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※紙面抜粋
※2023年12月8日 日刊ゲンダイ2面
政治家は裏金、国民にはインボイス 国民的反対運動は必至だ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/333129/2
2023/12/08 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
今こそ「増税メガネ」に怒りをぶつけるときだ(首相官邸前までのインボイス中止要求デモ行進、岸田首相=右)/(C)日刊ゲンダイ
風雲急だ。自民党派閥の政治資金パーティー裏金疑惑の「本丸」に司直の手が届きつつある。7日は最大派閥・安倍派の会計責任者による爆弾証言が炸裂。東京地検特捜部の任意聴取に対し、パー券収入のキックバックについて、派閥実務を取り仕切る事務総長に「報告した」と説明したというのだ。
安倍派にはキックバック分を政治資金収支報告書に記載せず、完全に裏金化していた疑いがある。その額は2018〜22年の5年間で計1億円超。この後ろ暗い金の流れを歴代の事務総長が逐一、把握していた可能性が強まったわけだ。
特捜部は政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)での立件を視野に捜査しており、歴代事務総長らへの聴取を検討。不記載の指示や報告の了承など裏金づくりに積極的に関与していれば、「共謀」に問われる可能性は十分にあり得る。
同法の公訴時効(5年)にかからない18年以降に安倍派の事務総長を務めてきたのは、古い順から下村元文科相、松野官房長官、西村経産相。22年8月から高木国対委員長が就いている。
つまり、政権ナンバー2の官房長官以下、現職閣僚、党の要職を務める面々が特捜部のターゲットになるということだ。来週13日に臨時国会が閉会すれば、聴取が始まるのは時間の問題となる。
裏金の疑いは二階派にも及び、その額も安倍派と同じ5年間で計1億超。「しんぶん赤旗」日曜版の報道で、新たに麻生派にも裏金疑惑が浮上。派閥ぐるみ、自民党ぐるみで裏金づくりに精を出していることがうかがえる。
派閥の裏金は一体、何に使われていたのか。表に出せないカネだけに、個人的な遊興費への流用も否定できない。何せ「海外研修」と称して、観光旅行のように浮かれている連中だけに疑念は高まるばかり。つくづく自民党議員の特権意識は、腹立たしい限りだ。
闇金さながらの手口で消費税1兆円を強奪
マイナンバーカードや消費税のインボイス制度を強引に押し通し、国民の収入を“丸裸”にしようとする陰で、自分たちだけ濡れ手で粟の裏金づくり。とりわけ、10月スタートのインボイス制度は弱者イジメだ。これまで年間売り上げ1000万円以下で消費税の納付義務がなかった「免税事業者」からも、消費税を搾り取るのが目的である。
巧妙なのはインボイスという13ケタの登録番号を持たない下請けやフリーランスと取引した場合、彼らが納めない消費税の責めを発注元の法人・企業が負わされるようになったこと。負担が嫌な発注元は取引先にインボイス登録を望むほかないが、強制はできない。それが、この制度のいやらしさだ。
免税事業者に「消費税を払わねえなら発注元に払わせるぞ」と迫り、日本人にありがちな「他人に迷惑をかけたくない心理」につけ込むのは、闇金の取り立てさながら。そもそも、登録を拒めば発注元からの仕事が減りかねない。進んでも地獄、引いても地獄の選択だ。
こんな血も涙もない手口で奪い取る消費税収の増額規模にも舌を巻く。政府は免税事業者の約161万人がインボイスに登録し、課税事業者に転換すると見積もって年間2480億円と試算したが、実際はそんなものでは済まない。一概にフリーランスと言っても多岐に及ぶ。ライター、カメラマン、漫画家、声優、プログラマー、個人タクシーの運転手、個人経営の塾講師、「一人親方」と呼ばれる建築・土木系の職人──など幅広い。
