止のための装置という。 戦闘機でも安全確保をサポートする各種警報装置や安全装置が装備されている。 だが、これらは操縦者の判断を支援する装置に過ぎず、それが作動しなければ、直ちに任務中止という代物ではない。 有事任務遂行中に、各種支援装置が故障しても(今回が故障かどうかは不明)、必ずしも任務を即中止というわけにはいかない。 任務遂行が何より優先され、たとえ主な安全確保手段がなくても、代替手段で任務は継続しなければならない。 代替手段がない場合でも、最終的には操縦者の 「勘と経験」 で任務を継続することだってあり得る。 そういう不測事態も予期して、普段から訓練を実施しているはずだ。 次に 「部隊技量を評価する査閲」 としての訓練であった点である。 「査閲」 というのは、指揮官が部隊の練度を確認する行為である。 有事であれば 「査閲」 を受けて合格した部隊が戦地に派遣される。 言わば有事を想定した最も厳しい状態で実施される訓練である。 海自トップの酒井良幕僚長も 「通常よりも実戦に近い訓練」 と語っている。 このような事情を無視して無責任に批判するのは、有事の視点の欠落だけでなく、自衛隊を実力組織と見做していない証左でもある。 政治やメディアが掘り下げるべきは、近年の実任務増加による訓練量の不足、隊員の疲労蓄積状況、あるいは実員不足による荷重勤務の実態などであろう。 自衛隊員は与えられた条件が、たとえ劣悪であっても文句も言わず、黙々と努力することを美徳としている。 それは美徳であるが、ある意味弱点でもある。 これを指摘するのがメディアであり、改善するのが政治の役割であろう。 ■矜持の源泉 戦闘機操縦者であった筆者の経験で言うと、特に飛行任務を専門にする自衛隊員は、全員 「有事」 と 「死」 は常に意識していると思う。 飛行物体は必ず落ちる。 事故は確率の問題である。 その確率を限りなくゼロに近付ける努力は徹底して実施すべきだ。 だが、事故はゼロにはなり得ない。 航空事故は死に直結する。 地上に生活することを宿命付けられた人間が、神の意に反して3次元空間を職場にするのだから、 「死」 が身近にあるのは当然だ。 自衛隊は法的には軍隊ではない。 だが、戦って国を守る実力組織であり、決して他の行政組織と同質の組織ではない。 それを端的に表しているのが自衛隊員の 「服務の宣誓」 である。 「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、【事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います】」 (【】は筆者) 【】のフレーズは自衛隊員の宣誓以外にはない。 ちなみに国家公務員の宣誓は以下の通りである。 「私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います」 自衛隊員と同様、危険と対峙する職業である消防職員、警察職員の宣誓にもないフレーズであり、その意味する所は重い。 筆者は自衛隊勤務約40年間、常にこのフレーズを意識してきた。 「死」 を意識せざるを得ない勤務であり、それが矜持の源泉でもあった。 政治家がこのフレーズを引用して、自衛隊の任務の重さを説くことがある。 自衛隊員を激励し、任務の厳しさを国民に伝えるためであり、自衛隊員にとっては感謝すべき事かもしれない。 だが政治家がこれを引用する度に、筆者は違和感を持っていた。 政治家が思うより、自衛隊員にとっては、 「死」 は身近であり、このフレーズは神聖なものだ。 「全力を挙げて」 とか 「全身全霊で」 と軽々しく言う政治家に、これが分かってたまるか。 軽々しく言ってもらいたくないという複雑な思いがあった。 クリスチャンでもない人が聖書を引用する時、敬虔なクリスチャンが抱く違和感と似た所があるのかもしれない。 同時に 「危険を顧みず、身をもつて責務の完遂」 を求める一方で、 「戦力」 としての自衛隊を認めない 「日本国憲法」 を遵守せよと言うのか、という割り切れない思いがあったのも事実である。 ■部下の「死」 筆者は戦闘機操縦課程を卒業して、小松基地(石川県)の第6航空団に赴任した。 昭和52(1977)年4月1日に着隊し、第6航空団司令に赴任の申告を実施した。 その際、沖縄から転属してきたベテラン操縦者であるIさんと同席した。 その3日後である。 Iさんは日本海で殉職された。 筆者の小松での最初のフライトが、行方不明のIさんを捜索するフライトだったのを今でも鮮明に思い出す。 それから数年経った時である。 今度は同じ官舎に住むF-4操縦者のMさんが対艦攻撃訓練中、殉職された。 自衛隊在職中、戦闘機操縦者としての筆者の身近には、常に 「死」 があった。 食うか食われるかの実戦場裏で任務を全うするには、実戦状況下に近い厳しい訓練で戦技を磨かねばならない。 訓練で出来ない事は実戦で出来るわけがない。 かつてフォークランド紛争に出撃した英軍操縦者と話したことがある。 フォークランド紛争は1982年に起きたイギリスとアルゼンチンの間の紛争であり、近代化された軍同士による戦争だった。 結果的にはイギリスが勝利したが、英軍操縦者は実戦よりも訓練の方が厳しかったと述べていた。 それでも激しい戦闘と、職場での経験により、多くの英軍操縦者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだという。 厳しい実戦に備える訓練は自ずと厳しいものになる。 「死」 を意識するのは、決して戦場だけではない。 若い頃は、 「空」 への憧れが 「死」 の恐怖を超えていた。 「空」 には事故は付き物だ。 事故は確率の問題、だからその時は 「死」 もやむを得ないと無謀にも達観していた。 若気の至りである。 結婚して家庭を構え、子供を持つ頃になると、意識は変わって来た。 操縦技量も戦術判断もベテランの域に近付いて来るのだが、それに比例するように 「死」 に対する恐怖、臆病さ、慎重さが増していく。 「空」 の恐ろしさ、自然の冷徹さが経験を通じて理解出来るようになるからだ。 特に飛行隊長といった指揮官職になるとこれが顕著になる。 「死」 が家庭、自衛隊、そして社会や国家に与える影響を考えざるを得ない。 同時に、自分の 「死」 だけでなく、部下の 「死」 が関わってくる。 指揮官にとって部下の 「死」 は何よりも耐え難いものである。 何としてでも部下を死なせたくないという思いは、どの指揮官にとっても共通の願いである。 かといって厳しい訓練を避ければ部下は精強な操縦者として育たない。 そのツケは有事に戦死という結果で返って来る。 操縦者には、ある程度、身の丈を超える試練を課さなければ、進歩は期待できない。 さりとて限度を超えると必ず事故は起きる。 戦場では予測不可能な事が起きるのが常である。 どんな状況でも臨機応変に対応できる精強な飛行隊を育成するには、安全管理が徹底された訓練をこなすだけでは不十分である。 時にはある種の 「管理された冒険」 が必要となる。 事故を限りなくゼロに近付ける訓練は可能である。 だが実戦に役に立たない操縦者、飛行隊を育てるのは本意ではない。 飛行隊長の2年間は、このジレンマに悩み続けた。 ■自己犠牲 子供が中学生になり、そろそろ子供の教育のために単身赴任をとも考えた。 だが、敢えて家族帯同で飛行隊長に就任した。 万が一、部下が殉職したような場合、直ちに部下家族の精神的ケアが必要となる。 国はここまで面倒を見てくれない。 これには、家内の助力が欠かせない。 飛行隊長に命ぜられた時、まさかの時を考えて単身赴任をやめ、帯同を決心した。 「あわや」 という際どい状況は何度もあった。 だが、幸い殉職事故はなく、家内の辛い出番もなかった。 殉職者を出すことなく、思う存分の訓練が出来たのは、まさに 「男の本懐」 だった。 2年間の飛行隊長勤務を終え、部下に見送られながらフェリーの甲板に立ち、岸壁の部下たちが飛行隊旗を振りながら見送ってくれる姿を見て、ようやく 「死」 の重みから解放された。 この時の安堵感、達成感、解放感は言葉に尽くせない。 胸に込み上げてきたのは、殉職者を出さなかったことの安堵感だった。 