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令和にまさかの「株高バブル不況」突入か…実質賃金22カ月連続減で“失われる70万円”の深刻度
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/337260
2024/03/09 日刊ゲンダイ
日経平均はバブル期を超える史上最高値を更新だが…(C)日刊ゲンダイ
〈はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざり〉──労働者の苦悩を詠んだ石川啄木の名歌が思い浮かぶ。厚労省が7日発表した1月分の毎月勤労統計調査(速報値)で、物価の影響を考慮した「実質賃金」は前年同月比0.6%減。実に22カ月連続のマイナスとなった。
◇ ◇ ◇
1月の実質賃金の指数は、2020年の月平均を100とする基準値から18ポイントも下がっており、金額ベースに直すと実質5万7294円もダウン。ボーナス支給月(6月、12月)以外は低く出るとはいえ、このペースが続けば年額68万7528円も目減りする計算となる。いくら名目賃金が微増したところで、今なお物価上昇には追いつかない。年間の賃金が20年からの4年間で実質70万円も失われれば、暮らしは一向に楽にならないわけである。
当然、庶民の節約志向は強まるばかり。総務省の家計調査によると、消費支出(2人以上世帯)は昨年12月まで10カ月連続のマイナスだ。個人消費が6割を占める実質GDPにも好影響を及ぼすわけもなく、2四半期連続のマイナス成長である。とりわけ消費低迷による内需の弱さが目立ち、日本経済はリセッション(景気後退局面)に差し掛かっている。
今年の春闘がショボい結果に終われば、いよいよ危機的状況に陥りかねないのだが、現状は心もとない。公益社団法人「日本経済研究センター」の2月調査だと、主要企業ベースの賃上げ率は3.88%と昨年をやや上回る程度。うち基本給を底上げするベースアップ(ベア)分は2.22%で、連合が目標に掲げる「賃上げ水準5%以上、ベア3%以上」を下回る見込みだ。
「日銀が見通す24年度の物価上昇率はプラス2.4%です。この数値よりベアが上回らないと、実質賃金はなかなかプラスに転じません。ましてや、日銀の物価見通しは当たったためしがない。一時1ドル=150円台をつけた円安傾向は収まらず、予想より物価が上振れすれば、もう目もあてられません」(民間エコノミスト)
東証「圧力」が労働分配率低下を後押し
暮らしは一向に上向きならず(C)日刊ゲンダイ
今後の日本経済を左右する賃上げに水を差しているのが、実は日経平均4万円を突破した空前の株高である。
バブル期を超える史上最高値を更新した要因のひとつが、東京証券取引所の「圧力」だ。昨年の春以来、全上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を迫った結果、増配を実施する企業が急増。株主還元強化を好感し、外国人勢の旺盛な「買い」を呼び込んだ。
しかし、企業が稼ぎを配当に回す分、割を食うのは従業員の賃金である。株主最優先で従業員にはちっとも還元されず、稼ぎを人件費に回す割合を示す「労働分配率」は驚きの低空飛行が続く。財務省が4日に発表した昨年10〜12月期の法人企業統計をもとに試算すると、大企業(資本金10億円以上)の分配率は38.8%と、この50年で最低水準に落ち込んだままだ。
「ここ数年は『モノ言う株主』であるアクティビストファンドが跋扈し、日本の大企業はますます株主最優先の経営が目立つ。常に株主の顔だけを見て、収益改善で株価上昇につながるからと『値上げ』には積極的なのに、従業員の顔は見ず『賃上げ』には消極的です。バブル期超えの株高は従業員の犠牲の上に成り立っています」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
現状は日本中が好景気に沸いた平成のバブル期とは大きく異なる。令和の時代は、まさかの「株高バブル不況」に突入しかねない。
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