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私の脳裏を飛び交う「神奈川沖浪裏三図」 庶民の怒りが巨大な波となって悪漢どもを木っ端みじんに 特別寄稿
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/336600
2024/02/24 日刊ゲンダイ
葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》東京富士美術館蔵
株価がバブル後の史上最高値を更新して沸いていますが、この調子に乗った感じには怖さを覚えます。
しばらくの間、日本の株式市場はべた凪状態でした。日銀がETF(上場投資信託)の買い入れなどで相場をコントロールしていたからですが、それが緩んできたところで「日本株がいま割安だ」と外国人投資家の資金がどんどん日本の株式市場へ流入してきた。そして、それに煽られ、日本の投資家も「ついに時が再び巡ってきた」みたいな感じになっている。「貯蓄から投資へ」という、あのとんでもない号令にも煽られています。
しかし、これは非常に愚かと言うか、我を忘れていると言うか。
株価が上昇する時には、人々は必ず売るタイミングを探りながら買い込んでいるものです。外国からの投資は特にそう。行けるところまで煽り上げ、売り逃げる。そうした資金がいまどんどん流入してきている。
つまり、いまのような異常な上げ相場になっている時というのは、売り逃げるタイミングを虎視眈々と狙っている人たちがドロッと入ってきている状態だということ。それに誘発されて日本の投資家もどんどん買いに入ると、とんでもないとばっちりを食うことになりかねない。賢さを感じない浮かれ株高が、どういう結末をもたらすか……。要注意だと思います。
そんなことで最近、私の頭の中を、葛飾北斎の富嶽三十六景の一図「神奈川沖浪裏」(写真)のイメージが行き来するんです。
ウクライナ問題やパレスチナ問題、中国の怪しげな動きやほくそ笑むプーチンなど、そういう実に剣呑な、巨大な荒波に翻弄されている小舟上の可哀想な我ら、というイメージがまず浮かぶ。
一方で、それとは全く逆に、あまりにも剣呑すぎる世の中に対する我らの怒りが、あの大波の牙や鉤爪となって、世の中をコントロールしていると思っているやつらに襲いかかる。そんなふうになってみたいもんだな、というイメージもある。
小舟に乗っている人たちが、ようやく相場が動き出した日本の株式市場に勢い込んで乗り出した。日銀のしばりから解放されて、ついに自由航行ができると浮かれている。ところが、いざ漕ぎ出してみれば、自由航行どころか、ものすごい勢いであの大波の逆襲に襲われることになる、というようなイメージもあります。
日本の金権体質の政治家たちも無謀な投資家と同様に大波にのみ込まれてきりきり舞いし、政治生命を奪われる。そんな光景も見たい。
荒波に翻弄される我ら庶民、翻弄される投資家、翻弄される政治家──。そんな3つのイメージが脳裏を飛び交います。「神奈川沖浪裏三図」ですね。私が一番見てみたいのは、庶民の怒りが巨大な波となって悪漢どもに襲いかかり、木っ端みじんにしてやるという浪裏図です。
そう、我らが最強の神奈川沖浪裏になろうぜ!
浜矩子 同志社大学教授
1952年、東京生まれ。一橋大経済学部卒業後、三菱総研に入社し英国駐在員事務所長、主席研究員を経て、2002年から現職。「2015年日本経済景気大失速の年になる!」(東洋経済新報社、共著)、「国民なき経済成長」(角川新書)など著書多数。
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