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女帝焦らし作戦の吉凶 国の行方を決める天王山 空前の選挙戦が始まる(上)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/341569
2024/06/13 日刊ゲンダイ
焦らして焦らして公務で選挙運動の禁じ手
取材に応じたのはたったの4問だけ(都知事選に出馬表明した小池百合子都知事)/(C)日刊ゲンダイ
20日の告示まで1週間に迫った東京都知事選(7月7日投開票)。3選を狙うのは分かり切っていたのに、「都政に邁進しております」などとトボけてきた小池百合子知事(71)がようやく立候補を表明した。12日が最終日だった都議会定例会で「2期8年、東京に確実な変化をもたらしたが、課題が山積している。東京大改革3.0を進める覚悟を持って出馬を決意いたしました」と発言。実績はほぼゼロにもかかわらず、相変わらず口達者だ。
ともあれ、女帝の参戦で夏の首都決戦の立候補者が出そろったわけだが、現職らしく横綱相撲をするかと思えば、さにあらず。ひと言で言うと、せこいのだ。
当初は定例会初日の先月29日に出馬表明すると水面下でアナウンスされていた。前日には都内の首長52人が出馬を要請。本人は否定しているものの、小池側の猛プッシュに押されて「3選待望論」の演出に加担したのは周知の事実だ。スッタモンダあって結局、2週間も先延ばし。この間、マスコミや世論の注目を最大限引きながら精を出していたのは、公務を利用した票集めだった。公職選挙法が禁じている告示前の「事前運動」のニオイがぷんぷんする。
都内の保育園を視察し、小池に全く関心を示さないキッズはお構いなしに「チルドレンファースト」をアピール。世界禁煙デーに合わせた東京スカイツリーの点灯式には、コロナ禍で顔が売れた都医師会の尾崎治夫会長らと出席し、尾崎から「医療関係団体すべて、あるいは介護の団体、小池知事に引き続きやってもらいたいと、皆さんそう思っていると思う」とお墨付きを引き出した。
極めつきはバラマキである。「物価高騰対策臨時くらし応援事業」と銘打ち、住民税非課税など約190万世帯に1万円分の商品券や電子ポイントを配布。14日以降、対象世帯に順次通知する手はずになっている。そろそろ円安物価高の波がまた来るとはいえ、露骨な選挙買収だ。圧勝のためには手段を選ばない。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「都知事選は小池氏と、立憲民主党を離党した蓮舫参院議員(56)による事実上の一騎打ち。与野党対決の構図ですが、互いに支援組織を隠し、無党派層の票積み上げを狙っている。それが吉と出るか凶と出るか。1100万人超の有権者からは緑のタヌキと赤いキツネの化かし合いに見えやしないか」
独自候補の擁立を断念した日本維新の会も小池支援に乗り出す可能性が濃厚。空前の選挙戦の火蓋は切られた。
懲りない学歴詐称、今後の展開
都知事就任以前はエジプトのシン大統領と会談(代表撮影・共同)
今回の都知事選の焦点のひとつが、くすぶり続ける小池の学歴詐称疑惑だ。注目は従来通り、小池が選挙公報に「カイロ大学卒業」と記すかどうかである。
元側近の小島敏郎氏が「文芸春秋」(5月号)で「学歴詐称工作に加担してしまった」と懺悔告白。再燃した疑惑に、小池は「私自身の卒業というファクトがすでにある」の一点張りで、学歴詐称工作については「鮮明に覚えていない」と、はぐらかしてばかりだ。ボロを出さないように具体的な言及を避けているようにしか見えない。
ただ、裏でどんな経緯があったにせよ、大学側と駐日エジプト大使館は小池のカイロ大卒を認めてはいる。その事実を盾に今回も「正面突破」に踏み切るとみられるが、懲りずに「カイロ大卒」と明示すれば、小島氏は公職選挙法の虚偽事項公表罪にあたるとして、刑事告発する覚悟を決めている。
本紙の取材にも、その時に備え「小池さんが学歴詐称工作に関わった証拠を全て保全している」と語っていた。
「4年前に駐日エジプト大使館のSNSを通じて発出した『カイロ大声明』により、学歴詐称疑惑はいったん鎮火しましたが、その声明には日本のジャーナリストを威嚇する文言が出てきます。エジプトのシシ政権は軍部独裁で言論弾圧は日常茶飯事。そんな国から元側近の告白通り、一種の脅迫文を出させて前回の都知事選を乗り切ったのなら、小池知事は日本の首都のガバナーを決める選挙に軍事独裁国の政治介入を呼び込んだ疑いすら生じます。この国の民主主義の根幹を揺るがす事態であり、東京のトップが軍事独裁国に首根っこを掴まれていれば外交・安全保障上も危険が伴います」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
カイロ大声明の発表以降に計上された都のエジプト関連予算は少なくとも計9700万円。1億円近い都民の血税の使い道も、今回の争点にすべきだ。
女の戦い、目下の下馬評
小池都知事出馬表明の日に、蓮舫氏は離党届を提出(C)日刊ゲンダイ
「緑のタヌキVS赤いキツネ」「学歴詐称VS二重国籍」──。蓮舫出馬で、小池との女の戦いが注目されて以降、SNSを中心に騒がれていたフレーズだ。2人はともにキャスター出身。メディア露出で上げた知名度を政治活動に利用してきた。
数多い共通項は、対決構図が画になりやすい。もっとも、小池と違って蓮舫の二重国籍問題はすでにクリアされている。
3期目を目指す小池の戦い方はこれまでとはガラリと変わった。8年前は自民党東京都連を「ブラックボックス」と批判して敵対、4年前は無党派票で圧勝した。しかし、直近の衆院東京15区補欠選挙や東京・目黒区長選などで支援した候補が落選。神通力に陰りが見える中、今回は自民・公明の組織頼みで戦う。ステルス支援の形を取るが「小池のバックに自公」は有権者にバレバレだ。
一方の蓮舫。立憲や共産党、社民党の支援を受けるが、12日立憲に離党届を提出し、無所属になった。「反自民、非小池都政」の主張は明確。12日も選挙戦では、有権者が自民の姿をどうみているかも問いたい、と語っていた。「自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットする」は、裏金事件に怒り心頭の一定の有権者に響いているのは間違いない。
目下の情勢について、ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。
「小池氏は自公と都ファ、蓮舫氏は立憲、共産、社民が支援する。ある政党が細かく情勢調査をやっていて、当初、組織力と現職の強みがある小池氏が、蓮舫氏を10ポイントほどリードしているとのことでした。ところが、10日に自民党都連の萩生田会長が報道陣の取材に『小池氏を支援する』と明言したら、その後の情勢調査で小池氏と蓮舫氏の差が半分の5ポイント程度まで一気に縮まったそうです。これで分かるように、自民色を消せるかどうかが小池氏の戦いのポイントでしょう。蓮舫氏にも立憲と共産が組むことへの多少の反発はある。組織票はありがたい存在ですが、小池氏も蓮舫氏も、政党支持がどう出るのか、ネックになるのかどうかが、勝敗の行方を左右しそうです」
萩生田の嫌われっぷりはハンパない。
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