筆者は幸運に恵まれたに過ぎない。 激烈な職場で生き残るための厳しい訓練に事故は付き物だ。 幾重にも安全対策を講じるが、人間からミスを消し去ることは出来ないし、機械の故障をゼロにすることは出来ない。 そこに 「死」 と直面する必然がある。 これに対する国民の理解がなければ、士気も訓練レベルも下がり、自衛隊の精強化は難しい。 それはこれまでの殉職者への冒瀆でもある。 自衛隊発足以来、殉職者は既に2000名を超えている。 20数年前の事である。 空自T-33練習機が入間川(埼玉県)に墜落して2名のベテラン操縦者が殉職した。 前席操縦者のNさんは、当時、航空幕僚監部で勤務しており、技量維持のための操縦訓練中に出くわした事故である。 筆者も空幕勤務だったてめ、Nさんとは付き合いがあった。 非行技量もさることながら、人格、識見共に優れ、将来を嘱望された将校だった。 Nさんは、突如エンジンの止まったT-33を、民家を避けるためギリギリまで誘導しようとして脱出が遅れた。 2名ともパラシュートが開き切らない状態で地上に激突して殉職した。 脱出まで、絶妙の操縦で河川敷に機体を誘導し、民家への被害を避けることは出来た。 だが、脱出後の墜落機が不幸にも近くを通る高圧線を切断した。 首都圏の何万という世帯が停電になり、山手線も止まった。 この時のメディアの報道ぶりには、憤りを通り越して、無力感を覚えた。 我が身を犠牲にして民家への被害を避けたことには一切触れず、空自機が高圧線を切断して首都圏に停電をもたらしたことだけをクローズアップする。 尊い人命が失われたことには触れず、停電によって 「水槽の保温装置が働かず熱帯魚が死んだ」 という心無い報道がお茶の間を賑わした。 腸が煮えくり返り、呆れ返った。 後日、某高校の校長先生が、生徒の教育に一文を書き、Nさんの行為を紹介した。 最後にこうあった。 「母は我が子のた、父は家族のために命を投げ出して戦います」 「これが人間の本当の姿なのです」 「その愛の対象を家族から友人へ、友人から国家へと拡大していった人を我々は英雄と呼ぶのです」 同僚の殉職と心無いメディア報道に胸が潰れる思いだったが、この一文に救われた。 自衛隊員は英雄になる必要はない。 だが 「事に臨んでは危険を顧みる」 ことを許されない自衛隊員は、時として自己犠牲をも伴った責任の履行を強いられることは知っておいてもらいたい。 人間は誰しも 「死」 は怖いし、天寿を全うすることを至上の願望としている。 自衛官も生身の人間である。 にもかかわらず、国家、国民への思いを抱きながら、常に 「死」 を意識し、日夜、有事に備えて厳しい訓練をしている。 そういう自衛隊員がいることだけは忘れないでもらいたい。 おりた・くにお 麗澤大学特別教授・元空将。 昭和27年生まれ。 防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入り、F4パイロットなどを経て、米スタンフォード大学客員研究員、航空幕僚監部防衛部長、航空支援集団司令官などを歴任。 人間を矮小化してはならぬ 〜自衛隊員の犠牲に寄せて 2010/2/11 7:46 https://ameblo.jp/nippon-and-world/entry-10455948174.html 二人の自衛官の死とマスコミ: あの時何があったのか? https://yamatogokorous.com/jieikantomedia/ 『出典:藤棚 狭山ヶ丘高等学校 学校通信 1999/12/1』 人間を矮小化してはならぬ 小川義男 校長 先日、狭山市の柏原地区に自衛隊の技習用ジェット機が墜落しました。 たまたま私は、寺田先生と共に、あの近くを走っていましたので、立ち寄ることとしました。 すでに付近は閉鎖されていて、近くまで行くことはできませんでしたが、それほど遠くないあたりに、白煙の立ち上るのが見えました。 見上けると、どのような状態であったものか、高圧線がかなり広範囲にわたって切断されています。 