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※2023年12月27日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※文字起こし
いつになく神妙な表情(岸田首相=代表撮影)
政治資金パーティーというのは、ホントおいしい催しだ。総務省が発表した2022年分の政治資金収支報告書の中央分(総務相所管)と地方分(都道府県選挙管理委員会所管)の集計結果によると、政治資金パーティーの収入は181億700万円。新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった21年と比べ67.9%増だった。19年は194億7100万円だったから、コロナ前の水準にほぼ復活。利益率8、9割は当たり前、開けば開くほど儲かるカネのなる木だ。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金化事件で政権崩壊寸前でも、岸田首相が「派閥のパーティーは当面自粛」としか言わないわけである。
政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)容疑で捜査中の東京地検特捜部による最大派閥・安倍派と第5派閥・二階派事務所ガサ入れ、萩生田前政調会長ら安倍派幹部に対する任意の事情聴取。ちょっと前まで政権中枢で権勢を誇っていた連中が次々に特捜部に呼ばれる異常事態にあっても、岸田は煮え切らない。25日に麻生副総裁や茂木幹事長、渡海政調会長らとの会談後、「年明け、できるだけ早い時期に党の信頼回復のための組織を立ち上げるなど、毅然とした対応を取る」と口にしたが、一体何をどうするのか。「政治改革」をやるのかやらないのか。具体像はさっぱり見えない。
総裁直属の新組織で政治資金規正法の改正も視野に議論を進めるとも報じられているが、あのボンクラ首相がそこまで踏み込めるのか。立憲民主党の安住国対委員長が「これまでも新しい資本主義、異次元の少子化対策と大号令を発するが、中身がないことが多い。何をする組織か分からず、打ち上げ花火で終わるのではないか」と揶揄していたが、果たしてその通りになりそうな雲行きだ。
第三者委員会で検討を
岸田は26日の講演でも「通常国会で政治の信頼回復のために議論できるよう、新しい組織で議論を進める」と言っていたが、その続きは「少なくとも政治資金パーティーの資金透明化を図ることは必ずやらなければならない。政治資金規正法改正が議論になることは十分にあり得ると想定している」。
要するに、状況次第で規正法をちょこっとイジり、パー券購入者の公開義務のハードルを引き上げる程度のことはやるということ。自民党の錬金術の舞台装置化している政治資金パーティーは温存。そんなのは政治改革とは到底言えず、弥縫策だ。トコトン国民愚弄の自民党。盗人が新ルールづくりなんて笑止千万なのである。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が言う。
「年の暮れが慌ただしく過ぎ、正月三が日にのんびりすれば、世間の裏金事件に対する怒りは沈静化するとでも考えているのでしょう。あまりに国民をナメている。リクルート事件や東京佐川急便事件、日歯連事件など『政治とカネ』の問題が噴出するたびに規正法は改正されましたが、自民党は抜け穴をつくり、不透明なカネを動かす余地を残してきた。自民党主導の政治改革は話にならない。法改正したらしたで、バックドアをつける可能性がある。人事権を握られている官僚任せもダメ。時の政権に左右されない第三者委員会を設立し、必要な制度改革を議論するべきです。例えば、11年4月に立ち上がった東日本大震災復興構想会議は防衛大校長の五百旗頭真氏が議長、東大教授の御厨貴氏が議長代理を務め、幅広い分野の専門家を集めた。自民党フレンドリーな法改正を許せば、同じことを繰り返すだけです」
自民党以外には強いる負担とペナルティ
この期に及んでも、「『派閥が悪い』という話になっているが、安倍派の問題だ」などと嘯き、抜本的な政治改革に待ったをかける幹部が自民党にはいるらしいが、少なくとも直近5年間で5派閥すべてにおいてパー券収入の収支報告書不記載が判明している。法の網がスカスカなのをいいことに、やりたい放題の金権政治に何の反省もない輩につける薬なし。リクルート事件を受けて自民党が取りまとめた「政治改革大綱」の見直しが俎上に載せられているが、その程度でお茶を濁されたらたまらない。だいたい、大綱が解消を提言した派閥政治を完全復活させたのが岸田政権なのだ。
朝日新聞(26日付朝刊)で法大教授の白鳥浩氏(現代政治分析)も規正法の見直しに言及し、会計責任者が有罪になれば議員が自動失職する連座制導入の必要性を指摘。こうも言っていた。
「政治資金収支報告書のデジタル化も必要です。岸田政権は、紙の健康保険証を廃止して、マイナンバーと一体化させる方針ですよね。国民に負担を強いておきながら、自分たちの政治資金については手つかずです。政治こそデジタル化を進めるべきでしょう」
「さらにいうと、自民党が来年度も政党交付金を満額受け取るとすれば問題ではないですか。違法薬物事件の起きた日本大学への国の私学助成は3年連続で不交付です。一方、これだけの問題を起こした自民党に何のペナルティーもないとすれば、納税者として疑問を感じるのは自然です」
その通りで、それが世論の感覚だ。
国民主権差し置く企業
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)もこう言う。
「そもそも、税金が原資の政党助成金の交付を受けている以上、他の手段で政治資金を集めるのは筋違い。とりわけ政治資金パーティーは問題だらけ。収支報告書への記載義務さえ守れば誰でもいくらでもパー券を購入でき、資金力があるほど政治への働きかけを強めることができる。個人よりもはるかに多くの企業が購入しているのは、事実上の献金になり、政治的な見返りを求めているからにほかなりません。国民主権の主体ではない企業がカネにあかせ、個人を差し置いて政治の恩恵を受けるのも歪んでいる。自民党が汚いカネを生む道具として政治資金パーティーを悪用してきたことが明るみに出た以上、全面禁止すべきです。自民党のことだから、だったら政党交付金を増やせと言い出しかねませんが、第2次安倍政権で深まった政治の腐敗をここでキチッと清算しなければ、金持ちに優しく貧者に冷たい政治が続いてしまう」
秘書や会計責任者のせいにして、せいぜいザルの法改正でごまかす算段の政権に有権者はクーデター的な決起が必要だ。
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