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「松本人志vs文春」のゆくえ 国民にケンカを売りつけた岸田文雄「政治刷新本部」という茶番【適菜収】
https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/2580186/2/
2024.01.12 適菜 収 だから何度も言ったのに 第55回
安倍晋三暗殺事件から一年経った昨年7月以降、安倍と関係する重大事件が頻発。重要閣僚のドミノ倒しが始まった。一方芸能界でも、権力構造のトップに君臨していたジャニーズ事務所や吉本興業から性加害スキャンダルが次々露見。世の混乱は底なし沼の様相だ。このような絶望的な状況の中で、正気を維持するためにはどうすればいいのか? 『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』(KKベストセラーズ)で、それを考察した著者、適菜収氏の「だから何度も言ったのに」第55回。
松本人志
百田尚樹の世襲政治家批判
ダウンタウン松本人志の性加害問題の件。松本の活動休止を吉本興業が発表したが、いろいろよくわからない。吉本興業の「当該事実は一切なく」、松本の「事実無根」という主張通りなら、松本は完全に被害者である。その場合、「週刊文春」は捏造記事により、ひとりの人間を社会的に抹殺しようとしたことになる。これは世紀の大事件であり、雑誌廃刊どころか、文藝春秋社の存続にかかわる大問題になる。しかし、だったらなぜ松本は活動を休止するのか。意味不明。逆に松本や吉本興業が、告訴をちらつかせたりしながら、会社ぐるみで事実を闇に葬ろうとしたなら、吉本興業の存続が問われることになる。
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今回の件に関連してネットに流れてきた松本の2019年のコメントが味わい深い。タレントの木下優樹菜がタピオカ店に恫喝メッセージを送り、芸能活動を自粛することを発表したことについて、「確かに彼女は一線を越えてしまった、あの文言は…」「ネット上では1カ月以上炎上していて、テレビでは扱わない。僕としては扱ったほうがいいんじゃないかなとずっと思ってて」「ご本人なのか事務所さんなのか。正直、くさいものにふたをした感が否めない」。
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百田尚樹
ネトウヨの百田尚樹らがつくった面白政党「日本保守党」の躍進が止まらない。百田は「夕刊フジ」のインタビューで、国民の信頼を失墜させた自民党の政治資金パーティー収入不記載事件に言及。百田は最初から飛ばす。
「日本の政治家のほとんどは、日本の歴史を知らない。日本の伝統、日本の文化、日本そのものに対する敬意も誇りもない。私はある意味、これほどのモラルと文化を持った国はないと思う。その素晴らしさを日本人が一番分かっていない」
『ウォーリーをさがせ』に匹敵する間違い探し本の名著『日本国紀』の作者である百田が、「日本の歴史」に言及するというところが、サービス精神旺盛。ちなみに『日本国紀』は嘘とデタラメばかりの「トンデモ本」。単行本では「初版から第9刷にかけて少なくとも50カ所以上の修正を重ねるお粗末さ」(「毎日新聞」2021年12月6日)。日本の歴史を知らないのは百田である。
「街頭演説では、『議員の家業化をやめる』という訴えに反応がすごかった」と話題を振られると、百田いわく「私は以前から『世襲政治が日本をダメにしている』と言い続けてきた。政治家は本来、最も志高く優秀な人物が選ばれるべきだが、世襲政治家は下駄を3段も4段も5段も重ねている。厳しい競争から除外された人が世襲で政治家になって、閣僚や首相になる。それでは、日本を牽引する優秀な人間は出ませんわ」「閣僚や首相になると世襲率はさらに高くなる。これが日本の政治を悪くしている」。
気が遠くなる。百田は「安倍(晋三)さんが亡くなってから、自民党の発言、動きを見ているともうダメだと。ほかに支持する政党がない。自分が立つしかない。立てるしかないと思った」のではなかったのか。安倍が代表的な世襲政治家であることを知らないとは思えないし。百田の頭の中の仕組みが素朴にわからない。
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百田の漫談は止まらない。「もう一つ、政治資金管理団体の世襲も見直す。日本の相続税は世界でも相当厳しいのに、資金管理団体は無税で相続できる。国税が手を入れないのは不思議だ」。え? これは3・4億円を非課税で「相続」した昭恵を批判? 笑いをとろうとしているのか?
岸田文雄
■「政治刷新本部」という茶番
安倍派所属の池田佳隆と政策秘書の柿沼和宏が、おととしまでの5年間で、派閥から総額およそ4800万円のキックバックを受けたにもかかわらず、収支報告書に収入として記載せず、嘘の記入をしたとして、特捜部に逮捕された。池田の事務所では、家宅捜索を受ける前にデータを保存する記録媒体が壊されていた。池田は逮捕前に逃げ回ったり、雲隠れしていたが、わざわざ検察を怒らせるって、何をしたかったのか? 特捜部は池田の逮捕に踏み切った理由について「具体的な罪証隠滅の恐れが認められた」。当然そうなるよね。バカなんですかね?
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自民党は池田を除名処分に。岸田文雄は「大変遺憾で重く受け止めている。党として強い危機感をもって政治の信頼回復に努めなければならないと改めて強く感じている」などと言っていたが、罪証隠滅、データ破壊、記録の隠蔽は自民党のお家芸。こんな連中を支持するバカが存在するのが謎。
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1月10日、自民党は臨時の総務会を開き、裏金事件を受けた「政治刷新本部」の設置を正式に決定。本部長を務める岸田は、「政策集団(派閥)、党の政治資金に大変厳しい目、疑念の目が注がれている」「党を挙げて最大、最優先の課題として取り組んでいきたい」と発言。ではだれが刷新本部のメンバーになったのか? 38人のメンバーを派閥別にみると、裏金作りの疑惑の渦中にある安倍派の議員が最も多く10人だった。証拠隠滅のエキスパートであり、デマ工作員「Dappi」が所属する企業「ワンズクエスト」との関係も深い小渕優子も名前を連ねていたが、素晴らしいとしか言い様がない。国民にケンカを売っているのか、笑いをとろうとしているのか?
小渕優子
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岸田は総務会の場でも「国民の信頼回復に向けて努力をしなければならない」と繰り返していたが、だったら犯行が疑われている安倍派議員約100人に自首させればいい。安倍派では5年間に約100人の議員が、ノルマ超過分を派閥から還流されたり、ノルマ分のみ派閥に納めて超過分をプールしたりして、総額5億7000万円超が裏金化されていた疑いがある。安倍の残党が自民党から一掃されれば、少しは信頼が回復するかもしれない。
文:適菜収
適菜 収 てきな おさむ
1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171
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