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米国の対中露戦争へ引き摺り込まれる日本
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2024.09.27 櫻井ジャーナル
海上自衛隊の護衛艦(駆逐艦)「さざなみ」が台湾海峡を通過した。アングル・サクソン系国としてアメリカやイギリスに従属しているオーストラリアとニュージーランドの艦艇と一緒だったという。この挑発行為は岸田文雄首相の指示に基づくものだとされているが、アメリカ政府の命令だろう。同じ9月25日に中国軍は模擬弾頭を搭載したICBM(大陸間弾道ミサイル)を太平洋の公海に向かって発射し、ミサイルは予想海域に落下したという。
日本列島から台湾へ連なる島々は東アジアを侵略しようと考える勢力にとって重要な意味を持つ。イギリスやアメリカの金融資本を後ろ盾とするクーデターで誕生した明治体制は琉球国を併合、さらに台湾派兵、朝鮮侵略、日清戦争、日露戦争、中国への軍事侵略へと進んだ。イギリスのアーネスト・サトウ、アメリカのチャールズ・デロングやチャールズ・ルジャンドルといった米英の外交官は明治政府に対してアジア侵略を消しかけたというが、それも影響したのだろう。
イギリスは19世紀の半ばに中国侵略を試みた。1839年から42年にかけての「第1次アヘン戦争」と1856年から60年にかけての「第2次アヘン戦争」だ。一応勝利したのだが、内陸部を支配することはできなかった。戦力が圧倒的に足りなかったのである。その戦力を日本が補充する形になる。
第2次世界大戦後、大英帝国の後継者とも言えるアメリカは沖縄(琉球)から台湾にかけての島々を軍事基地化したが、これは明治政府の政策と同じだ。日本がそうだったように、日本列島から台湾にかけてはアメリカにとって東南アジアや中国を侵略する拠点になる。
アメリカは昔から対外政策はシオニストがコントロールしてきた。その一派であるネオコンはジョージ・H・W・ブッシュ政権で国防総省を支配、ソ連消滅直後の1992年2月、国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。
その最高責任者は国防長官だったリチャード・チェイニー、執筆の中心人物はポール・ウォルフォウィッツ国防次官だが、このドクトリンの基盤を考えたのは国防総省内部のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャルだとされている。
このプロジェクトの目的は新たなライバルの出現を防ぐことで、その対象には旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアも含まれる。ドイツと日本の場合、アメリカ主導の集団安全保障体制、つまり戦争マシーンに組み入れて「民主的な平和地域」を創設するともされている。
しかし、細川護煕政権は国連中心主義を打ち出して抵抗、ネオコンの怒りを買うことになり、1994年4月に倒された。その年の6月に自民、社民、さきがけの連立政権が誕生、村山富市が首相に就任して抵抗してネオコンを怒らせた。
そうした状況をネオコンのマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベル国防次官補(当時)に訴え、1995年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表する。そこには、10万人規模の駐留アメリカ軍を維持し、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われていた。
こうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布された(地下鉄サリン事件)。松本サリン事件の翌月に警察庁長官は城内康光から國松孝次に交代、その國松は地下鉄サリン事件の直後に狙撃された。
1995年8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われているスターズ・アンド・ストライプ紙に85年8月12日に墜落した日本航空123便に関する記事が掲載された。この旅客機が墜ちる前、大島上空を飛行していたアメリカ軍の輸送機C130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づく記事で、自衛隊の責任を示唆している。日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれたのは、この1995年だと言えるだろう。
このプロジェクトが本格的に始動するのはニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された2001年9月11日のことだ。その前にユーゴスラビアを攻撃していたが、9/11を口実にアフガニスタン、そしてイラクを先制攻撃している。
アメリカは現在、ウクライナや中東だけでなく東アジアでも軍事的な緊張を高めている。そうした中、同国海軍のリサ・フランケッティ作戦部長は9月18日、「習近平国家主席が台湾侵攻の準備をするよう軍に指示した」2027年に注目していると発言、募集の増加、海軍インフラの改善、船舶整備の遅れの解消、ドローンなど自律システムの使用増加などを含む計画を発表した。
習近平主席は2023年11月、サンフランシスコでジョー・バイデン大統領と会談した。ディフェンス・ニュースによると、習近平主席は「いいか、アメリカでは2027年や2035年に軍事行動を計画しているという報道がたくさんある。そんな計画はない。誰も私にこの件について話していない」と言ったとアメリカの当局者は語っていると伝えた。
2027年に中国が侵攻すると最初に主張したのはフィル・デビッドソン元インド太平洋軍司令官。2021年のことだ。言うまでもなく、こうした話が広まる理由はアメリカの好戦派にとって都合が良いからにほかならない。アジア太平洋地域におけるアメリカの軍事力増強を口実とした資金投入に役立つ。
しかし、デビッドソン発言の前から中国を中距離ミサイルで包囲する計画は進んでいた。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成している。今後、南西諸島周辺へアメリカ軍とその装備を移動させる可能性があるという。
その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれている。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていた時期に搬入された。その後、朴槿恵は失脚している。
こうした配備がアメリカ軍の戦略に基づいていることは2022年4月、国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」の報告書に記載されている。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するというのだ。
専守防衛の建前と憲法第9条の制約がある日本の場合、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたというが、その後、そうした日本の憲法に対する配慮はなくなった。
2022年10月に「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。
トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点への先制攻撃が可能。「専守防衛」は日本の国内に向けた宣伝文句にすぎず、アメリカは先制攻撃を想定している。
そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。
アメリカはオーストラリア、インド、そして日本と「クワド」を編成、NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言した。
2021年9月にはオーストラリア、イギリス、アメリカがAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があり、アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。
山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明、岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。
この過程でアメリカは日本と韓国の軍事同盟を推進し、台湾では「独立派」を利用して中国を挑発、さらにフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(ボンボン・マルコス)も取り込み、日本はフィリピンとの軍事的なつながりを強めている。JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)だが、日本とフィリピンをAUKUSへ加盟させるという動きもある。日本がAUKUSに参加することで、ロボット工学とサイバー技術の分野で成果を上げることが期待されているのだという。
またジョー・バイデン政権が中国敵視を明確にした2022年の12月、アメリカではNDAA 2023(2023年度国防権限法)が成立、アメリカの軍事顧問団が金門諸島と澎湖諸島に駐留し、台湾の特殊部隊を訓練していると伝えられている。
1992年2月にアメリカの好戦派が世界征服プロジェクトをスタートされた当時、彼らは簡単に目的を達成できると考えていたのだろう。その思い込みはその後も消えず、外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文では、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日は近い、つまり核戦争で中露に勝てるとしている。ソ連の消滅でアメリカは核兵器の分野で優位に立ち、近いうちにロシアや中国の長距離核兵器を先制攻撃で破壊できるようになるだろうと主張しているのだ。
リーバーとプレスはロシアの衰退や中国の後進性を信じ、アメリカが技術面で優位にあるという前提で議論している。その後、そうした前提が間違っていることを現実が繰り返し示しているのだが、修正できていない。今でも「神風が吹く」と信じている、あるいは信じたがっている人がいるようだ。彼らは人類、いや生態系を死滅させかねない。
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