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※紙面抜粋
※2024年2月7日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
あー、つくづく口先だけの人(岸田首相)(C)日刊ゲンダイ
「政治の信頼回復に向けて、私自身が先頭に立って、これらを必ず実行してまいります」
1月30日に衆参両院で行われた施政方針演説。自民党派閥の政治資金パーティーの裏金事件を巡り、こう声を張り上げていた岸田首相の決意は一体何だったのか。
連日の国会答弁を聞く限り、先頭に立って「信頼回復」に努める気はさらさらなく、むしろ、先頭に立って積極的、意図的に事実を矮小化し、隠蔽を図っているかのようだ。
そもそも、今回の裏金事件について、自民党は党を挙げて政治資金収支報告書の記載ミスかのように吹聴しているが全く違う。政治資金だったのであれば、政治資金規正法にのっとって、収支報告書に記載すればよかっただけ。それなのに多くの国会議員が複数年にわたって常習的に多額の金を簿外処理していたのであり、企業が売上金の一部を帳簿に載せず、税務当局から「所得隠し」と指摘されているのと同じ。つまり、表に出てこないカネだったからこそ「裏金」と指摘されているわけだ。
それなのに2日の参院本会議の代表質問で、「裏金」の定義を問われた岸田は、「一概に定義をお答えすることは困難」などと言い放っていたから唖然呆然。ああだ、こうだと屁理屈をこねて「裏金」の表現すら認めない。岸田がそんな調子だから、自民党の議院運営委の理事が野党の「裏金」発言にイチャモンをつける事態になるのだ。
マネロン犯罪集団の自民党にヤル気なし
だが、これほど国民を愚弄した話はない。長年、こっそりと隠してきた「裏金」がバレたために慌てて収支報告書を訂正して「表金」に“マネーロンダリング”するような組織的犯罪集団と言ってもいい自民党が、野党に対して、あれこれ文句を言ったり、注文をつけたりできる立場にないのは明らかではないか。
岸田は施政方針演説で、「各党との真摯な協議を経て、政治資金規正法の改正など法整備を実施する」とも言っていたが、これも口先に過ぎない。
野党が実態解明に向けた第一歩として要求した「裏金議員」リストだって、安倍、二階両派で2020〜22年にキックバックを受けた議員名と金額を羅列しただけ。使途はもちろん、現職以外の名前も伏せられたままだ。
立憲民主党の岡田幹事長は5日の衆院予算委で、岸田に向かって「(リストには)何に使ったのかも書かれていない。どう考えているのか」と呆れていたのも当然だろう。
これでは真相解明もヘッタクレもない。20年までの3年間で約3000万円の不記載が明らかになった岸田派について問われた岸田自身が、「確認できていない」などとシレッとした表情で答えていたから何をかいわんやだ。大体、問題が発覚したのは昨年11月なのだから、国民に対して本気で申し訳ないと考えているのであれば、とっくに党内調査している。
それなのに聞き取り調査は2日から、全国会議員のアンケートも5日に始めたばかり。例によって、いつもの「フリ」でごまかす気なのだろう。
要するに岸田自民はヤル気なし。裏金事件を悪いと考えておらず、ヘタを打った、バレるとは思わなかったぐらいの感覚なのだ。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「最大派閥の安倍派がボロボロになり、党内に遠慮する必要はなくなった。今こそ、国民生活のための政治ができるはずなのに、何もしない。政治家としての能力が欠落しているとしか思えません。『火の玉』や『先頭に立って』などと勇ましい言葉を並びたてながら、まったく何もしない。人間としてみっともない限りです」
自民党の辞書に「反省」の文字はない
「嘘はバレても徹底的につき通す」──。とりわけ安倍派議員の姿勢で見られるように、もともと自民党の辞書に「反省」の文字はなく、反省はフリだけ。鉛筆をナメナメした検察によって、たまたま逮捕、起訴を免れた裏金議員が、議員辞職どころか、今もなお除名もされずに離党もしない。あろうことか、何事もなかったかのような顔で平然と予算委員会で質問に立ち、政府の姿勢をただしているのだから国民も仰天しているに違いない。
こんなデタラメがまかり通っているのも、「先頭に立つ」と言っていた岸田の嘘八百の姿勢が露呈したのが要因だろう。
自身の疑惑に対してもユルユルだ。6日の衆院予算委では、自身の首相就任に関して行われた「祝う会」のパーティーをめぐる問題を追及されたのだが、「私自身とは異なる団体が開催した会ということなので、任意団体が(今後)開催するかどうか、私が申し上げる立場にない」などとノラリクラリ。
立憲の米山議員は「総理は(このパーティーは)『合法だ』と言った。つまり、皆が『この脱法行為をやってもいい』と。それなら政治資金規正法なんて無意味ではないか。ありとあらゆる任意団体が(パーティーを)やって寄付したらよくなるではないか」と追及していたが、その通りだ。
任意団体であれば、パーティーで集めた多額のカネを寄付しても自由。報告しなくても規正法の対象外となれば、まさに政界はやりたい放題の脱税天国になる。こんなバカな話があるわけがない。
すべてが人任せで問題から逃げている岸田
6日付の朝日新聞が報じた、盛山文科相が21年の衆院選で、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)の関連団体から支援を受けていたという報道についても、岸田は旧統一教会との関係を断つとした自民党の方針を「閣僚に対していま一度確認する」と言うだけ。「引き続き(盛山には)職責を果たしてもらいたい」と、まるで他人事だったから呆れてしまう。
二階元幹事長が幹事長在任中の5年間に受け取った約50億円に上る政策活動費の問題を問われても、「適切に使用されていると認識している」と繰り返すばかり。だが、5年間で50億円といえば、1年間でざっと10億円。1日約260万円、1時間で約11万円もの支出だ。
常識的に考えても、すべての金を政治資金として使ったとは考えられない。国税庁幹部が国会で答弁していた通り、政策活動費は個人の雑所得であり、年末に余っていれば納税義務が生じる。納税していなければ当然、脱税となるわけで、それこそ総理、総裁として「先頭に立って」調査を指示するべき案件ではないのか。
政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう言う。
「『先頭に立つ』のであれば、どこに向かうのか。方向性を示すのが当然ですが、何もない。すべてが人任せで、自分は問題から逃げているのです。政治資金規正法の改正も口にしていますが、どの部分をどう変えるのかという具体的な提示は一切ない。やっているフリにもなっていません」
何を問われても真正面から答えず、後ろ向き答弁ではぐらかす。案の定と言うのか、これほど無責任の男はいない。この口だけ鉄面皮につける薬は、支持率1桁と市民団体の告発、あらゆる選挙で完敗させて鉄槌を下す以外にない。
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