<■889行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> <正論>真の「平和国家」を目指すときだ 麗澤大学特別教授 元空将・織田邦男 2024/4/4 8:00 https://www.sankei.com/article/20240404-Y27ABHEQDZIJLBD2A3VQCLMNVU/ 政府は2024年3月26日、日本、英国、イタリアが共同開発する次期戦闘機の第3国輸出を解禁する方針を閣議決定した。 もし日本だけが輸出できない場合、開発交渉で著しい劣勢に立たされる懸念があったが、ギリギリ間に合った。 ■次期戦闘機の第3国輸出 防衛装備品は年々、高性能化、高価格化し、特に先端技術の塊とも言える戦闘機開発は1国では手に負えず、価値観を同じくする国が共同で開発する趨勢にある。 装備品の調達方法としては大別して3種ある。 @外国から完成品を輸入 A外国からライセンスを購入して自国で生産 B開発(独自開発、共同開発)。 その内、開発のメリットは @自国の防衛戦略に合致した装備品が入手できる A取得後、自由に改修ができる B防衛産業を育成、強化できる C先端技術が得られる D得られた技術を民需に活用できる などがある。 第3国輸出には次のようなメリットがある。 @生産機数が増え価格低減が図れる A維持、整備を通じ、輸入国との関係強化が図れる B輸入国の防衛力を高めることができ、日本の抑止力向上に繋がる C友好国を増やし、良好な安保環境醸成に資する。 他方、批判的なメディアからは 「平和国家として歩んできた日本の信用を揺るがしかねない」 「憲法の平和主義に反しかねない」 といった主張があった。 「日本製の武器で人が殺されることがあってはならない」 「死の商人になるのか」 といった上滑りの情緒論的批判は論外として、 「平和国家としての日本の信用」 「憲法の平和主義」 といった批判については違和感を覚える。 そもそも日本は 「平和国家」 としての責務を果たしてきたと言えるのだろうか。 戦後、日本は安全保障をワシントンに丸投げし、金儲けに専念してきた。 他国での戦争や紛争には目を背け、自国さえ平和であればという 「1国平和主義」 にどっぷり漬かってきた。 ■日本は責務果たしてきたか この偽善を暴いたのが湾岸戦争だった。 サダム・フセインのクウェート侵略に対し、国際社会は冷戦後の平和な国際秩序維持を目指し、結束して立ち上がった。 だが日本は汗を流さず、金で済まそうとした。 結果、 「小切手外交」 「身勝手」 などの汚名を着せられ、顰蹙を買った。 平和は努力して創造するものであり、戦争に目を背けるだけでは得られない。 日本の 「平和主義」 は 「戦争」 を忌み嫌うだけで、平和の創造に貢献してきたとは言い難い。 「平和国家としての日本の信用」 などは独り善がりの思い込み、幻想に過ぎない。 我々が思うほど国際社会から評価されていないのだ。 先の大戦後、日本が全て悪く、日本さえ何もしなければ平和が達成できるといった風潮があったのも事実である。 1945年8月のニューヨーク・タイムズの記事が当時を物語る。 「この化け物(日本)は、一応倒れはしたがまだまだ安心ならない」 「我々は永遠にかかっても徹底してこの怪物(日本)の牙と骨を抜き去らなくてはならない」 国際社会の厳しい視線や、贖罪意識も手伝って、安全保障については 「何もしない」 ことが 「平和国家」 と思い込み、更には 「平和国家」 は決して侵略されないとの 「空想的平和主義」 が蔓延った。 その後、日本の国力も増し、国際情勢の激変もあって、2013年12月、 「国家安全保障戦略」 を策定して 「国際協調主義に基づく積極的平和主義」 へ転換を図った。 観念ではない地に足の着いた 「平和国家」 を目指すものであり、この構想は現 「国家安全保障戦略」 にも受け継がれている。 ■観念論的「平和主義」脱せ だが、今回の 「次期戦闘機輸出騒動」 や 「ウクライナへの支援態様」 によって、未だに観念論的 「平和主義」 から脱し切れない現状が白日の下に晒された。 ロシアの侵略に立ち向かっているウクライナに対し、武器、弾薬支援は認められないとして防弾チョッキや発電機でお茶を濁す。 ウクライナの敗北は 「力による国境変更は許さない」 という戦後国際規範の崩壊に繫がり、やがては東アジアの平和を脅かすことになる可能性があるにもかかわらずだ。 G7の中でも我が国だけが異質である。 これで 「平和国家の価値と理念」 などと胸を張れるのだろうか。 侵略を許さない国際規範を守り、将来の平和を確保する。 このためにあらゆる支援を惜しまない。 それでこそ真の 「平和国家」 であり、国際社会で 「名誉ある地位を占める」 ことができる。 作家の司馬遼太郎氏は生前、次のように語っていた。 「おかしなもんやなあ、大方の日本人にとってはある種の観念の方が現実よりも現実的なんやから」 と。 「平和主義」 といった実体の伴わない観念を振り回している場合ではない。 今回、次期戦闘機の第3国輸出解禁で1歩前進した。 今後は全面輸出解禁に踏み切り、 「真の平和国家」 という物差しで案件ごとに熟慮、判断し、国際平和に積極的に貢献していくべきである。武器輸出のあり方 ゼロベースで見直せ 正論2024年5月号 日本戦略研究フォーラム副会長・元防衛事務次官 島田和久 我々は今、戦後最も厳しく、前例のない時代を生きている。 日本の平和と安全を維持していくために求められる自助努力も、前例のないものになるだろう。 過去の政策をゼロベースで見直す必要がある。 その典型が、武器輸出を巡る問題だ。 これまでの経緯を振り返りつつ、課題を考えたい。 ■武器輸出の実績 意外に思われるだろうが、日本は戦後、1950年代後半から1960年代にかけて、貴重な外貨獲得の手段として、毎年、東南アジアなどに向けて武器の輸出を行っていた。 例えば、ミャンマー(当時はビルマ)や南ベトナム向けに銃弾を、タイ向けに砲弾を、インドネシア向けに機関銃の部品を、台湾(当時は中華民国)向けに拳銃を輸出していた。 いずれも、法令に基づいて輸出許可を得て行われたものだ。 輸出管理当局は無限定に輸出を許可していたわけではなく、法令の運用として、次の場合は不許可としていた。 それは、 @共産圏諸国向けの場合 A国連安保理決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合 B国際紛争中の当事国、又は、その恐れのある国向けの場合 の3つである。 この規定の運用方針については、1967(昭和42)年、佐藤栄作総理が国会で総理大臣として初めて答弁したことから、以降、 「武器輸出3原則」 と称されるようになる。 当然のことながら、佐藤総理は、3原則の対象地域以外の国へは輸出を認めると明言している。 武器輸出3原則は禁輸原則ではなく、文字通り、武器輸出を行うに際して拠るべき原則であった。 佐藤答弁以降も武器輸出は行われたが、野党からの批判などもあり、輸出管理当局の対応は慎重になっていった。 そのような中、当時の通産省の事務次官が記者会見で、 「通産省としては武器である限り、どんな地域へも輸出させない方針である」 と述べたとの報道がなされ、政官の不一致が指摘された。 これを受け、1976(昭和51)年、三木武夫総理が次のような見解を示した。 @3原則対象地域については、「武器」の輸出を認めない A3原則対象地域以外の地域については、「武器」の輸出を慎む 「慎む」とは、輸出管理実務上、不許可を意味し、これにより、事実上、全面禁輸となったのである。 過去も現在も、武器は、法令(外為法)に基づき許可を得ることにより輸出が可能である。 憲法上、武器の輸出は禁じられてはいない。 