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2024年4月23日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/322879
政府はマイナ保険証の普及を目指し、利用者の増えた医療機関に支援金を出す方針を示した。一方、河野太郎デジタル相はマイナ保険証が使えない医療機関の通報を促す文書を配布した。利用率が低迷する中、医療機関に狙いを定めたアメとムチ。残念な過去とも重なるが、そもそも政府が今やるべき仕事はこんなことなのか。(森本智之)
◆病院に「支援金」最大20万円
「5月から7月をマイナ保険証利用促進集中取り組み月間として、マイナ保険証利用促進に全力で取り組みます」。9日の記者会見で、武見敬三厚生労働相はこう宣言した。
政府は12月に紙の保険証を廃止し、マイナカードに健康保険証の機能を持たせたマイナ保険証に一本化する。だが患者情報のオンライン確認に際した利用率は3月で5.47%だった。てこ入れの一つが支援金。マイナ保険証を利用した患者数の増加状況に応じ、病院に最大20万円、診療所と薬局に同10万円を支給する。
◆「まず不安を払拭するのが筋だ」
インターパーク倉持呼吸器内科(宇都宮市)の倉持仁院長は「あまり効果はないのではないか。お金をもらうからやるという問題ではない」とくぎを刺す。
昨年、他人の情報が誤ってひも付けされているトラブルが相次いで発覚したことなどを踏まえ「本来は利便性に加え、安全性や、何か問題が起きた時のサポート体制を丁寧に説明して不安を払拭するのが筋だろう。それをしないで一気呵成(かせい)に進めるのは違和感がある」と指摘する。
◆マイナポイントの二番煎じ?
全国保険医団体連合会が1月に公表したマイナ保険証を巡る調査結果によると、約6割の医療機関で保険者の情報が正しく読み取れないなど「トラブルがあった」と回答した。政府は昨年12月、相次ぐトラブルを受けた総点検の結果を公表。再発防止への対応にめどが立ったとしたが、同連合会は「トラブルはその後も続いている」とする。
「アメ」でいざなう手法は「二番煎じ」のようにも思える。
振り返れば、2016年の制度開始から普及が低迷したマイナカードのてこ入れで政府が頼ったのが、カードの申請で付与するマイナポイントというアメだった。政府内でも当時、低迷の理由は「情報漏えいなどマイナンバー制度への不信が根強い」とみられていたが、こうした真因にふたをするような対応だった。
一方、通報を促す文書は自民党所属国会議員に配布された。各議員の支持者が医療機関を受診した際、マイナ保険証が使えなかった場合などに国の窓口へ連絡するよう求めた。
◆コロナでも「密告で取り締まり」批判
通報といえば21年7月、飲食店が新型コロナ対策を講じているか、利用者にグルメサイトを通じて報告してもらうことを政府が検討した。しかし「市民の密告で飲食店を取り締まろうとしている」と批判が出て、撤回に追い込まれた。
残念な過去を思い出させる今回の対応は医療機関を標的にしたように見える。法政大の白鳥浩教授(現代政治分析)は「マイナ保険証の利用率が低迷しているのは、あたかも医療機関側に問題があると言わんばかり。政府は論理をすり替えている」と批判する。
◆保有者は増えたが利用率は4〜5%
デジタル庁の公表資料によると、今年1月末時点でのカード保有者は全人口の73.1%、9168万人。うちマイナ保険証の登録者は77.9%、7143万人に達した。だが、マイナ保険証の利用率は毎月4〜5%程度で低迷している。
白鳥氏は「取得者が増えたのは単にポイントがもらえるからにすぎない。持っている人がたくさんいるのに、ほとんど使わないのは、政府への不安や懸念が大きいからではないか。医療機関を責めるのではなく、政府自身が立ち止まって問題点を考える必要がある」と指摘する。
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