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2023年日本経済政策の回顧
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2023年12月31日 植草一秀の『知られざる真実』
2023年が幕を閉じる。
経済について考えてみたい。
リバタリアニズムとリベラリズム。
政治哲学上の相違する二つの考え方。
拙著『資本主義の断末魔』
https://x.gd/xIij4
のメインテーマのひとつが政治哲学。
リバタリアニズムは「超自然主義」と表現されることもある。
レッセフェール=自由放任の考えを基礎に置く。
近年の日本でリバタリアニズム思考が広がりを見せている。
市場原理にすべてを委ねれば優勝劣敗が生じる。
強い者はより強くなり、弱い者は淘汰される。
弱い者は生存ラインぎりぎりに追い込まれる。
しかし、自然界も基本は弱肉強食。
それが自然の摂理。
弱い者を強い者の負担で救うことに抵抗を示す人は多い。
政府は民間の活動に介入するべきでない。
個人から財産を巻き上げて、それを弱者救済に充当することは正当でない。
政府は国防、警察、外交に限定して活動するべきだ。
この思潮が広がりを見せている。
しかし、振り返れば市場原理にすべてを委ねて発生した問題に対応しようとしたのが20世紀だった。
市場原理にすべてを委ねれば、際限のない格差拡大が進行する。
弱き者は生存の危機に直面する。
これを市場原理=資本主義の失敗と捉えて人為的にその是正を図る。
リベラリズムの思潮はここから生まれた。
政府が経済活動に介入し、力の強い者から財産を接収し、それを弱者を支えるために配分する。
所得再分配による格差の是正が正当化されてきた。
国家権力による経済活動への介入を認め、経済的弱者に対する保障を政府が実行する。
基本的人権に三つの類型がある。
自由権、参政権、生存権だ。
時代の変遷と連動し、自由権は18世紀的基本権、参政権は19世紀的基本権、生存権は20世紀的基本権と呼ばれる。
資本主義の矛盾が露呈した20世紀に20世紀的基本権である生存権がクローズアップされた。
生存権を重視して国家権力による所得再分配を是認するのがリベラリズムの思潮である。
しかしながら、いま再び、リベラリズムを否定し、リバタリアニズムを追求する思潮が広がりを見せている。
この思潮の広がりをもたらしている工作が弱者同士でのつぶし合いである。
生活保護の不正受給がことさらに大きく取り上げられる。
不正受給の発生確率は著しく低いが不正受給をことさらに大きく取り上げて生活保護制度そのものを攻撃する。
歯を食いしばって一生懸命働いているのに低所得にあえぐ。
生活保護利用者は働きもせずに同等の生活水準を享受する。
そのような生活保護制度など許せない。
この方向に「思考」が誘導される。
本当は別の道がある。
歯を食いしばって働いている人が、より豊かな暮らしを享受できるように制度を変えることを検討できる。
最低賃金を大幅に引き上げれば、汗水流して働くすべての人々の生活水準は大幅に引き上げられる。
そのときに、さまざまな事情で生活保障制度を利用せざるを得ない人が生活保障制度を利用し、すべての人が一定の生活水準を享受できる世の中が本当に悪い世と言えるのか。
圧倒的多数の市民を下流に押し流して、ほんの一握りの人々に所得と富を集中させることが望ましいと言えるのか。
岸田首相は2021年の自民党総裁選で「分配の見直し」を掲げた。
しかし、瞬時に取り下げて、結局丸2年間、何もしなかった。
リバタリアニズムの行き着く先は少数による圧倒的多数の奴隷支配である。
リベラリズムの価値を再度見つめなおす必要性が高まっている。
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