高圧線は、あの太くて丈夫な電線ですから、切れるときはぶつんと切れそうなものですが、多数の細い線の集まりからできているらしく、ぼさぼさに切れています。 何カ所にもわたって、長くぼさぼさになった高圧線が鉄塔からぶら下がっている様は、まさに鬼気迫るものがありました。 聞くと、操縦していた二人は助からなかったそうです。 二佐と三佐と言いますから、相当地位の高いパイロットだと言えます。 ニ人とも脱出を試みたのですが、高度が足りなく、パラシュート半開きの状態で地面に激突し命を失った模様です。 以前、現在防衛大学の学生である本校の卒業生が、防大合格後航空コースを選ぶというのを聞いて、私がとめたことがあります。 「あんな危ないものに乗るな」 と。 彼の答えはこうでした。 「先生、戦闘機は旅客機より安全なのです」 「万一の場合脱出装置が付いておリ、座席ごと空中に打ち出されるのですから」 と。 その安全な戦闘機に乗りながら、この二人の高級将校は、何故、死ななくてはならなかったのでしょうか。 それは、彼らが十分な高度での脱出を、自ら選ばなかったからです。 おそらく、もう百メートル上空で脱出装置を作動させていれば、彼らは確実に自らの命を救うことができたでしょう。 47歳と48歳と言いますから、家族に取りかけがえなく尊い父親であったでしょう。 それなのに、何故、彼らはあえて死をえらんだのでしょうか。 実は、あの墜落現場である入間川の河川敷きは、その近くに家屋や学校が密集している場所なのです。 柏原の高級住宅地は、手を伸ばせは届くような近距離ですし、柏原小、中学校、西武文理高等学校もすくそばです。 百メートル上空で脱出すれば、彼らは確実に助かったでしょうが、その場合残された機体が民家や学校に激突する危険がありました。 彼らは、助からないことを覚悟した上で、高圧線にぶつかるような超低空で河川敷に接近しました。 そうして、他人に被害が及ばないことが確実になった段階で、万一の可能去性に賭けて脱出装置を作動させたのです。 死の瞬間、彼らの脳裏をよぎったものは、家族の顔でしょうか。 それとも民家や学校を巻き添えにせずに済んだという安堵感でしょうか。 他人の命と自分の命の二者択一を迫られたとき、迷わず他人を選ふ、この犠性的精神の何と崇高なことでしょう。 皆さんはどうですか。 このような英雄的死を選ぶことができますか。 おそらく皆さんも同じコ一スを選ぶと思います。 私も必ずそうするでしょう。 実は、人間は、神の手によって、そのように作られているのです。 人間はすべてエゴイストであるというふうに、人間を矮小化(ワイショウ)、つまり実存以上に小さく、卑しいものに貶(オトシメ)めようとする文化が今日専ら(モッパラ)です。 しかし、そうではありません。 人間は本来、気高く偉大なものなのです。 火災の際の消防士の動きを見てご覧なさい。 逃げ遅れている人があると知れば、彼らは自らの危険を忘れて猛火の中に飛び込んでいくではありませんか。 母は我が子のために、父は家族のために命を投げ出して戦います。 これが人間の本当の姿なのです。 その愛の対象を、家族から友人へ、友人から国家へと拡大していった人を我々は英雄と呼ぶのです。 あのジェット機は、西武文理高等学技の上を飛んで河川敷に飛び込んでいったと、佐藤校長はパイロットの犠牲的精神に感動しつつ語っておられました。 しかし、新聞は、この将校たちの崇高な精神に対しで、一言半句(イチゴンハンク)のほめ言葉をも発しておりません。 彼らは、たたもう自衛隊が、 「また、事故を起こした」 と騒ぎ立てるばかりなのです。 防衛庁長官の言動も我慢がなりません。 彼は、事故を陳謝することのみに終始していました。 その言葉には、死者に対するいたわりの心が少しもありません。 防衛庁の責任者が陳謝することは、それはもう当然です。 国民に対してばかりか、大切な隊員の命をも失ったのですから。 しかし、陳謝の折りに、大臣はせめて一言、 「以上の通り大変申し訳ないが、隊員が、国民の生命、財産を守るため、自らの命を犠牲にしたことは分かってやって頂きたい」 「自衛隊に反発を抱かれる方もあるかも知れないが、私に取り彼らは可愛い部下なので、このことを付け加えさせてもらいたい。」 