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※紙面抜粋
※2024年5月21日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
ノラリクラリ…(岸田首相=衆院予算委員会、昨20日)/(C)日刊ゲンダイ
さて、岸田首相はいつまで涼しい顔でいられることやら……。
自民党派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法の改正は、議員立法で自民党案と立憲民主党・国民民主党案が出揃い、日本維新の会も提出する方向。22日に衆院の政治改革特別委員会で審議入りすることが決まった。
「なんちゃって改革」の自民がどんな詭弁答弁を繰り出すのか、けだし見ものだが、これに先立ち、きのう、衆院予算委員会の集中審議で前哨戦が繰り広げられた。
岸田は相変わらずのノラリクラリ。自民案について、「実効性のある再発防止策を条文の形で示すことができた」「透明性向上が図られ、国民の疑念払拭に資する制度だ」とエラソーだったが、法案の中身を見れば、透明性や疑念払拭にはほど遠いシロモノなのは明らか。むしろ、これまで通りに裏金を温存したい意図が透けて見える。「薄っぺらい改革」と野党は集中砲火だった。
自民案では、パーティー券購入者の公開基準額について、現行の1回当たり20万円超を「10万円超」にしただけ。立憲の「パーティー開催の禁止」はおろか、公明党の主張する通常の寄付と同等の「5万円超」にすら追いつかない。
「基準額を下げ過ぎれば、公開を嫌がる企業や団体がパーティー券購入をためらい、資金集めに悪影響が出かねない」と屁理屈をこねているが、「おいおい、相手側のせいかよ」とツッコミたくなる。パー券収入を自由に使える裏金にできなくなるのが嫌なのだろう。
政策活動費の使途についても、自民案は「選挙関係費」や「調査研究費」といった曖昧なくくりでお茶を濁している。
予算委で維新の議員から、詳細な使途がわかる領収書の開示を要求されると、岸田は「個人のプライバシーや企業の営業秘密」を理由に抵抗した。自民党では、選挙でバラまける「掴み金」こそ執行部の力の源泉。何がプライバシーだ。何が営業秘密だ。人のせいにするのもいい加減にして欲しい。
ま、昨年12月に岸田が「火の玉になる」と宣言したものの、ここまで5カ月、「線香花火か、燃えカスか」と言いたくなるようなショボさだ。裏金の実態解明もせず、喉元過ぎればで反省ゼロ。あまりに酷すぎて付ける薬がない。
世論の不信感は根強い
国民もすっかり自民党にはサジを投げた。週末に実施された最新の世論調査でクッキリだ。
規正法改正に向けた自民党の対応や自民案について、「評価しない」が毎日新聞で68%、読売新聞で79%に上った。それは自民党支持層でも顕著で、読売によれば、64%もが「評価しない」と答えている。
政策活動費については「公開すべきだ」が92%に達し、自民支持層でも約8割、公明支持層では約9割に上る。企業・団体献金も禁止に「賛成」が54%で、自民支持層でも「賛成」が4割と「反対」の3割強を上回ったという(いずれも毎日調査)。
極め付きが、規正法改正が「政治とカネ」の問題解決につながると思うか、という質問への回答だ。「思わない」が70%、「思う」が22%となり、自民支持層でも「思わない」が58%と半数を超えた(読売調査)。
国民はトコトン怒っているのである。
明大教授の井田正道氏(計量政治学)はこう言う。
「裏金づくりを長年続けてきた自民党に対し、世論はまず、その責任の取り方に不満を抱いている。離党勧告や役職停止の処分が行われましたが、議員辞職ではなく、政治家の身分を失うわけでもない。党首や幹事長が役職辞任するならまだインパクトはありましたがね。そして世論は、規正法改正の自民案の不十分さにも怒っている。改正したって、どうせ抜け道をつくって同じことを繰り返すのだろう、という猜疑心があるのです。政治家への信頼が地に落ちているのでしょう。衆院補選で保守王国・島根の自民が敗れた衝撃を見ても、世論の自民党への不信感は、かなり根深いものがあります」