武器輸出3原則も、先に述べた統一見解も、また現行の防衛装備移転3原則も、全て外為法の運用方針に過ぎない。 武器輸出に関して、 「憲法の平和主義」 に言及されることが多いが、戦後の武器輸出も、武器輸出3原則も、憲法の平和主義に則ったものなのである。 事実上の全面禁輸は、日本の国力の向上、国際貢献の必要性などにより、国益に反する状況が次々と生じた。 1983(昭和58)年の米国への武器技術の供与に始まり、自衛隊の平和維持活動(PKO)への参加、日米物品役務相互提供協定(ACSA)の締結、弾道ミサイル防衛(BMD)の日米共同開発など、内外の情勢変化に応じて個別の例外化措置が講じられた。 三木内閣の統一見解以降、2013(平成25)年までに例外化措置は21件に上った。 ■防衛装備移転3原則 第2次安倍政権は、2013(平成25)年、我が国として初めて国家安全保障戦略を策定し、その中で 「積極的平和主義」 を打ち出した。 これに基づいて 「防衛装備移転3原則」 を定め、過去の例外化も踏まえつつ、移転を認める場合を包括的にルール化した。 原則1として、次の場合には移転を禁止することを明確化した。 @我が国が締結した条約その他の国際約束が禁じている場合 A国連安保理決議が禁じている場合 B紛争当事国への移転 これは、かつての武器輸出3原則に相当するネガティブ・リスト(原則として規制がない中で、例外として禁止するものを列挙した表)である。 尚、紛争当事国とは、 「国連安保理が紛争に際して平和維持・回復のための措置を取っている対象国」 を言い、具体的には、安保理決議により国連軍が組織され撃退の対象となった北朝鮮、湾岸戦争の際に安保理決議が容認した武力行使の対象となったイラクがこれに当たる。 侵略を受けている立場である現在のウクライナは紛争当事国には該当しない。 原則2は、移転を認める場合を次のような場合に限定し、透明性を確保して個別に厳格な審査をすることだ。 @平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合 A我が国の安全保障に資する場合 武器輸出3原則では、ネガティブ・リストに該当しない場合に、輸出を許可するか否かは輸出管理当局の裁量に委ねられていたが、本原則においては、輸出を認める場合を政府として、事前に明確化して透明性と予見可能性の確保を図ったのである。 原則3として、目的外使用及び第3国移転については、原則として我が国の事前同意を相手国政府に義務付けることとした。 尚、ヘルメット、防弾チョッキなど、武器というイメージがないものも対象となることから 「防衛装備」 という用語を用い、防衛装備の 「輸出」 に加え 「技術の提供」 も含まれるため 「移転」 という用語が用いられた。 本原則は、世界的に見ても例のない、明確性と透明性を持った、かつ、節度ある方針と言えるだろう。 しかし、問題は、下位規定である 「運用方針」 において、輸出可能な装備品を局限してしまったことだ。 与党の一部の要求であり、政府は当面支障ないと判断して要求を呑んだ。 この結果、他国と共同開発した装備品を共同開発相手国に輸出する場合を除いて、国産装備を完成品の形で輸出できるのは 「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」という「5類型」に該当するものだけに限られてしまったのである。 ■国家安全保障戦略下での見直し 2022年12月に策定された新たな国家安全保障戦略において、 「防衛装備移転に関する制度の見直しについて検討する」 とされたことを受け、2023年12月末、10年ぶりに見直しが行われた。 具体的には、3つの原則自体には変更はないが、移転の意義として、我が国の安全保障上の重要な政策手段であること、地域における抑止力の向上に資すること、が本文に追加された。 その上で、運用指針の改正により、概ね以下の1〜6の実質的な見直しが行われた。 1 外国から技術を導入し国内で製造された「ライセンス生産品」の輸出について、従来は米国のみが対象で、かつ、部品のみの輸出に限定されていたが、米国以外でも、また、完成品も含めてライセンス元の国や、そこから第3国に輸出することが可能になった。 この結果、「ライセンス生産品」に限っては殺傷能力のある武器であっても完成品の形で輸出可能となった。 これを受け、政府は2023年末、米国からのライセンスで国内生産した地対空ミサイル「ペトリオット」を米国に輸出することを決定している。 ウクライナ支援によって在庫が不足している米国の要請に応えたものであり、具体的には、航空機や巡航ミサイルを迎撃するPAC2と、弾道ミサイルを迎撃するPAC3が対象になる模様だ。 ただし新ルートでも、ライセンス元の国から第3国への輸出については、 「現に戦闘が行われていると判断される国を除く」 とされた。 このため、米国からウクライナに提供することはできない。 2 民間事業者が日本国内で行う武器の修理について、従来は米軍のみに限定されていたが、米軍以外の武器の修理も可能とした。 近年、豪州や欧州などの同志国の部隊が本邦に来訪して訓練・演習を行う機会が増え、修理のニーズも増大していることを受けたものである。 3 武器の「部品」については総じて輸出可能とした。 例えば戦闘機の翼やエンジンなどは、それ自体では武器としての機能を発揮できないため、「部品」として輸出が可能になった。 4 「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に該当するものであれば、本来業務や自己防衛のために必要があれば、殺傷能力のある武器を搭載していても輸出が可能であることを明確化した。 例えば、掃海艇に機雷処分用の機関銃が付いているのは掃海という本来業務のために必要であるし、輸送機に対艦ミサイルを迎撃する自己防衛用の武器が付いているのも通常であるが、そのような場合でも輸出可能であることを明確化した。 5 ウクライナに限られていた、防弾チョッキなど殺傷能力のない武器の輸出について、国際法違反の侵略などを受けた国へと対象を拡大した。 6 パートナー国と共同開発・生産した武器について、従来、パートナー国が第3国に完成品を輸出することは可能だが、新たに、維持整備のための部品や技術については我が国から第3国に直接、輸出を可能とした。 ■積み残しの課題 2023年末の見直しで積み残しとなった大きな課題は、 @パートナー国と共同開発・生産した「完成品」の我が国から第3国への輸出 A安全保障面での協力関係にある国に対する「5類型以外の完成品」の輸出 である。 両者の論点の核心は、殺傷能力のある武器を完成品の形で輸出することを認めるか否かである。 いずれも防衛装備移転3原則上は認められるが、運用指針で禁止しているものだ。 このうち、@に関しては現在、英、伊と共同開発を進めている次期戦闘機について、2024年3月以降に作業分担に関する協議が本格化することから、政府は、 「我が国から第3国への直接移転ができなければ、我が国は、英、伊が重視している輸出による価格低減を行うことができず、結果として交渉上不利な立場に置かれ、自らの要求性能の実現が困難にある」 と訴えていた。 このような状況を受け、2024年3月15日、政府与党は 「輸出する対象は次期戦闘機に限る」 「輸出先は国連憲章の目的と原則に適合した使用を義務付ける防衛装備品・技術移転協定の締結国に限る」 「現に戦闘が行われている国には輸出しない」 との方針で合意した。 協定の締結国は、現在、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、オーストラリア、インド、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、アラブ首長国連邦の計15カ国であり、実際に輸出する際には、改めて個別案件ごとに与党協議や閣議決定を経る 「歯止め」 も設ける方針だ。 