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※紙面抜粋
※2024年7月16日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
こぶしを何度も突き上げ(C)ロイター
頬に伝わる血を拭おうともせず、こぶしを何度も突き上げるトランプ前米大統領。その後ろにはためく星条旗。支持者たちの熱狂的な「USAコール」。惨事の直後の映像だ。
13日、ペンシルベニア州で遊説中のトランプが銃撃された。複数の銃弾が発砲され、一発はトランプの右耳を「貫通」、聴衆の一人が死亡し、複数人が重傷となった。すぐにシークレットサービスが周囲を固め、退避させようとしたところ、トランプは「待て」と制し、こぶしを振り上げたのである。
暗殺は未遂に終わったが、この事件の影響は計り知れない。得体の知れない不安が広がってくる。暴力がエスカレートし、先鋭化される分断、対立。冷静な民主主義の崩壊、それによる世界の大混乱など、挙げていけばきりがない。この銃弾は世界の歴史を変えてしまうのではないか。息苦しい予感がするのである。
この暗殺未遂事件に世界は驚愕したが、その直後、再び、世界を震撼させたのは共和党のJ・D・バンス上院議員のX投稿だ。トランプを批判するバイデン大統領の言動が「暗殺未遂に直結した」と書き込み、マイク・コリンズ下院議員は「暗殺を扇動した容疑で直ちにバイデンを訴追すべきだ」と書いた。
バンス上院議員はトランプが勝った場合の副大統領候補である。そんな重要人物が銃撃事件を“利用”し、政敵への敵意を剥き出しにして、扇動する。もはや、マトモな神経とは思えないが、これが今の米国社会なのである。
かつてないほど揺らいでいる米国の民主主義
ボーン・上田記念国際記者賞受賞の国際ジャーナリスト、春名幹男氏はこう言った。
「トーマス・マシュー・クルックス容疑者は共和党支持者だったという州記録があるそうです。でも、そうした事実関係など関係なく、分断をあおり、対立を先鋭化させていく。それが今の米国社会で、その病はあまりにも深刻です。しかし、その原因は何かといえば、トランプ前政権時代の対立をあおる政治であり、大統領選の敗北を認めず、連邦議事堂占拠を扇動し、犠牲者を出したトランプ氏自身にある。その反省がないうえに、連邦最高裁は今月、この占拠事件でのトランプ大統領の刑事責任が公務であれば免責されるとの判断を示した。司法までおかしくなっていて、民主主義は本当に危機的状況にある。そんなさなかで、今度の暗殺未遂事件が起きたわけで、病がますます、深刻化していくのは避けられないと思います」
ジャーナリストの横田増生氏は「『トランプ信者』潜入一年」(小学館)の中で、2021年1月6日のトランプ信者たちの国会暴動の様子を<私は、これほど剥き出しの憎悪と暴力がぶつかり合うのを、これまで見たことがなかった>と書き、<これは現職大統領が企てたクーデターなのだ>と断じた。
こうなったのは、トランプが常に敵と味方を選別し、批判は「フェイクニュース」と決めつけ、敵との闘いをあおってきたからだ。
暴力を正当化する世論が急騰
トランプ勝利で歓ぶ筆頭(ロ朝首脳会談) (C)ロイター/Sputnik
この事件以降、米国の民主主義は音を立てて崩れていく。それを端的に示しているのがシカゴ大が行っている暴力と政治に関する世論調査だ。直近の調査(2024年6月、対象2000人以上)によると、トランプの再選を阻止するためなら暴力が正当化されると考えている人が10%もいたという。一方、トランプ再選のためならば暴力の行使が認められると答えた人も6.9%いた。
事件の背景にはかくも大きな病巣がある。2021年の暴力の当事者、加害者であるトランプが今回は被害者に転じた。こぶしを突き上げ、暴力に屈しないヒーローであることをアピール、それがおそらく、大統領選にはプラスになった。米テスラのイーロン・マスクCEOなどは「このようなタフな候補者はセオドア・ルーズベルト以来だ」と絶賛しているほどだ。
かくて、トランプはますます先鋭化し、相手をなじり、分断をあおっていくのだろう。そのタフネスぶりが勝利をもたらすという構図である。そこに冷静な政策論争もなければ、討論もない。そんな狂気を民主主義の象徴、米国が演じている。それがハッキリ見えるだけに背筋が寒くなってくるのである。
この銃撃事件で「もしトラ」が「ほぼトラ」に
今度の暗殺未遂は今後大統領選や世界情勢にどんな影響を及ぼすのか。まず、大統領選において、トランプが不利になることはないだろう。
「共和党は15日からウィスコンシン州で党大会を開く。ここで正式な公認候補を決めることになりますが、大会がトランプ一色になることは間違いない。一方、バイデン大統領は事件後のステートメントで連帯を訴えていましたが、ここまで分断が深まると空疎に聞こえる。やられたトランプ陣営は一致団結で挑んでくる。米国では無党派層は少ないですが、事件でトランプ陣営は上積みも期待できる。“もしトラ”は“ほぼトラ”になったとみています」(明大講師で現代ビジネス編集次長の近藤大介氏)
前出の春名氏も冷静にこう見る。
「この事件でトランプ人気が急騰することはありませんが、すでにバイデン大統領は相次ぐ失言でヨタヨタです。民主党は候補者を差し替えない限り、直近の世論調査でも数ポイントリードしているトランプ氏がそのままという展開になるでしょう」
民主党はこれまでトランプの「政治的暴力性」を批判してきた。トランプが被害者になったことで、その論法が使いにくくなった。
こぶしを突き上げ、強さをアピールしたトランプに対し、バイデンの老いぼれぶりも際立ってしまう。トランプ共和党は今後も、バイデンを「史上最低呼ばわり」して、分断をあおる。そうなれば、反トランプ陣営も先鋭化していく。こうして米国社会の対立、分断が進み、最終的にトランプが勝てば、世界は混乱の極みとなるかもしれない。
トランプが勝てば金正恩とプーチンは大喜び
別にバイデンを応援する気はないが、トランプが勝って喜ぶ筆頭はロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩総書記だ。
トランプが勝てば、ウクライナの軍事支援を止めるかもしれないし、NATO加盟国との共闘も「カネ次第」になるからだ。
「金正恩も大喜びするでしょう。金日成、金正日は米国大統領と会談していないのに対し、金正恩は3度もトランプ大統領と会談している。米国が北朝鮮を核保有国として認めてくれることはないにせよ、核開発に寛容になれば、ロシアとも米国とも良好な関係を築ける。その一方で、困るのが習近平国家主席の中国です。今度の銃撃事件で中国外務省はお見舞いのメッセージを出した。トランプ前大統領は一民間人なのに異例のことです。それだけ、予測不能のトランプ政権を警戒している証拠です」(近藤大介氏=前出)
米中が緊迫すれば、日本も巻き込まれるのは必至だが、もちろん、岸田首相にはトランプとのパイプはない。国賓級待遇で訪米できたのは宏池会と民主党の人脈で、岸田はバイデンに思いっきり、媚びてきた分、それがマイナスになって跳ね返ってくる。「捨てないで」とトランプに言い寄れば、法外な軍事費をむしり取られるのがオチだ。そこで、先に訪米、トランプと会っている麻生副総裁あたりがしゃしゃり出てくれば、ますます日本の政治は時代遅れの遺物と化していく。
トランプの右耳を「貫通」した銃弾は、かくも世界を変えるのか。幸い未遂で終わっても、バイデンの老醜も相まって、歴史の暗転は避けられない。
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