くらいのことが言えなかったのでしょうか。 隊員は命を捨てて国民を守っているのに、自らの政治生命ばかり大切にする最近の政治家の精神的貧しさが、ここには集中的に表れています。 まことに残念なことであると思います。 このような政治家、マスメディアが、人間の矮小化をさらに加速し、英雄なき国家、エゴイストのひしめく国家を作り出しているのです。 人は、他人のために尽くすときに最大の生き甲斐を感ずる生き物です。 他人のために生きることは、各人にとり、自己実現にほかならないのです。 国家や社会に取り、有用な人物になるために皆さんは学んでいます。 そのような人材を育てたいと思うからこそ、私も全力を尽くしているのです。 受験勉強で、精神的に参ることもあるでしょうが、これは自分のためではなく、公(オオヤケ)のためである、そう思ったとき、また新しいエネルギーが湧いてくるのではないでしょうか。 受験勉強に燃える三年生に、連帯の握手を! 私はこの方の文章を涙なくして読むことが出来ない。 本当に人間の本質を直球で語っており、今の日本が直面する大きな闇を的確に指しておられる。 そしてこのような崇高な思いで自らの命と人生を二の次にされたお二人の自衛官に心から哀悼の意を捧げたい。 ■死ぬ間際でも仲間を気遣った自衛官達 この話にはまだ続きがある。 二人の自衛官はどちらも助かる見込みがゼロの高度で脱出装置を起動させ、機体から脱出をした状態で亡くなっていた。 ゴミのようなマスコミはこのことを、 助からないのに悪あがきで脱出装置を作動させたのか。。 と半ば馬鹿にするような報道機関もあったらしい。 しかし、これに関しても仲間の自衛官が衝撃の証言をしている。 二人は死を覚悟したものの、脱出装置の不具合で脱出できなかったということになると機体の整備士の責任になってしまうことを懸念し、装置は正常であった事を仲間に伝えるために敢えて作動させて死ぬことを選んだのです。 自分達が死ぬことは避けられないと察したそのわずかな時間で、仲間の整備士への咄嗟の気遣いによる行動だった。 頭が真っ白になるようなプロ意識だ。 普段からこのような思いと覚悟で訓練を重ねられている自衛官の皆さまには、心から感謝の気持ちを毎日送りたいと改めて思った。 自衛隊の皆さんにおかれては、マスコミが何を言おうが、心ない人が何を思おうが気にしないで欲しいと願う。 大多数の日本人はあなた方に心から感謝しており、深い敬意を払っています。 日々、本当にありがとうございます。 2012年8月30日 墜落の直前、死を懸けてパイロットたちが取った選択とは?! 13年前の自衛機の事故について http://kuri-ma.seesaa.net/article/289123197.html 調べてみると、この二人のパイロットはしっかり評価されたようです。 東京電力の27万5000ボルト高圧送電線に接触、これを切断して墜落したため、埼玉県南部及び東京都西部を中心とする約80万世帯を停電、道路信号機や鉄道網を麻痺させる重大事故を惹起した。 なお、送電線に接触しなかった場合、狭山大橋に激突し、死傷者が生じる可能性もあった[8]。 殉職した2名とも11月24日付で1階級特別昇任した。 自衛隊における教育内容・事故の目撃証言などから、中川二佐および門屋三佐は、近隣住民への被害を避けるべく限界まで脱出しなかったものと確実視されている T-33 (航空機)- Wikipedia 以前紹介した航空ショーでの事故の際も、犠牲者は出てしまったのですが、パイロットは最後の2秒前で機首をあげ、それによって、数百人は助かっただろうという証言がありました。 下手をすれば、もっと悲惨な大惨事になっていたかもしれなかったのです。 こちら 最後の瞬間、たったの2秒、死んでいくと分かっているその最中にも、ベストを尽くそうとしたパイロット。 そういえばロンドン五輪、フェンシング団体の銀メダルを決めた試合も、最後の2秒で決めたものでした。 極限の瞬間にも、大きなことができるのが、極めた人たちということになりますね。 