当面の要請を満たす最低限の改善はなされた。 残る課題は継続協議と言われているが、先行きは全く不透明だ。 ■武器輸出反対について考える この問題を考える際に、反対論の前提となっているのは、次のような考えであろう。 即ち、殺傷能力のある武器は悪。 武器輸出は紛争を助長する。 今のままでも日本の安全は維持できる。 しかし本当にそうであろうか。 ▼抑止力を発揮するもの 抑止力の中核は実力であり、殺傷能力がある武器を持つからこそ抑止力となる。 殺傷能力があるからこそ、一方的な現状変更を断念させる力になる。 自由で平和な国際秩序を守ることができるのだ。 ヘルメットと防弾チョッキだけでは侵略を止めることはできない。 まずは、この冷厳な事実を真正面から受け止めるべきだろう。 ▼紛争を助長するのか 「武器輸出は紛争を助長する」 という考えには、 「紛争国はどちらも悪い」 という発想があるのではないか。 今や国家間の問題を武力で解決することは国際法上許されないのだ。 しかし、ロシアのように国際法を踏みにじる国が存在する以上、侵略を排除するための実力の行使は必要であり合法なのである。 それを裏付ける武器の供与は、如何なる意味でも紛争を助長するものではない。 先に述べた 「ライセンス元の国から第3国への輸出」 「次期戦闘機の第3国移転」 について、いずれも 「現に戦闘が行われていると判断される国を除く」 とされたことも同様のは発想だろう。 抑止力の維持・強化のための輸出は許されるが、不幸にして抑止が破れ、侵略が開始された途端に輸出を止めることになる。 「紛争に加担しない」 「日本製の武器が海外で使われる人を殺すようなことがあってはならない」 と言うと聞こえは良い。 しかし、その実態は違法な侵略を受けた国も助けない、ということだ。 それは結果として侵略国を助けることになり、法の支配ではなく、力の支配を認めることを意味する。 2022年にノーベル平和賞を受賞したウクライナの人権団体「市民自由センター」のオレクサンドラ・マトビチュク代表はこう語っている。 「ウクライナの人々は世界の誰よりも平和を望んでいる」 「だが、攻撃を受けている側が武器を置いても、平和が訪れることはない」。 そして 「武器を使ってでも、法の支配を守る」。 法の支配に基づく国際秩序を守るために日本の武器が使われることを一律に排除するのでは、価値を共有する同盟国・同志国との連携強化の道を閉ざすことになりかねない。 国際社会は相互主義が基本原則でもある。 このままでは、いざという時に日本を支援してくれる国はなくなるかもしれない。 ▼同盟国・同志国との絆の強化 かつて我が国の安全の確保策は、世界の警察官であった米国の力に依存し、細やかな自助努力として、米国から導入した武器を備えた自衛隊を維持してきた。 誤解を恐れず極論すれば、ザッツ・オール(That's all.)である。 我が国が武器を輸出することは、我が国の安全保障上の課題ではなかった。 しかし、今、世界は大きく変わった。 米国は世界の警察官の座を降り、最早米国ですら1国では自国の安全を確保することができない時代となった。 スウェーデン、フィンランドが永年に渡る中立政策を放棄しNATOに加わったことも、 「1国平和主義」 では国を守れなくなったことを雄弁に物語っている。 我が国も、同盟国・同志国との協力関係を一層強化していく必要がある。 その目的は、協力して抑止力を強化し、力による一方的な現状変更を許さないことだ。 そのカギとなるのはやはり武器なのだ。 日本製の武器を同盟国・同志国と共有することにより、その絆は分かち難いものとなる。 これが国際社会の現実である。 侵略を続けるロシアに対して、多くの国が厳しい制裁を科す中で、インドは明確な批判すら行っていない。 その大きな理由は、インド軍が武器の相当部分をロシアから導入しているからだ。 その比率は7割とも言われる。 1度導入した武器の運用期間は数十年に及ぶ。 武器を共有すれば、強固な関係はそれだけの期間続くのだ。 汎用品や民生品ではこうはいかない。 ▼防衛産業の維持・強化 かつては寛大な米国からライセンス供与を受けて武器を国産することができた。 現在の主力戦闘機であるF-15の国産化率は70%以上に上った。 しかし、最早最新技術をお金で買うことはできない時代となった。 現在導入を進めている最新鋭のF-35戦闘機では機体技術は開示されず、我が国は出来上がった部材を輸入して最終組立と検査ができるだけだ。 自ら研究開発・生産を行わなければ、防衛産業を維持することはできない。 自衛隊は武器の製造だけでなく維持整備も防衛産業に依存している。 防衛産業が無くなれば、自衛隊は戦うことはできない。 だから、防衛産業は我が国の防衛力そのものなのだ。 防衛産業を適切に維持強化していくことは、個別企業の利益のためではなく、国民の安全を確保するためなのである。 国産の武器を自衛隊だけで使用するのでは生産数量も少なくコスト高になりがちであるが、同盟国・同志国と共有することができれば、量産効果により価格低減も可能となり、我が国と移転先国でウィン・ウィンの関係となる。 同時に、防衛産業基盤の維持・強化にも資する。 一石三鳥の効果がある。 ▼共同開発への参画 武器の高度化・高額化が進み、開発のコストやリスクが増大する中にあって、戦闘機を含む最先端技術を取得する上では、パートナ国と協力して、資金・技術を分担する国際共同開発・生産が益々主流化しつつある。 米国も、2024年1月に策定した 「国家防衛産業戦略」 において、共同生産を重視する方針を明らかにしている。 このような潮流の中で、我が国から第3国への直接移転を行う仕組みが存在しなければ、我が国は価格低減の努力を行わない国と見られ、国際共同開発・生産のパートナー国として相応しくないと国際的に認識されてしまう。 同盟国・同志国との国際共同開発・生産への参加が困難となれば、いずれ我が国が求める性能を有する装備品の取得・維持が困難となり、我が国の防衛に支障を来すことになるだろう。 ■平和国家とは 武器輸出に反対するのは、 「つまるところ平和国家としての信頼が崩れるからだ」 との主張を聞く。 しかし、一体誰に対する信頼であろうか。 かつて日本と戦火を交えた欧米諸国や豪州も、今や日本が自由で開かれた国際秩序の維持に積極的に寄与することを期待している。 日本が武器輸出を行っても、これら同盟国・同志国との信頼が崩れることはない。 かつて国内では大きな反対があった国連PKOへの参加や集団的自衛権の行使容認についても、世界からは歓迎されたのだ。 残る課題をクリアするため、 「運用方針」 が設けた制限を撤廃し 「防衛装備移転3原則」 本来の姿に立ち返るべきだ。 昭和から平成にかけて21件の個別の例外を重ねたように、場当たり的に例外措置を講じていくことは、国際的にも透明性に欠け、企業にとっても予見可能性に欠ける。 個々の輸出については、 「3原則」 に照らして、客観的・合理的にその妥当性を判断していくことが適当であろう。 日本が内向きの論理で 「何もしない平和国家」 であり続けることを喜ぶのは、力による一方的な現状変更を意図する国々だけだ。 権威主義国家を利することになる。 それは日本の国益を害するものだ。 1国平和主義の 「不都合な真実」 から目を背けるべきではない。 公明党との連立解消の勧め Hanada2024年5月号 山際澄夫 日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第3国への輸出は、政府与党内で調整が続けられた結果、歯止め策を講じた上で認められることになった。 