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CNNがジャーナリストの魂を放棄し、プロパガンダに徹するようになった瞬間
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202407190000/
2024.07.19 櫻井ジャーナル
プロパガンダは支配の重要な要素である。アメリカではウッドロー・ウィルソン政権下の1917年4月に設立されたCPI(広報委員会)が組織的プロパガンダの始まりだと言えるかもしれない。委員長に選ばれたのはジョージ・クリールだ。(Chris Hedges, “Death of the Liberal Class,” Nation Books, 2010)
クリールの下で働いていたエドワード・バーネイズは精神分析学の創始者であるジークムント・フロイトの甥にあたり、1929年には女性の喫煙を推進した「自由のたいまつ」なるキャンペーンを成功させ、54年にはユナイテッド・フルーツに雇われてCIAのグアテマラにおけるクーデターを正当化する宣伝を展開した。
第2次世界大戦後におけるアメリカのプロパガンダで「モッキンバード」が果たした役割は大きい。これは1948年にスタートしたCIAの極秘プロジェクトで、責任者はコード・メイヤー。実際の工作で中心的な役割を果たしたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだという。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)
同じ時期、CIAはヘルムズ長官の下、人間の心理を操作する研究も進められていた。「MKウルトラ」だ。ヘルムズは退任時に関係書類の廃棄を命令し、後任のウィリアム・コルビーも工作の詳細を知らないというが、個人や集団を操る技術を研究していたことは間違いない。プロパガンダの技術は企業の「宣伝」にも応用されている。
おそらく、その延長線上にWEF(世界経済フォーラム)を創設したクラウス・シュワブが2016年1月にスイスのテレビ番組で明らかにしたマイクロチップを利用した人間の端末化計画もある。脳へチップを埋め込む研究は第2次世界大戦が終わって間もない頃からアメリカで進められてきたと言われている。
ロナルド・レーガン大統領は1982年6月、イギリス下院で「プロジェクト・デモクラシー」という用語を公の席で初めて使った。勿論、この「デモクラシー」は本来の民主主義と全く関係がなく、アメリカの支配層にとって都合の悪い国家、体制を崩壊させることを意味する。いわゆるレジーム・チェンジ。国内での作戦は「プロジェクト・トゥルース」と名づけられた。
このプロジェクトを始動させるため、レーガンは1983年1月にNSDD(国家安全保障決定指示)77に署名、プロジェクトの中枢機関としてSPGをNSCに設置した。ここが心理戦の中心になる。(Robert Parry, “Secrecy & Privilege”, The Media Consortium, 2004)
アメリカ議会では1970年代の半ばにCIAの秘密工作について調査された。1975年1月には上院で「情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会」が設置されてフランク・チャーチ上院議員が委員長に就任、下院ではルシエン・ネジ下院議員を委員長とする「情報特別委員会」が設立された。下院の委員会は当初、ルシエン・ネジ議員が委員長に就任したのだが、すぐにオーティス・パイク議員へ交代した。
こうした動きに対抗するため、CIAは内部規約を変更して内部告発を難しくし、巨大資本がメディアを支配しやすくするために規制緩和を進めて有力メディアを少数の大株主に集中させた。COMCAST(NBCなど)、ディズニー(ABC、FOXなど)、CPB(NPR、PBSなど)、Verizon(Yahooニュース、ハッフィントン・ポスト)、ナショナル・アミューズメンツ(VIACOM、CBS、MTVなど)、AT&T(CNN、TIME、ワーナー・ブラザーズなど)、グーグル、ニューズ・コープ(FOXニュース、ウォール・ストリート・ジャーナルなど)といった具合だ。
20世紀の終盤、メディア支配はさらに強化される。その象徴的な出来事がCNNであった。NATOがユーゴスラビアを先制攻撃して破壊した1999年にアメリカ陸軍の第4心理作戦群の第3心理作戦大隊に所属する隊員が2、3週間ほどCNNの本部で活動していたことも明らかになっている。この部隊の主要な仕事のひとつは「選別された情報」、つまり支配層にとって都合に良い話を広めることだ。
この事実を最初に報じたのはフランスのインテリジェンス・ニューズレターで、オランダのトロウ紙が2000年2月に後を追う。アメリカ陸軍情報部のトーマス・コリンズ少佐によると、派遣された軍人はCNNの正社員として働き、ニュースにも携わったという。またコソボ紛争中も彼らは記事を書いていただろうとしている。(Trouw, 21 February 2000)
心理戦部隊の隊員を社会のさまざまな分野に一時的に配置転換することは1997年頃から始まっていて、その契約期間は数週間から1年までさまざまだという。
こうした軍の心理戦部隊が有力メディアへ入り込み、影響力を強めようとし始めていた1998年、CNNはラオスにおける神経ガスのサリン使用に関する情報を伝えていた。その年の6月に放送された。
それによると、1970年にアメリカ軍のMACV-SOG(ベトナム軍事援助司令部・調査偵察グループ)がベトナム戦争で、逃亡兵を殺害するためにサリンを使用したというのだ。その作戦名は「テイルウィンド」だという。
SOGは統合参謀本部(JCS)直属の秘密工作部隊で、1964年2月から北ベトナムに対する破壊工作をスタートさせ、トンキン湾事件を引き起こして本格的な軍事介入への道を作っている。戦争の泥沼化した1967年からCIAは軍の特殊部隊と共同で住民皆殺し作戦のフェニックス・プログラムを始動させているのだ、CIAと特殊部隊で編成されたチームがサリンを使用しても不思議ではない。CIAと特殊部隊で編成された戦闘集団はアメリカの正規軍とは指揮系統が違う。フェニックス・プログラムに正規軍は関与していなかった。
CNNのサリン報道で最も重要な証人は、1970年7月から74年7月までJCS議長を務めたトーマス・ムーラー提督。同提督の部下がサリンが使用される事実を確認したというが、捕虜になり、北ベトナムに協力していたアメリカ人を殺害することがサリンを使用した理由だとする報道にある種の勢力は激しく反発した。
CNNの経営陣は報道内容のチェックを弁護士のフロイド・エイブラムズに依頼し、1カ月にも満たない短期間で報告書を作成させた。報告書の結論は報道内容を否定するものだったのだが、引用に不正確な部分があり、慎重に調べたとは到底言えない代物だ。
例えば、エイブラムズは報告書の中でムーラー提督を認知症の老人であるかのように表現しているのだが、報告書が作成された当時でもゴルフ場で普通にブレー、別の事件で記者会見に登場するほどの健康体だった。番組を担当したプロデューサーのエイプリル・オリバーによると、放送では示されなかった重要な情報をCNNは隠しているという。
結局、番組を担当したふたりのプロデューサー、ジャック・スミスとエイプリル・オリバーは報道を事実だ主張し続けたため、解雇されてしまう。CNNは不自然な形で幕引きを図った。この時期、CNNは残っていたジャーナリストの魂を捨て去ったと言えるだろう。
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