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※2023年12月11日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年12月11日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
党幹部と相次いで会談(岸田首相=中央)/(C)日刊ゲンダイ
自民党の政治資金パーティー裏金問題は底なしの展開だ。パー券収入を政治資金収支報告書に記載せずポッケに入れていた議員の名前が次から次へと出てくる。「令和のリクルート事件」と呼ばれるのも納得の醜悪さだ。
最大派閥の安倍派では、10日も新たに橋本聖子元五輪相(比例)、大野泰正参院議員(岐阜選挙区)、池田佳隆衆院議員(比例東海)、谷川弥一衆院議員(長崎3区)の4人がキックバックを収支報告書に記載していなかった疑いがあると報じられた。その額は直近5年間で1000万円から5000万円に上るという。
安倍派は幹部の「5人衆」と座長が裏金を受け取っていた疑惑がすでに報道されている。朝日新聞(9日付)によれば、座長の塩谷立元文科相が数百万円で、5人衆は松野官房長官と高木国対委員長、世耕参院幹事長がそれぞれ1000万円超、萩生田政調会長は数百万円、西村経産相は約100万円だという。幹部は全員悪人ということなら、映画「アウトレイジ」を地で行く恐るべき派閥だ。この週末、安倍派幹部は地元や視察先で釈明に追われたが、全員が、判で押したように同じセリフを口にしていた。
「国民の皆さまに大変な政治不信を招いたことをおわびする」
「事実関係を慎重に調査・確認をして、適切に対応していく」
そして、進退についてはそろって「与えられた職責を全うしたい」と言うのだ。事前に示し合わせたとしか思えない。どこまで反省しているのか、怪しいものだ。
政務三役から安倍派を一掃
もっとも、裏金疑惑を抱えたままで政府や党の要職を続けられるわけがない。特に松野に関しては、政府のスポークスマンとして毎日午前と午後に行う会見で苦しい答弁が続いていて、「本人のためにも早く代えた方がいい」(自民党閣僚経験者)と、早い段階から交代論が出ていた。
岸田首相は9日夜に公邸で“後見人”の麻生副総裁と2時間以上にわたって話し込み、その直後から、松野だけでなく裏金疑惑の5人衆全員を更迭して内閣改造を行うという情報があふれ出した。
さらに、10日になって「安倍派の閣僚、副大臣、政務官を全員交代させる方針」が流れた。
安倍派の閣僚は松野、西村に加えて鈴木淳司総務相、宮下一郎農相の4人。鈴木と宮下は8日の予算委でキックバックを受けたことは「ない」と明言していたが、容赦なく切るわけだ。安倍派の副大臣は5人、政務官は6人いる。それら政務三役を一掃するとは、安倍派の構成員というだけで反社認定するようなものだ。そんな反社会的な組織には解散命令を出した方がいいんじゃないか。
「清和会(安倍派)は派閥ぐるみで裏金づくりの違法行為に手を染めていたわけですから、一斉にパージされて当然です。しかし、安倍派議員を交代させれば済む話かといえば、それは違うでしょう。裏金をつくっていたのが安倍派だけとは限りません。内閣改造で清廉な人物をそろえるのは難しいのではないか。これだけの腐敗が白日の下にさらされた以上、自民党総裁としての責任は重大です。国民の政治不信、自民党不信は、ちょっとやそっとじゃ払拭できない。岸田首相がこの局面を人事で乗り切れると考えているのなら甘すぎるし、国民をバカにしています」(政治評論家・本澤二郎氏)
場当たり対応の内閣改造は一時的な延命策でしかない
10日の岸田の動きは、日曜日にしては慌ただしかった。人事の相談なのか、都内のホテルと公邸を行ったり来たりで、萩生田や茂木幹事長、森山総務会長、宮沢税調会長、木原幹事長代理らと相次いで面会。木原頼みは相変わらずのようだ。合間に「ヘアモードキクチ神田日銀通り店」でルーティンの散髪をすることも忘れなかった。
安倍派一掃の内閣改造は臨時国会の閉会後に行われる見通しだ。13日に国会が閉じれば、東京地検特捜部の捜査も本格化する。地検は安倍派の議員数十人への聴取を検討しているという。
9月の内閣改造以来、不倫パパ活疑惑の文科政務官、公選法違反の疑いで法務副大臣、税金滞納で財務副大臣と政務三役の辞任ドミノが続いた。そのたびに岸田は「任命責任を重く受け止める」とか言うのだが、今回はさすがにそれでは済まないだろう。この内閣では一体、何人の辞任者が出ることになるのか。岸田はどう責任を取るつもりなのか。
「パーティー券収入の不記載問題が報じられた当初、岸田首相はこの問題を軽く考えていたフシがあります。裏金疑惑で安倍派が総崩れになっても、政権を支える麻生派・茂木派・岸田派の主流3派がしっかりしていれば大丈夫だとタカをくくっていたのではないか。これだけ問題が大きくなり、慌てて安倍派一掃に動き出しましたが、一時的な延命策にすぎません。それで世論の怒りと不信が収まることはないし、問題にフタをするだけに見えてしまう。もっと抜本的に、二度とこうした問題が起こらないようなルール作りを打ち出すような大局観を見せて欲しいものですが、総理の椅子に座ることが目的だった人だから、何か問題が起きたら場当たり的に対応することしかできない。内閣改造したところで、来年の通常国会はとても乗り切れないでしょう」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
腐敗自民党を国民の手で葬る
裏金問題は個人のスキャンダルとは次元が違う。派閥ぐるみ、もっと言えば自民党の金権体質そのものに国民から厳しい目が向けられているのだ。
国民にはマイナンバーやインボイス制度で網をかけ、1円単位まで目を光らせて搾り取る一方で、自分たちは裏金づくりに励んでいた。物価高に苦しむ国民には目もくれず、パーティー券を大量購入してくれる大企業を優遇する。そういう政治に対する有権者の怒りは爆発寸前だ。
「いま国民が求めているのは、問題議員を隠す内閣改造ではなく、内閣総辞職です。巨額の政党交付金と企業献金の二重取りを続け、われわれの血税もポケットマネーのように使ってきたのが自民党です。それで自民党議員はせっせと私腹を肥やしてきたわけです。政治腐敗を防ぐために、企業献金を制限するという目的で政党交付金の制度が導入されたのに、まったく意味をなしていない。腐敗自民党は政党交付金を国庫に返納すべきだし、もはや潔く下野して野党に政権を預けるべきでしょう。姑息な内閣改造で時間稼ぎをしていられる状況ではない。自民党をブッ潰さないことには、裏金問題の根幹は何も解決しない。国民生活が良くなることもありません。あらゆるカネが自民党の利権政治やお仲間の懐に吸い込まれていく。これでは、どれだけ税金を払っても追いつきません」(本澤二郎氏=前出)
岸田は内閣総辞職で責任を取るしかないだろうが、それでは議会の構成自体は変わらず、看板をスゲ替えた自民党政権が続くだけだ。やはり、ここまで腐った政権は解散に追い込んで、国民の手で葬り去る必要があるのではないか。野党は今こそ内閣不信任決議案を突きつけるべきだ。
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