1年近くの協議の末、輸出解禁に消極的だった公明党に自民党が譲る形で決着した。 歯止め策とされたのは、輸出の可否を閣議で決定するとした他、輸出解禁を政府、自民党が想定していた国際共同開発全てではなく、今回の戦闘機に限定。 また、戦闘中の国は輸出先から除外された。 これにより、日本の輸出が困難となる最悪の事態は避けられたが、この問題は防衛政策という政権運営の根幹部分で、自公に越え難い対立があることを改めて見せ付けられた。 見過ごせないのは、公明党が終始、武器輸出解禁に冷淡だったことだ。 次期戦闘機は、自衛隊が現在、保有する戦闘機の内、F15とF2の老朽化を見据えて投入されるもので、2035年に配備開始の計画だ。 2022年末に共同開発と発表され、2023年末には3カ国が事業を管理する条約に署名した。 今回は、3カ国の作業分担の協議が本格化する直前での決着だった。 共同開発兵器の輸出は、膨大な武器の開発費用の大幅な低減を実現出来るだけでなく、外交能力の強化にも繋がるなど安保政策を展開する上で利点が多い。 このため、共同開発兵器の第3国への輸出は、言わば世界の常識なのである。 公明党も、当初はそれほど問題にしていたわけではない。 だが、2023年11月の中国訪問後に山口那津男代表が批判を強めたことから、SNS上では中国への忖度を疑う声が強い。 武器輸出の意味も分からず、他国の代弁者のような真似をする政党のどこが 「平和の党」 なのだろうか。 基本政策を異にする連立は野合と言うしかない。 自民党は、もう公明党との連立を解消した方がいい。 公明党との連立解消、他党との連立の組み換えを行うなら、岸田文雄首相が模索している解散の絶好の大義名分にもなるはずだ。 朝日新聞は、この決着も <「歯止め」効く?> と不満そうだった。 朝日新聞など、日本のリベラルメディアの多くが公明党に近いのは言うまでもない。 自公の政策担当者が次期戦闘機の輸出の在り方を協議していた2024年2月23日、朝日新聞は社説でこう報じていた。 <殺傷能力のある兵器の輸出は、戦前の反省を踏まえ、平和国家として歩んできた日本への信用を揺るがしかねない> 朝日新聞や公明党などに通底しているのは、軍隊も兵器も平和を破壊する存在だとの思い込みである。 だが実際には、軍隊も兵器も平和を守るために存在する。 戦争を抑止するには精強な軍隊が必要なのだ。 ところが、軍隊は悪い事をするとの偏見と、日教組教育の成果である”日本は侵略戦争を行った”との自虐史観にまみれた朝日新聞は、そんな子供でも分かるような理屈も理解出来ないのである。 その挙げ句が、中国への異常な傾倒である。 朝日新聞は、中国の全人代で明らかになった日本の4.4倍、34兆円もの中国国防予算を5日後の社説(2024年3月10日)でようやく取り上げた。 それも <(核戦力も)自国防衛に必要な水準を超えつつある> とはしていたが、 <もっとも、中国の対外姿勢は、今後も長く続くと予想される米国との競争・対立に備えたものだろう> と、膨大な軍拡にも理があるかのような書きぶりだった。 なるほど、これなら中国を庇って、次期戦闘機の輸出を妨害しても不思議ではない。 次期戦闘機の輸出 産読日「同志国増やす」と評価 朝毎東「平和主義にそぐわぬ」 社説検証 2024/3/20 9:00 https://www.sankei.com/article/20240320-SRMAB4OGB5MQLMEYFL67D7NFR4/ 日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機について、自民、公明両党は第3国への輸出を解禁することで正式合意した。 現行の指針では、殺傷力のある防衛装備品は同盟国と共同開発国以外には輸出できない。 政府は近く、防衛装備移転3原則の運用指針を改定する。 安全保障を巡る環境が激変する中、産経、読売は合意を歓迎、日経も肯定的に受け止めた。 一方、朝日、毎日、東京は、 「平和国家として歩んできた日本への信用を揺るがしかねない」 などと合意を非難、与党に再考を迫った。 産経は、輸出解禁を 「歓迎したい」 と評価した。 輸出により生産数を増やせば調達単価を低減できる上、 「安全保障上の同志国を増やすことにも繋がる」 からだ。 それにより 「中国などへの抑止力が高まり、日本の守りに資する」 と説いた。 読売も、輸出解禁は友好国との 「安保協力を深める大事な一歩」 と見出しに掲げた。 戦闘機などの大型装備品は 「国際共同開発が主流」 であり、むしろこのまま輸出できなければ、 「日本は制約の多い国だ」 とみなされ、 「様々な装備品の共同開発に参画しにくくなっただろう」 と論じた。 日経は、安保環境の現実を考えれば 「(合意は)理解できる」 とした。 輸出先を広げるメリットとして、生産コストの縮減や防衛産業の育成を挙げた他、共同開発に当たり一方、朝日は正式合意前の2024年2月の社説で、輸出解禁は 「平和国家として歩んできた日本への信用を揺るがしかねない」 と反発を露わにした。 国民的議論を抜きに決められたとし、 「民主主義の在り方としても見過ごせない」 と難じた。 毎日も、国会で十分に議論されていないとした上で、戦闘機の輸出は 「国際紛争を助長する恐れがある」 「憲法の平和主義に反しかねない問題だ」 と批判した。 その上で 「平和国家としての日本の在り方が問われている」 「なし崩しで進めるべきではない」 と牽制した。 東京も 「平和国家の理念と価値を損なう」 とし、政府に 「再考を求める」 と迫った。 合意に至る過程も問題視し、 「憲法の平和主義に関わる基本政策の転換を、国会での審議を経ず、政府与党だけで決めることなど許されない」 と強調した。 今回の合意では、輸出対象を次期戦闘機に限定した。 政府と自民党は当初、共同開発する防衛装備品全般の解禁を目指したが、公明党が慎重姿勢を崩さなかったためだ。 輸出先も日本と 「防衛装備品・技術移転協定」 を結ぶ国に限定し、現に戦闘が行われている国は対象外とした。 こうした制約にも朝日、毎日、東京は 「歯止めが機能するかは疑問だ」(毎日) などと懸念を示した。 これに対し、産経は、共同開発の門戸を広げるためにも、 「次期戦闘機に限らず一般的な原則として輸出解禁に踏み切るべきだった」 と主張。 現に戦闘が行われている国は対象外とした規定には、 「実際に侵略され最も苦しんでいる国に救いの手を効果的に差し伸べることを禁じるつもりか」 と疑問を投げかけた。 産経は、防衛装備品輸出を批判する意見を 「偽善的平和主義の謬論(びゅうろん)」 と一蹴した。 ロシアがウクライナを侵略し、中国は台湾への軍事、政治的威圧を強めている。 北朝鮮は国連安全保障理事会決議を無視してミサイル発射を続ける。 これらの強権国家はいずれも日本の近隣国だ。 日本だけが平和であればよいという 「一国平和主義」 が通用しないことは明白だ。 戦争を回避し、自国民を守るには、同盟国や同志国と協力し、抑止力を高めていかなければならない。 それが積極的平和主義、現実的平和主義である、と知るべきだろう。 ◇ 戦闘機輸出解禁を巡る主な社説 【産経】 ・「次期戦闘機」だけなのか(2024年3月17日付) ・公明は平和履き違えるな(2024年2月29日付) 【朝日】 ・平和国家の信用揺らぐ(2024年2月23日付) 【毎日】 ・なし崩しで突き進むのか(2024年3月16日付) 【読売】 ・安保協力を深める大事な一歩(2024年3月16日付) ・輸出解禁へ政府は説明尽くせ(2024年2月8日付) 【日経】 ・戦闘機輸出を国際協調と抑止力の強化に(2024年3月17日付) 【東京】 ・平和国家の理念損なう(2024年3月15日付) 公明党は 「第3国移転を一般的に認めれば、平和国家としての信頼が崩れてしまうのではないか」 と言うが、実際はむしろ逆だ。 