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※紙面抜粋
※文字起こし
悪魔のようなアベクロ(C)共同通信社
いまだ実態解明されない自民党の裏金事件は、浄化しがたい金権腐敗体質を再び露呈させた。事件後初の国政選挙だった衆院3補選で岸田自民党は全敗。いよいよロープ際だが、連中の大罪はこれにとどまらない。暮らしに悪影響を及ぼしている歴史的円安、長く強烈な物価高は失政による害悪そのもの。この国の活力をどんどん失わせている。
本をただせば、安倍元首相が意味不明に誇ってきたアベノミクスにたどり着くのは論をまたない。いい加減にケジメをつけなければ、お先真っ暗だ。
補選投開票の翌日、「昭和の日」で休場だった東京市場をよそに海外では円が売られまくった。34年ぶりに節目となる1ドル=160円台まで下落。すると、猛烈に円が買い戻され、一時154円台まで急伸し、数時間で5円超も動く荒い展開となった。政府・日銀は明言を避けているが、5兆円規模を投じて覆面介入したとみられている。
世間はゴールデンウイークまっただ中。これまで通りであれば、海外旅行をエンジョイする絶好の機会だ。ところが、今年は様変わり。テレビが盛んに流すのは、人気観光地ハワイに飛んで円安にもだえる旅行者の声ばかり。「お米は持ってきた方がいい」「日本から持ち込んだお米を炊いて、スーパーで買った食材を使って自炊しました」──。悲痛な叫びはそこかしこから上がる。そうした声に応じたわけではなかろうが、FRB(米連邦準備制度理事会)が1日(現地時間)までのFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利据え置きを決定した直後、政府・日銀は再び覆面介入。3兆円規模で仕掛け、一時4円ほど円高に振れたものの、焼け石に水だ。激しいインフレなどで自国通貨が崩壊寸前のアフリカ南部のジンバブエになぞらえ、「ジンバブ円」と揶揄される始末だ。
8月にまた物価高の大波
淑徳大大学院客員教授の金子勝氏(財政学)はこう指摘する。
「植田日銀は金融正常化に及び腰で、インフレ圧力が強い米国は利下げを先延ばし。日米金利差は一向に縮まらず、投機筋が円売り・ドル買いでぼろ儲けする構図が定着し、もてあそばれています。政府・日銀による為替介入で円安が一服したとしても、年内は150円台で推移するのではないか。岸田首相は『賃金と物価の好循環』を実現すると言い続けていますが、実質賃金は23カ月連続マイナス。円安とインフレの循環に歯止めがかからない。この歴史的円安の影響が家計に及ぶのは3、4カ月後です。おそらく8月あたりから物価高の大波が再び押し寄せるでしょう」
かねて異次元緩和を痛烈に批判してきた日本総研主席研究員の藻谷浩介氏は、毎日新聞(電子版=4月23日配信)で〈この壮大な社会実験は失敗した〉と断じ、〈日本経済の価値を下げる亡国政策だった。「経済成長」を唱えたが全く逆の結果を招いた、日本史に残る愚策だ。バブル崩壊後も成長を続けていた日本経済が完全に縮小に転じた〉と喝破。円安の弊害についても手厳しい。
〈日銀が国債や株式を買い込んだ結果、金融緩和の手じまいが難しくなり、日米の金利差も固定化するようになった。その結果1ドル=150円台の円安水準が続く。世界銀行が算定する購買力平価ベースレート(物価が同じになるように計算したレート)は、1ドルが100円未満となっている。これはエネルギー、食糧、ソフトウエア、あるいは安倍氏の支持者が増強を求めていた武器などを海外から買うたび、本来の1.5倍以上の国富が海外に流出している計算だ〉
物価2倍で税収2倍、インフレ課税にニンマリ
歴史的水準の円安続く(C)共同通信社
藻谷氏が「亡国政策」と断罪したように、アベノミクスも歴史に残るデタラメだった。この国を沈下させた「A級戦犯」のひとりは銃弾に射抜かれて横死したが、かたわれはピンピンしていて、春の叙勲で瑞宝大綬章を受章。日銀前総裁の黒田東彦氏のことだ。「自民党を支える大企業を潤す為替誘導」あるいは「米国隷従から抜け出せないよう日本をヘタらせる」といった密命でも帯びていない限り、功績は評価され得ない。栄誉にあずかるのはおかしい。
アベクロのインチキ経済政策のせいで何もかも貧しくなった「安いニッポン」でありながら、防衛費だけはGDP比倍増の大盤振る舞い。集団的自衛権行使を容認する安保法制を強行した安倍を超える米国隷従の岸田は2022年末に安保関連3文書の改定を閣議決定。27年度までの5年間の防衛費を43兆円に膨らませた。国会で一度も審議されずに決まった防衛費を算定した想定為替レートは1ドル=108円。岸田政権発足以降、その水準まで円高に振れたことはない。ドルベースの軍拡に邁進する狂気に打つ手なしの惨憺である。
「世論の大反発に遭って岸田政権が当面見送った防衛増税は、実現の見通しが立たない。低支持率の岸田政権ではまず強行できません。財政赤字を垂れ流している中、どうやって予算を捻出するのか。インフレ課税を当て込んでいるのでしょう。物価上昇に比例して所得税や消費税なども膨らみ、政府の税収は増える。物価が2倍になれば、税収も2倍になり、政府の債務価値は半減する。政権にとって、これほど都合の良い展開はない。それゆえに、円安に無頓着なのです」(金子勝氏=前出)
真珠湾攻撃の喝采を再演
裏金事件はもちろんのこと、地獄の円安にも有権者の本気の決起が必要だ。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「円安の恩恵を享受しているのは国債費を抑えられる政府、輸出企業、インバウンドの観光客です。一般市民は輸入物価高に始まり、ホームメードインフレにも苦しめられている。中間層の暮らしぶりも厳しくなり、格差は拡大する一方です。行き場のないイライラが増大し、ロシアや中国、北朝鮮による軍事行動に不安は募る。鬱憤をため込む庶民の目に、高級グルメを満喫する外国人観光客はどう映るか。新興国化を実感し、面白くはないでしょう。排外主義的な傾向が強まる懸念がある。80年前、ABCD包囲網にイラついていた市民は真珠湾攻撃に喝采し、塗炭の苦しみを味わう羽目になった。岸田首相の真の狙いは、軍事大国化を正当化するためのパールハーバー再演ではないか。そうとでも勘繰らなければ、この無策は説明がつきません」
超が付く楽観主義の岸田はこの期に及んでも、「4月の賃上げ効果が表れる6月には減税が始まるから世論が軟化する」とうそぶいているという。バカを言うのも大概にしろ──。有権者が声を上げれば、結果はついてくる。今こそ政権交代だ。
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