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元側近が垣間見た小池都知事の素顔「トップに立つと『専制君主』の地が出てしまう」 注目の人 直撃インタビュー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/341581
2024/06/13 日刊ゲンダイ
小島敏郎(弁護士)
弁護士の小島敏郎氏(C)日刊ゲンダイ
東京都知事選(来月7日投開票)は告示(20日)まであと1週間。じらし戦術を展開した現職の小池百合子知事が12日、ようやく出馬を表明した。2期8年の評価が問われる中、学歴詐称疑惑を再燃させたこの人に、劇場型都政の真相を聞く。元側近が垣間見た女帝のウラの顔とは──。
◇ ◇ ◇
──環境省の局長時代から小池知事に仕えた立場から見て、彼女にどのような印象をお持ちですか。
ひと言で表せば「優れた女優」です。その時々の課題に合わせ、一生懸命に取り組んでいるようにみせるのは本当にうまい。本心は全く違っても、心の底から真剣にやっているように振る舞える。その演技力、自己プロデュース能力は優れています。しかし、それと、政策を深く理解する能力は、また別です。
信念がないから政策は人気取りの手段
──小泉政権の環境相時代は「クールビズ」で、メディアの注目を集めました。
「カイロ大卒、しかも首席」で、メディアに売り込み、世に出た人ですから。メディアを利用することは得意です。小池さんにとって、環境政策は自己アピールに使える道具という認識はあったと思います。ただ、小泉さんには郵政民営化に懸ける信念がありましたけど、小池さんには政治家としての信念を感じたことはありません。それが「ポピュリスト」である彼女の強みです。
──といいますと?
信念がないからこそ、ある考えに固執することなく、融通無碍に動ける。彼女にとって政策はその時々の大衆の支持を得て、権力の階段を上っていくための手段です。小池さんは「原発廃止」を政策に掲げていたことがあるのです。覚えていますか。
──2017年衆院選で小池知事が結成した「希望の党」は「2030年までの原発ゼロ」を公約に掲げていました。
小池さんに頼まれ、「2030年まで」に段階的廃止の案を取りまとめて、公約に書き込みました。これは「原発廃止」を訴える小泉さんの支持を得るためでした。今は全く原発廃止の話はしませんが、小池さんは信念がなくても、原発廃止さえ政策に掲げることができるのです。
──良心の呵責はないのでしょうか。
ないでしょうね。その時の風を読んで、躊躇なく、何でもできる人です。でも、信念を持たない、融通無碍な政治家というのも珍しい。信念に殉ずるというのは、小池さんに似合わないし、理解できないでしょう。
──それでも結局、小泉元首相は希望の党に関与せず、彼女自身の「排除」発言が災いして衆院選は大敗しました。
当時は小池さんもひどく沈んでいました。「これから、どうしよう」と。
──意外と人間らしい一面もあるんですね。
あの状況なら誰だって落ち込みますよ。小池さんは結構、感情の起伏がある。ヘコむときはヘコむ。しっかり後で立ち直りますけどね。当時は排除発言や安保法制の容認などで右寄りの印象がつき過ぎたのが選挙の敗因でした。だから、立憲民主党が野党第1党になったのです。そこで小池さんに「政策を真ん中に戻さなければいけない」「少し左に寄って、イメージを真ん中に戻そう」と、LGBT差別を禁止し、ヘイトスピーチを規制する都条例を助言しました。小池さんは18年にその条例を提案し、成立させました。
──全国初のLGBTに焦点を当てた条例成立の裏で、そのような経緯があったとは驚きです。
小池さんが、保守系政治団体の「日本会議」など復古的な家族観を重んじる信念を持っていたら、この条例は絶対にできませんでした。
──小池知事も国会議員時代は「日本会議」の国会議員懇談会の副幹事長を務めていました。
それは彼女にとって重要ではありません。支持を回復するためなら、LGBTにシンパシーがなくても、LGBTに寄り添っているように振る舞うことができる。だから、条例ができたのです。
──小島さんは都の特別顧問として、築地市場の豊洲移転問題を担当しました。「築地は守る、豊洲は生かす」というフレーズを発案したのも?
