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価値観アップデートならリニア不要
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2024年4月21日 植草一秀の『知られざる真実』
静岡県の川勝平太知事が辞表を提出し失職する。
後任の知事を選出する選挙は5月26日に実施される見通し。
川勝平太知事はリニア中央新幹線の静岡工区工事着工を止めてきた。
2027年開業としてきたJR東海は2027年開業が不可能になったことを正式に認めた。
品川−名古屋開業は最速でも2034年以降になる。
リニア推進派は川勝平太知事の辞職を歓迎しているが、リニア建設反対の国民は川勝平太知事のこれまでの活動を高く評価している。
川勝知事の活動によってリニア建設にブレーキがかかったことは事実。
このことを、リニア推進派は批判し、リニア反対派は高く評価する。
品川−名古屋間の建設総工費は従来5兆5000億円と見込まれていたが21年4月に、1兆5000億円膨らみ7兆円余りになることが発表されている。
インフレ進行で総工費がさらに膨張することは確実な情勢。
工事が長引けば総工費はさらに膨張する。
名古屋までの開業では利用者は限られる。
採算を取れない可能性が高い。
工事が大幅に遅れている原因が静岡工区だけにあるわけではない。
さまざま問題が噴出しており、リニア完成の見通しはまったく立っていない。
そもそも、リニア新幹線建設の構想が杜撰なものだった。
いま求められているのは「価値観のアップデート」。
リニア基本計画ができたのは1973年。
浮上走行で時速500キロ超という「新・夢の超特急」の触れ込みは新鮮だったかも知れない。
しかし、日本経済は1990年を境に転落に転じた。
失われた10年は、20年、30年に延伸し、日本経済の衰退が目を覆うばかりになった。
日本の人口は2005年を境に減少に転じた。
2023年の人口減少は80万人に達している。
ドル表示名目GDPは1995年を100とすると2022年は76。
27年の時間が経過して日本の経済規模が4分の3に縮小した。
世界のなかで最も成長できない国、
これが過去30年間の日本の実態である。
世帯所得の中央値は1994年の505万円から2019年の374万円へと131万円も減った。
コロナパンデミックでリモート勤務も拡大した。
品川−名古屋の所要時間は現行ののぞみで90分。
リニア新幹線の所要時間は40分とされるが、名古屋と品川での乗り換えに要する時間がそれぞれ10分ほどかかると見込まれる。
不便な乗り換えがあって所要時間が30分だけ短縮化されるリニアを利用する者がどれだけいるのか。
リニアは大量の電力を消費する。
CO2削減などライフスタイルの転換が叫ばれる時代。
価値観のアップデートが必要。
リニアには致命的な欠陥が三つある。
第一は大深度の利用が地上の土地保有者に損害を与える可能性が広範に存在すること。
第二は経路の9割近くをトンネルが占めるリニア新幹線が巨大地震に遭遇した場合のリスクが巨大すぎること。
第三は自然環境への負荷が極めて大きいこと。
さらに、巨大な電力消費が原発稼働と連結する恐れが大きいことも指摘できる。
静岡県が静岡工区の工事を止めることができた根拠は河川法にある。
河川区域内の土地を占有、工作物を新築しようとする者はすべて、河川管理者の許可を受けなければならない。
リニア南アルプストンネルは大井川本流(東俣川)および西俣川の大深度を通過する。
このため、この河川を管理する静岡県に申請を出し、静岡県が許可を出さなければ工事を行うことができない。
審査を通る条件は「治水上又は利水上の支障を生じないこと」。
この審査をクリアして工事着工の許可が出なければ工事を行うことができない。
ところが、大深度地下法は40メートル以深の公共工事は地上の土地所有者の許可・同意を得ずに工事を行えるとしている。
ところが、40メートル以深の「大深度」エリアで工事を行った結果、地上の土地が破壊される事例が確認された。
このことから、大深度工事を行う全域で、地上の土地所有者から財産権の侵害との訴えが起こされ始めている。
この問題は今後、拡大の一途をたどると考えられる。
この問題でリニア建設が止まる可能性が高い。
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