飛行機は着陸できるのが当たり前で、その当たり前のことを数え切れないほど、こなしているパイロットたちであり、アクシデントというのは、不運としか言いようがありません。 墜落するしかないという命のかかった時にも、民家、学校などの犠牲を避けるというのが、叩き込まれたプロ精神なのでしょうか。 アメリカでは軍用機が民家に墜落し、一家4人が死亡するという事故がありました。 パイロットたちは全員無事でした。 この場合は完全な判断ミスということでしたが、つまりアクシデントとなっても、パイロットの命だけなら救われるというのは確かなことだったわけです。 (下にニュース添付) そういう中、ぶれない判断で、自分の命をかけ、多くの人々の命を未然に救ったパイロットの素晴らしさを改めてすごいと思うのです。 戦力不保持の9条2項削除し「自衛隊保有」を明記 自民議連が独自の改憲案 2024/6/21 13:02 https://www.sankei.com/article/20240621-L32AH4G6BJPDPNZLZHWRCYV6VE/ 自民党の 「憲法改正推進議員連盟」(会長・衛藤征士郎元衆院副議長) は2024年6月21日、国会内で総会を開き、憲法9条改正を含む独自の改憲条文案を取りまとめた。 独自案は戦力不保持などを定めた9条2項を削除し 「日本国は、我が国の平和と独立を守るため、自衛隊を保有する」 と明記した。 党執行部への提出を検討している。 自民は2018年、9条について1項、2項を共に維持した上で、別立ての 「9条の2」 を新設して 「自衛隊保持」 を明記する条文案を取りまとめている。 2024年6月21日の総会には二階俊博、石破茂両元幹事長ら約20人が出席した。 議連の独自案には大規模災害時の内閣の権限強化と国会議員の任期延長を盛りこんだ緊急事態条項も記載した。 自衛隊明記の「その先」を考える 憲法改正 石井聡 論争を撃つ 2024/6/15 11:00 https://www.sankei.com/article/20240615-4U7JX2OOVZI3JOIPCTSZ4P2HLM/ 岸田文雄首相は今の自民党総裁任期中の憲法改正を目標に掲げている。 今国会の情勢からその実現可能性は低いが、改正が政治日程の俎上に載るものとして位置付けられることは異例ではなくなった。 改正内容として最近は緊急事態条項が取り上げられることが多いものの、改正の核心となるのは、やはり日本の安全保障に関わる9条である。 安倍晋三元首相は在任中に、自衛隊を憲法に明記し、その存在を明確にする方針を打ち出した。 今も残る自衛隊 「違憲論」 を解消するため、公明党など他の勢力の同調も得ながら9条改正への突破口を開こうとした意義は大きい。 だが、その後の日本を取り巻く安全保障環境の悪化や、それに対応する日米同盟の更なる深化を図る上で、自衛隊明記の 「その先」 をどうするかの議論は乏しい。 ■士気は上がるが 自衛隊は数多くの災害派遣などを通じて国民から絶大な信頼を得ている。 その自衛隊に対し、今も違憲論が残る環境下で、自衛隊明記で違憲論を払拭すれば自衛官の士気高揚に繋がるとの発想が基本にある。 平成29(2017)年5月、現職の統合幕僚長だった河野克俊氏が日本外国特派員協会での記者会見で、当時の安倍晋三首相が憲法9条への自衛隊明記を提起したことについて 「1自衛官として申し上げるなら、自衛隊が何らかの形で憲法に明記されることになれば、それは有り難いなあとは思います」 と述べて注目を集めた。 それから7年が経過する中でも、日本の周辺環境は激変した。 国際法を犯して海洋の自由を侵害する中国は尖閣諸島奪取への動きを強める他、フィリピンとの衝突を重ね、台湾の武力統一の意思を捨てていない。 ロシアによるウクライナ侵略は今も続き、北朝鮮は核・ミサイル開発を進め、それを止める手立ても乏しい。 これらに対処するため、日米同盟の深化が待ったなしの状況にある中で、河野克俊氏は今、 「これからの日本の安全保障を考えれば、最早『自衛隊明記』だけでは課題を解決できない」 と主張している。 ■孤立主義に回帰 河野克俊氏の問題意識は、混迷する国際情勢の中で 「今まで通りに日本の防衛を米国に頼り切る」 ことへの警戒感でもある。 米国が元々孤立主義(モンロー主義)から出発した国家であり、再びそこに立ち戻るのではないかという懸念だ。 第一次世界大戦や第二次世界大戦でも米国は当初参戦に慎重だった。 その後の旧ソ連の台頭に対して米国は西側諸国の総大将の役目を果たさざるを得なかった。 しかし、冷戦期が終わるとオバマ元大統領は2013年に 「世界の警察官」 を辞めると表明し、トランプ前大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟国が相応の軍事費を負担しなければ、ロシアに侵攻されても米国は防衛しないと発言している。 バイデン大統領は20年に渡りアフガニスタンに駐留した米軍を撤退させた。 既に10年以上前から米国が政界への関与を抑制している中で、日本の立ち位置をどうするか。 ■双務性への努力 河野克俊氏は、米国がリーダーを務めた時代は米ソ冷戦の特殊な状況だったと判断し、 「その時代に締結されたのがNATOと日米安全保障条約だ」 と指摘する。 そして、米国が本来の孤立主義に戻りつつあるとすれば 「憲法9条の制約下で片務的な同盟を求めて来た日本に、米国が距離を置く可能性」 を予想する。 日米同盟への 「甘え」 が許される時代ではないというのだ。 そうした米国を孤立主義に戻らせず同盟関係を維持するには日本の役割の拡大が不可欠で、それには 「日米同盟を双務性のレベルに極力引き上げる」 ことが必要だと河野克俊氏は提唱する。 同盟とは本来、相互に防衛するもの(双務性)だが、日本は米国が攻撃されても(憲法9条の制約上)自衛隊を海外派遣して共に戦うことはない。 戦勝国と敗戦国との間で結ばれた条約であることに起因する。 日本側では 「片務的ではない」 という議論もあるが、それが米国でどれだけ通用するか。 大事なのは米国を引き留め、日本の危機対処に巻き込むことだ。 ■明白な危機とは 集団的自衛権の限定行使については、それを制約する文言が法律などに多く盛り込まれている。 行使が可能になる存立危機事態は、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態と定義された。 「根底から」 とか 「明白な危険」 を瞬時にどう判断するのか。 河野克俊氏はこの定義を 「ほぼ個別的自衛権と同じ」 と見ている。 日本の防衛の基本姿勢である 「専守防衛」 や 「必要最小限度」 といった武力行使を出来るだけ抑える方針も変わっていない。 これらの制約は 「戦力保持」 や 「交戦権」 を否定する憲法9条2項から発生する。 内閣法制局は仮に集団的自衛権の行使を拡大するなら、憲法改正が必要だとしている。 自衛隊明記では解決にならない。 トランプ政権で国防次官補代理を務めたエルブリッジ・コルビー氏は 「私が最も努力すべきことの1つは、日本の議論にもっとリアリズムを取り入れることだと考える」 とX(旧ツイッター)に投稿している。 それに呼応する日本の議論が急務だ。 ■制約される集団的自衛権 ★防衛出動の規定(自衛隊法76条1項2号) ・我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態 ★武力行使の3要件「平成26(2014)年7月閣議決定」 ・我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること ・これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと ・必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
[18初期非表示理由]:担当:スレと関係が薄い長文多数のため全部処理。自分でスレを建てて好きな事を投稿してください
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