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※2023年11月28日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年11月28日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
本質は軍事費倍増で北朝鮮を利用(「全拉致被害者即時一括帰国を求める国民大集会」であいさつをする岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
各社の世論調査で内閣支持率が政権発足以降、過去最低を更新し続けている岸田政権。「増税メガネ」のあだ名を気にして、岸田首相が柄にもない減税を言い出して以来、支持率下落は加速度を増し、調査のたびにガクッと下がる。岸田は完全に国民の信頼を失っているのだ。
この政権の本質が防衛費倍増と、そのための増税路線だということを国民は感覚的に理解している。だから、唐突に減税を言い出してもしらじらしく、違和感が拭えない。詐欺的な話だと感じる。それが支持率急落に表れている。
27日の参院予算委員会でも、立憲民主党の辻元清美議員から「総理は『増税メガネ』の上に『減税メガネ』をかけて国民の望むことが見えなくなっているんじゃないですか」と突っ込まれていた。
1回こっきりの所得税減税の後には、防衛費倍増のための大増税が待っていることをみんな知っている。国民をバカにするなという話だ。
辻元は、防衛費を今後5年間で43兆円に増やす方針について、為替レートの影響を質問していたが、木原防衛相によると計画策定時は1ドル=108円で、今年度予算では1ドル=137円で計算しているという。それが今では1ドル=150円前後まで円安が進んでいる。当初の計画に影響が出ることは間違いない。
ところが岸田は、「必要な防衛力を用意するために積み上げて閣議決定した数字だから、43兆円の範囲内で防衛力を強化する方針は変わらない」と言っていた。おかしな話だ。
昨年末の「安保3文書」で決まった
必要な装備品を積み上げた結果が当初計画の43兆円ならば、現在の円安基調ではもっと多くの予算が必要になるはずだ。辻元も「装備品を減らすか大増税か、どちらかしかない」と指摘していたが、当初計画の通りに装備品を調達するのであれば、さらなる増税は避けられない。
岸田が43兆円の枠を堅持と答弁したのは語るに落ちるというやつで、要するに5年間で43兆円という金額だけを先に決めたということなのだろう。国防を真剣に考えて、必要なものを積み上げた数字ではない。こんな曖昧な防衛力強化のために増税する方針を決めて、国民の理解を得られると思っているのだろうか。
防衛費を43兆円に増額することは、岸田政権が昨年末に閣議決定した「安保3文書」で定まった。この時に敵基地攻撃能力の保有も明記された。国会に諮ることも、事前に国民に説明することもないまま、平和主義にのっとった「専守防衛」という戦後日本の安保政策を閣議決定だけで大転換させたのだ。
3文書には、米国の米軍の民間施設活用に向けた調整や「空港・港湾の平素からの利活用に関するルール作り」も盛り込まれたが、これも具体化し始めている。27日の朝日新聞が「38空港・港 防衛力強化」と1面トップで報じた。
有事の際の部隊の展開などを目的に、戦闘機や大型の護衛艦が利用できるように沖縄・九州を中心に全国の14空港と24港湾の整備を政府が進める計画で、関連費用を来年度予算に盛り込むという。国民が知らないうちに、いつの間にか列島の要塞化が進み、この国は戦時体制に移行しつつあるのか。
空港や港湾の軍事利用は米国の対中戦略の一環
朝日の記事によれば、<政府は、空港と港湾を整備すれば、有事には作戦の幅が広がることで敵国の侵攻に対応しやすくなるというメリットがあるとする。海上保安庁の大型船などが接岸できるようになれば、一度に多くの人を避難させることができるとみる>
<空港の滑走路の延伸や駐機場の拡充で航空需要に対応でき、港湾整備で大型クルーズ船の受け入れも可能となる。観光客の増加につながるメリットがあるという>
現状では自衛隊が空港や港湾を優先的に使えるのは有事の際だけだが、政府は「軍民両用(デュアルユース)」を前提として、訓練など日常的な利用も求めるという。
軍事評論家の前田哲男氏が言う。
「防衛費倍増も、民間の空港・港湾利用も、米国の対中戦略の一環です。決して日本を守るためではない。対日要求をまとめた2018年の『アーミテージ・ナイ・リポート』に、米軍と自衛隊の一体化を進める日米統合部隊の創設や、自衛隊基地を米軍の作戦に使えるよう基準を緩和することなどが書かれていました。それが民間施設まで拡大されるということです。日本を砦にして中国とにらみあう米国の方針に、日本政府は唯々諾々と従っている。有事の際に自衛隊の基地が攻撃を受けて使えなくなったことを想定して、今年初めて大分県や鹿児島県の空港で戦闘機の離着陸訓練が行われるなど、実質的に民間空港の軍事利用も進んでいます。南西諸島は急速にミサイル基地化され、万が一の台湾有事の際には、米中戦争の最前線に日本が立たされる。岸田政権は国民を守るためではなく、米国のための防衛力強化を進めているのです」
26日も米韓海軍と日本の海上自衛隊が、韓国の済州島南東の公海上で、合同の海上訓練を実施。米原子力空母カール・ビンソンも参加した。軍事偵察衛星を打ち上げた北朝鮮に対抗し、日米韓3カ国による抑止力を強化するための訓練だという。
こうやって北朝鮮の脅威を“利用”して軍備増強をはかるのが日本政府の手口だが、さすがに国民も「何かおかしい」と気づいているのではないか。
深夜のJアラートに意味があったか
21日の深夜に北朝鮮が打ち上げた軍事偵察衛星を「弾道ミサイルの可能性がある」としてJアラートを発出し、30分以上にわたって警報が鳴り続けた。後になって、発射から10分後には日本列島を飛び越えて衛星の軌道に入っていたことが確認されたが、飛翔体の軌道を捕捉できず、ミサイルか衛星かも判別できないのが日本の国防力ということだ。
それで、どうやってミサイルを迎撃するつもりなのか。住民に地下に避難しろというのもむちゃぶりで、沖縄や地方都市は東京のように地下街が発展していない。どこへ逃げろというのか。あるいは、衛星と分かっていながら、あえてミサイルと喧伝したのであれば、より悪質だ。
「21日夜に北朝鮮が打ち上げた衛星は、沖縄本島と宮古島の間を通過した時の高度は地上から約500キロメートルで、落ちてくる心配はほとんどなかった。いたずらに不安を煽っただけで、対策は何もない。実際はミサイルではなかったし、偵察衛星が軌道に乗ったと日本政府が認めたのも2日後と遅かった。こういう政府が、国防を理由に進める空港・港湾整備が信用できるでしょうか。港を整備すれば豪華クルーズ船が寄港して経済効果も見込めるなどと、甘言を弄していますが、そんなのは絵空事でしかない。国が整備する代わりに、平時から訓練などで使用することを求めるアメとムチです。軍民共用の空港や港湾は、攻撃対象になるリスクがある。整備対象の自治体トップは、国の予算で整備してもらえればありがたいと安易に飛びつくことなく、周辺住民を危険にさらすことになりかねないということを肝に銘じてほしいと思います」(防衛ジャーナリスト・半田滋氏)
国民の信を失いレームダック化した政権が、まだやりたい放題を続けられる不思議。定見なき岸田が進める米国のための防衛費倍増や列島要塞化は本当に必要なのか。そのための増税を国民は許容するのだろうか。
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