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※2025年1月21日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年1月21日 日刊ゲンダイ2面
就任演説は30分ほどだった(C)ロイター
就任早々、独裁者のごとく大統領令を乱発し、仰々しい演説をかましたトランプ新大統領。人事や宣言を見ていても、前回よりさらに過激、乱暴になることは間違いないが、これでいい思いをするのは側近だけだ。世界が身構える歴史の暗転。
◇ ◇ ◇
この先の4年間を暗示するような空模様の中、米国のドナルド・トランプ大統領が20日正午(日本時間21日午前2時)、2期目の任期をスタートさせた。米国史上最高齢の78歳220日、かつ有罪評決を下された初の国家元首が爆誕。2カ月前の大統領選ではポピュリストの真骨頂を発揮し、選挙人獲得数だけでなく、総得票数でも圧勝だった。ところが、満を持して迎えたはずの2度目の就任式はイレギュラーの連続。先行き不透明感は増すばかりである。
この時期のワシントンは氷点下まで冷え込む日が珍しくないが、就任式当日も寒波に襲われた。気温は最高マイナス3度、最低マイナス11度。風速数メートルのやや強い風が吹き、体感気温はグッと下がる。慣例通り、連邦議会議事堂前の屋外スペースで宣誓、就任演説に臨むのは老骨をムチでしばくようなもの。「私は人々が苦しんだり傷つくのを見たくない。何時間も屋外にいる支持者にとって危険な状況だ」というトランプの鶴の一声によって、会場は40年ぶりに議事堂内の広間に変更。議事堂からホワイトハウスまで行う恒例のパレードも取りやめた。代わりにパブリックビューイングを実施したワシントン中心部の競技場(約2万人収容)では、開始5時間以上前から数千人が列をなした。
例年より縮小した就任式は、出席者の顔ぶれも様変わり。これまでは慣例で海外首脳は招かれなかったが、「アルゼンチンのトランプ」と呼ばれるミレイ大統領、エルサルバドルのブケレ大統領、エクアドルのノボア大統領ら右派指導者が参列。欧州勢ではイタリアのメローニ首相のほか、移民排斥を掲げる極右政党の党首らが集った。
それ以上に目を引いたのが、世界の富を牛耳る「上位1%」の勢ぞろいだ。新設する政府効率化省トップに就く起業家のイーロン・マスク氏はもちろんのこと、グーグルのスンダー・ピチャイCEO、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、フェイスブックを運営するメタのマーク・ザッカーバーグCEO、アップルのティム・クックCEOが出席。GAFAが揃い踏みだ。オープンAIのサム・アルトマンCEOも顔を出した。米国内でのサービスを再開させた中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の周受資CEOも駆けつけた。
過去最高2億ドル超の寄付
返り咲きにあたり、トランプが組織した就任式実行委員会が集めた寄付金は過去最大の2億ドル(約310億円)以上。8年前から倍増だ。そのうち、アップルとオープンAIのトップは個人で100万ドル(約1億5500万円)を拠出。グーグルやマイクロソフトのほか、ボーイングなども法人として同額を寄付したという。18日に始まった就任式をめぐる公式行事は21日まで。税金が投入されるのは宣誓式や昼食会のみで、残りは実行委員会持ち。寄付金額に制限はない。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「トランプ氏にとって就任式は2度目。いくら若作りをしていても、氷点下の屋外行事はしんどい。かったるいからパスしたのが本音ではないか。金持ち優遇も見え隠れします。いわゆるスポンサーには快適に過ごしてもらおうということ。熱烈なトランプ支持者は慣例通りの式典を行わなくても、所構わずお祭り騒ぎで大盛り上がりですから」
日本からは岩屋毅外相、第1次トランプ政権で駐日大使を務めたハガティ上院議員に招待されたという片山さつき参院議員、メラニア夫人枠で安倍晋三元首相夫人の昭恵氏も出席した。