日本は自国の都合・論理でしか考えない独り善がり・ワガママな国だと思わるだけだ。 もちろん立民・共産は論外だ。 単に紛争地域だからそこには武器輸出が出来ないというのは明らかにおかしい。 ウクライナのように明らかに侵略されて困っている国や地域を支援するために、日本も武器輸出・殺傷兵器の輸出を即時認めるべきだ。 歯止めばかり強調するのはナンセンスだ。 歯止めより重要な事は、侵略されている国や地域を支援するための武器輸出・殺傷兵器の輸出だ。 公明党は平和の党というより、腰抜けの党だ。 公明党は中国の顔色ばかり窺っている売国奴だ。 公明党は与党というより実質左派野党だ。 政府側の説明不足を指摘する公明幹部に対し、国家安全保障局幹部らは2024年1月以降、改めて説明に出向いているが、未だ理解は得られていない。 公明党は 「政府説明がない」 「2024年2月中に結論を出すことに繋がるかどうかは、政府側の努力にかかっている」 「真正面から議論されていない」 などと政府や自民党に責任転嫁しようとしているが、公明党自身が自ら・自主的に 「殺傷能力を持つ兵器の第3国への輸出の必要性」 を感じていないことこそが大問題だ。 自民党は公明党との連立を解消すべきだ。 <正論>積極支援こそ平和国家日本の道 元陸上幕僚長・岩田清文 2024/3/15 8:00 https://www.sankei.com/article/20240315-PWDY3DE7EJOVTET27KJ4B6LCNY/ ■次期戦闘機の第3国移転巡り 日英伊3カ国共同による次期戦闘機の第3国移転に関し、ようやく自公両党の合意がなされるもようだ。 2023年春から継続してきた両党実務者協議の議論では、公明党も合意をしていたようだが、山口那津男代表は2023年11月の会見で 「国民の理解が得られるように慌てないで議論していくことが重要だ」 と慎重姿勢を示した。 両党実務者協議成果の 「ちゃぶ台返し」 とも言えるこの発言に対し、自民党国防部会・安全保障調査会合同会議の場では 「連立を解消してでも進めるべきだ」 との声も上がっていた。 先祖返りした公明党の理解を得るため、岸田文雄首相は2024年3月5日の参院予算委員会で、第3国への輸出解禁の必要性を説明した。 この首相答弁を受け、山口代表は2024年3月5日の記者会見で 「かなり丁寧に出来るだけ分かりやすく説明をしようという姿勢」 と評価した。 山口代表とすれば、首相自らの説明を引き出したことにより、公明党支持基盤への理解が求めやすくなったということであろう。 防衛装備移転に関する自公調整の論点は、この共同開発装備のみではない。 輸出装備の対象を、現状の5類型(救難・輸送・警戒・監視・掃海)に限らず、殺傷兵器の分野まで広げる点については、未だ大きな隔たりがある。 自民党が5類型を撤廃する案や防空などの類型を追加する案を提示しているが、公明党は類型の撤廃に反対すると共に、類型を追加したとしても教育訓練や地雷処理に限定すべきとの主張をしている。 このように、1年近くに渡り自公調整が難航する背景はどこにあるのか。 そこには両党が描く国家像の大きな違いがあると筆者は見ている。 2022年12月に閣議決定された 「国家安全保障戦略」 には、第3国移転は 「日本にとって望ましい安全保障環境の創出」 の重要な手段と意義付けている。 また両党実務者協議の座長を務める小野寺五典元防衛相は 「共同開発・生産は半ば同盟と同じ意味がある」 「NATOとの関係強化は東アジアでの抑止力強化にも繫がる」 との認識を示してきた。 ■「消極的平和主義」への疑問 更に岸田首相は 「完成品の第3国移転を含め、国際共同開発生産に幅広く、円滑に取り組むことが国益に適う」 と明言している。 装備の輸出により、装備を絆とした相手国との同盟的な仲間を増やすことが可能となり、日本の安全保障にも寄与するとの考え方である。 一方、公明党の西田実仁参院会長は2024年3月5日の予算委において、 「次期戦闘機という最も殺傷能力の高い防衛装備品の第3国輸出が出来るようになれば、それが前例となり、如何なる殺傷能力を持った武器も輸出出来るようになるのではないか」 「にわかな政策変更は、これまで日本が培ってきた平和国家としての信頼を損なうことになるのではないか」 と疑問を示している。 公明党が描く平和主義とは、自らは殺傷や破壊行為に関わらない、 「消極的平和主義」 と言えるだろう。 日本国憲法の前文には 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」 とある。 現状に重ねれば、まさに今、ウクライナを助けるため努力している国際社会で、日本も自ら積極的にウクライナを支援することにより、国際社会から名誉ある地位を占めようとすることが理想とされているだろう。 ■激変する安保環境認識を まさに 「積極的平和主義」 だ。 2024年2月下旬、ゼレンスキー大統領は3万1000人のウクライナ兵が死亡したと発表し、各国の支援を強く求めている。 殺傷兵器は、ロシア軍を破壊することにはなるが、結果的にウクライナ兵を直接守るために不可欠な装備であり、ウクライナ自身が切望している。 他の民主主義国家と共に、兵器を含めウクライナが要望する装備を輸出することは、憲法の精神にも適う積極的平和主義ではないだろうか。 自分の国だけは殺傷兵器に関わりたくないという姿勢は、他国の目には、 「1国平和主義」 と映っているかもしれない。 今や世界は戦後最も厳しい安全保障環境に激変している。 米国でさえも1国では急拡大する中国の軍事力に対応できず、まして中国・ロシア・イラン・北朝鮮の権威主義国連合に対応できない状況になっている。 民主主義国家が揃って助け合わなければ生きていけない国際社会になりつつあるとの認識を持つべきだ。 「情けは人の為ならず」、 価値観を共有する同志国に対し、できる限りの積極的な支援を継続することにより、いざという時に助けてもらえる仲間を増やしていく。 このような積極的平和主義こそが、日本が仲間と共に平和を構築する国であるとの信頼に繫がるものと信じている。 日本の独立と平和に責任を持つ政党であるならば、世界の平和に積極的に貢献することが平和国家としての生き方であることを理解してもらいたいと切に願う。 <正論>平和を気取る身勝手な偽善排せ 麗澤大学特別教授、元空将・織田邦男 2024/3/1 8:00 https://www.sankei.com/article/20240301-VGYN7DDSYFJR7KWB4VFNBGJTPI/ ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過した。 2023年10月からウクライナ東部の防衛拠点アウディーイウカで激戦が続いていたが、遂に露軍の手に落ちた。 米国の軍事支援が滞っている今、同拠点のみならず全局面でウクライナ軍は苦境に立たされている。 ■ウクライナ支援継続、強化 「支援疲れ」 もあり、 「停戦」 をという声もある。 だが約18%の領土をロシアに占領されたまま停戦が実現すれば、軍事力による国境変更を禁じた戦後の国際規範は崩壊する。 しかもプーチン露大統領のいう 「停戦」 は、次なる戦争への準備期間にすぎず、真の平和が訪れる保証はない。 もし日本が侵略され、四国、九州、沖縄(合計で約15%)が占領されたところで、 「停戦」 を促されたらどう思うか。 約18%の領土を諦めるのは、ウクライナ国民にとって耐え難い事である。 「力による現状変更」 を認めないためにも日本は諸外国と連携しウクライナ支援を継続、強化しなければならない。 米国に対してはウクライナ支援継続を強く訴えるべきだ。 そのためにも日本自身が武器支援に踏み出す必要がある。 朝鮮戦争の際、日本は武器弾薬を輸出して国連軍に貢献した。 