「自民はもうイヤ」腐敗政党の自業自得
痛い失言(上川陽子外相)/(C)日刊ゲンダイ
補選3敗に続く与野党対決の選挙が、今度の日曜(26日)投開票の静岡県知事選だ。
自民党は元副知事を推薦しているものの、党本部から幹部が応援に入ることはほとんどなく、「オール静岡」の掛け声の下、「政党色」を消す形で戦っている。「自民」を前面に出せないとは、政権政党が情けない限りだが、党本部が推薦している以上、地方選挙とはいえ結果は少なからず岸田の政権運営に影響する。
ただでさえ静岡では、地元選出の“不祥事トリオ”が自民推薦候補の足を引っ張っている。組織的に裏金をつくっていた安倍派の座長だった塩谷立元文科相。「パパ活不倫」発覚で議員辞職した宮沢博行前防衛副大臣。未成年女性との「飲酒パパ活」疑惑が報じられて離党した吉川赳衆院議員である。
そのうえ、知事選の最中の応援演説で、衆院静岡1区選出の上川陽子外相の失言も飛び出した。「この方を私たち女性がうまずして何が女性か」と発言し、翌日すぐ撤回したが、党内からは「発言は不用意だった。(選挙戦への)影響がないとは言えない」(渡海紀三朗政調会長)との懸念が出ている。
最近の自民党は、水俣病患者らの発言中にマイクをオフにした問題で、伊藤信太郎環境相が謝罪せざるを得なくなったり、長谷川岳参院議員(北海道選出)が札幌市の職員などに威圧的な態度で暴言を吐いていたことが明らかになったりと、失態続き。火ダルマの中、静岡の知事選も落とせば、いよいよ岸田政権は追い詰められる。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「長く続く権力は腐敗するのですよ。安倍政権の7年が大きかったと思うが、自民党内に無責任体質が蔓延し、野党はガタガタだから自民党が崩れることはないと驕り高ぶった。『政治とカネ』の問題でも、上から下まで反省せず、“やってる感”でしのごうとしている。裏金がこれだけ世間の批判を浴びても、党内から執行部を突き上げるような声は出てこない。国民が『自民はもうイヤ』となるのは当然で、自業自得です」
これから1カ月、断末魔の苦しみ
国会の会期末は6月23日。岸田はきのうも、「今国会で規正法の改正を確実に実現していかなければならない」と強調していたが、自民案は単独提出で公明との合意に至らず、「与党の当事者たちも、この先どうなるか、見通しが立っていない」(自民ベテラン)という状況だ。
政治改革特別委の審議が本格化したら、きのうの予算委のように野党が自民に集中砲火を浴びせるのか。維新は野党の立場を堅持するのか、それとも自民に秋波を送られ“ゆ党”に戻るのか。公明は最後には折れるのか、それとも与党内が修羅場と化すのか。
ひとつハッキリしているのは、国民は「政治とカネ」に汚い政党は、絶対的に「ノー」ということだ。円安・物価高に苦しめられているからなおさら。そんな中で、なんちゃって自民案を強引に成立させようとするなら、手痛いしっぺ返しをくらう。これから1カ月、岸田自民党は断末魔の苦しみを味わうことになるだろう。
「ニッチもサッチも行かなくなり、岸田首相は立ち往生。どうするのか」(野上忠興氏=前出)
「党内に岸田首相に対する不満がたまっている。ガバナンスが利かない中で、岸田首相は党内をまとめられるのでしょうか」(井田正道氏=前出)
それでも岸田は、会期末の解散・総選挙に突き進むのか。約束通り規正法を上げられなきゃ、岸田おろしだ。
国会審議でますます自民党のデタラメが明らかになれば、「政権交代」を求める世論は広がり、自民へお灸を据えたい有権者がさらに増える。
いよいよ自民党政権の終幕が上がる。
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