米国第一主義に象徴されるトランピズムの再来に身構える世界の視線をひとり占めしたトランプは、「米国の黄金時代が今から始まる」と口火を切り、「米国の完全な復興と『常識の革命』を始める」などと演説。2度の暗殺未遂について「私の命が救われたのには理由がある。私は米国を再び偉大にするために神によって救われた」と振り返り、「きょうから性別は男性と女性の2つだけであることを米国政府の公式方針とする」と言い出し、民主党政権が推進してきたDEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みを全否定した。
「非常事態」「緊急事態」連発、パリ協定離脱
パブリックビューイング会場周辺は支援者でギッシリ(C)共同通信社
初日に100本以上の大統領令に署名すると喧伝されていたものの、目玉政策の関税強化は棚上げ。一方、不法移民の大規模強制送還には着手。南部国境に国家非常事態を宣言し、国境管理に関する10本の大統領令に署名した。インフレを抑え込むとして、国家エネルギー緊急事態も宣言。パリ協定から離脱した。
予測不能なトランプらしい展開。これまでの言動はハッタリだったのか、周囲の反応を楽しみながら独裁者の本性をムキ出しにしていくのか。いずれにしても、人事や演説を見る限り、8年前より過激、乱暴になるのは間違いない。トランプ陣営が全米公開阻止に動いて話題になった映画「アプレンティス」によると、トランプは業界有名人の弁護士に伝授された「勝つための3つのルール」(攻撃、非を絶対認めない、勝利を主張し続ける)を妄信。ひたすら実践し、超大国のトップに再び上り詰めた。38歳年下のJ・D・バンス副大統領からも同じようなにおいがぷんぷんする。ラストベルトから這い上がって弁護士になり、トランプの軍門に下って上院議員に当選。格差が固定化した米国にあって、アメリカンドリームの最後の体現者のような人物だ。これまた手段を選ばない。
上智大教授の前嶋和弘氏(現代米国政治)はこう指摘する。
「大統領が指名した政府高官などの人事を審議する上院で共和党が過半数を占めているため、閣僚候補はほぼ承認されるでしょう。いずれもトランプ氏の賛同者。トランプ氏のクローンと言ってもいい。中でも危ういのが、『クレージー3』と呼ばれる保健福祉長官候補のロバート・ケネディ・ジュニア氏、国防長官候補のピート・ヘグセス氏、国家情報長官候補のトゥルシ・ギャバード氏。反ワクチンでも知られるケネディ氏は『今日は頭に虫がいるから調子が悪い』としょっちゅう言っていて、マトモとは思えない。FOXニュースのキャスターのヘグセス氏は女性に対する性的暴行疑惑を抱えているほか、国防総省が取り組むDEIや気候変動対策を潰そうとしています。ギャバード氏はシリアのアサド前大統領に入れ込むなど、ロシアのスパイ疑惑が浮上し、CIAの調査対象になった人物です」
ヘグセスは上院の公聴会でASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国数を問われ、「数は分からないが、韓国、日本、豪州と同盟関係にある」と答弁。失笑を買った。
マユツバの対中強硬姿勢
トランピズムでいい思いをするのは、取り巻きだけ。高関税政策をめぐり、公聴会では専門家が「上位1%の人々のみ減税となり、それ以外の人々には増税となる」と猛批判。第1次トランプ政権下の2018〜19年に実施された関税引き上げで、製造業雇用の65%を占める企業が労働者1人あたり900ドルの負担を強いられ、賃金や雇用の削減圧力につながったという。
「トランプ氏の対中強硬姿勢もマユツバです。大統領就任前に習近平国家主席と電話会談したのはホットラインがある証左ですし、100日以内の訪中に意欲を燃やしているとも報じられている。表ではあれだけ拳を振り上げながら、なぜわざわざ出向くのか。つまるところ、習氏に頭が上がらないからでしょう。ロシアの関与ばかりが取り沙汰されていますが、初当選にあたっては中国も影響力を行使していますし史上初の米朝首脳会談はお膳立てによるもの。中国国内の不動産開発をめぐる関わりも浮上している。対米自立を主張する石破首相は東南アジア外遊よりも隣国である中国訪問を優先し、関係構築を急ぐべきだった。『小日本主義』を訴えた石橋湛山元首相を敬愛し、日中国交正常化を実現した田中角栄元首相を政治の師と仰いでいるのですから、ダイナミックな動きをしてほしいところ。トランプ氏の手の内を読まない限り、さらなる対米追従を強いられるのは目に見えています」(五野井郁夫氏=前出)
これまでと次元が異なるド派手な就任式を境に、世界の歴史はやはり暗転するのか。暗澹としていることは間違いない。
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