しかしながら1967年、佐藤栄作首相が共産圏・紛争当事国などへの武器輸出禁止を決め、1976年には三木武夫首相が 「武器輸出を慎む」 と答弁して武器輸出の全面禁止が定着した。 2014年、 「防衛装備移転3原則」 が閣議決定され厳格な審査を条件に武器輸出が認められた。 紛争当事国へや国連安保理決議に違反する場合、輸出はできない。 平和貢献・国際協力や日本の安全保障に資する場合などは認められる。 現在、「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型のみ認める指針で運用されている。 ウクライナは紛争当事国だから武器弾薬支援は認められない。 だがそれでいいのだろうか。 ウクライナを支援するのは戦後の国際規範維持のためであり、我が国の平和のためでもある。 単に 「殺傷兵器だから」 「紛争当事国だから」 と禁止するのは教条的過ぎる。 ■「武器」と付くだけで拒否 万が一、日本が侵略された場合、自衛隊は国家国民を守るために敢然と立ち向かうだろう。 だが武器弾薬は決定的に不足し、他国の援助に頼らざるを得ない。 そんな時、諸外国が 「(日本がそうしたように)武器弾薬は日本に支援しない」 となることもあり得る。 それだけで日本の抑止力は低下する。 日本はその覚悟があるのか。 侵略に立ち向かうウクライナに武器支援をしないメリットは何か。 平和を気取る、独り善がりで身勝手な偽善に過ぎないのではないか。 侵略を許さない国際規範を守るため、あらゆる支援を尽くしてこそ国際社会で 「名誉ある地位を占める」 ことができる。 防衛装備移転3原則は法律ではなく、政府の意思さえあれば変更可能だ。 ウクライナ国民を守る 「防空兵器」 くらいは直ちに支援すべきだろう。 5類型に 「防空」 を加えればいい。 2023年末、運用指針改正でライセンス生産の地対空ミサイルを米国へ輸出することが可能になった。 これをウクライナにも広げるべきだ。 ウクライナに発電機、変圧器は供与しても防空兵器は供与しないというのは、国際社会に理解されないだろう。 かつて機関砲が付いた巡視艇は輸出できなかった。 自衛隊のトラックも銃の懸架台があるだけで供与できなかった。 「武器」 と付くだけで心情的に拒否する偽善を続けている場合ではない。 ■国際社会で日本の孤立招くな 日本、英国、イタリアとで共同開発する次期戦闘機の第3国輸出に関する問題にも通底している。 共同開発品の直接輸出を巡っては、2023年春から自民、公明両党の実務者で慎重に検討がなされてきた。 2023年7月、実務者協議で容認の方向性が打ち出されたが、2023年11月になって突然、公明党幹部が 「ちゃぶ台返し」 をした。 この間何があったのか、ここでは触れない。 戦闘機は 「殺傷兵器」 ではあるが、開発装備品の輸出は 「友好国を作る」 「抑止力を強める」 「安価になり防衛力整備に貢献」 といった安全保障上のメリットが大きい。 装備品は高性能化、高価格化しており、今や1国では手に負えず、共同開発が主力である。 こんな時、共同開発国の日本だけが輸出できないのは、余りにも理不尽で共同開発国からの信頼も理解も得られない。 ロングボトム駐日英国大使も第3国輸出を巡り 「日本が防衛装備品の輸出ルールの変更を近く実現することが重要だ」 と述べ、 「(日英伊の)対等なパートナーシップに関わる」 と懸念を示している。 湾岸戦争では、日本だけが汗も流さず、130億ドル供与という金で済ませた結果、 「小切手外交」 「身勝手」 「価値観共有せず」 と非難され、孤立した。 国際社会での孤立は、軍事小国としては致命的である。 決して繰り返してはならない。 武器輸出についても諸外国と価値観を共有し、国際平和実現に貢献すべきである。 <主張>防衛装備品の輸出 「次期戦闘機」だけなのか 社説 2024/3/17 5:00 https://www.sankei.com/article/20240317-YNSM75ACONJYBKUIP3TR5LTTNI/ 国際共同開発の防衛装備品の第3国輸出を巡り、自民、公明両党は日英伊3カ国が共同開発する次期戦闘機に限って認めることで合意した。 岸田文雄首相が歯止め策を示し公明が評価して容認に転じた。 次期戦闘機の輸出対象は 「防衛装備品・技術移転協定」 を結び、現に戦闘が行われていない国に限る。 個別の案件ごとに与党の事前審査を経て閣議決定する。 今回の合意を受け政府は防衛装備移転3原則の運用指針改定を閣議決定する。 次期戦闘機の第3国輸出が可能になることを歓迎したい。 望ましい安全保障環境創出のため積極的に実現したい。 次期戦闘機は令和17年までの配備が目標だ。 日本と移転協定を結んでいるのは現在15カ国でオーストラリア、インド、シンガポール、インドネシアなどインド太平洋の国が多い。 輸出を実現すれば、調達単価を低減できる。 安全保障上の同志国を増やすことにも繋がる。 力による現状変更を志向する中国などへの抑止力が高まり、日本の守りに資する。 ただし、与党合意には問題もある。 殺傷力のある防衛装備品の輸出は平和国家日本の在り方に反するという誤った思い込みから、出来るだけ抑制しようという発想が残っている点だ。 次期戦闘機以外に国際共同開発の装備品輸出の必要性が生じれば、改めて与党協議を経て運用指針に加えるという。 本来は、次期戦闘機に限らず一般的な原則として輸出解禁に踏み切るべきだった。 煩雑な手続きを嫌って日本との共同開発を躊躇う国が現れれば、日本の平和と国益が損なわれる。 現に戦闘をしていない国に限るのも疑問だ。 実際に侵略され最も苦しんでいる国に救いの手を効果的に差し伸べることを禁じるつもりか。 輸出の可否は個別に政策判断すればよい。 日本が侵略される場合、殺傷力のある防衛装備品を提供する国が現れなければ、自衛官や国民の命が一層多く失われかねない。 米欧がウクライナへ火砲や弾薬など防衛装備品を提供しなければ侵略者ロシアが凱歌を上げるだろう。 そのような非道な世界に直結するのが、防衛装備品輸出を批判する偽善的平和主義の謬論(びゅうろん:誤った議論)である。 輸出範囲を不当に限定する移転3原則の5類型の撤廃が欠かせない。 <主張>戦闘機合意先送り 公明は平和履き違えるな 社説 2024/2/29 5:00 https://www.sankei.com/article/20240229-EH4ACUXENFIPNOGWVRTDWIE5GU/ 国際共同開発する防衛装備品の第3国輸出解禁を巡り、自民、公明両党が2024年2月中の合意を断念した。 次期戦闘機を念頭に置いた与党協議で、政府は2024年2月月内の決着を求めていたが、結論を先送りした。 公明が、政府側の説明が十分ではないとして慎重姿勢を崩さないのが最大の理由だ。 殺傷力の有無に拘わらず、国際共同開発する防衛装備品の第3国輸出は日本の守りにも資する。 それを理解しない公明の姿勢は問題で、先送りは残念だ。 公明は早期に容認に転じてもらいたい。 懸念されるのは、公明が 「一国平和主義」 の残滓に捉われている点だ。 日本だけを守れればよい、日本だけが平和であればよいという一国平和主義は、同盟国や同志国と共に抑止力を向上させて平和を守る努力を妨げる。 現代日本に戦乱や危機を呼び込みかねない反平和主義の一種とも言える。 「平和の党」 を掲げているように、公明が真剣に平和を願っていることは分かる。 日本の守りのために次期戦闘機の国際共同開発も容認した。 だが、第3国輸出の意義を理解せず慎重姿勢を崩さないのであれば、平和追求の方法が間違っている。 責任ある与党であり続けたいなら、平和を守る手立てを履き違えてはならない。 「積極的平和主義」 による平和の追求が必要な時代になった点を理解すべきだ。 