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※紙面抜粋
※2024年2月6日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
安倍晋三元首相(左)も“ゴッドマザー” 母・洋子さん(右)に頭が上がらなかった(C)日刊ゲンダイ
安倍晋三元首相の母・洋子さんが4日、入院先の都内病院で亡くなった。95歳だった。
1928年6月、岸信介元首相の長女として生まれ、51年に毎日新聞記者だった安倍晋太郎氏と結婚。後に夫は政界に進出し、外相となり、現在の安倍派につながる派閥の領袖となった。3人の子をもうけ、夫の死後は選挙区を継いだ次男の晋三の政治活動を支え続けた。三男の信夫氏は岸家の養子となり、防衛相を務めた。ちなみに、佐藤栄作元首相は叔父にあたる。
名門政治一家を三代にわたって支え、父が戦前の東條英機内閣で商工大臣として初入閣して以降、実に約80年もの間、永田町を見続けてきた。「政界のゴッドマザー」と呼ばれたゆえんである。大物政治家に囲まれて生きてきただけに、強烈なプライドの持ち主でもあったようだ。
そんな母親に安倍は常に気を使い、頭が上がらなかったという。父・晋太郎の時代から安倍家を取材してきた政治評論家の野上忠興氏はこう語る。
「総理大臣の娘として育った洋子さんには、ある種の独特な雰囲気があり、まさに『ゴッドマザー』と言える存在でした。夫の晋太郎さんの選挙応援に入ると、洋子さん目当てで多くの有権者が集まってくる。地元・山口県では特別な存在でした。晋三さんはそうした母の姿を見て育ち、ある意味、畏敬の念を抱いていたと言えます。政治家として育ててくれたのも洋子さんでした。だから、大人になってからも頭が上がらなかったのでしょう」
岸は戦後、A級戦犯容疑者として獄中生活を送った後、政界復帰からわずか4年で総理にまで上り詰めた。新憲法の制定直後から憲法改正を主張。日米安保条約の改定に固執し、国民の猛反発を受け、改憲の志半ばに内閣退陣に追い込まれた。
そんな昭和史の「光」と「闇」に深く関わり、「昭和の妖怪」と呼ばれた父の背中を見守り続けた洋子さんに、息子の安倍が大きな影響を受けたことは想像に難くない。安倍の改憲タカ派思考の原点は母であり、祖父でもあるということだ。
日本でも名だたる政治一家が、戦後政治に何をもたらしたのか。安倍家三代を支えたゴッドマザーがついに鬼籍に入ったのを機に、その検証が必要である。
改憲へのこだわりは母を見返すため
極めて異常なのは、旧態依然とした権力の世襲だ。安倍のみならず、実弟である信夫も地盤を長男・信千世衆院議員に引き継がせている。世襲は今や「当然の慣習」として自民党内でまかり通り、安倍・岸両家とは縁戚関係にある麻生副総裁もまたしかり。祖父は吉田茂元首相、さらにルーツをさかのぼれば「維新の三傑」と称される大久保利通までたどり着く。究極の世襲政治家である。
近世と呼ばれる時代じゃあるまいし、世襲だらけの日本では政治一家出身でなければ国会議員になれない空気すら漂う。ホンの一握りの「特権階級」が、その地位を連綿と子孫に継承し、権力の私物化を生み出したのである。
今なお自民党が「結党以来の党是」に掲げる改憲への執念も完全に歪み切っている。特に安倍にとっての改憲は、祖父が成し得なかった「悲願」だった。現行の平和憲法を米国からの「押し付け」と捉え、「戦後レジームからの脱却」として改憲を訴えていたが、「家訓」を守っていたのに過ぎないのではないか。
「祖父が果たせなかった改憲について、晋三さんが『実現する』と言っていたのは確かです。しかし、こだわった本当の理由は、畏敬の念を抱く母親の実父が成し得なかった改憲を実現させることで、母を見返してやりたいとの思いがあったからでしょう。洋子さんは地元回りが忙しく、晋三さんの身の回りの世話をする機会が少なかった。そのため、晋三さんは『母の愛情を受けられなかった』と思い詰めていました。母を振り向かせるため、改憲に固執していたのではないかとも思えてきます」(野上忠興氏=前出)
