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※紙面抜粋
※2024年1月5日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
羽田空港の滑走路で炎上する日航機516便(C)日刊ゲンダイ/中西直樹
元日に能登半島でマグニチュード7.6の大地震が起こり、2日には羽田空港の滑走路で日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機が衝突して炎上。2024年は波乱の幕開けになってしまった。
海保機は能登半島地震の被災地支援のため、新潟航空基地に救援物資を輸送するところだったというから、震災から航空機事故に連鎖した悲劇的な側面もある。衝突した海保機の乗員5人が亡くなった。
炎上したJAL機の乗客乗員379人全員が無事に避難できたことは、海外からも称賛されている通り、まさしく「奇跡的」なことだった。このJAL機に乗り合わせていた日刊ゲンダイの中西直樹カメラマンも「本当に死を覚悟しました」と、壮絶な体験を振り返る。札幌の実家に帰省しており、新千歳空港発羽田行きのJAL516便には家族7人で搭乗。3歳と9カ月の幼い子供2人を連れての移動だった。
「私の席からは左側のジェットエンジンが真横に見えたのですが、羽田の滑走路に着陸した瞬間、衝撃とともにエンジンから火の手が上がった。炎はどんどん大きくなり、機内に煙が流れ込んできましたが、機内放送もなく、何が起きているのか、どうすればいいのか分からない。CAさんはマイクに向かって『キャプテン! キャプテン!』と必死で呼びかけていましたが、事故時点で機内放送やインターホンは使用不能になっていたのです。それでもCAは冷静に対応し、ほとんどの乗客が落ち着いて指示に従っていた。自席で待機している間は不安でいっぱいでしたが、機内がパニック状態にならなかったことは不幸中の幸いでした」(中西カメラマン)
美談で終わらせず再発防止徹底を
JAL機が羽田空港のC滑走路に着陸したのが午後5時47分ごろで、逃げ遅れている人がいないかを確認した機長が最後に脱出して地上に降り立ったのは午後6時5分。着陸直後の事故発生から約18分間の脱出劇だった。すぐ近くで炎が上がる中、一切の荷物を諦めて逃げる脱出用シューターを使い、短時間で逃れることを強いられた。その恐怖は想像を絶する。
そのうえ脱出完了から2分後には機内からも火の手が上がり、30分後には機体全体が激しい炎に包まれた。少しでも脱出が遅れていたら、どうなっていたか分からない。全員無事は奇跡的というほかなく、日頃の訓練のたまものだろう。
「脱出してからは滑走路付近やバス内での待機時間が続き、ようやくターミナルに入れたのは午後7時45分でした。着の身着のままの脱出ですから、寒空の下で待機し続けるのは体力的にもきつく、ケガをしている人やお年寄りは大丈夫だろうかと心配になりましたが、九死に一生を得て、贅沢は言ってられませんね。結局、事故発生から約5時間後には空港を出て帰路につくことができたのも、スタッフのみなさんの努力のおかげでしょう」(中西カメラマン)
CAらの的確な判断と乗客の冷静な行動が「奇跡の脱出」につながったわけだが、これを美談で終わらせず、二度と同様の事故が起きないよう再発防止を徹底する必要がある。2次被害を防ぐためには脱出後のオペレーションにも改善の余地はあるかもしれない。今回の事故を教訓に、航空会社側の訓練やマニュアルはアップデートされるだろうが、何より大切なのは事故原因の究明だ。
羽田空港の過密性と複雑性という構造的な問題
滑走路内に進入していた離陸前の海保機に、JAL機が着陸時に衝突するという事故が起きたC滑走路では、国の運輸安全委員会の調査や、警視庁の捜査が続く。国交省は3日、航空機と管制官との交信記録を公開。それによればJAL機に対して着陸許可を出している一方、海保機との交信記録では「1番目、C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」と指示していて、滑走路内に進入する許可はなかった。ただ、海保機の機長は「滑走路の進入許可を受けた」と話しているといい、認識に食い違いがある。
「航空機は管制の指示に従って動くのが原則で、日常的に羽田を使って慣れている海保機が指示と違う動きをしたことは解せません。『1番』を離陸可能と誤認したのか。被災地に早く物資を届けたいという焦りがあったのか。しかし、海保機の機長だけを責めても仕方ない。航空事故というのは、複数の要因が重なって起きるものです。例えば、日航機が滑走路内の海保機に気づけば必ずゴーアラウンド(着陸やり直しの再上昇)しています。暗い時間帯で衝突防止灯がついていたはずですが、旅客機と比べて小さい海保機は視認できなかったのか。管制官も海保機の進入に気づいていれば、何らかの指示を出していたはずです。不幸な偶然が重なった結果ですが、日航機から飛行状況を記録するフライトレコーダー、海保機からはフライトレコーダーとボイスレコーダーが回収されているので、事故原因の究明はこれからです。少し時間はかかるでしょうが、原因が分からなければ再発防止策も講じられません」(航空関係者)
どんな組織でも運用でも、ヒューマンエラーは必ず起こる。それが重ならず、事故につながらないようなシステム構築が重要なのだろう。
目先の利益より安全が第一
「事故の背景には羽田空港が抱える構造的な問題がある」と指摘するのは、航空評論家の秀島一生氏だ。
羽田は世界有数の過密性で知られる。英航空情報会社OAGの「世界の混雑空港ランキング」(2023年)では世界3位だった。単純計算で1分間に1.5本の飛行機が離着陸しているという。
「羽田空港は近年、国策として国際線の発着便数を増やしてきました。10年からは4本目のD滑走路の運用を始めて発着枠を広げた。東京五輪に合わせて20年から都心上空を飛ぶ新ルートの運用も始まり、国際線の昼間の発着可能便数が大幅に増えました。羽田の滑走路は平行ではなく、井桁状になった4本の滑走路を同時運用しているので、管制の交通整理は非常に複雑です。そのうえ、羽田空港の周辺には米軍が管理する広大な『横田空域』が横たわっている。米軍の航空管制と日本の管制の2系統があることも問題を複雑にしています。こうした過密性と複雑性が事故を誘発する可能性は常にあり、これを機に空港政策の全体像を見直す必要があるのではないでしょうか。国内線は羽田、国際線は成田というすみ分けに回帰することも一案です」(秀島一生氏)
事故が起きた2日は国内の帰省ラッシュ期でもあり、羽田は容量いっぱいの運用だった。さらに政府はインバウンドの拡大を掲げていて、5本目の滑走路を沖合につくる計画もあるが、煩雑性が高まれば、それだけヒューマンエラーの可能性も増えるのではないか。
羽田の国際便発着が増えたのは、都心から近い利便性を求める利用客のニーズもあるからだが、目先の利益より人命と安全が優先なのは言うまでもない。
今回の事故の原因を個人の責任に帰することなく、航空行政全体として、今後の対策を講じる必要があるだろう。
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