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2024年5月9日 08時05分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/326001?rct=editorial
川勝平太・静岡県知事の辞職に伴う知事選が9日に告示される。知事が静岡工区の着工を認めてこなかったリニア中央新幹線は、次期知事の方針次第で事業の進捗(しんちょく)が大きく左右される。ただ、少子化・人口減が進み、生活スタイルも変化する中、大量の電力を消費する超高速移動のプロジェクト自体を疑問視する声もある。リニアをどう見るかの論戦を通じ、政治家としての哲学も戦わせてほしい。
自身の失言を受けた川勝氏の辞意表明から告示まで約40日の「超短期決戦」ながら、8日までに元副知事や元浜松市長ら6人が出馬を表明。元副知事を自民が、元浜松市長を立憲民主と国民民主が推薦し、共産が県委員長を公認するなど与野党対決の様相も帯びる。衆院の3補欠選で自民が全敗した直後の大型選挙で、結果が国政に影響する可能性も指摘される。
リニア問題では、川勝氏が、トンネル掘削で地下水が流出し、大井川の水資源や南アルプスの生態系に影響が出る可能性を問題視。JR東海に注文をつけ続け、同社は3月、品川−名古屋間の2027年開業を断念、開業は34年以降の見通しに。早期開業を望む沿線自治体からは、知事の交代で工事の前進を期待する声も聞かれる。
だが、前回知事選で川勝氏は、「『命の水』を守る」とリニアを争点に掲げ、自民の推薦候補に30万票以上の大差で圧勝した。その慎重姿勢は、時に「知事のわがまま」と矮小(わいしょう)化されるが、さまざまな産業や生活を支える水、豊かな自然が損なわれないかと恐れる県民の切実な思いに沿うものだったとも言える。その後、国の有識者会議がJRの対策にお墨付きを与え、流域自治体の理解も進みつつあるが、残る課題も少なくない。
リニアで三大都市圏が1時間で結ばれるインパクトは大きかろう。中間駅のない静岡県でも東海道新幹線の停車回数が増えることが見込まれ、リニアの全線開業から10年で1679億円の経済波及効果があるとの試算もある。それらは環境負荷などのリスクと見合うのか。対策も含めて考えたい。
知事選で共産は「建設反対」を訴えるが、与野党推薦の2人はともに水資源や環境への対策をとりつつ「推進」の立場だ。なぜ、推進、なぜ反対なのかを各候補は真摯(しんし)に説得力をもって語ってほしい。それは、「知事の器」を見極めるよすがにもなるはずだ。
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