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2024年4月9日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/320035
自民党派閥の政治資金パーティーの裏金事件では、政治資金規正法で義務づけられている外部監査は全く機能しなかった。現役国会議員の政治団体の監査を行う公認会計士は「そもそも(団体の)収入が監査の対象外で、不正がないことをとても保証できない」と制度が「ザル」であることを指摘。監査人が国民の目線で、支出も含めた金の流れをきちんと確認できる仕組みが必要だと訴える。(市川千晴)
◆収入は監査の対象外、支出も外形的な確認
この会計士は企業を中心に20年以上の監査経験があるベテランだ。「登録政治資金監査人」として政治団体のチェックを始める際、総務省の研修に衝撃を受けた。政治資金監査では、「政治資金収支報告書や団体の会計帳簿の数字が、妥当か評価しなくてよい」というような説明が、研修資料の監査マニュアルの冒頭に記載されていた。
問題となった裏金のように、政治団体の収入はそもそも監査できない。支出はすべて点検するが、「領収書と照合し、数字が合っているかの『外形的・定型的』な確認だけでよい」というのが実態だ。
◆追及もできず、企業監査と大違い
会計士はかつて、取引先からの利益供与が疑われる支出を発見し、議員に直接ただしたことがある。適正な支出だったことは確認したが、「マニュアルに従えば、怪しい支出を発見しても、国会議員らに詳細な追及はできない」というのが本音。会計士が直接、取引先や銀行口座を調べることが可能な企業監査とは大違いだ。
規正法には「政治資金が国民の浄財であることにかんがみ、収支の状況を明らかにする」とあるが、マニュアルには「政治活動の自由の尊重」が明記されている。自由ばかりに重きが置かれ、監査の対象や仕組みは形骸化された。
会計士は、今の仕組みを「ザルだ」ときっぱり。「企業監査並みに制度を抜本的に改正しなければ、再び不正は起きる」。こう力を込めた。
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政治資金の監査 事務所費の架空計上問題などを受け、2007年に政治資金規正法を改正し、研修を受けた公認会計士や弁護士、税理士ら「登録政治資金監査人」による政治資金団体などの監査が義務付けられた。総務省によると2024年1月末現在で、5150人が登録。税理士が最も多く74.5%、会計士19.0%、弁護士6.5%。
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◆自民は「派閥資金の外部監査」…ザルのままでは
政治資金パーティー裏金事件の再発防止策として、自民党は政策集団(派閥)にも外部監査を拡大した。だが「ザル」と批判される監査のままでは、効果に乏しいのは明らかだ。
ある与党の関係者は「収入と支出の数字が合わない国会議員は多いだろう」と明かす。今の制度では収入は対象外で、支出も形式的な確認のみだ。監査とは名ばかりで、ガラス張りの金の流れにはなっていない。
◆規正法改正でも透明性向上の動きなし
元衆院議員で登録政治資金監査人でもある桜内文城氏は政治活動の自由に理解を示しながらも、政治資金に税金が投入されている点から説明責任を強調する。「政治資金にお墨付きをもらうことで国民の信頼を回復し、政治活動の後押しとなる」というのだ。
派閥への外部監査導入も、党則での規定にすぎない。岸田文雄首相が今国会で目指す政治資金規正法の改正で、透明性を担保する監査に変えようという動きはほとんどみられない。信頼回復には遠すぎる。
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