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※紙面抜粋
※2024年2月24日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
庶民生活に恩恵ナシ(C)日刊ゲンダイ
34年前といえば、バブル経済のまっただ中。大谷翔平選手がオギャーと産声を上げる5年ほど前の話である。米メジャーを代表するまで立派に成長した軌跡よりも長い間、二度と届かないと思われてきた「天井」がついに突き抜け、メディアはお祭り騒ぎ。日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新してから一夜明けた23日、3連休初日の大新聞は馬に食わせるほど関連記事であふれ返っていた。
シティグループ証券は4万5000円、野村証券と大和証券は4万3000円、SMBC日興証券は4万2000円──。証券各社は年内の上値予想を相次いで上方修正。最高値に浮かれているが、実感のない人が大半だろう。株高の恩恵は家計に行き渡らず、実質賃金は21カ月連続マイナス。サイフの紐は固く、史上空前の好景気に国全体が盛り上がっていた34年前とは雲泥の差だ。
爆上がりの主役は海外マネー。34年前に5%に満たなかった日本株の外国人保有比率は現在、30%を優に超える。海外勢は今月16日まで7週連続で買い越し。1月の買越額は2兆円を突破。売買額の3分の2を占め、海外勢が株高の恩恵の多くをかっさらっていく。
昨年春に東証が上場企業にけしかけた自社株買い、今月上旬に金融庁が損保大手に求めた政策保有株(企業間で持ち合う株式)の売却加速、1月スタートの新NISAなど“官製相場”のお膳立ても海外勢を引きつけている。日銀がETF購入を通じて株高を支え、多くの日本企業の事実上「筆頭株主」になっている歪んだ状況も放置されたままだ。
「安いニッポン」を象徴する歴史的な株高
不動産不況で経済が先行き不透明な中国から日本への活発な資金移転という外的要因もある。中国の富裕層までもが日本株に殺到。中国政府の規制で直接購入できないが、日本株に連動するETFを買いあさり、一部は高騰して取引が一時停止する事態が起きている。
何から何まで他力本願の「バブル期超え」で、往時の日本経済の勢いを映し出していた34年前のような熱気には乏しい。とりわけ手放しで喜べない株高要因が円安だ。
円相場は再び150円台まで下がり、ドル換算で見た日本株は割安となる。日経平均が2021年2月に3万円台をつけた際、ドル建てだと280ドル前後。それが3万8000円を突破した直近でも約250ドルで、まだ1割程度安い計算となる。
バブル期にブランド品を買いあさった若者の姿が、インバウンドに取って代わられたのと同様、歴史的な株高は「安いニッポン」を物語る。実体経済と乖離しているだけに、長続きするとは限らない。米国の株バブルに便乗して上昇してきた面もあり、何かの拍子で米景気がコケれば一時的な株高で終わりかねない。
そもそも、この34年間で米ダウ工業株30種平均は14倍、ドイツのDAX指数は9.5倍、中国の上海総合指数は1990年12月の基準値から30倍に跳ね上がっている。日本市場の存在感低下は時価総額の世界ランキングを振り返れば一目瞭然だ。
89年末には22兆9320億円で1位のNTT以下、日本興銀、住友銀、富士銀、第一勧銀がトップ5を独占。財テクブームを追い風に邦銀がイケイケだった時代を表すが、現在100位以内の日本企業はトヨタ自動車(24位)のみ。米国を代表する巨大IT企業、マイクロソフトとアップルの2社だけで東証全体の時価総額に匹敵する。
日本の株価はずっと世界に置いていかれ、ようやくバブル崩壊前の「振り出し」に戻ったに過ぎない。なぜ、最高値更新に34年もかかったのか。改めて「失われた30年」の「とてつもない失政」の歴史的検証が必要だ。
34年で中間層が消滅した「貧しいニッポン」
