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2024年5月11日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/326420?rct=tokuhou
広島市が8月6日に開く平和記念式典に例年通りイスラエルを招待する方針に、批判が広がっている。パレスチナ自治区ガザの犠牲が拡大する中、イスラエルの攻撃を容認するメッセージになりかねない、との懸念からだ。ウクライナ侵攻が始まった2022年以降、招待していないロシアなどへの対応と異なる「二重基準」との指摘もある。被爆地で開かれる式典が、世界の平和構築のために果たせる役割とは。(山田雄之)
◆「ダブルスタンダード」に声を荒げた松井市長
4月24日、広島市役所で開かれた松井一実市長の記者会見。今年の式典にイスラエルを招待する一方で、ロシアと同盟国ベラルーシの招待は、見送る方針を示した。記者からは「一方の戦闘は容認し、もう一方は容認しないという風に見えるのではないか」と質問が上がった。
「受け止める方の意思ですから、私はどうしようもありません」「片方の戦争は良くて、片方は悪いなんてひと言も言っていません」。序盤は淡々と応じた松井市長。ところが「ダブルスタンダードにみえる」と、記者が言及すると、態度が急変。質問を遮って「ダブルスタンダードは取っていない。あなたの解釈です」「勝手に想像しないでください」と声を荒らげた。
広島市によると、式典は米軍の原爆投下で亡くなった推定14万人の死者らの霊を慰めるとともに世界平和を祈ろうと、1952年から開かれている。被爆の実相に触れてもらおうと、2006年以降は日本に大使館のある全ての国を対象に招待し、昨年は過去最多の111カ国と欧州連合(EU)の代表が参加。パレスチナは含まれていない。
ただウクライナ侵攻以降、市は「式典の円滑な挙行に影響を及ぼす可能性がある」としてロシアとベラルーシを招待せず、その代わりに、紛争解決を願う書簡を送っている。市の担当者は「ウクライナを支援する西側諸国が参列を見送る懸念などを、外務省から指摘されて判断した」と説明した。
◆広島市には1000件超の抗議メールが殺到
松井市長はイスラエルについて「他の国と同じように招待するという基本を貫きたい」と強調したが、4月の会見後、ガザの緊張は高まっている。避難民が集中する南部ラファへのイスラエルの本格侵攻も懸念される中、広島市には5月9日までに1000件超の抗議メールが殺到。総じて「イスラエルを招待すべきでない」「ロシアとベラルーシを招待しないのにおかしい」との内容という。
広島市立大の湯浅正恵教授(社会学)は「イスラエルはこれまでも式典に参加してきたのに、半年以上にわたり侵攻し市民の殺傷を重ね、平和への誓いを裏切り続けてきた」と憤る。市が例年通りの参加を認めれば、「平和都市の広島がイスラエルの攻撃を容認している、とのメッセージを、世界に送ることになりかねない」と危ぶむ。
湯浅さんも参加する市民団体「広島パレスチナともしび連帯共同体」は5月6日から「イスラエル代表を平和記念式典に招待しないよう広島市に要請します」と訴えるオンライン署名を開始。10日午後8時時点で1万3600件の賛同を得た。15日に提出する。
◆「戦争中の国にはなおさら来てもらいたい」という声も
1991〜99年に広島市長を務めた平岡敬さん(96)は、イスラエルを招待する今回の市の判断について「同国と結びつきの深い米国に配慮する日本政府の方針が働いているのだろう」とみる。市は独自の考え方に基づき、平和を訴えるべきだと唱える。
原爆が投下された8月6日を「核保有国も含むあらゆる国を広島に招待し『戦争を止めよう』と訴える日だ」と捉え、より幅広い国の結集を呼びかける。「戦争中の国にはなおさら来てもらい、78年余り前の惨劇を思ってほしい。核のない世界をつくろう、戦争をやめようという、広島の思いを受け止めてもらいたい」と述べた。
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