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慰霊の日と日米地位協定
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2024年6月23日 植草一秀の『知られざる真実』
6月23日は「慰霊の日」。
1945年6月23日。
沖縄での旧日本軍の組織的な戦闘が終わったとされる日。
太平洋戦争末期の沖縄戦では、住民を巻き込んだ激しい地上戦で20万人を超える人が亡くなった。
県民の4人に1人が命を失った。
その6月23日を沖縄県が「慰霊の日」と定め、戦没者を追悼し、平和への願いを新たにする一日としている。
最後の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園では、6月23日正午前から戦没者追悼式が行われた。
この6月23日には別の意味もある。
1960年6月23日に、
「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」
が発効した。
いわゆる「日米地位協定」と呼ばれるもの。
日米地位協定により米軍は基地の「排他的管理権」を有している。
「米軍特権」、すなわち日本における「治外法権」を定めた協定である。
基地の使い方は米軍が勝手に決め、日本側に発言権はない。
日本の空に何を飛ばそうが日本政府は事実上、口を挟めない。
日本を米国の植民地状態に置く根拠となっているのが日米地位協定。
その発効日を「沖縄慰霊の日」に定めたのである。
1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効した。
敗戦日本が独立を回復した日とされる。
日本政府が国際社会に復帰を果たした日とされる。
第2次安倍内閣が発足した翌年、2013年4月28日に、東京の憲政記念館において「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が挙行され、「天皇陛下万歳」が三唱された。
安倍首相は4月28日を「主権回復の日」に定めた。
しかし、日本は本当に独立を回復したと言えるのか。
日本に降伏を迫った最終文書である『ポツダム宣言』には次の規定が設けられた。
十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ
日本が独立を回復した時点で連合国の占領軍が日本から撤収することが明記された。
1952年4月28日に発効したサンフランシスコ講和条約にも次の条文が置かれた。
第六条
(a) 連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。
この条項が履行され、日本が完全な独立を回復したのであれば「主権回復の日」を定める意味がある。
しかし、サンフランシスコ講和条約発効にはからくりがあった。
日本の独立を封殺する二つの重大な取り決めが同時に盛り込まれたのである。
一つは上記第六条の後段。
「但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」
但し書きが付記され、連合国と日本国が協定を締結した場合には外国軍隊の日本駐留が妨げられないとされた。
もう一つは第三条の規定。
第三条
日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。
このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。
つまり、沖縄を含む南西諸島、南方諸島を日本から切り棄てることで日本は主権を回復した。
沖縄にとって4月28日は「主権回復の日」ではなく、日本から切り棄てられた「屈辱の日」である。
そして、「慰霊の日」にあたる6月23日に米軍による治外法権を定めた「日米地位協定」が発効した。
慰霊の日戦没者追悼式に岸田首相が出席したが、日本政府の沖縄に対する欺瞞を見逃すことはできない。
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