<■106行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> スターがいない?どうしたら立憲民主党代表選は盛り上がるのか 「古株の男性ばかり」対決構図に異変あり(東京新聞) 2024年8月28日 12時00分https://www.tokyo-np.co.jp/article/350141?rct=tokuhou 9月7日告示、23日投開票の立憲民主党代表選だが、自民党総裁選と比べ、いまいち影が薄い。「ジェンダー平等」を党綱領に掲げながら、顔ぶれを見ればベテラン男性同士の対決と冷ややかな向きもあったが、ここに来て新たな動きも。代表選の先には衆院選も待ち受ける。白けムードを払拭し、自民を脅かす対抗軸となり得るか。(太田理英子、木原育子) ◆立憲民主党の支持者の関心も「自民党総裁選」 告示まで2週間を切った立民代表選。立候補を正式表明しているのは枝野幸男前代表(60)のみだ。野田佳彦元首相(67)は週内にも表明する見通しで、泉健太代表(50)も出馬の意向を固めている。26日の事前説明会にはほかに4陣営が出席した。 一方、ほぼ同時期に行われるのが自民党総裁選(9月12日告示、27日投開票)。こちらは女性や40代も含む10人超が出馬に意欲を示し、候補予定者の地方視察や記者会見が連日報じられている。立民は構図が固まっていないものの、名が挙がるのはおなじみのベテランたち。影の薄い印象は拭えない。 「支持者の集まりで、話題になるのはもっぱら自民党総裁選。『うちは誰が出るの』と聞かれる」。こう嘆くのは、首都圏の立民の女性市議。街頭でも聴衆の反応は鈍いという。「以前ほど政権交代を望む熱が感じられない。自民側の盛り上がりに流されている気がする」と危機感を募らせる。 もっとも、別の立民の男性県議は「候補者が目新しければいいわけではない」と強調する。「政権交代ができれば総理になる可能性が高い。要職経験者が順当」と安定感を重視する。 ◆自民が落ち目の中で、じわりじわりと立民が 立民の代表選は2020年の結党以来、今回で3回目だ。旧民進党時代の17年、小池百合子都知事が代表を務める希望の党との合流を巡り、党内が分裂。合流しなかった議員で旧立民を立ち上げ、20年に旧国民民主の一部も加わって現在の立民となった。第1回代表選は、枝野氏が泉氏との一騎打ちを制した。衆院選敗北を受けて枝野氏が辞任した21年の前回選は、泉氏が逢坂誠二代表代行ら3候補を破った。 派閥裏金事件による自民への逆風の中、今年4月の衆院3補選では立民が全勝。5月の静岡県知事選など、地方でも立民が推した候補の当選が目立つ。善戦を次期衆院選の足掛かりとし、自民への対抗軸として存在感を発揮したいところだ。毎日新聞や読売新聞による8月の世論調査では、新代表にふさわしいとの回答はともに野田氏、枝野氏、泉氏の順で多かった。 ◆「いつも出る人が同じ」のイメージ 立民への期待は高まっているのか。東京・有楽町で街行く人に聞いた。 「実績と経験値こそ重要。古株でもいい」と話すのは京都市の女性会社員(53)だ。「枝野さんは東日本大震災の対応をした官房長官時代の姿が印象的。野田さんは首相経験があり安定感がある」としつつ、「泉さんはまだイメージが定着してなくて…」。 一方で、港区の無職女性(70)は「いつも出る人が同じ。他に人材がいないのかしら」と首をかしげる。大田区の建設業、村井恒彦さん(79)も「党内に知名度のある議員が少ない」と指摘。「党内の力関係に縛られ、誰が代表になっても変わらない気がする。自民が政治資金問題をうやむやにしている今が大事なときだが、期待はできない」と冷ややかだ。 ◆「ジェンダー平等の確立」を綱領に掲げるが…男性ばかり? 前出の市議からは「残念なのは主要候補に女性がいないこと。