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米国政府に操られてきた韓国大統領が戒厳令を宣言したが、議会の決議で撤回
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2024.12.05 櫻井ジャーナル
韓国の尹錫悦大統領は12月3日にソウルの大統領室庁舎で緊急談話を発表、朝鮮に追従する「従北勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守るため非常戒厳を宣布する」と宣言、朴安洙陸軍参謀総長を戒厳司令官に任命。その戒厳司令官は国会、地方議会、政党の活動、そして政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じ、すべてのメディアと出版は戒厳司令部によって統制されると発表している。
しかし、この戒厳令宣言に反対する人びとが抗議活動を開始、宣言から数時間後に議会は議員300人のうち190名が出席して戒厳令を撤回させる動議を全会一致で可決した。その際、体当たりで議場へ入ろうとした兵士を阻止した人もいたという。
その議決を受けて議会の禹元植議長は戒厳令宣言の無効を宣言、与党「国民の力」の韓東勲代表も「戒厳令に基づき軍と警察が公権力を行使することは違法」と発言している。禹議長が撤退を要請した後、軍と警察のメンバーが議会の敷地から立ち去る様子が見られた。
尹錫悦大統領は検事時代の2016年、大統領だった朴槿恵を巻き込む崔順実スキャンダルの捜査を指揮、朴大統領弾劾につながったが、アメリカは朴槿恵を嫌っていた。彼女は中国との関係を重要視、弾道ミサイル迎撃システムのTHAAD(終末高高度防衛)を配備することに難色を示していたからだ。THAADはPatriotと同じで有効性に問題があるのだが、そうしたシステムの配備は戦争の準備と理解される。
アメリカはTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器を強引に韓国へ持ち込んだのは、尹錫悦が朴槿恵政権を麻痺させていた最中の2017年4月。その功績のためなのか、尹錫悦は2017年5月から19年7月までソウル中央地方検察庁検事長に選ばれる。
ソウル中央地検の検事正になった尹錫悦は李明博元大統領や梁承泰元最高裁長官を含む保守派の主要人物を逮捕、文大統領の信頼を得て検事総長に就任する。その後、尹はアメリカから嫌われていた文在寅政権を攻撃し、文大統領に近く、次期大統領候補と目されていだ国法務部長官を起訴、゙を辞任に追い込んだ。
この過程で「正義の人」というイメージができた尹錫悦は2022年5月に大統領となり、彼の指揮で検察は民主党の李在明党首を収賄容疑で捜査しはじめた。
アメリカ政府の好戦的な政策に従って彼は中国やロシアとの関係を悪化させていくのだが、必然的に韓国経済は悪化。その結果、国民の支持率は20%を切ったと言われている。戒厳令が宣言される前の週に韓国では10万人の市民が街頭で抗議活動を展開、尹大統領の辞任を要求していた。
それだけでなく、尹錫悦は妻の金建希が引き起こしたスキャンダルでも苦しんでいる。税金を払わず賄賂を受け取ったと言われ、輸入車販売会社ドイッチェ・モーターズの株価を操作した疑惑で捜査対象だ。さらに論文の盗作も指摘されている。
国民から見放された尹錫悦を支えてきたのはアメリカの好戦派にほかならない。彼らはすでに日本で対中国戦争の準備を進めているが、その一環として自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させている。その間、韓国へTHAADを持ち込んだわけだ。
南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋と太平洋を一体のものとして扱うということだろう。
2020年6月にNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。
アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。
ジョー・バイデンが大統領に就任した翌年、2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は南西諸島におけるミサイル基地建設について説明している。
RANDによると、計画はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するというもの。その年の9月にはオーストラリア、イギリス、アメリカがなる軍事同盟を発足させると発表され、2022年12月にアメリカではNDAA2023(2023年度国防権限法)が成立、アメリカの軍事顧問団が金門諸島と澎湖諸島に駐留し、台湾の特殊部隊を訓練していると伝えられている。
当初、アメリカ側は日本の立場を配慮していた。専守防衛の建前と憲法第9条の制約があるため、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたのだ。が、その後、そうした日本の憲法に対する配慮はなくなった。
与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。
岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにしている。
2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。
こうした動きに対し、ロシア国家安全保障会議の議長を務めていたニコライ・パトロシェフは2021年9月、AUKUSは中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘、ロシアは朝鮮との関係を急ピッチで強化している。尹錫悦はアメリカの意向に沿って朝鮮半島の軍事的な緊張を高めたのだ。脅しのつもりかもしれないが、戦争が現実味を帯びてきた。
日本から台湾にかけては米英両国にとって中国侵略の拠点であり、朝鮮半島は橋頭堡にほかならない。日本には自衛隊というアメリカ軍の補完部隊が存在、韓国には現役の軍人が50万人、そして予備役が310万人いる。その韓国を動かすためにアメリカは尹錫悦を大統領に据え、日米韓の「三国同盟」を推進しようとしたのだろう。
その尹は徴兵忌避者であり、政治家として致命的な過去だ。それにもかかわらず彼が大統領になれたのは、強力な勢力が後ろ盾になっているからだと信じられている。その尹政権が揺らいでいる。韓国の現政権が倒れることはジョー・バイデン政権を支えてきたネオコンにとって大きなダメージであり、シリアやジョージアと同じようにクーデターを使っても不思議ではない。ただ、韓国の場合は親米(従米)体制を続けるためだ。
ちなみに、現駐韓米大使のフィリップ・ゴールドバーグは2006年10月からボリビア駐在大使を務めていたが、ボリビアのエボ・モラレス大統領は2008年9月、クーデターを支援したとしてゴールドバーグを追放した。また2013年12月から16年10月にかけてフィリピン駐在大使を務めていた際、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領からCIAがドゥテルテの追放、あるいは暗殺を企てていると非難されている。
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