それは私ではなく、顧問の人たちの議論を聞いて、小池さんが考えたものです。
──当初は「築地を市場機能を有する食のテーマパークにする」とし、仲卸の人々が望めば帰れるようなことを言いながら、いつの間にか巨大スタジアムと商業施設を建設する計画に変貌しました。
築地市場跡地の再開発は、徹頭徹尾、プロセスがブラックボックスです。都から数年度にわたり、再開発に関する検討業務を委託されたのは「日建設計」。競争入札を行わず特定業者を指定する特命随意契約でした。その検討プロセスは、再開発事業の募集要項にどう結びついたのか、情報開示を求めても肝心な部分は黒塗りです。つまり、プロセスの全容を知るのは日建設計のみ。事業募集に関して優越的地位にあるのに、事業者に決まった三井不動産を中心とした11社の企業グループには、日建設計も参画しています。利益相反ですよ。しかも、スーパーゼネコン5社のうち4社が加わり、公正な競争原理が働いたとも言えません。
再開発にメディアを組み込み、黙らせる
特別顧問として小池都政を支えた(小池都知事と)/(C)日刊ゲンダイ
問題は今の新聞社、テレビ局が不動産屋になっていること。メディアを黙らせるために、昔は広告を通じてコントロールしようとしました。今は再開発利権に組み込めばいい。神宮外苑の再開発も同様です。「新秩父宮ラグビー場」の整備・運営事業には読売新聞、日本テレビ、フジサンケイグループのニッポン放送が関わっています。都庁記者クラブを構成するのは彼らであり、小池さんも新たなメディア統制の手段を当然、熟知しています。
──どうりで大手メディアは小池知事をほとんど批判しないわけです。
都民ファーストの会も、小池さんにくっついているだけ。自民党でも、総理を批判するときは批判します。しかし、彼女の周囲には苦言を呈するどころか、対等に話せる人すら、もはや存在しません。彼女が大臣ならば上には総理がいます。その緊張感が勝手気ままを許しませんが、都知事の上には誰もいません。だから、彼女の「地」が出てしまう。
──「地」とは?
専制君主の素顔です。当初は都庁官僚と都議会のドンだけで都の政策を決める、都民置き去りの「ドン政治」からの脱却を訴えていました。ドンには勝ちましたが、結局、ドンの権力が小池さんにスライドしただけでした。戦う敵がいなくなると、彼女は専制君主になってしまう。そうでなければ「排除」なんて言葉は、たやすく口に出てきません。
──あの発言が飛び出した会見には私も参加。当時は「安倍1強」体制を脅かし、「初の女性総理誕生か」と注目を浴びていた。小池知事も今まで見たこともないほど異様に高揚していました。
もう政権を取ったも同然だという雰囲気でしたね。当時の民進党から希望の党に合併後、誰を受け入れるか。その選別は選挙に勝ってから内部で調整すれば良かったのに、「総理の座が見えてきた」という気持ちから、「地」が出てしまったのでしょう。政党であっても、小池さんをトップの座に就けてはいけません。
──16年9月、豊洲市場地下の「盛り土なし」問題が発覚した際、小池知事は「全都庁職員を粛正したい」と強い口調で語っていました。
「排除」も「粛正」も普通はなかなか出てこない言葉です。希望の党が勝利し、小池さんが総理になっていたら国民は悲惨だったでしょう。てっぺんに立てば、間違いなく専制君主の地が出ます。
3選を果たせば次は歴代最長を目指す
──そんな彼女に小島さんも味方したわけです。
そうですね。反省しなければなりません。今、強調したいことは、小池さんを知事や総理大臣のようなトップにしてはいけないということです。抑制の利かない専制君主、「女帝」になってしまうからです。小池さんは今年で72歳。歴代都知事の退任時の最高齢は鈴木俊一氏の84歳で、いまだ5選を成し遂げた都知事はいない。今回3選を果たせば、彼女は最長記録を視野に入れてくるでしょう。それは都民にとっても、都庁にとっても、悲劇です。
(聞き手=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)
▽小島敏郎(こじま・としろう) 1949年、岐阜県生まれ。東大法学部を卒業後、環境庁入庁。地球環境局長、地球環境審議官を歴任し、2008年退官。青山学院大学国際政治経済学部教授などを経て、16年、小池都知事のブレーンとして東京都特別顧問に就任。17〜21年は都民ファーストの会事務総長を務めた。現在、早稲田リーガルコモンズ法律事務所顧問・弁護士。
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