党が育てるための要職への登用を進めていない」との嘆きも上がる。 確かにこれまで出馬が取りざたされてきたのは、江田憲司元代表代行(68)、馬淵澄夫元国土交通相(64)を含め、おおむね60代の男性たち。これでは、27日の「こちら特報部」でも「男性ばかり」と伝えた、自民党のポスターと大差ないようにみえる。 しかし立民は「ジェンダー平等の確立」を綱領に掲げる政党のはずだ。選択的夫婦別姓の導入や、議会における「パリテ」(仏語で男女同数や性別均等の意)の実現も目指している。 ◆女性候補がついに名乗りを上げた こうした中、女性を擁立する動きがようやく見え始めた。当選1回の吉田晴美衆院議員(52)だ。同期を中心に推されたという吉田氏は26日、立候補への意欲を示し、本紙の取材に「女性の視点の議論を喚起したい。自由で闊達(かったつ)な多様性を体現する党であってほしい」などと話した。 他にも動きがある。西村智奈美代表代行(57)について「適任で、強く推したいと本人にも伝えている」と明かすのは、元首相の菅直人衆院議員。27日に「こちら特報部」の取材に応じ、「米国でも女性候補者が論戦を繰り広げている。日本はかなり遅れており、もっともっと女性が前に出て、積極的に代表選に関わってほしい」と熱く語った。 ◆出馬に高〜い壁「20人の推薦人」 ただ、期待感とは裏腹に、経験の少ない女性や若手の議員にとって、出馬の高い壁になると予想されるのが「20人の推薦人」だ。国会議員367人を抱える自民党も同じ要件で、136人の立民も同規模では苦しい。3年前の代表選でも指摘されていたはずだが、なぜ改革できなかったのか。 政治アナリストの伊藤惇夫氏は「推薦人の要件など変えるチャンスはいくらでもあったが、代表選の活性化を図り、グループ間の垣根を取り払うといった議論はみえなかった」と残念がる。 背景には、離合を繰り返してきた歴史的な経緯があるという。「旧社会党や小沢一郎氏の系統など小グループが乱立し、グループごとに思想性もあって結び付きがかなり強い。自民のようにグループ間で連携することも少なく、それぞれが砦(とりで)に閉じこもっているようで、流動的な動きが起きにくい」と分析する。 伊藤氏は、自民党総裁選には「プロレスのイベントみたいだ」と批判的だ。それでも40代の新顔や大臣経験がある複数の女性議員が立候補に意欲を示すなど、立民よりは多様に見えるという。「党の顔となるようなスターが不在なのが今の立民の姿。発信力のある人を党として育てるとともに、議員でなくても優秀な人材を外部から党要職に就けるなど、グループの垣根を越える大胆な改革が必要ではないか」と訴える。 ◆「本気で政権を取りに行く気概があるか否か」 中央大の山崎望教授(政治理論)も「口先ではジェンダー平等などと言っていても、結局往年の男性ばかりで、厳しい言い方だが、実体が伴っていない。これでは『プチ自民』に過ぎず、立民は自民を脅かす対抗軸になり得ないと判断されてしまう」と懸念する。 では、どんな代表選が望まれるか。山崎氏は「女性議員の比率や環境問題などももちろん大事だが、足元のリアルなところで、本当に自分たちの生活や暮らしを守ってくれるのか、生活に直結した現実的な話をすることも戦略のひとつではないか」と提案する。「泥くさく本気で政権を取りに行く気概があるか否か、有権者はよく見ている。いずれ来る衆院選に、リアルな形で跳ね返ってくるだろう」と見通した。 ◆デスクメモ 旧立民が少数ながら野党第1党の座を得た2017年の衆院選。政治評論家の故森田実さんは、他の野党と協調した国会運営、地方組織や方針づくりなど足場固めが必要とし「スタンドプレーはいらない」と語っていた。地道な努力を求めた森田さんの指摘は今なお通じるように思える。(恭)
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