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シャッポのすげ替えではどうにもならない 八方塞がりで再選出馬断念 絶望的な自民党の今後(上)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/359122
2024/08/15 日刊ゲンダイ
身を引くことが「党刷新」とか言いながら、これまで辞めなかった二枚舌
再選目指してあれこれ画策のあげく、やっと退陣表明(C)共同通信社
ようやく岸田首相が「退陣」を表明した。9月に行われる自民党総裁選に出馬しないという。
14日の記者会見。不出馬を決断したタイミングについて、岸田は「政治とカネをめぐる問題が発生してから、トップとしての責任のあり方について思いをめぐらしてきた」などと、あたかも以前から責任を取るつもりだったかのように語っていたが、大嘘もいいところだ。
つい最近まで、なんとか延命をはかろうと画策していたのが実態だからだ。
先週8日(木)、岸田と電話で話したという政治解説者の篠原文也氏はこう言う。
「本人はやる気満々でしたよ。もちろん、総裁選にも出馬する意向でした。党内情勢も気にしていた。とくに、地方票の動向を気にかけていましたね。地方票は国会議員票に影響しますからね。本人には、勝てる望みもあったのでしょう」
7月に訪米するなど外交に力を入れたのも、改憲に意欲をみせはじめたのも、すべて9月の総裁選で再選されるためだったのは間違いない。周囲には「あの派閥はどう動くのだろうか」「あいつは出馬するのだろうか」と、総裁選について情報収集もしていたという。
ただ、先週から強気と弱気が入り交じり、心が揺れはじめていたようだ。自民党関係者がこう言う。
「7月中は『俺が総裁選への出馬を表明したら、誰も手を挙げられないはずだ』と強気でした。実際、現職の総理総裁が再選出馬したら、支えなくてはいけない幹事長や閣僚は手を挙げづらいですからね。ところが、先週から突然『大事なのは俺の再選じゃなくて、自民党が政権を維持できるかどうかだ』と口にしはじめた。あの頃から総裁選への出馬は難しい、と考えていたのかも知れません」
楽しみにしていた中央アジアへの外遊が中止となり、気落ちしていたという話もある。
しかし、そもそも世論調査で7割以上が「首相をつづけて欲しくない」と答えているのに、それでも総裁選に再選出馬しようと考えること自体、どうかしているというものだ。
退陣表明は遅すぎたくらいである。
改造も出来ず、麻生にも切られ、「勝てないから出ない」が真相
そもそも世論は7割以上が「続けてほしくない」、惨敗予想だから「止ーめた」じゃ…(C)日刊ゲンダイ
岸田が再選出馬を断念したのは、要するに「勝てない」と判断したからだ。実際、このまま総裁選に突っ込んだら、大敗する可能性が高かった。
岸田の再選シナリオは、まず麻生派55人を率いる麻生副総裁から全面支援をとりつけ、そのうえでもう一度「岸田─麻生─茂木」の3頭体制を組むことだった。頼みの綱は麻生だった。ところが、最後まで麻生から「岸田支持」の言質を取れなかったという。
ライバルを取り込むための「内閣改造」も試みたが、実現できず、八方塞がりとなって、政権を放り投げたのが実情である。
ジャーナリストの山田惠資氏はこう言う。
「岸田首相は『総裁選に出馬しても勝てない、このままでは負ける』と判断したのだと思う。票読みすると1回目の投票で3位になる可能性もあった。岸田さん本人は、たとえ1回目の投票で2位になっても、上位2人の決選投票で1位になればいいと考えていた可能性もありますが、さすがに3位ではどうにもならない。出馬を断念するしかなかったのでしょう」
現職総理が総裁選で負けたのは、過去に1度しかない。もし、地方票をほとんど獲得できず、3位に沈んだら、岸田は政治生命を失ってしまう可能性もあった。
「総裁選で惨敗したら、岸田首相は総理総裁の座を失うだけでなく、政界での影響力を完全に失ってしまう恐れがありました。だったら、総裁選に出馬せず、退陣後も力を残した方が得策と計算したとしてもおかしくありません。実際、40人を超える岸田派をキープしていれば、この先、岸田首相はキングメーカーになる可能性があります。岸田首相は意外にしぶといですからね」(山田惠資氏=前出)
自分たちの生き残りしか考えていない自民党の浅ましさ
党改革なんてサラサラ、9割議員が自分のサバイバル(C)日刊ゲンダイ
岸田の退陣表明を受け、自民党議員はホッと胸をなで下ろしている──これが正直なところだろう。
身から出たサビとはいえ、裏金事件で自民党に対する国民の怒りは頂点に達し、4月の衆院3補欠選挙や7月の東京都議補選など地方選挙でも連敗続き。党改革を掲げて地方で車座対話を行えば、出てくるのは岸田への退陣要求。内閣支持率は2割台に低迷し、世論調査では、「9月の総裁任期満了で辞めて欲しい」が7、8割に達する。
自民党内は「表紙を替えなきゃ、選挙が戦えない」が渦巻いていた。
「今の自民党は9割の議員が自分のサバイバルしか考えていません。地元で辻立ちすれば『自民党なんて消えてしまえ』『おまえもカネを隠しているんだろう』とヤジられる。誰もが、こんな状態で秋に衆院選なんてやったらヤバイと震え上がっていました」(政治評論家・野上忠興氏)
一方で、選挙を先送りしたいばかりに「岸田再選支持」の動きも水面下で広がっていた。
自民党への逆風が強すぎるため、「新総裁ならすぐ選挙だが、岸田さんの再選なら年内の解散はない。任期満了まで1年以上ある」という岸田周辺の口車に乗っかり、「どうせなら参院選を先にやってくれ」という身勝手な話まで出ていた。
「岸田首相だって、このタイミングでの退陣表明は自身の生き残り目的の行動です。ギリギリまで引っ張って再選出馬断念に追い込まれた、菅前首相のみっともない二の舞いだけは絶対に避けたかったはずです。いずれにしても、自浄作用が働かず、国民生活は二の次、自分たちの生き残りしか考えられない自民党は、堕ちるところまで堕ちました」(野上忠興氏=前出)
議員たちのミエミエの浅ましさに自民党員も呆れかえっているんじゃないか。
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