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米英の支配層がヨーロッパを支配するために創設したNATOやEUをトランプが攻撃
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2025.02.21 櫻井ジャーナル
アメリカのドナルド・トランプ大統領はNATOやEU、第2次世界大戦の後にアメリカとイギリスの支配層によって作られた組織に対して厳しい姿勢で臨んでいる。この大戦においてヨーロッパ戦線でドイツと戦ったのはソ連とコミュニストを主体とするレジスタンスであり、ヨーロッパ諸国の政府は屈服し、イギリスは傍観していた。
本ブログでも繰り返し書いてきたが、ドイツ軍は1941年6月22日、西部戦線に約90万人を残し、300万人以上の戦力でソ連に向かって進撃を開始した。ドイツ軍の首脳は西部方面を防衛するために東へ向かう部隊に匹敵する数の将兵を配備するべきだと主張したのだが、アドルフ・ヒトラーに退けられたという。軍の首脳が知らない何かをヒトラーは知っていたのだろう。(David M. Glantz, The Soviet-German War 1941-1945,” Strom Thurmond Institute of Government and Public Affairs, Clemson University, October 11, 2001)
事実上、ドイツはソ連に負けたのだが、西部戦線でレジスタンスがドイツ軍と戦っていたことも確かであり、シャルル・ド・ゴールはそのレジスタンスと関係していた。大戦の終盤、ドイツの降伏が見通される中、アメリカとイギリスはレジスタンスを懸念し、ゲリラ戦部隊を編成している。ジェドバラだ。大戦後、ジェドバラを基盤にして秘密部隊が組織されるが、この勢力はド・ゴールを敵視した。
フランスでは1947年6月に社会党系の政権が誕生した。その内務大臣を務めたエドアル・ドプは政府を不安定化するための策略について語っている。そのためにアメリカとイギリスは秘密部隊を使ったクーデター「青計画」を作成したというのだ。その計画にはド・ゴール暗殺も含まれていたとされている。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005)
この暴露があった後、計画の首謀者としてアール・エドム・ド・ブルパンなる人物が逮捕された。フランス北部で重火器、戦闘指令書、作戦計画書などが発見されている。
彼らのシナリオによると、まず左翼を装って「テロ」を実行して政治的な緊張を高め、クーデターを実行しやすい環境を作り出すことになっていた。この計画にはフランスの情報機関SDECEが関与していたと疑われたが、調査を行ったのはSDECEの長官だった。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005)
1948年4月にアメリカやイギリスはNATO(北大西洋条約機構)を組織する。創設時の参加国はアメリカとカナダの北米2カ国に加え、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルクの欧州10カ国だ。ジェドバラから派生した秘密部隊は全てのNATO加盟国で編成されてネットワークを構築する。中でも有名な組織がイタリアのグラディオだろう。
アメリカとイギリスの支配層は1948年にACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)も組織した。この団体へ資金を提供していたのはフォード財団やロックフェラー財団など。その下にはヨーロッパ運動、ビルダーバーグ・グループ、そしてヨーロッパ合州国を目指す行動委員会が存在していると言われているが、特に有名な団体はビルダーバーグだろう。(Richard J. Aldrich, “The Hidden Hand”, John Murray, 2001)アメリカやイギリスの支配層がACUEを組織した理由はヨーロッパを統一した上で支配することにあった。その延長線上にEUはある。
ビルダーバーグ・グループが最初の会議を開いたのは1954年5月29日から31日。開催場所はオランダのアルンヘム近くにあるビルダーバーグ・ホテルだった。グループの初代会長はこのホテルを所有していたベルンハルトだが、生みの親はユセフ・レッティンゲルだと考えられている。
レッティンゲルは戦前からヨーロッパをイエズス会の指導の下で統一しようと活動、大戦中はロンドンへ亡命していたポーランドのブワディスラフ・シコルスキー将軍の側近だ。シコルスキーはコミュニズムが嫌いで、イギリス政府の支援の下、亡命政府を名乗っていた。1952年にレッティンゲルはベルンハルトへ接近、すぐにアメリカのハリー・トルーマン政権に接触している。
NATOを創設した理由も同じだ。ソ連軍の侵攻に備えるために米英はNATOを作り上げたと宣伝されていたが、ソ連はドイツとの戦いで約2500万人が殺され、工業地帯の3分の2を含む全国土の3分の1が破壊され、惨憺たる状態。ナチスの拠点を制圧したものの、西ヨーロッパへ軍事侵攻する余裕はなかった。