そんな幼稚で薄っぺらな動機による改憲を実現させるため、安倍は権力維持に固執してきたとも言えよう。
権力を極めることで昭和からの闇にフタ
2014年には、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定により支持率が下落。すると突然、「アベノミクス解散」と意味不明な理由で解散総選挙に打って出た。野党の準備不足もあり、自民が過半数を維持すると、翌15年には安保法制の強行採決に突き進んだ。
さらに、17年にはモリカケ問題で「権力の私物化」の猛批判を招き、政権が大炎上する中、突如、北朝鮮の脅威をあおり立て「国難突破」を大義に再び解散に踏み切った。新党を率いた小池都知事の「排除」発言による敵失で勝利し、またしても「信を得た」とばかりに、モリカケ問題を吹き飛ばし、その後もやりたい放題を繰り返した。
「だまし討ち」のような私物化解散で「安倍1強」時代を構築。世論の反発を無視して特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法をまとめ、7年8カ月にも及んだ歴代最長政権下で、日本を米国と一緒に「戦争できる国」へと変容させてしまった。
それもこれも「ゴッドマザー」がわが子に託した「昭和の妖怪」の遺志が背後に横たわっていたのか。安倍のルーツや生い立ちをたどるルポルタージュ「安倍三代」の著者で、ジャーナリストの青木理氏はこう言った。
「晋三氏の学生時代の恩師や会社員時代の上司に取材しましたが、彼の口から政治的発言を聞いたことのある人は一人もいませんでした。ごく平凡なおぼっちゃまで、名門政治一家に生まれなければ政治家になることもなかったでしょう。しかし、そんな凡人が三代世襲の“サラブレッド”として政界の階段を駆け上がり、歴代最長政権を築くに至った。岸信介の孫というブランドに加え、彼なりの嗅覚もあったのでしょうが、まさに世襲政治の弊害を象徴するような人物です」
志なきボンボンの下に集まった劣悪な提灯持ち
安倍の横死後、祖父の代から脈々と受け継がれてきた統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との蜜月関係や、最大派閥に成長した安倍派の政治資金パーティー裏金問題が、釜のフタが開いたように噴き出したのは歴史の必然ではないのか。
安倍本人がフタに過ぎず、権力の頂点を極めることで、日本政治の闇と負の遺産を覆い隠す役割を全うしたのかもしれない。
「志なきボンボンの下に劣悪な提灯持ちばかりが集まり、なにをやっても許されるとばかりに自民党全体のモラルは崩壊、ここにきて裏金事件として噴出した。この約20年間、権力の中枢を握り続けてきた清和会(安倍派)の裏金づくりが最も大規模かつ悪質なのは決して偶然ではありません。権力は腐敗する、絶対的な権力は絶対に腐敗するという、古くからの警句どおりということです」(青木理氏=前出)
今こそ、三代にわたって岸とその子孫が残した日本政治の負の遺産を総括すべきだ。キングメーカー然として政権中枢に居座る麻生をはじめ、「俺様特権意識」が染みついた政治屋の一掃が必要である。
しかし、岸田首相にそんな荒業ができるはずもない。岸田自身が3代目の世襲政治家であり、長男に跡目を継がせようともくろんでいる張本人。そもそも、首相就任以降、「アベ政治」のデタラメ手法を引き継いで、総理の座にしがみついているような人物である。
今の岸田自民党に日本政治史の負の遺産との決別など期待するだけムダ。これ以上、こんな連中に政権を任せていたら、この国は沈みゆく舟だ。結局、有権者ひとりひとりの一票で腐敗政治に怒りの鉄槌を下すしか、歴史を総括する手だてはない。アベ政治を生み落とした「ゴッドマザー」の死をきっかけに、国民も目を覚ますべきだ。
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