「日本最大級のクラウドサイト『ランサーズ』の調査だと、フリーランスの人は全国で1500万人超。そのデータに基づく私の試算では、少なく見積もっても1兆円の増税となります」
そう断じるのは元静岡大教授で税理士の湖東京至氏だ。こう続けた。
「そもそも年商1000万円以下の小規模事業者に消費税の納税義務がなかったのは、価格交渉力が弱いから。消費税を売値に転嫁できないとの理由で免税事業者とされてきたのです。こうした人たちの収入からも、消費税を取り立てるのはあまりにも酷です」
国民の収入を“丸裸”の陰で裏金天国を謳歌
売り上げ1000万円以下の零細企業や個人事業主から1兆円も消費税をふんだくる一方で、自民は党を挙げて裏金天国。共同通信によると、安倍派議員には5年間で計9000万円もの裏金を手にした猛者もいるというから、完全に国民をナメ切っている。
「なぜ、国民だけインボイスの網にかけられるのか。わざわざ課税対象外の政治資金を裏金にして着服した以上、脱税も追及しなければ示しはつきません。脱税の公訴時効は7年。納めるものをキッチリ、納めさせるべきです」(湖東京至氏=前出)
制度導入の直前には中止を求めるオンライン署名が54万筆も集まり、9月25日には官邸前で署名を呼びかけた「STOP! インボイス」の集会が開かれた。当初はフリーランスの人々の小さな運動だったが、燎原の火のように反対の声が広がったのも当然。メンバーでライターの阿部伸氏は官邸前集会の開会あいさつで、こう訴えていた。
「1年半前のことです。ある自民党議員に3万5000筆の署名が集まったことを伝えたら、鼻で笑われました。また、別の国会議員に10万筆の署名を持って行ったら30万筆持って来いと言われました。また、ある自民党議員に大きな集会をやってみろと言われ、僕らは去年日比谷野音で1200人を集め、6月には全国一揆を行いました。ある自民党議員が言いました。平日の昼間に議員会館の会議室を満席にしたら認めてやる。9月4日議員会館の大会議室は満席どころか平日にもかかわらず立ち見が出る350人の市民が集まり、財務省に緊急提言を手渡しました」
そして署名が50万筆を突破したにもかかわらず、自民党は交渉も訪問も断ったという。とことん、フザけた集団である。
自由人はのたうち回って当然の選民意識
パー券の販売ノルマを課す感覚で次々と難題をふっかけたのか。クリアしても「聞く耳」を持たないとは、自民党は何サマだ。
ジャーナリストの斎藤貴男氏は「特権意識の塊」と切り捨てた。
「世襲、元官僚、タレント上がりが大半を占め、『自分たちは特別』との意識がしみついている。彼らにすれば下僕に過ぎない庶民は組織の統制下に従うべきで、フリーランスなる“自由人”の存在はもってのほか。インボイスの網にかけ、奴隷のごとく国の管理下に置き、後はどうぞ、のたうち回って下さいという感覚なのでしょう。そうでなければ、岸田首相の国民意識とかけ離れた言動の説明はつかない。次元の異なる選民意識の持ち主であればこそ、派閥パーティーの自粛や自らの派閥離脱の弥縫策でお茶を濁すのも、まだ納得できます」
インボイスの仕組みは複雑過ぎて、煩雑な事務負担に悶絶しているのは、マトモな企業も同じ。営業職など外出や人と会う機会の多いサラリーマンほど、タクシーや会食、喫茶店などを経費で利用する際「インボイス対応に注意を」と経理に口うるさく言われている。
一見客として小料理屋やスナックの入り口で、いちいち「インボイスに対応してますか」と聞くのもヤボな話。こんなバカげた習慣にウンザリな人ほど、インボイス強行の陰で裏金天国の自民党に怨嗟と怒りの声をぶつけなければいけない。
「税の不公平感を表す『クロヨン』『トーゴーサンピン』なる言葉で、個人事業主はさげすまれてきましたが、彼らを殺しにかかるインボイスにサラリーマンも無関心ではいられません。分断は権力側の思うツボ。源泉徴収と確定申告の違いを乗り越え、国民的撤回運動に広げるべきです」(斎藤貴男氏=前出)
自民党の裏金疑惑を機にインボイスを葬り去れるのか。国民も正念場だ。
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