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※紙面抜粋
※2024年5月15日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
裏金がなければ政治が出来ない金権政党に退場を迫るのが「社会の木鉾」の第一歩(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
ホント、自民党は往生際が悪い。いつまで、めくらましの茶番劇をやっているのか。
政治資金規正法の改正案を巡り、自民党と公明党が、珍しく内輪モメをつづけている。大手メディアも「規正法改正案 条文化巡り自公混乱」「与党案 共同提出難航」と、大々的に報じている。
大新聞テレビによると、自民党と公明党が揉めているのは、規正法改正案について「与党案」をまとめたい自民党と、自公それぞれが「単独案」をまとめればいいという公明党との間に溝があるからだという。13日に開いた「政府与党連絡会議」でも、岸田首相が「与党間でしっかり協力し、この国会中に規正法改正の実現に向けて全力を尽くして欲しい」と呼びかけたのに対し、公明党の山口代表は「(自公は)一致している部分と隔たりがある部分がある」と、そっけなかった。
しかし、自民党と公明党が揉めていることなど、国民からしたらどうでもいい話なのではないか。「与党案」だろうが、「単独案」だろうが、国民からすれば、「政治とカネ」の問題にメスが入り、政界がクリーンになればいいだけのことだからだ。大手メディアは、なぜ、自公の内輪モメといった些末な話を大々的に報じているのか。
立憲民主党の泉代表が、自民党と公明党の内紛について、鋭い指摘をしていた。
「ゴタゴタを見せて、厳しい議論をしているように見せる、毎度の手法だ」
だとしたら、自公の内紛を大きく伝えている大手メディアは、自民党の思惑にまんまと乗せられていることになるのではないか。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「自民党の最終目標は、『企業献金』『政治資金パーティー』『政策活動費』--この3点セットを死守することでしょう。ほかの項目は改正しても、この3つだけは絶対に維持したい。そのためには、規正法改正の争点が3点に向かないよう、少しでも議論を3点セットから遠ざけるのが得策と考えているのでしょう。国民の関心を3点からそらしたいのだと思う。それだけに、大手メディアが自民党と公明党の内輪モメを、さも一大事のように報道していることに、内心ニンマリしているはずです」
3点セットを温存させるな
国民の怒りをひしと感じるべきだ(C)日刊ゲンダイ
自民党が3点セットを死守するつもりなのは間違いない。裏金事件が発覚してからすでに半年。ようやく自民党が打ち出した改正案を見れば、一目瞭然である。自民党の改革案は、後ろ向きもいいところだ。
「企業献金」については一切、触れていない。「政治資金パーティー」についても、裏金づくりの原資になっていたのに、この期に及んでも“パー券購入者の公開基準額の引き下げ”を実施することで存続させるつもりだ。現在、パー券購入の公開基準は20万円超となっている。自民党内では公開基準額を10万円超まで引き下げるプランが浮上している。
現在、使途公開の義務がなく自民党幹部の裏金になっている「政策活動費」も、使途の全面公開ではなく、使い道を「調査研究」など大ざっぱな項目に分けて、それぞれの支給額を公表する案を検討しているという。
しかし、「献金」「パーティー」「政活費」という3点セットを温存したままでは「政治とカネ」の問題は絶対になくならない。さすがに、これでは公明党だって自民党と一緒に「与党案」は作れないだろう。
野党各党が、政治資金パーティーは「禁止」、政策活動費は「廃止」を掲げているからなおさらである。
大手メディアも、どうでもいい自民党と公明党の内紛を「自公に溝」「与野党協議をめぐり亀裂」などと、詳細に伝える暇があったら、箸にも棒にもかからない自民党案の中身を詳細に報じるべきなのではないか。なぜ、ふざけきった自民党の実態を国民に知らせないのか。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「いまメディアが報じるべきは、些末な永田町の動きではなく、どのような規正法が必要なのか、国民に提示することのはずです。『政治とカネ』の問題は、企業献金を禁止するかどうかに尽きる。企業献金が禁止になれば、いまのような政官財の癒着もなくなるでしょう。もちろん、自民党幹部の裏金になっている政策活動費の廃止も必要です」
さすがに大新聞テレビだって、3点セットが存続する限り、自民党の宿痾である「政治とカネ」を根絶できないと分かっているはずだ。なのに、どうして些末な政界の動きばかり報じているのか。まさか、自民党に弱みを握られているのか。自民党とグルなのか。
刷新本部座長の重大発言
いかに自民党がカネにまみれた政党なのか、裏金事件を反省していないか、よく分かったのが、党政治刷新本部の座長をつとめる鈴木馨祐衆院議員の発言だ。
12日のNHK「日曜討論」に出演した鈴木は、企業献金の廃止など抜本改革を求める野党の主張について、「自民党の力をそぎたいという政局的な話がごっちゃになっている」と言い放っている。語るに落ちるとは、このことだ。どうして抜本改革が、自民党の力をそぐことになるのか。
すかさず、番組に出演していた、れいわ新選組の大石晃子衆院議員から、「自民党の力の源泉は汚いカネ、裏金。そのような力をそがなくてはいけないのは当たり前の話だ」と批判されていた。
鈴木は、13日のBS-TBSの番組でも、野党の改正案について「自民党の収支構造に直結するものだけがピックアップされている」と訴えていた。
東大卒-財務省出身、当選5回の鈴木は、自民党のホープだそうだ。大役である刷新本部の座長についたのも、自民党の総意を体現しているからに違いない。
もはや、自民党に金権体質を改めるつもりがないことは明らかだ。なのに大新聞テレビは、鈴木の発言も、ほとんど批判しないのだからどうかしている。
100人近くが関与した裏金事件で分かったのは、自民党は裏金がなければ回らない政党になっているということだ。パー券の売り上げを裏金にし、政策活動費という裏金に固執し、官房機密費を選挙資金に使っていたことまで報道された。
いくらなんでも大新聞テレビだって、このまま自民党政権に任せていいと考えているわけじゃないだろう。
「大手メディアが行う世論調査では、国民の多くは、自民党の規正法案について『評価しない』と答えています。大手メディアは、そうした国民の声も知っているはずです。心ある国民は、自民党のことを冷めた目で見ているのだと思う。なのに、大手メディアは、いつまで自民党への忖度をつづけるつもりなのでしょうか。このままでは、国民は政治不信だけでなく、メディア不信も強めるようになりますよ。国民から信頼を失ったら、大手メディアだって存続できなくなります」(五十嵐仁氏=前出)
このまま大手メディアは、反省ゼロの自民党のやり方を見過ごすつもりなのか。
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