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※紙面抜粋
※2023年12月7日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
頑なに認めなかった岸田首相(右は、旧統一教会の友好団体「天宙平和連合(UPF)」ジャパン議長の梶栗正義氏)/(C)日刊ゲンダイ
ここまで動かぬ証拠があるのに「知らぬ存ぜぬ」で押し切れると、本気で思っているのか。
当時、自民党の政調会長だった岸田首相が、自民党本部で「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の大幹部と面談していた一件である。朝日新聞がスクープし、発覚した。ところが、岸田は「承知していない」と、かたくなに面会した事実を認めようとしないのだ。
岸田は政調会長だった2019年10月、米下院議長をつとめたギングリッチ氏と党本部で面会。この場に、旧統一教会のダミー団体である「天宙平和連合(UPF)ジャパン」のトップ、梶栗正義議長が同席していたのだ。さらに、UPFインターナショナル会長でアメリカの教団会長もつとめたジェンキンス氏もいた。
つまり、日本とアメリカの教団幹部2人と会っていたということだ。UPFは旧統一教会の創設者である故・文鮮明氏が創設した団体である。
朝日新聞によると、面会は30分以上つづき、梶栗氏は岸田と会話をかわし、名刺も渡し、自己紹介したという。朝日新聞は、面会時に撮影された“証拠写真”も掲載。写真は、岸田、ギングリッチ氏、梶栗氏、ジェンキンス氏の4人が笑顔で並んで写っているものだ。
なのに、岸田は「4年前、ギングリッチ元下院議長と面会したが、同席者については承知していない」「写真があったとしても認識は変わりません」「名刺交換したかどうかは覚えていない」「同席者は承知していない。それに尽きる」と、くり返しているのだから、異様だ。
さすがに、この釈明は通用しないだろう。自民党関係者がこう言う。
「自民党の政調会長が、誰かもわからない人物と党本部で会うはずがない。同席者の説明も事前にあるはずです。しかも、梶栗さんは日本政界では有名人です。同席者は承知していない、というのは明らかな嘘ですよ」
面会認めず完全な墓穴
それにしても証拠写真まであるのに、なぜかたくなに「面会」の事実を認めないのか。梶栗氏について説明を避けるのか。
最初に報道があった時、面会を認めていれば傷も小さかったのではないか。往生際の悪さは、あの山際大志郎・元経済再生相を超えるものだ。教団との接点を問われるたびに「記憶にない」と言を左右にしていた山際も、教団トップ韓鶴子総裁と面会した時の写真がネットにあがると、「写真を見て、会ったことがある記憶と合致した」とギブアップしている。
ただでさえ内閣支持率が危険水域に低迷している岸田は、これまで「私個人は知りうる限り統一教会とは関係ない」と言いつづけてきただけに、いまさら接点を認めるわけにはいかないのかも知れない。あるいは「大した問題じゃない」と甘くみていたのか。
いずれにしろ、教団の大物幹部と面会していたことが発覚したうえ、その事実を認めないのだから、さらに支持率は下落する可能性が高い。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「批判が強まるだけなのに、なぜ、岸田首相は素直に事実を認めないのか。完全に墓穴を掘っています。安倍元首相をかばう姿を党内に見せたい、という気持ちがあるのかも知れない。岸田首相がギングリッチ一行と面会したのは、安倍さんから名代を頼まれたからだとされています。面会を認めると、その経緯を説明せざるを得なくなり、その結果、安倍さんを悪者にすることになる。岸田首相は、口を閉ざすことで、自分は安倍さんをかばっているんだ、ということを党内にアピールしたいのではないか。しかし、そんなことは国民には関係ないことです。支持率が低迷しているためか、岸田首相は正常な判断力を失っているようにみえます」
事実を事実と認めない岸田に対して、国民は怒りを通り越して、呆れ返っているのではないか。
アメリカをバックにロビー活動
見逃せないのは、アメリカの大物政治家と教団幹部がセットになって、自民党幹部と次々と面会していたことだ。
もともと、ギングリッチ氏らは安倍首相と会談予定だったが、安倍の都合が悪くなり、代わりに岸田が面会。さらに、翌日は名古屋市で開かれたUPFの会議で細田衆院議長(当時)とも会っている。報道されていないだけで、ギングリッチ一行は、他の自民党議員とも次々に面会していた可能性がある。
ある永田町関係者がこう言う。
「ギングリッチ氏と梶栗氏は、教団のキーマンといえる存在です。ギングリッチ氏はUPFの会合に頻繁に参加している統一教会のシンパです。一方、梶栗氏は教団の政治団体『国際勝共連合』のトップも兼ね、日本とアメリカ両国の政治家と関係を築き、影響力を発揮してきた人物。トランプ前大統領にもパイプを持ち、UPF主催のイベントにトランプ前大統領と安倍首相がビデオメッセージを寄せたのも、梶栗氏が動いたからとみられています。安倍首相との間に『ずっと温めてきた信頼関係』があると誇らしげに語っていた音声の存在も明らかになっています」
自民党幹部との面会をセッティングしたのは、梶栗氏だという見方もある。
もし、そうだとしたら、教団側が日本の“宗主国”であるアメリカの威光をバックに、自民党幹部に接近していった構図が浮かび上がる。教団はアメリカと一体となって、自民党政権に「ロビー活動」をしていたということなのではないか。
教団の思想に染まった自民党
立憲民主党の川内博史前議員がギングリッチ氏と梶栗氏、岸田の面会について、興味深い投稿をしている。X(旧ツイッター)で
〈宗主国側に統一教会がいる、即ち、自民党が統一教会に支配されていることを示唆する会談だったということ〉と指摘しているのだ。
実際、旧統一教会がアメリカ政界に深く浸透しているのは間違いない。それだけに、教団の意思がアメリカを通じて自民党に伝わり、政策に影響を及ぼしていたとしても不思議ではない。自民党政権が、アメリカの威光に弱いことも紛れもない事実だ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「アメリカと教団は『反共』思想が完全に一致しています。イデオロギー的な共通点が、実際の連携につながっているのでしょう。教団が、アメリカの威光を利用して自民党に働きかけてきた可能性はあると思います。それもあって、自民党が統一教会の思想に染まってしまったということもあるでしょう。実際、家父長制的な家族観や、性的マイノリティーの権利を軽んじる思想など、自民党と統一教会は、多くが共通しています。いまだに、選択的夫婦別姓が法制化されず、LGBTQの権利を守る法律も世界から遅れている。安倍元首相の著書『美しい国へ』に至っては、日本教団の初代会長の著書『美しい国 日本の使命』とタイトルが酷似しているほどです。岸田首相は知らぬ存ぜぬを繰り返していますが、自らの接点を含め、自民党と教団の関係を改めて検証すべきでしょう」
岸田の「教団との関係を断つ」という発言はいったい何だったのか。自らの接点すら説明しないのは、大ウソだったと認めているようなものだ。もはや、「辞任」で幕引きできるレベルではなくなっている状態だ。
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