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結局何もしない岸田首相
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2024年3月23日 植草一秀の『知られざる真実』
2021年9月の自民党総裁選で岸田首相は「分配問題が重要」と述べた。
そのとおりだ。
しかし、岸田首相は本当に何もしていない。
失われた30年と呼ばれる日本経済の長期低迷期。
日本経済は成長力を完全に失った。
諸外国と比較すれば、日本の低迷、停滞は鮮明だ。
ドル表示の名目GDP。
1995年を100として2022年にどれだけの水準になったか。
米国GDPは333に拡大した。
中国GDPは2447になった。
24倍の規模に拡大したのだ。
日本は76に縮小した。
2022年の日本の名目GDPは1995年の4分の3に縮小した。
2022年の国税庁民間給与実態調査。
1年を通じて勤務した給与所得者。
その51%が年収400万円以下。
21%が200万円以下である。
OECDが公表する平均賃金水準。
こちらは購買力平価換算だ。
円安でドル表示価格が小さくなる影響を取り除いてある。
先進5か国と韓国の6ヵ国での比較。
1991年に日本は米国、ドイツに次いで6ヵ国中第3位だった。
2022年の順位は6ヵ国中第6位。
最下位だ。
2022年の内閣府年次経済財政報告。
世帯所得の中央値は1994年に505万円だったが2019年には374万円になった。
131万円も減った。
労働者一人当たりの実質賃金は1996年から2023年までの27年間に17%も減少した。
最近では22ヵ月連続で前年同月比割れである。
他方で大企業は史上最高益を更新している。
株価が上昇しているのは企業利益拡大を反映するもの。
株価上昇は労働者分配所得減少という「犠牲」の上に成り立っている。
日本はかつて一億総中流と呼ばれた。
中間所得者層が分厚い分配構造を有していた。
ところが、市場原理にすべてを委ねる経済政策が推進されて、世界有数の格差社会に移行した。
真面目に一生懸命働いても年収が200万円に届かない人の比率が2割を超えている。
生産活動の結果として生み出される果実をどのように分けるか。
これが分配問題だ。
これを是正するべきことは当然である。
最重要の課題は、最低所得水準を引き上げること。
これが分配問題の中核なのだ。
岸田首相は「賃上げ、賃上げ」と叫ぶが何も解決しない。
現在の状況で賃上げできるのは力の強い大企業だけ。
力の弱い中小企業は賃上げどころの状況にない。
結果として何が起こるのか。
格差のさらなる拡大だ。
労働組合は賃上げを要求する前に物価抑制を要求すべきだ。
賃上げは大企業にしか恩恵が行き渡らないが、物価抑制はすべての労働者に恩恵が行き渡るからだ。
最低賃金を全国一律で1500円にする。
これを財政支援で実現する。
これが分配問題を是正する第一歩である。
岸田首相は「分配が重要」と述べたが、すぐに「成長も分配も」に変えた。
そして、すぐに「まずは成長」に発言を変えた。
要するに、事態を是正する考えを保持していないということ。
政治を根底から刷新しなければ何も始まらない。
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