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※紙面抜粋
※2024年2月13日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
上から下まで総汚職の自民党、五十歩百歩の面々たちが次期総裁選に色気見せ…(左から岸田首相、高市早苗、石破茂、河野太郎3議員)/(C)日刊ゲンダイ
自民党派閥による裏金づくりで安倍派の池田佳隆衆院議員(自民党除名)と柿沼和宏秘書が立件されてから、優に1カ月が過ぎた。
政治資金収支報告書への不記載額3500万円以上で線引きした東京地検特捜部の立件基準にはスッキリしないものの、刑事処分された10人の一部にはすでに司法判断が下された。東京簡裁は政治資金規正法違反(虚偽記入)で略式起訴された安倍派の谷川弥一元衆院議員、二階俊博元党幹事長事務所の梅沢修一秘書、岸田派の佐々木和男元会計責任者に対し、罰金100万円、公民権停止3年の略式命令を出した。谷川の次女の三宅浩子秘書については、罰金30万円と公民権停止3年の略式命令。いずれも1月26日付だ。起訴された池田と柿沼は保釈され、残る4人は在宅起訴されている。
その一方、渦中にあるはずの自民党は今もって緩慢だ。
岸田首相肝いりの「政治刷新本部」のこれまでの動きは、派閥解消ナシ、裏金の実態解明ナシ、悪質すぎる安倍派幹部の処分ナシの愚にもつかない「中間とりまとめ」を発表しただけ。施政方針演説では「信頼回復の第一歩として合意した『中間とりまとめ』においては、政治資金の透明性やコンプライアンスの徹底など運用面での改革を先行して進めつつ」なんて鋭意取り組んでいるような口ぶりだったが、デタラメもデタラメだ。先週になって政治資金に関する法整備検討、党機能・ガバナンス強化、党則などの見直しを議論するという3つのワーキングチームを設置する悠長さ。安倍派幹部への離党要求もいつの間にやらウヤムヤだ。
スッカスカ聴取の結果を提出
内閣支持率ばかりでなく政党支持率も低迷する中にあっても、自民党は一事が万事、この調子。「政治とカネ」が再度テーマとなる14日の衆院予算委員会集中審議を控え、自民党は13日にも裏金議員への聞き取り調査結果を野党に提示するというが、中身は見るまでもなくスッカスカだ。聴取側はスネ傷の小渕優子選対委員長ら執行部6人と弁護士。質問内容は事前通告された。5分程度で終わるケースもあり、下馬評通りのお手盛り調査で乗り切れると踏んでいるのだから、野党も国民もナメられたものだ。
そもそも上から下まで総汚染の自民党で、首相が「改革」を叫ぶこと自体がマンガだが、五十歩百歩の連中は性懲りもなく足の引っ張りあい。自民党支持者も含む国民が求める全容解明はそっちのけで、今秋の総裁選に向けて走り出している。「ポスト岸田」をうかがう蠢きの表面化だ。
能登半島地震発生を受けて2025年大阪・関西万博の延期を岸田に進言するなど、スタンドプレーが十八番の高市経済安保相と取り巻きは、活動を本格化。安倍シンパの高鳥修一衆院議員が代表世話人を務める党内グループ「保守団結の会」は先週、顧問の高市の講演会を党本部で開き、隔週木曜に定期会合を開くことを決めた。派閥が例会を開いてきた木曜昼にブツけるあたり、事実上の派閥化だ。高市が主宰する外交・安保に関する勉強会「『日本のチカラ』研究会」との連携を深めるとみられている。
焼け太りでかつてなく強まった総裁権限
報道各社による世論調査の「次期首相」で独走状態の石破茂元幹事長は週末、地元の鳥取市で国政報告会を開催。記者団の取材に対し、地元で党総裁への期待があることについて「地元のみなさんが支えて下さったおかげだ。期待がある以上、お応えはしたい」と出馬に意欲をにじませた。
これに先立ち、石破も出席した党鳥取県連の会合では、茂木幹事長への嫌悪感をあらわにして茂木派の退会を表明した青木一彦参院議員が「地方のことが分かる人を国政のトップに担がないといけない。微力だが、私は自由な形で動ける」と石破支援の可能性を示唆。「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元官房長官の長男の一言は重みがある。
ライバルの動きに黙っていられなくなったのか、河野デジタル相も「ルールを破ったことへのけじめは一刻も早くつけなければならない。速やかに対応すべきだ」と正論をぶって存在感をアピール。執行部にワーキングチームの議論より処分を先行するよう求めた。内ゲバは腐敗・保身集団の末期症状のひとつ。安倍1強の残滓にあぐらをかいてきた自民党は、希代のペテン師の横死を境に反転し始めた。反日カルト集団の旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との癒着、権力を引き寄せ握り込むための裏金づくりが白日の下にさらされ、抜き差しならない状況にある。内部崩壊に向かうのなら見ものだが、どうなるか。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「次期総裁選に色気を見せている面々の頭にあるのは、派閥が表面上消滅することで自由に飛べるという目算でしょう。派閥の縛りによって足かせとなっていた20人の推薦人集めのハードルは下がる。一方で、派閥からカネと人事を切り離し、政策集団に衣替えしたことで総裁に権限が集中し、その力は格段に強まった。凄まじいほど権力に執着する自民党は、全党で危機感を共有している。激しいポスト岸田レースを演じることで世間の目をくらまし、例によって党内の疑似政権交代でウヤムヤにしてしまう展開は大いにあり得る。焼け太りした岸田首相が再選するのか、新たな顔が出てくるのか。いずれにせよ、かつてないほどの力を持つ総裁になるのは確かです」
ヘタる自民党、知恵ない野党
この期に及んでも国民不在の身勝手にいよいよ有権者の怒りも頂点だ。政治とカネの問題の抜け穴を塞ぐ政治資金規正法の改正案をめぐっては温度差のある野党だが、安倍派幹部らの政治倫理審査会への出席要求では一致。今こそ、野党には大胆な戦略が求められている。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言った。
「萩生田前政調会長の『不明』だらけの政治資金収支報告書にしろ、二階元幹事長にわたった50億円の政策活動費にしろ、自民党の常識は国民からすれば強烈。テレビの情報バラエティー番組までが裏金事件を取り上げて批判するようになり、自民党にとって相当キツイ展開です。いわゆるバラエティー世論はボディーブローのように効いてくる。野党からすれば、自民党を政権から引きずり降ろすこれほどのチャンスはそうそう巡ってこない。4.28衆院3補選は解散・総選挙含みでもあるのに、野党は相変わらず締まらない。今年度予算案は3月2日までに衆院を通過すれば年度内に自然成立する。自民党はそこを乗り越えさえすればどうにでもなる。ヤマ場を迎える来週の日程を左右する今週の動きは重要です。野党にはこの一点でまとまる、あるいはこの一線越えは許さないというガイドラインの下、共闘する知恵はないのか」
野党が自民党を改めなければ、元の木阿弥。その先には悪政の拡大再生産しか見えない。
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