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※2023年12月19日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年12月19日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
安倍派幹部は役職を辞任(左から世耕、高木、西村の3議員)/(C)日刊ゲンダイ
自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティー収入をチョロマカして裏金をつくっていた疑惑で、東京地検特捜部が高額のキックバックを受けていた国会議員から任意の事情聴取を始めた。
これまでの聴取で、キックバックや政治資金収支報告書への不記載を認めた議員や秘書は、「派閥側から指示されたため記載しなかった」「党から配られる政策活動費なので収支報告書に記載する必要はないと派閥から言われた」などと説明したとも報じられているが、あまりに国民をバカにしている。
政策活動費は派閥ではなく、政党が所属国会議員個人に支給する政治資金だ。
受け取った側は収支報告書に記載する義務がない。使途を公表する必要もない。もちろん領収書は不要で、税金もかからない。いわば自由に使えるつかみ金である。それをいいことに、安倍派の議員は裏金を「政策活動費と認識していた」とか言って逃げるつもりなのではないか。「フザケルナ」という話だ。
政策活動費にしたって、原資は主に政党助成金だということを忘れてもらっては困る。われわれの税金なのだから、何に使ったかきっちり説明する責任があるだろう。
「いまの自民党議員には、税金を預かって国民のために使うという発想がまったくない。国民から吸い上げた税金をまるで自分たちのカネのように自由に使うことにためらいがないのです。苦労して納めた税金が国のために使われず、政治家の懐に入って私物化されているのでは、日本経済が沈滞するのも当然だし、どれだけ増税しても足りません。パーティー券収入を収支報告書に記載せずに隠していたことも、本来なら政治資金規正法だけでなく所得税法にも問われる話で、国民感覚とかけ離れています」(経済評論家・斎藤満氏)
「死人に口なし」で責任逃れ
一部報道によると、安倍派ではパーティー収入の「キックバック分を記載していない帳簿」をもとに派閥の収支報告書を提出し、それとは別に「キックバックを含めた収入総額を記した帳簿」もつけていたという。ウラ帳簿があったということは、派閥ぐるみの不正なのは明らかだろう。
一般企業が二重帳簿で収入を少なく見せかけていたら重加算税が課された上、金額によっては責任者がお縄になりかねない。社会的信用も失われる。安倍派は、そういう反社会的な組織ということではないのか。
18日になって、先月亡くなった細田前衆院議長が派閥の会長をしていた際に「キックバックの金額を議員に伝えていた」などと報じられ始めたことにも驚愕してしまう。
関係者がそう話しているというのだが、「死人に口なし」とはこのことで、故人には弁明、反論の機会がないし、特捜部も責任を追及することができない。
亡くなった安倍元首相の威光にすがって、今も「安倍派」を名乗り続ける派閥が、やはり亡くなった細田に責任をオッかぶせようとしているなら、悪あがきにも程があるというものだ。醜悪極まりない。
特捜部は近く政治資金規正法違反の疑いで派閥の関係先にガサ入れする方針。安倍派議員が「政策活動費と思った」「細田の指示だった」と言い張ったところで、押収ブツから口裏合わせの証拠が出てきたらアウトだ。それに、たとえ「細田の指示」が事実だったとしても、裏金をつくっていた議員の違法行為が免責されるわけではない。
1割支持率政権が逃げ切れると思っているのか
18日都内で講演した大島理森元衆院議長は、一連の疑惑について、自民党が1989年にまとめた「政治改革大綱」を学び直してほしいと話していた。88年に発覚したリクルート事件を機に高まった政治不信を払拭するため、この大綱には派閥解消や政治資金の透明化に向けた決意が盛り込まれた。ところが、30年以上経って令和の時代になっても、昭和の「政治とカネ」の問題を引きずっているのが自民党政治なのである。
「裏金文化が横行しているなんて、発展途上国か独裁国家と同じで、さすがに世界からも奇異の目で見られている。子どもじゃあるまいし、違法性の認識もなかったとしたら国会議員の資格はありませんよ。『事務方に任せていた』『派閥の指示だった』などという言い訳をタレ流す大マスコミもどうかしている。『そんな言い訳は通用しない』と糾弾すべきでしょう」(斎藤満氏=前出)
特捜部は安倍派だけでなく、同様にパーティー券収入などの一部を収支報告書に記載していなかった二階派の刑事責任も追及する方針だという。安倍派の裏金は直近5年間で5億〜10億円、二階派の不記載も1億円以上に上るとみられる。
第2次安倍政権の「1強」が8年近く続き、その下で二階元幹事長も5年にわたって実権を握り続けた。英国の歴史家ジョン・アクトンは「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」と言った。今回の裏金疑惑は、その必然ということだ。
岸田首相は18日、自民党派閥パーティーの裏金問題について「新たな枠組みを立ち上げるなど果断に対応することが重要だ」と言い、何らかの新組織を立ち上げることを示唆したが、そんな小手先の“やってる感”で乗り切れると思っているのだろうか。マトモな国民は怒り心頭だ。
中途半端なら怒りは検察に向かう
週末に報道各社が実施した12月の世論調査で、岸田内閣の支持率は多くが過去最低を更新した。裏金問題が影響しているとみられる。
中でも毎日新聞が16、17日に行った全国世論調査では、内閣支持率は前回の11月調査から5ポイント下落して16%に沈んだ。調査方法が異なるため単純比較はできないが、旧民主党・菅直人政権末期(2011年8月)の15%に迫る水準だ。内閣不支持率は前月比5ポイント増の79%で、01年の森喜朗政権(75%)を上回り、毎日新聞が内閣支持率の調査を始めた1947年7月以降で最も高くなった。岸田が政治資金の規制強化に指導力を発揮できると思うかについても、「発揮できるとは思わない」が82%に上った。
「各社の世論調査で自民党の政党支持率も急落している。国民にはマイナンバーやインボイスで網をかけ、1円単位までゴマカシが利かないような制度を押し付けておいて、国会議員は領収書もいらない怪しげなカネを自由に使えるというのでは、さすがに納得が得られないでしょう。『政治にはカネがかかる』というのは理由になりません。それならカネがかからない政治制度に変えるか、収支を完全に透明化して『真面目にやるとこれだけカネがかかるから公的負担を増やしてほしい』と国民の理解を得るしかない。今回の裏金問題では、国会議員が『政策活動費と思った』と言い張れば立件は難しいとの見方もありますが、それでは世論が許しませんよ。事務方の会計責任者だけが立件されて国会議員がおとがめなしでは、国民の批判は検察に向かう。そもそも会計責任者は事務方ですから、国会議員サイドの判断なしで裏金づくりなんてできるはずがありません。少なくとも実務を取り仕切る歴代事務総長は責任を問われて当然でしょう」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
ここで膿を出し切らないと、また同じことを繰り返すだけだ。政治とカネの問題は、与野党問わず真剣に対策を考えないと、日本の底が抜けてしまう。
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