中曽根政権下の85年。米国の過度なドル高是正要求に屈し、竹下登蔵相(当時)が「プラザ合意」に調印。急激な円高不況対策と日銀の金融緩和であふれた資金が株式や不動産に向かった。
その後、行き過ぎた不動産融資で地価が高騰。「一生働いてもマイホームが持てない」との批判がうず巻き、海部政権下で大蔵省が規制に乗り出すと、地価や株価が暴落した。バブルを膨らませたのも、崩壊させたのも自民党政治の責任である。
多額融資による株や不動産投資がアダとなり、企業は窮地に陥り、銀行は不良債権処理に追われた。「失われた30年」のスタートだ。90年代後半には山一証券や日本長期信用銀行など大手金融機関が相次いで破綻。この間、金融行政の失敗で大蔵省の信用はガタ落ち。その決定打が「ノーパンしゃぶしゃぶ」の接待汚職事件だった。
権力失墜の大蔵官僚に取って代わって活躍の場を得たのが、竹中平蔵氏のような米国流の新自由主義者たちだ。竹中氏は小渕・森両政権の政府委員となったのを足がかりに、小泉政権でとうとう民間大臣として入閣。構造改革を加速させ、規制緩和、自由化、民営化、グローバル化に邁進したが、負の遺産を数え上げればキリがない。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「小泉・竹中コンビの失政の数々で最も罪深いのは、派遣法の規制緩和です。年次改革要望書を送り付ける米国の言いなりで、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と称賛された日本企業の良さを“弱み”と喧伝。下請けにまで気を配る家族型経営や、技術者を育てていく終身雇用をぶっ壊した。賃金も低く雇用も不安定な非正規雇用を大量に生み出し、格差は拡大。GDPの6割を占める個人消費を支えた分厚い中間層を失い、今なお日本は低成長から抜け出せないままです」
大企業優遇の見返りが裏金20年
日本のGDPはこの間、10年には中国に、昨年はとうとうドイツに抜かれ、世界4位に転落。OECDによると、22年までの過去30年間で米国の名目平均年収は2.6倍、ドイツやフランスも2倍程度に増えたが、日本はほぼ横ばいだ。加盟34カ国のうち21位に沈んでいる。
実質賃金を比べると、21世紀に入って下がっているのは、先進7カ国で日本だけである。
昨年の春闘の賃上げ率は3.6%で「30年ぶりの上昇率」と岸田首相は胸を張るが、89年の5.17%を大幅に下回る。当時も物価は上昇していたが、賃金の伸びが上回り、89年の実質賃金は前年比1.9%増。昨年の実質賃金は2.5%減で、前年比マイナスは2年連続だ。もはや「安いニッポン」どころか、「貧しいニッポン」と化している。
内需をアテにできない大企業もすっかり外需頼み。34年前に5割未満だったトヨタの海外販売比率は現在8割超。89年末に時価総額世界一だったNTTは今やグループ約900社の3分の2が海外企業だ。約34万人のうち海外従業員がほぼ半数を占める。こうした大企業にすれば、「貧しいニッポン」を決定づけたアベノミクスの円安誘導の大失策も、まぶしく映ったことだろう。
「海外投資家が好感する『収益改善』の由来は、円安と値上げ。バブル期超えは庶民生活の犠牲の上に立っています。メディアも『34年ぶり』がニュースになる裏側に目を向けるべきで、この間、自民党政治は大企業と米国の顔色だけをうかがい、国民には見向きもしない。それを如実に示すのが裏金20年です。安倍派の裏金が5年間で6億円超に上るのも、優遇策の見返りに大企業がパーティー券を大量に購入したおかげ。内部留保を500兆円以上も貯め込み、賃金も上げず、設備投資もせず、円安政策にあぐらをかき、自民党と癒着すれば大企業は株高で安泰。このフザケタ構図を一変させるには自民を下野させるしかありません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
この相場もまた自民の失政のせいで「うたかたの夢」で終わらないことを祈るばかりである。
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