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地方自治法改正案が成立すれば…ヒトラー独裁を招いたスキームがなぜ今?
二極化・格差社会の真相
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/341774
2024/06/18 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
必要性も曖昧なまま可決。中央政府の権力拡大、指示乱発、「黙らせる力」、地方の「公平」が崩壊する(岸田首相=J MPA)
憲法の「無意味化」に歯止めがかからない。安倍政権下で特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、共謀罪の新設等々、岸田政権でも安保3文書による専守防衛の放棄、セキュリティークリアランス制度創設……と続いてきたが、今度は自治体に対する国の「指示権」を拡大するという。
地方自治法改正案。すでに衆院を通過し、現在は参院で審議中だ。
成立すれば、政府は「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が発生するおそれがあると判断すれば、自治体に何でも「指示」できるようになる。憲法の保障する「地方自治の本旨」とも対立しかねない強権だ。
現行法が災害対策基本法など個別法の規定がある場合にしか認めていない所以。戦前来の国と地方の「上下・主従」関係は、2000年に施行された地方分権一括法によって、「対等・協力」に改められてもいた。
にもかかわらず──。
政府・与党は、これを根底から改めたい意向だ。目指されているのは中央集権国家の再興ばかりでもないのではないか。
今回の改正法案は、かねて自民党が憲法改正案の柱の一つとする「緊急事態条項」と酷似している。一朝有事の際には内閣総理大臣に、ということは政府に絶対権力を付与。第1次世界大戦後の世界で“最も民主的”と謳われたワイマール憲法に規定があり、図らずもヒトラーの独裁を導く結果を招いたスキームだ。それがなぜ、今?
もともと9条と対の形で提案された条項だから、当然、ウイルス禍や大規模災害だけに備えるものではあり得ない。主たる目的は戦争の準備と断じて差し支えないだろう。
実際、政府は目下、全国の主要な空港や港湾に自衛隊の使用を認めさせる計画を進めている。晴れて改正地方自治法が成立すれば、地元自治体への「指示」一本で片付いてしまう理屈だ。
一方で、では改正法案に反対する勢力は信用できるのか? 筆者は前々回の本欄で、同性婚を法制化したい識者らが「憲法の変遷」なる学説を駆使し、婚姻の要件を「両性の合意」に求めた憲法24条を勝手に「当事者」と読み替える解釈改憲を始めた実態を指摘した。
右も左も、どいつもこいつも憲法の条文軽視が酷すぎる。せっかくの平和憲法だが、完全に「無意味化」されてしまうよりは、堂々とした手続きを踏まえた改正論議に踏み切ったほうがマシだと言わざるを得ない時期が来るのも、そう遠い未来ではないのかもしれない。
斎藤貴男 ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。
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