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※紙面抜粋
※2024年5月29日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
裏金化、私物化、税優遇控除まで。救い難い自民党のモラル(岸田首相、裏金を寄付で税控除の菅家一郎衆院議員=右)/(C)日刊ゲンダイ
どこまで腐り切った連中なのか。自民党の裏金議員が、裏金を使って税の優遇まで受けていたことが分かった。毎日新聞の1面トップ記事を読んだ読者は、怒りに震えたに違いない。「安倍派裏金で税優遇疑い」「稲田氏も税優遇疑い」と、27、28日と2日つづけて報じている。
裏金を原資にして、税の優遇を受けていたのは、自民党の菅家一郎衆院議員だ。2018〜21年、安倍派からキックバックされた裏金1289万円を、自身が代表をつとめる自民党の政党支部「福島県第4選挙区支部」に寄付することで、約148万円の税控除を受けていた。
さらに、196万円の裏金をつくっていた稲田朋美衆院議員も、自身が代表をつとめる「福井県第1選挙区支部」に202万円を寄付していた。
租税特別措置法では、個人が政党や政党支部などに寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、あるいは、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれる。たとえば、500万円を寄付した者は、約3割の150万円が納めた税金の中から戻ってくる仕組みだ。1995年1月、個人献金を促し、国民の政治参加を推し進めるために導入された。寄付金の3割というのは、世界でも有数の高い税額控除だ。
しかし、菅家の寄付は、特別措置法の趣旨とは程遠く、自分が自分に寄付して税金を取り戻す──という寄付金控除を悪用したものだ。脱税に近い。しかも、寄付した原資は裏金である。こんなことが許されるのか。
そのうえ、会見した菅家は、税還付について「なんら法に違反していない」と開き直り、1289万円という多額の裏金をつくっていたことについても「派閥が『記載するな』という違法な会計処理をしてきたことが問題だ」と言い放つ始末だ。
「はたして、自民党議員にはモラルがあるのでしょうか。裏金をつくっていただけでも問題なのに、裏金を使って税の還付まで受けていたとは。国民は怒り狂っているはずです。よくも、寄付金控除を利用してまで私腹を肥やしたものです。いったい、自民党議員は、なにがやりたくて政治家になったのでしょうか。甘い汁を吸うために政治家になったのが大半なのではないか。80人以上が裏金づくりに手を染め、6億円以上もの裏金をつくっていたことを考えると、そうとしか思えません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
「抜け道」を温存させた自民
稲田朋美幹事長代理の裏金は196万円(C)日刊ゲンダイ
政治家が自らの政党支部に寄付し、その還付申告によって税金を取り戻す──租税特別措置法の“抜け道”を利用した「錬金術」は、以前、問題になったものだ。
2017年には、自民党の高市早苗総務相(当時)が、自ら代表をつとめる「自民党奈良県第2選挙区支部」に寄付し、所得税の還付を不当に受けたとして、市民から詐欺容疑で奈良地検に刑事告発されている(結果は不起訴)。
もちろん租税特別措置法も、政治家の不正利用を防ぐために「寄付をした者に特別な利益が及ぶ」場合には優遇措置は受けられないと規定している。政治家が互いの後援会に寄付し合う場合などは、寄付金控除を申請できない。
しかし、なぜか政党支部に寄付したケースに限っては、寄付金控除の対象にされているのだ。還付を受ける唯一の抜け道が政党支部への寄付となっている。
さすがに野党サイドからは“抜け道”を塞ぐべきだとの声があがっていたが、自民党が法改正を拒否してきたため、抜け道が温存されたままになっていた。案の定、自民党議員は、抜け道を悪用していた形だ。こうなると、菅家のように、裏金を原資にして寄付金控除を悪用していた議員が、他にいてもおかしくない。
岸田首相が「火の玉」になると宣言しながら、自民党が裏金事件の全容解明に後ろ向きなのも、自民党議員の「税逃れ」に問題が発展していくことを恐れているからなのではないか。「不都合な真実」が表沙汰になるのはヤバイと考えているのではないか。実際、裏金議員の寄付金控除の悪用が次々に発覚したら、国民の怒りがさらに大きくなるのは間違いない。
「野党も大手メディアも、約80人の裏金議員が寄付金控除を利用していたのかどうか、ひとり残らず徹底的に調べるべきです。本来、国会議員は、法律や制度に穴があったら、新しく法律や制度をつくるのが仕事のはずです。そのための立法府でしょう。なのに自民党議員は、租税特別措置法に穴があることを知りながら、これは好都合だと放置し、法の穴を利用して自分たちの利益をはかっていたのだから酷すぎます。法の穴を利用した議員は、立法府から去るべきです」(五十嵐仁氏=前出)
「カネがかかる」の大嘘
一連の裏金事件でよく分かったのは、自民党議員は3日やったらやめられない、ボロい商売だということだ。
利益率80%の政治資金パーティーを頻繁に開き、裏金はつくり放題。そのうえ、自身の政党支部に寄付すれば、税金まで還付される。なるほど、これでは世襲議員が絶えないはずである。
そもそも、自民党議員は「政治にはカネがかかる」などと、もっともらしいことを口にしているが、「政治にカネがかかる」なんて大嘘である。カネがかかるのは、高級レストランでの美食三昧など、ぜいたくな暮らしをしているからだ。1542万円の裏金をつくっていた世耕弘成参院議員は、政治資金でドンペリをバンバン買っていた。バカな使い方をすれば、カネがかかるのは当然である。
国会議員には相当な国費も使われている。公設秘書3人を国費で雇うことができる。領収書のいらない「調査研究広報滞在費」も月額100万円入る。さらに「立法事務費」として月額65万円が支給される。JRパス・航空券の無料クーポン券ももらえる。なにより、議員歳費は年間2100万円である。これだけ恵まれていれば、ムリな金集めなど必要ないのではないか。
それでも、自民党議員は「政治にはカネがかかる」と嘯いているのだから、話にならない。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「世論調査を見るかぎり、国民の“自民離れ”は、そう簡単に止まりそうにありません。4月の衆院3補選に敗北しただけでなく、各地の地方選挙も負けつづけている。いかに自民党の裏金事件と、その後の対応に対し、国民の不信と怒りが強いかということでしょう。なのに自民党は、この期に及んでも、批判の強い『政策活動費』と『政治資金パーティー』を、ほぼ現状のまま維持しようとしている。自分たちにとって使い勝手のいいカネは絶対に手放そうとしない。もはや、国民がなにを要求しているのかさえ分からなくなっているのでしょう。そうしたタイミングで、自民党の裏金議員が、裏金を原資にして税の優遇を受けていたことが発覚した。もう、国民の我慢も限界に達していると思います」
自民党は自滅に向かっているのではないか。この政党のカネとモラルは救いがたい。
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