日英伊3カ国が共同開発する次期戦闘機の第3国輸出を日本が拒めば数兆円かかる開発コストの低減幅が縮む。 価格上昇で英伊両国にも迷惑をかける。 日本には経済力の伸長著しい東南アジアなどへの輸出が期待されている。 日本が見送ると英伊両国がカバーすることは難しく、中国製やロシア製の戦闘機が東南アジア各国で採用されていく恐れもある。 この地域と中露の接近が進みかねない。 法の支配など基本的価値観を共有する友好国に、日本が戦闘機など軍の主要装備を輸出できれば、同志国への格上げを図れる。 東南アジアの民主主義国家などを、専制国家の覇権主義に対抗する抑止力向上の環に加えられれば、日本の安全保障環境の改善にも大きく寄与する。 このような広い視野に立って防衛装備品の輸出を容認するのが、積極的平和主義、現実的平和主義の道である。 次期戦闘機輸出 安保協力を深める大事な一歩 2024/3/16 5:00 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240316-OYT1T50000/ 防衛装備品の輸出政策はその重要なツールである。 自民、公明両党が、日英伊3か国で共同開発する次期戦闘機について、第3国への輸出を認めることで合意したのは1歩前進だ。 次期戦闘機は、航空自衛隊が2000年から運用しているF2の後継機として開発する。 高度なステルス性や、無人機と連携するネットワーク戦闘能力を備え、2035年頃の配備を予定している。 開発費が嵩む戦闘機などの大型装備品は、資金を各国で分担する国際共同開発が主流だ。 欧米諸国は、量産化によってコストを下げるため、完成品を第3国に積極的に輸出している。 一方、装備品の輸出を制限してきた日本は、殺傷能力のある完成品の輸出先を、原則として同盟国である米国と、国際共同開発の相手国に限ってきた。 次期戦闘機について、これまでの方針を見直さなければ、日本は英伊両国に技術を提供するだけで、共同開発のメリットを得られなくなる可能性があった。 国際社会から、日本は制約の多い国だとみなされれば、様々な装備品の共同開発に参画しにくくなっただろう。 新たな方針では、次期戦闘機の輸出先は、日本と 「国連憲章に適合した使用」 を義務付けた協定を結んでいる国に限る。 現在の締結国は米英豪など15か国で、日本が輸出した装備品を侵略には使わないことなどを約束している。 国際情勢の変化に合わせ、装備品の輸出政策を見直していくことは当然だ。 今回の決定は、安全保障政策の大きな転換と言える。 平和国家の理念に沿って輸出の条件を厳格に定めることは大切だ。 ただし今回、第3国への輸出を認める装備品は次期戦闘機に限った。 政府が今後、共同開発した装備品を第3国に輸出する場合、事前に与党と協議した上で判断することになる。 公明党の主張で厳しいハードルを課した形だ。 だが、与党協議が難航すれば共同開発に遅れが生じ、友好国との関係に悪影響が出かねない。 大事なことは、世界の平和のために日本の技術をどう生かすか、という視点に立ち、装備品の輸出の是非を判断することだ。 政府・与党は常時、装備品の輸出に関する協議を行い、認識を擦り合わせておく必要がある。 次期戦闘機 輸出解禁へ政府は説明尽くせ 2024/2/8 5:00 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240208-OYT1T50013/ 平和国家の理念を保ちつつ、時代の変化に応じた海外移転のルールを整えたい。 岸田首相はイタリアのメローニ首相と会談し、英国を含めた3か国による次期戦闘機の共同開発を円滑に進める考えで一致した。 自衛隊は現在、F15、F2、F35の3種類の戦闘機を保有しているが、このうちF15とF2は老朽化が指摘されている。 次期戦闘機はそれらの退役を見据え、2035年頃に配備を始める計画だ。 日本周辺の安全保障環境は極端に悪化している。 抑止力を高めるために最新鋭機を導入することは重要だ。 次期戦闘機の共同開発では、部品の調達などを含めて多くの企業が携わることになる。 経済への波及効果も期待できよう。 次期戦闘機を巡って課題となっているのは、共同開発した戦闘機を英伊以外の第3国に輸出することを認めるかどうかだ。 日本は長年、装備品の輸出を制限してきた。 1967年には、紛争当事国などへの輸出を禁じる限定的な武器輸出3原則を定めた。 1976年にはこれを事実上、全面的に禁輸する政府見解を決めた。 現在の防衛装備移転3原則やその運用指針も、共同開発した完成品を輸出できる相手は、開発に携わった国だけに限っている。 一方、国際社会では、共同開発した装備品を第3国に輸出するのが慣例となっている。 量産化によって経費を抑えるためだ。 輸出ルールの緩和に向けて、政府は2023年、自民、公明両党に検討を委ねたが、公明党は見直しに慎重で、与党協議は停滞している。 公明党の山口代表は 「殺傷能力を持つ武器の輸出に国民の理解は得られていない」 と述べている。 日英伊のうち日本だけが第3国への輸出を行わなければ、開発コストを補えないどころか、技術を提供しただけに終わる。 また、国際社会から日本は制約が大きい国だとみられ、今後、他の共同開発に参加しにくくなりかねない。 このため政府は、次期戦闘機を第3国に輸出する場合、相手国の政情を調べる他、装備品の使用目的や管理方法を審査するなど、厳格な条件を付けることで輸出の容認にこぎつけたい考えだ。 日本が関わった装備品が紛争を助長するような事態は、もとより避ける必要がある。 自公両党は粘り強く協議し、一致点を見い出すことが大切だ。 [社説]次期戦闘機の輸出を国際協調と抑止力の強化に 社説 2024年3月16日 19:05 https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK14C1N0U4A310C2000000/ 日本のあるべき安全保障の姿を国民的議論に発展させる契機としたい。 自民、公明両党は日英伊3カ国が共同開発・生産する次期戦闘機の日本から第3国への輸出を解禁すると合意した。 次期戦闘機は2035年の配備を目指す。 現行制度では、国際共同開発する防衛装備の完成品の輸出先は開発のパートナー国のみ認めている。 合意は武器輸出に抑制的だった基本方針の転換となるが、日本を取り巻く厳しい安全保障の現実を直視すれば理解できる。 合意は対象を次期戦闘機に限った上で、武器の適正管理などを定めた協定などを結ぶ国に絞る。 第3国が日本からの武器で武力行使に及べば、紛争を助長するとの懸念を踏まえ、戦闘中の国は除く。 輸出する際は案件ごとに閣議で決める一定の歯止めも設けた。 次期戦闘機の輸出先を広げる効果は小さくない。 生産数を増やせれば生産コストを下げられ、防衛産業の育成にも繋がる。 共同開発に当たり、日本は広い海域を防衛できる機体など自国の優先する性能を主張しやすくなる。 英伊は調達価格を下げるため、日本による輸出ルールの見直しを期待していた。 日本は平和国家の理念を守りつつ、地域安保の裾野を広げる努力は怠れない。 国際共同開発は世界の流れであり、東南アジアなどへの輸出を通じて同盟国・友好国の仲間作りを進めたい。 国際協調は多様化する脅威への抑止力になる。 そもそも2022年末に英伊と共同開発を決めた時点で輸出の問題も取り上げておくべきだった。 3カ国交渉が迫っているとして安保政策の根幹に関わる決定が急ぎ足になった点は否めない。 政府には見通しの甘さへの反省を求める。 防衛装備品を第3国に輸出すれば、供与された国の使い方によって日本も相手から狙われかねないリスクを排除できない。 合意では、この先も与党協議を経て新たな輸出案件を追加できるが、なし崩しで進めてはならない。 