フランスでは1961年にド・ゴールを敵視する軍人らがOAS(秘密軍事機構)を組織するが、この結社にはSDECEや第11ショック・パラシュート大隊が結びついていた。その年の4月12日にOASはマドリッドで会議を開き、アルジェリアでクーデターを実行する計画について話し合っているが、そこにはCIAの人間も参加している。
1961年4月22日にクーデターは実行に移されるのだが、それに対してアメリカのジョン・F・ケネディ大統領は、クーデター軍がパリへ軍事侵攻してきたならアメリカ軍を投入するとド・ゴールへ伝えている。つまり、パリでCIAとアメリカ軍が衝突するということだ。このケネディの対応でクーデターは失敗に終わるが、そのケネディは1963年11月22日に暗殺された。
ケネディ大統領と対立していた好戦派にはアレン・ダレスCIA長官、チャールズ・キャベルCIA副長官、ライマン・レムニッツァー統合参謀本部議長、カーティス・ルメイ空軍参謀長などが含まれていたが、大統領は1961年11月にダレス長官を、また62年1月にはキャベル副長官をそれぞれ解任、62年10月にはレムニッツァー議長の再任を拒否した。
レムニッツァーはイギリスの貴族階級に憧れを持っていた人物で、イギリスの軍人、ハロルド・アレグザンダーから可愛がられ、アメリカでも出世していく。シチリア島上陸作戦以降、彼を出世街道へ乗せ、アレン・ダレスにレムニッツァーを紹介したのもアレグザンダーだ。この人物はイギリスの貴族階級に属し、イギリス女王エリザベス2世の側近として知られていた。
通常、統合参謀本部議長を辞めた後はリタイアするのだが、アレグザンダーはレムニッツァーに対し、SACEUR(欧州連合軍最高司令官)にならないかと声をかけている。ちなみに、欧州連合軍最高司令官とは、NATOの軍事部門におけるヨーロッパ大陸の最上級司令部のトップだ。
ケネディ暗殺の容疑者として逮捕されたのはリー・ハーベイ・オズワルド、そのオズワルドを射殺したとされているジャック・ルビーは1959年にキューバ革命が成功した後、反革命の亡命キューバ人へ武器を供給していたのだが、その時、トーマス・デイビスなる人物と一緒に仕事をしている。そのデイビスはケネディ大統領が暗殺された際、アルジェリアの刑務所へ入れられていた。ド・ゴール大統領の暗殺に関わる集団に武器を供給していたからだ。クーデターが失敗に終わった後、ド・ゴール大統領はSDECE長官を解任、第11ショック・パラシュート大隊を解散させた。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015)
1962年1月にOASの幹部が逮捕され、その5カ月後にOASは休戦を宣言する(Henrik Kruger, “The Great Heroin Coup (2nd),” Trine Day, 2015)のだが、この決定にジャン-マリー・バスチャン-チリー大佐に率いられた一派は従わない。その年の8月22日にパリでド・ゴール大統領の暗殺を試み、失敗している。暗殺計画に加わった人間は9月にパリで逮捕され、全員に死刑判決が言い渡されたが、実際に処刑されたのはバスチャン-チリー大佐だけだった。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005)
ケネディ大統領が暗殺されてから3年後の1966年にド・ゴールはフランス軍をNATOの軍事機構から離脱させ、翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出した。SHAPEはベルギーのモンス近郊へ移動する。
フランスではド・ゴールの政権を揺さぶる出来事が1968年5月から6月にかけて「五月危機」が引き起こされる。パリでゼネラル・ストライキが実行され、抵抗運動はフランス全土に広がった。ド・ゴールはその翌年、1969年の4月に辞任、政界から去っている。
ド・ゴールの後任大統領は首相だったジョルジュ・ポンピドゥー。アメリカとの関係強化を推進する立場の人物で、SDECEの長官に親米派のアレクサンドル・ド・マレンシェを据えた。新長官はアメリカとの関係強化に邪魔だと見なされる815名を解雇した。(Henrik Kruger, “The Great Heroin Coup 2nd Edition,” TrineDay, 2015)1982年にSDECEはDGSE(対外治安総局)へ名称が変更になるが、実態に変化はない。
その後、ヨーロッパ諸国に対する米英の支配力は強化されていくが、その支配システムの中核にはNATOがあり、それをトランプが揺さぶっている。その背景にはネオコンと対立していた支配層の一部が存在しているのかもしれないが、ヨーロッパが「自爆」した今、NATOは必要なくなったのかもしれない。
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