例えば、戦闘機やミサイルなど高い殺傷能力を持つ装備品については、諸外国の例も参考にしながら野党が求める国会の関与も話し合っていくべきだ。 防衛装備品の輸出は原則を打ち立てるのが筋だ。 例外措置を重ねるのは安保上の不安定要因になるだけでなく、企業も予見可能性が高まらないと投資しにくい。 与野党で議論を深める必要がある。 (社説)戦闘機の輸出 平和国家の信用揺らぐ 社説 2024年2月23日 5時00分 https://www.asahi.com/articles/DA3S15870275.html 殺傷能力のある兵器の輸出は、戦前の反省を踏まえ、平和国家として歩んできた日本への信用を揺るがしかねない。 国民的議論も抜きに、期限を切って拙速に結論を出すことなど許されない。 武器輸出緩和に向けた自民、公明両党の協議が再開された。 焦点は、日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を念頭に、国際共同開発した武器を日本が直接、第3国に輸出することを認めるかどうかだ。 岸田政権は2022年末、自公の提言を受ける形で、 「防衛装備移転3原則」 と運用指針を改定し、限定的ながら、殺傷兵器の輸出に道を開いた。 地対空ミサイル「パトリオット」など、日本企業が許可を得て生産した武器をライセンス元の国に輸出可能とした他、「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型について、一定の殺傷兵器を搭載しての輸出を認めた。 更に、戦闘機という殺傷能力の高い兵器にまで対象を拡大するなら、国際紛争を助長する武器の輸出国にはならないという原則の一層の空洞化は避けられない。 次期戦闘機の共同開発は2022年末に発表され、2023年末には、事業を管理する国際機関を設立する条約に3カ国が署名した。 日本にとっては航空自衛隊のF2戦闘機の後継になり、2035年の配備を目指している。 共同開発を決めた時点では、日本は完成品を第3国に輸出しない前提だったとされるが、自民党側は、日本からの輸出がなければ販路が限られ、全体の生産計画に支障が出る他、開発体制などを巡る交渉で日本が不利になるなどと主張している。 政府は2024年3月から作業分担などに関する話し合いが本格化するため、2024年3月内に結論を出すよう求めている。 公明党の山口那津男代表は 「政府の方針が国民には届いていない」 と述べた。 僅か1週間で理解が得られるはずはないのだから、はやる自民党を抑える役割を果たすべきだ。 今回の戦闘機に限って認める案も浮上しているという。 しかし、1度道を開けば、他の共同開発品、更には日本の単独開発品と、なし崩しに広がっていく恐れは否定できない。 ここで立ち止まり、平和主義の原点に戻るべきだ。 一昨年末の安保3文書の改定を受けた武器輸出の緩和は、与党の限られた議員による非公開の協議で進んでいる。 国民に長年、受け入れられてきた原則を、国会など開かれた場での議論も経ずに変えるのは、民主主義の在り方としても見過ごせない。 戦闘機輸出の自公合意 なし崩しで突き進むのか 2024/3/16 東京朝刊 https://mainichi.jp/articles/20240316/ddm/005/070/127000c 安全保障政策の根幹に関わるルールが、与党の合意だけで変更される。 国会で十分に議論されないことを危惧せざるを得ない。 英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を日本が直接、第3国へ輸出できるようになる。 難色を示していた公明党が、政府の歯止め策を受け入れ、容認に転じた。 高い殺傷能力を持つ戦闘機の輸出は、国際紛争を助長する恐れがある。 憲法の平和主義に反しかねない問題だ。 政府は2014年、従来の武器輸出3原則を転換し、防衛装備移転3原則に改めた。 武器の輸出を慎むとしてきたものを、平和貢献や日本の安全保障に資する場合には輸出を認めることにした。 2023年末には、3原則の運用指針を改定し、地対空ミサイルなど殺傷能力のある武器の完成品を含め、ライセンスを持つ国に輸出できるようにした。 今回の合意により、殺傷武器の輸出が拡大することになる。 歯止めが機能するかは疑問だ。 対象を次期戦闘機に限り、武器の適正管理などを定めた協定を日本と締結している国に輸出先を絞った上で、現に戦闘が行われている国を除外するという。 3原則の運用指針の改定を閣議決定し、個別案件ごとの閣議決定もする。 だが、協定締結15カ国のうち、どの国への輸出を想定しているのか不明だ。 戦闘が行われている国には輸出しないと言うが、将来、戦端が開かれない保証はない。 次期戦闘機は、航空自衛隊のF2の後継機として、2035年の配備開始が予定される。 開発が決まった2022年当初は、完成品を輸出しない前提だった。 英国、イタリアと協議する中で、コストを低減するため、日本も輸出を求められたという。 応じなければ立場が弱くなり、日本が要求する戦闘機の性能が実現しない可能性があると政府は説明する。 事実なら、見通しの甘さを認めたも同然だ。 今後の共同開発でも同じようなことが起きかねない。 ネットワーク性能向上などの必要性は理解できるが、経済合理性だけを優先し、原則を安易に曲げるようでは本末転倒だ。 平和国家としての日本の在り方が問われている。 なし崩しで進めるべきではない。 <社説>戦闘機輸出解禁 平和国家の理念損なう 2024年3月15日 08時15分 https://www.tokyo-np.co.jp/article/315310# 政府が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第3国への輸出を解禁する。 戦闘機は殺傷能力が高く、国際紛争を助長するとして輸出を禁じてきた平和国家の理念と価値を損なう。 再考を求める。 政府は2022年、次期戦闘機を英伊両国と共同開発することを決定。 当初は第3国輸出を前提としていなかったが、英伊から調達コストの削減を求められて方針を転換。輸出を認めるかどうか与党内で調整が続いていた。 公明党は戦闘機の第三国輸出に慎重だったが、政府が共同開発した武器輸出に関し (1)次期戦闘機に限定 (2)戦闘が行われている国は対象とせず、防衛装備品・技術移転協定を締結した国に限る (3)個別案件ごとに閣議決定する との条件を提示したため、容認に転じた。 自公は2024年3月15日にも輸出解禁に大筋合意する。 政府は近く防衛装備移転3原則の運用指針改定を閣議決定し、2035年までの配備を目指す。 ただ、政府が示した条件が 「歯止め」 になるとは言い難い。 移転協定を結んで輸出後の使い方や再移転を制限しても、他国に渡った兵器の行方を監視することはできず、国際法に反する武力行使に使われる懸念は残る。 英国など4カ国が共同開発した戦闘機ユーロファイターが第3国のサウジアラビアに輸出され、イエメン内戦で空爆に使われた例もある。 次期戦闘機の輸出を個別案件ごとに閣議決定するにせよ、政権内の手順に過ぎない。 憲法の平和主義に関わる基本政策の転換を、国会での審議を経ず、政府与党だけで決めることなど許されない。 そもそも取得費用を抑制するために輸出が必要なら、別の武器を他国と共同開発する場合も輸出が避けられない理屈になる。 残念なことは公明党が結局、連立維持を優先させ、戦闘機輸出で妥協したことだ。 「平和の党」 の理念はどこへ行ったのか。 戦後日本は、専守防衛や武器禁輸など 「平和国家としての道」 を歩み、国際的な信頼を得てきた。 その外交資源を安易に捨て去っていいのか。 国会はもとより国民的な議論を尽くさねばなるまい。
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